中性脂肪とは?中性脂肪が高い場合どうする?
生活習慣の悩み

中性脂肪とは?中性脂肪が高い場合どうする?

監修者 ダイケンバイオメディカル 公開日:2024-05-11 最終更新日:2025-06-27

生活習慣の悩み

中性脂肪とは?中性脂肪が高い場合どうする?

監修者ダイケンバイオメディカル 公開日:2024-05-11 最終更新日:2025-06-27

中性脂肪はメタボリックシンドロームの判断基準の一つであり、健康にも大きく影響しています。

高い中性脂肪は心血管系の疾患の発症リスクにつながるだけでなく、命にも関わる可能性があります。そのため、中性脂肪の摂りすぎには十分に注意する必要があるでしょう。しかし、中性脂肪をコントロールすることは決して難しいわけではありません。

運動習慣をつける、食生活を見直す、定期的な健康診断に行くなどの対策をすることで、中性脂肪によるリスクの予防につながります。ぜひこれらの工夫を取り入れて、健康な体を手に入れましょう!

中性脂肪とは?

中性脂肪は「トリグリセリド」とも呼ばれ、栄養素の一つである脂質の一種です。人が摂取した脂質やタンパク質、炭水化物から生み出されるエネルギーのうち、消費できなかった分が中性脂肪へと変わります。余分な中性脂肪は予備のエネルギーとして、肝臓や脂肪細胞などに貯蔵されます。

中性脂肪は体にとって欠かせないものであり、不足あるいは過剰になると悪影響が現れることも少なくありません。体のエネルギー源として使われている中性脂肪が不足すると、倦怠感を覚えるようになります。反対に、過剰になっている場合は内臓脂肪や皮下脂肪が増えるだけでなく、以下のような疾患を引き起こす可能性もあるでしょう。

  • 肥満

  • 脂肪肝

  • 心血管疾患

 

中性脂肪の濃度は、採血によって測定が可能です。そのため、中性脂肪濃度は心血管疾患リスクを評価する指標の一つとしても用いられています(1)

 

中性脂肪の基準値

中性脂肪の検査はコレステロールと一緒に行われ、具体的な基準値は以下の通りです(9)

  • 正常値:30-149 mg/dl
  • 軽度異常:150-299 mg/dl
  • 要再検査・生活改善:300-499 mg/dl
  • 要精密検査・治療:29 mg/dl以下, 500 mg/dl以上

中性脂肪値を正常に測定するためには、一晩あるいは8〜12時間の絶食をしてもらう必要があります。中性脂肪の理想的な範囲は一般的に30~149mg/dlとされており、150〜199 mg/dlの場合は軽度異常となります。

150〜199 mg/dlの場合では特別目立った症状は現れませんが、心血管疾患のリスクやインスリン抵抗性が増加することも珍しくありません。

そのため、この段階で中性脂肪値をこれ以上増やさないようにすることが重要です。中性脂肪の値が300-499 mg/dlの場合は要医療と判断され、心筋梗塞や糖尿病のリスクが増加し始めます。値が500 mg/dlを超えると、急性膵炎(2)(3)を発症する可能性が高くなります。急性膵炎は膵臓で引き起こされる疾患で、強い痛みを伴うだけでなく、命に関わる事態に陥るケースもあるでしょう。

このように、中性脂肪が増加すると急性膵炎をはじめとした、さまざまな疾患の発症リスクが高まる恐れがあります。

 

中性脂肪値が高いときに現れる症状

先ほど解説したように、中性脂肪値が高くなってきた段階では明確な症状が現れることは少ないとされています。

そのため、自覚症状がないまま経過するケースが多いでしょう。しかし、中性脂肪値が少しずつ高くなってくると体に変化が現れ、一部の方は皮下に小さい脂肪が隆起することもあります。

これは黄色腫(xanthoma)と呼ばれ、背中や腕などの体のさまざまな部位に現れるのが特徴です。黄色腫自体に目立った症状はありませんが、心血管疾患や2型糖尿病の発症リスクの増加に関係しているとされています(4)

また、正常な肝臓には重量の4〜5%程度の脂肪が含まれていますが、それ以上の割合を超えると「脂肪肝」と定義されます。脂肪肝の原因はさまざまで、脂肪の摂りすぎによって引き起こされる高脂血症がその代表例の一つです(5)。脂肪肝をそのまま放置すると、肝線維症や肝硬変などの重篤な肝疾患を発症する恐れもあります。

 

中性脂肪値が増える原因

中性脂肪値が増える原因は、以下の通りです。

  • 過剰なアルコール摂取

  • 過剰な炭水化物の摂取(糖分の多いジュース、デザート、ケーキ、パン、麺類など)

  • 喫煙

  • 疾患(糖尿病、甲状腺機能低下、腎臓病など)

  • 薬物(ステロイド、β遮断薬、利尿剤、ホルモン製剤など)

  • 遺伝(家族性高中性脂肪症)

このように、中性脂肪が増える原因には遺伝や薬物の使用に加えて、現代人の生活スタイルも密接に関係しています。これらの原因に心当たりがある方は、中性脂肪の摂りすぎには十分に気をつける必要があります。

 

中性脂肪異常の際に注意すべきこと

中性脂肪の異常、つまり高中性脂肪血症になった場合、最も注意すべきなのは心血管疾患です。血液が濃くなったり、動脈硬化の症状がみられたりすることもあれば、以下のような危険な疾患を発症する恐れもあります。

  • 急性膵炎

  • 心筋梗塞

  • 脳卒中

 

このような疾患を合併した場合、突然死のリスクも大幅に高まるでしょう(6)

また、高中性脂肪血症が動脈硬化を引き起こす主な原因は、カイロミクロンです。カイロミクロンは血中の脂質を運搬する働きがあり、タンパク質の一種です。

中性脂肪が豊富に含まれているカイロミクロンが、血管内壁に沈着することでアテローム性動脈硬化を引き起こし、血栓を形成します。動脈硬化になると血管が狭くなるので、血液を運ぶためにより大きな血圧が必要になります。血圧が高くなると血栓が流れやすくなり、血管を詰まらせることで脳卒中や心筋梗塞が引き起こされるのです。

このように、中性脂肪値が高くなると心血管疾患の発症リスクを高める原因となります。早期から高中性脂肪血症の発見や予防をして、健康維持に努めるためには、健康診断で中性脂肪値をよく確認しておくことが大切です(7)

 

食事で中性脂肪を下げるには?

それでは、中性脂肪はどうしたら下げられるのでしょうか。まずは食事で中性脂肪を下げるためのポイントを紹介します。
 

糖分、炭水化物の量を控える

糖分や炭水化物は体のエネルギー源となりますが、過剰に摂取すると中性脂肪として体内に蓄えられてしまうため、必要以上の摂取は控える必要があります。

丼物、麺類は糖質の量が多く、過剰に摂取しやすくなるため注意が必要です。なるべく定食タイプの食事にし、白米の量は少なめにしましょう。ジュースを飲んでいる場合は、糖分摂取量が知らず知らずのうちに増えてしまうため、水やお茶などの糖分の入っていない飲み物に置き換えましょう。

ただし、極端な炭水化物制限を行わないように気をつけてください。長期的に極端な糖質制限を行うと、心疾患障害のリスクが高まります(4)。

 

良質な脂質の摂取

脂肪にはさまざまな種類があり、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。肉類に含まれている飽和脂肪は中性脂肪を増加させる原因となるので、摂り過ぎには注意する必要があります。一方で、不飽和脂肪酸にはコレステロールを下げる働きがあるとされています(8)

不飽和脂肪酸はオリーブオイルを含めた植物性脂肪や、サバやサーモンなどの魚に多く含まれているため、それらを積極的に摂取することがお勧めです。このように、脂肪といっても全てが体にとって悪影響というわけではありません。不飽和脂肪酸を摂り入れて健康的な体作りをはじめていきましょう。

大豆油、コーン油などの植物性油脂も、中性脂肪を下げる効果があります(6)。アボガド、ナッツなども効果的です。

どちらもあくまで脂質であるため、過剰な摂取は過剰なカロリー摂取につながります。適正な総エネルギー摂取量のもとで摂取量を増やしましょう。

 

食物繊維の摂取

食物繊維を摂取すると、食後中性脂肪の上昇を穏やかにし、糖質や脂質の吸収を抑えます(7)。

そのため、野菜、全粒穀物、豆類など、食物繊維が豊富な食事を摂るようにしましょう。また、食物繊維をしっかり噛むことで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐ効果もあります。

 

アルコールを控える

日本酒やビールに含まれているアルコールは多くのカロリー・糖分が含まれており、中性脂肪が増加しやすくなります。

アルコールを摂取すると、肝臓で中性脂肪の合成がすすみ、中性脂肪が過剰となります。肝臓に溜まった中性脂肪によって脂肪肝となります。

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、1日あたりのアルコール量を25g以下に留めることが推奨されています(1)。1日あたりのお酒の目安としては、1日平均純アルコールで約20g程度で、つまりビール(5%)500ml缶1本、日本酒1合、チューハイ(7%)350ml缶1本です(10)

ただし、アルコールの適量はその方の体質や体格によっても異なるので、自身の状態にあわせて調整することが大切です。脂肪を余分につけないように、アルコールとうまく付き合っていきましょう。

 

運動で中性脂肪を下げるには?

中性脂肪を下げるには運動療法も効果的です。どのような運動をすればよいか解説します
 

有酸素運動

中性脂肪を下げるには、有酸素運動がおすすめです。有酸素運動をすると、血糖と一緒に体の中性脂肪がエネルギー源として使用されます。

有酸素運動で中性脂肪が低下することがいくつもの研究で報告されています(8,9)。ガイドラインでは、中強度以上の有酸素運動を、毎日合計30分以上、週3回以上行うことが推奨されています(1)。中強度以上とは、通常速度のウォーキングに相当する運動です。

ウォーキングは手軽ですぐにはじめやすい運動です。長期間行うことで、中性脂肪を下げる効果だけでなく心肺機能の改善や血糖値の低下、高血圧の改善など、さまざまな健康効果が期待できます。

エアロバイクは、バイクの購入やジムに通うことが必要になりますが、効率良く有酸素運動を行えます。負荷を自分で調節できるので、自分の筋力や体力に合わせて運動することができます。

室内で手軽にできる有酸素運動として、踏み台の昇り降りがあります。負荷が少なく怪我のリスクが少ないため、運動に慣れていない方でもはじめやすい運動です。

運動習慣がない場合は、軽い運動や短時間の運動からはじめましょう。

 

筋力トレーニング

筋力トレーニング、つまり筋トレは骨格筋量が増え、基礎代謝が上がります。さらに、中性脂肪を分解するリポ蛋白リパーゼが増え、中性脂肪を減らす効果があります(10)。

体幹や太ももなどの大きな筋肉を鍛えることで、効果的に脂肪燃焼させることが期待できます。立った状態から膝を曲げ伸ばしする「スクワット」、うつ伏せから両肘をつき体をまっすぐにしてキープする「プランク」などが効果的です。

普段筋トレをしていない場合、負荷の少ない筋トレとして、椅子スクワットという方法があります(11)。背もたれのある椅子を用意し背後に立ち、椅子の背をつかみます。そのあとはスクワットの要領で、ゆっくりお尻を後ろに突き出しながら落としていきます。軽い負荷で行うことができるため安全で、筋力に自信がない場合におすすめです。

 

筋トレの習慣がない場合は、急に行うと体を痛める可能性があります。負荷の軽いものを短時間から行うようにしましょう。

 

運動習慣の定着方法

運動が中性脂肪を下げるのに効果的なことはわかっていても、運動を習慣的に行うことは容易ではありません。

そこで、まずは日々の生活で少しだけ運動することからはじめましょう。

座っている時間が長い場合は中性脂肪が高くなるリスクが高まります(12)。定期的に休息を取ってこまめに歩くようにすると効果的です。ストレッチで体を動かすのも良いでしょう。

普段の1日の歩数が少ない場合は、意識的に歩くように心がけましょう。買い物や通勤で歩くときに少し回り道をしたり、駅から歩いたりすると自然と運動量が増えるためおすすめです。

まずは小さなことから始めて、徐々に習慣づけていきましょう。
 

よくある疑問と対策

ここではよくある疑問にお答えします。
 

中性脂肪を下げるためのサプリメントは必要?

中性脂肪を下げるには、この記事で説明したような食事内容の見直しや運動が最も効果的です。しかし、食事でオメガ-3系多価不飽和脂肪酸を多く摂取できない場合は、サプリメントで代用するのも良いでしょう。

 

運動の効果が現れるまでの時間はどれくらい?

1回の運動では中性脂肪は下がりません。運動を定期的に行うことで徐々に中性脂肪は下がります。運動をはじめてから、数週間で徐々に中性脂肪は下がり始めます。数ヶ月続けると、血液検査で安定して下がるようになります。