基礎代謝とは、人間が身体機能を最低限維持するために消費されるエネルギーのことです。
一般的に、基礎代謝は年齢とともに低下することが知られており、基礎代謝が低下すると体本来の機能が維持できにくくなり、病気になりやすくなるなど健康においてさまざまな悪影響が及ぼされます。
また、基礎代謝が低下すると消費エネルギーも小さくなり、糖質などが適切に身体活動に使われずに体に蓄積されるため、脂肪が増えて肥満のリスクも高まります。
このように、基礎代謝は健康や体重管理において非常に重要であるため、基礎代謝を上げることが健康の維持に必要不可欠だといえます。
この記事では、基礎代謝の決定に関わる要因や、基礎代謝を上げる方法などについてくわしく解説します。(1)(2)(3)基礎代謝とは
基礎代謝とは、心身ともに安静な状態のときに、生命を維持するために必要な最低限のエネルギー消費量のことを指します。
呼吸をしたり、心臓を動かしたり、体温を調整したり、生命活動の維持に必要な身体活動が含まれます。
基礎代謝は一日の全エネルギー消費の約60%を占めており、とくに運動などを行わずに寝ているだけでも、人間は生きているだけで多くのエネルギーを消費します。
基礎代謝が高いほど多くのエネルギーを消費しやすく肥満にもなりにくいといえます。健康維持や体重管理において基礎代謝は非常に重要な要素です。(1)
基礎代謝の計算方法?
基礎代謝量は、基礎代謝基準値と参照体重の掛け合わせによって計算されます。(4)(5)
基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日) × 参照体重(kg) = 基礎代謝量 |
※基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日):体重1㎏あたりの基礎代謝量の代表値
※参照体重(kg):該当年齢の平均的な体重
参照体重における基礎代謝量:男性?
性別 |
男性 |
||
年齢(歳) |
基礎代謝基準値 (kcal/kg 体重/日) |
参照体重 (kg) |
基礎代謝量 (kcal/日) |
1〜2 |
61.0 |
11.5 |
700 |
3〜5 |
54.8 |
16.5 |
900 |
6〜7 |
44.3 |
22.2 |
980 |
8〜9 |
40.8 |
28.0 |
1,140 |
10〜11 |
37.4 |
35.6 |
1,330 |
12〜14 |
31.0 |
49.0 |
1,520 |
15〜17 |
27.0 |
59.7 |
1,610 |
18〜29 |
23.7 |
64.5 |
1,530 |
30〜49 |
22.5 |
68.1 |
1,530 |
50〜64 |
21.8 |
68.0 |
1,480 |
65〜74 |
21.6 |
65.0 |
1,400 |
75 以上 |
21.5 |
59.6 |
1,280 |
参照体重における基礎代謝量:女性
性別 |
女性 |
||
年齢(歳) |
基礎代謝基準値 (kcal/kg 体重/日) |
参照体重 (kg) |
基礎代謝量 (kcal/日) |
1〜2 |
59.7 |
11.0 |
660 |
3〜5 |
52.2 |
16.1 |
840 |
6〜7 |
41.9 |
21.9 |
920 |
8〜9 |
38.3 |
27.4 |
1,050 |
10〜11 |
34.8 |
36.3 |
1,260 |
12〜14 |
29.6 |
47.5 |
1,410 |
15〜17 |
25.3 |
51.9 |
1,310 |
18〜29 |
22.1 |
50.3 |
1,110 |
30〜49 |
21.9 |
53.0 |
1,160 |
50〜64 |
20.7 |
53.8 |
1,110 |
65〜74 |
20.7 |
52.1 |
1,080 |
75 以上 |
20.7 |
48.8 |
1,010 |
上記の基礎代謝基準値は、各年齢の平均値に基づいて算出されているため、各年齢の基準から大きく外れるような身長や体重によっては誤差が大きくなる可能性があります。肥満ぎみの方では基礎代謝量は上記の基礎代謝基準値よりも大きく、やせぎみの方では小さくなる確立が高くなります。
基礎代謝量の算出方法にはさまざまな推定計算式があり、年齢や性別、身長、体重を用いた日本人の基礎代謝量の算出方法としては、国立健康・栄養研究所の推定式があります。(5)
国立健康・栄養研究所の推定式
男性 女性 |
(0.0481×体重(kg)+0.0234×身長(cm)-0.0138×年齢(歳)-0.4235)×1,000÷4.186 (0.0481×体重(kg)+0.0234×身長(cm)-0.0138×年齢(歳)-0.9708)×1,000÷4.186 |
基礎代謝を決定する要因
基礎代謝を決定する要因には年齢や性別、体脂肪率などがあり、基礎代謝には個人差があります。
年齢
基礎代謝は年齢が上がるにつれ低下します。
基礎代謝量は除脂肪量(骨格筋や臓器など)と相関性が高いことが明らかになっており、加齢にともない筋肉量などが低下すると基礎代謝も低下すると考えられています。(2)(5)
性別
一般的に、男性の方が女性よりも基礎代謝が高い傾向があります。
先述の通り、基礎代謝は筋肉量などと高い相関性があるため、筋肉量の多い男性のほうが基礎代謝が高いと考えられます。(5)
体重と体脂肪率
体重の重い人ほどエネルギーを消費するため、基礎代謝も高くなります。
しかし、基礎代謝は体重よりも筋肉量などと強い相関性がみられるため、体脂肪率が低く筋肉量が多い人は基礎代謝が高くなると考えられます。(2)(5)
筋肉量
先述の通り、基礎代謝と筋肉量には深い関係があります。
筋肉、とくに骨格筋は安静時にも代謝量が比較的高いため、筋肉量が多いと基礎代謝も高くなります。(2)
ホルモン
甲状腺ホルモンや女性ホルモン(エストロゲン)などは基礎代謝に影響を与えると考えられています。
したがって、甲状腺の機能が低下するような病気(甲状腺機能低下症)では、基礎代謝が低下する可能性があります。
基礎代謝を上げる方法
基礎代謝を上げることは、体重管理や健康維持において重要です。
基礎代謝を上げる方法には、以下のような方法があります。
筋力トレーニングを行う
筋肉量は安静時でもエネルギー代謝量が高いため、筋力量が増えると基礎代謝は向上します。
したがって、筋力トレーニングは基礎代謝を上げる最も効果的な方法のひとつです。週に2~3日の筋力トレーニングを取り入れることをおすすめします。
筋力トレーニングのほか、有酸素運動を取り入れることもおすすめです。有酸素運動は心肺機能を高めるとともに基礎代謝の向上にも役立ちます。
習慣的な運動ができなくても、家事などによって体を動かすよう意識しましょう。(2)(6)
十分なたんぱく質を摂取する
たんぱく質は筋肉の成長に必要不可欠な栄養素で、傷ついた筋肉を修復する役割もあります。
たんぱく質が十分に摂れていないと、筋肉量は減少し基礎代謝も低下する可能性があります。アミノ酸がバランス良く含まれている良質なたんぱく質を十分に摂ることが重要です。
良質なたんぱく質を含む食品には、肉類、魚介類、乳製品、卵類、豆類などがあります。バランスの摂れた食事に加え、積極的にたんぱく質を摂取するよう意識しましょう。(7)(8)(9)
生活習慣を見直す
睡眠不足や偏った食生活、過度なストレスなどの生活習慣の乱れは、基礎代謝を低下させる可能性があるため、生活習慣を見直すことも基礎代謝の向上に重要です。
睡眠と代謝には密接な関係があり、睡眠不足は代謝疾患や肥満の発症との関連も指摘されています。また、睡眠は筋肉や骨の成長と修復にも重要な役割を担います。
十分な睡眠と質の良い睡眠を確保し、体の回復を促し、基礎代謝を維持しましょう。
ストレスは自律神経の乱れを引き起こす原因になります。自律神経の乱れはホルモンバランスにも影響を与え、基礎代謝を低下させる可能性もあります。適度な運動やリラクゼーションにより、ストレスのない生活を送るよう心がけてください。
人の体は体重の約60%を水分が占めており、水分は体温調整や血液循環などの生命維持、身体活動に重要です。水分の必要摂取量は1日あたり約2〜3Lとされています。
バランスの良い食事とともに、水分も十分に摂取するようにしましょう。(10)(11)(12)(13)(14)
まとめ
基礎代謝は、健康や体重管理において重要な役割を果たします。
年齢や性別、体重、筋肉量などにより基礎代謝は異なりますが、筋力トレーニング、バランスの取れた食事と十分なたんぱく質の摂取、質の良い睡眠などの生活習慣を心がけることで、基礎代謝を向上させることが可能です。
基礎代謝について正しく理解を深め、基礎代謝を高めるための取り組みを行い、健康的な日常生活を送るようにしましょう。