循環の悩み

高血圧の原因とは?血圧が高くなる原因と予防法を解説します!

監修者 井林 雄太 医師 公開日:2024-05-12 最終更新日:2024-09-05

循環の悩み

高血圧の原因とは?血圧が高くなる原因と予防法を解説します!

監修者井林 雄太 医師 公開日:2024-05-12 最終更新日:2024-09-05

高血圧は日本におよそ4300万人(国民のおよそ4人に1人)患者がいると推定されており、非常に頻度の高い疾患です(1)。脳卒中や心臓病などを引き起こす重要な因子で、高血圧による脳心血管病死亡者は年間およそ10万人と推定されています。しかし高血圧だけでは自覚症状が出現しないため、サイレントキラーと呼ばれます。

この記事では、高血圧の原因は何か、高血圧を予防する方法について詳しく説明します。

高血圧とは?

血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管にかかる圧力の値をいいます。心臓が収縮して血液を送り出すときの圧を収縮期血圧、心臓が拡張したときの血管内の圧を拡張期血圧といいます。

診察室での収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHgを高血圧と診断します。また、自宅で測定する家庭血圧の場合は、収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上を高血圧と診断します。(1)

血圧は、運動、食事、入浴などで大きく変化します。そのため、血圧を測定する際は座ったあと1~2分安静にしてから測定してください。朝は起床後1時間以内、食前、排泄後、内服前に、夜は就寝前に測定することが推奨されています。

心臓は血液を送り出すポンプ、血管は血液が流れるホースです。そのため血圧は血管の弾力性、血管の太さ、血流量で決まります。血管の弾力性が低下、末梢の血管が細くなる、血流が多くなると血圧は上昇します。また、そのほかにも腎臓や内分泌(ホルモン)系などの多くの因子によって調整されています。

血圧が高い状態を放置すると脳卒中や心臓病を引き起こし重篤な状態になる(2)ため、高血圧の予防が重要です。

40代は高血圧になりやすい?血圧の正常値と年齢別の平均値を医師が解説

 

高血圧の原因と種類

高血圧は大きく分けて本態性高血圧と二次性高血圧、白衣高血圧があります。

本態性高血圧

本態性高血圧は、原因を特定できない高血圧のことを呼び、高血圧患者全体の9割が本態性高血圧とされています。食塩過剰摂取、肥満、運動不足、ストレス、喫煙などの生活習慣と遺伝性要因が組み合わさって起こると考えられています。特に日本人は食塩の過剰摂取が大きな原因です。
 

二次性高血圧

二次性高血圧は、なんらかの血圧を上げる原因疾患があり、それが原因で高血圧を引き起こします。甲状腺や副腎ホルモンなどの内分泌系の異常、睡眠時無呼吸症候群、腎血管性高血圧などが原因として挙げられます。この場合、原因となっている疾患を治療すると血圧が正常化する可能性があります。
 

白衣高血圧

白衣高血圧は、病院の診察室などで血圧を測定したときに血圧が高くなる状態をいいます。医療従事者がいることや普段と違う環境のためストレスを感じ血圧が上昇するといわれています。家庭血圧を測定し、高くなければすぐの治療は必要ありません。しかし将来的に高血圧になりやすいことが知られているため、白衣高血圧を指摘されたら普段から家庭血圧を定期的に測定することが大切です。(3)

 

高血圧の症状

血圧が非常に高くなると頭痛やめまいを起こすことがありますが、ほとんどの高血圧は症状がありません。健診や病院を受診した際にみつかることがほとんどです。

高血圧を放置すると心臓や血管に負荷がかかり、血管の壁に圧力がかかり続けるため血管が厚く、硬くなり、進行するともろくなります。これを動脈硬化といい、体内のあらゆる血管に起こります。動脈硬化により血管がもろくなり、脳卒中や心臓病などの命に関わる病気を発症します。(4)

しかし血圧が高いだけでは無症状のため、高血圧はサイレントキラーとも呼ばれます。高血圧では以下のような症状が起こります。

  • 心筋梗塞:心臓に流れている冠動脈という血管が詰まり、心臓の細胞が壊死してしまうため胸痛を起こします。突然の激しい胸痛が起こり、突然死の原因になることもあります。

  • 心不全:動脈硬化によりポンプである心臓が血液を送るために強い力をかけ続けるため心臓が機能不全を起こします。進行するとむくみが出たり、胸水が貯留したりすることで苦しくなります。

  • 脳卒中:脳の血管が詰まる・破れるなどで脳が障害を受ける病気を脳卒中といいます。脳の血管から出血すると脳出血、血管が詰まると脳梗塞を発症します。

  • 慢性腎臓病:高血圧により腎臓にある毛細血管が動脈硬化を起こし、腎機能が低下する病気です。腎臓の働きが悪くなり

  • 大動脈瘤:大動脈の血管壁の一部が瘤状に拡張した状態です。大動脈瘤があるだけでは症状は起こらないことがほとんどですが、放置すると破裂し急速に死に至ります。

  • 眼底出血:眼の奥の網膜や硝子体にある静脈からの出血を総称して眼底出血といいます。出血の部位によっては急激に視力低下を起こします。

高血圧は自覚症状がほとんどないため自分では気づきにくいので、健診を定期的に受けることが非常に大切です。また、家庭で血圧を測定することで早期発見につながります。高血圧を予防・治療し、適切な血圧管理によってこのような脳卒中、心臓病、腎臓病を防ぐことが血圧管理の目標です。
 

高血圧を予防・改善する方法

本態性高血圧は、生活習慣を見直すことで予防・改善が期待できます。以下のようなことを心がけて、血圧にいい習慣を身につけましょう。
 

塩分摂取量を減らす

食塩摂取の目標値は、高血圧症治療ガイドライン2019(1) では、高血圧患者の減塩目標を6g/日未満にすることを強く推奨しています。令和元年国民健康・栄養調査(5)では食塩摂取量の平均値は男性10.9g、女性9.3gと目標値に比べて非常に多いことがわかります。

日本人は味付けに醤油などの塩分を使用することが多いため、塩分摂取量が多くなりやすいことが知られています。調理の際は薄味を心がけ、醤油やソースはかけるのではなくつけるようにしましょう。ほかにも麺類の汁は残す、外食や加工食品を控えるようにすることで塩分摂取量を大きく減らすことができます。

味付けは塩味を抑える分、満足感を得られるように香辛料や香味野菜、酢などを上手に使用しましょう。
 

食生活を見直す

血圧にいい食事は塩分を減らすことだけではありません。カリウムは腎臓からナトリウムを排泄させる効果があり、血圧降下作用があります(6)。カリウムはバナナやぶどうなどの果物、ほうれん草、アボカド、イモ類、ナッツなどに多く含まれています。水に溶けやすいので調理の際に注意が必要です。

ただし、腎臓が悪いとカリウムが排出できなくなるためカリウム摂取制限が必要な場合があるため、医師の指示に従うようにしてください。

海藻、きのこ、ごぼうなどに多く含まれる食物繊維は、ナトリウムを吸着し体外へ排出させる働きがあります。

また、オメガ3系脂肪酸を摂取すると血圧を下げることがわかっています。オメガ3系脂肪酸は、青魚のサンマやサバなどに含まれるEPA、DHAや、植物油、ナッツに含まれるα-リノレン酸などがあります。オメガ3系脂肪酸は、1日2~3gの摂取で収縮期血圧、拡張期血圧ともに平均して2mmHg低下する報告もあり、血圧低下作用が期待できます。 (7)

 

運動する

運動を行うことで高血圧が改善されます。習慣的な運動を行うと、収縮期血圧を2~5mmHg、拡張期血圧を1~4mmHg低下させる効果があります。(8)

ややきつい、少し汗ばむ程度の強度の運動を1回10分以上、合計して30分以上、週3回以上のペースで行いましょう。

なお、運動療法はⅡ度高血圧以下(収縮期血圧179mmHg以下または拡張期血圧が109mmHg以下)で脳心血管病のない患者さんが対象となります。それ以上に血圧が高い場合は運動療法はリスクが高いため、降圧後に行うようにしましょう。
 

ストレスがかからないようにする

ストレスを感じると交感神経が活発になり、血圧が上昇します。白衣高血圧もストレスが原因とされています。睡眠不足、長時間労働などにより体が慢性的なストレスを受けると持続的に血圧を上昇させるため、高血圧を発症します。睡眠をとったり気分転換をするなど、ストレスを取り除くことが大切です。

 

禁煙する

喫煙によって血管が収縮し、血流の流れが悪くなり動脈硬化を進行させるため、禁煙は高血圧の予防に重要です。受動喫煙の防止も有効です。(9

他の予防方法:高血圧は改善できる?7つの血圧を下げる方法を解説!
 

まとめ

高血圧は自覚症状がほとんどないため、毎年健診を受けることが大切です。家庭用血圧計を購入し、自宅で定期的に測定することも高血圧の早期発見のためには重要です。もし血圧の異常を指摘された場合は医師に相談してください。また、高血圧予防のために適切な食生活や運動習慣を取り入れるようにしましょう。