生活習慣の悩み

糖尿病の初期症状は?糖尿病の原因とタイプを説明

監修者 井林 雄太 医師 公開日:2024-06-10 最終更新日:2024-09-09

生活習慣の悩み

糖尿病の初期症状は?糖尿病の原因とタイプを説明

監修者井林 雄太 医師 公開日:2024-06-10 最終更新日:2024-09-09

日本において、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性19.7%、女性10.8%となっています。ですが、このうち、働いている世代(20〜59歳)の方で、治療を受けていない人が3割を超えることがわかっています(令和元年「国民健康・栄養調査」(1)より引用)。

糖尿病は早めに治療を開始すれば普通の人と同じように暮らせる病気ですが、治療が遅れると命に関わる合併症が起こったり、失明したりする恐ろしい病気でもあります。

今回は、そもそも糖尿病とは何か、そして血糖とインスリンとは何かについて簡単に説明するとともに、糖尿病の基準、糖尿病の種類と原因、そして糖尿病の初期症状についてわかりやすくまとめました。

糖尿病とは?血糖とインスリンを紹介

「糖尿病」とは、「インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続く病気」(2)のことです。「糖尿病」という病気の名前は、尿の中にも糖が出ることからつけられたものと言われています(3)が、実際の診断は、尿糖ではなく血液中の糖の濃さ(血糖値)や自覚症状などから行います。

糖尿病の特徴として挙げられるのは、自覚症状があまりないことが多いこと、そして血糖値が高い状態が長く続くことによって血管が傷んでしまい、重大な合併症が生じることです。細かい血管が傷むことで起こる合併症として、糖尿病網膜症・腎症・神経障害の3つがあります。この3つは昔から「糖尿病の3大合併症」として知られているものです。

重症の場合、網膜症によって失明したり、腎症によって血液透析が必要となることがあります。この他、大きな血管が傷んで動脈硬化が進行することによって、心筋梗塞や脳卒中など、命に係わる重大な病気が起こりやすくなります。

そもそも「血糖」とは、「血液中のブドウ糖」(4)のことを指します。血液に含まれるブドウ糖は、身体の臓器や組織の細胞でエネルギーとして使われています。特に脳はブドウ糖のみを唯一のエネルギー源として利用するため、血液中のブドウ糖が足りない(低血糖)と、意識障害などを生じ命に係わることもあります。血糖は、高すぎても低すぎても良くないのです。

血液中のブドウ糖の原料は、食事や飲み物に含まれる炭水化物です。口から入った炭水化物は食道から胃、十二指腸を通る間に消化酵素の働きでブドウ糖に分解され、最終的に腸で吸収されます。吸収されたブドウ糖は肝臓に運ばれてエネルギーとして利用されるほか、グリコーゲンとして蓄えられます。一部は血糖として脳や筋肉、脂肪などに運ばれ、それぞれグリコーゲンやエネルギーに変換されます。脂肪に運ばれた分は中性脂肪の原料になるほか、内臓脂肪としても貯蔵されます。

血糖の管理に重要な役割を果たすのが「インスリン」です。インスリンは、「糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きを持つ」(5)ホルモンです。膵臓(すいぞう)にあるランゲルハンス島(膵島:すいとう)の中のβ(ベータ)細胞から分泌される物質であり、細胞の中に血液中のブドウ糖を取り込む手助けをしています。食事の後に血液中のブドウ糖が増えるとβ細胞からインスリンが放出され、細胞にある鍵の部分(受容体)にくっつきます。すると細胞にあるブドウ糖の通り道が開き、細胞内にブドウ糖が取り込まれ、血液中から消えて血糖値が下がるのです。

身体の中で血糖を下げる働きを持つホルモンは、インスリンだけです。インスリンが何らかの理由で足りなくなったり、量は足りていても働きが悪いと、血糖値を抑える効果が足りず、血糖値が高い状態が続くのです。

 

糖尿病の基準

糖尿病の基準として、血糖値とHbA1cが用いられます。この2つは、いずれも血液検査で測定できる指標です。

血糖値は食事によって大きく変動するため、食事をした時間と血糖値の関係をはっきりさせる必要があります。そのため、食後10時間以上空けて測定した空腹時血糖値と、食事の時間を考慮に入れない随時血糖値で基準が分かれています。

空腹時血糖の正常値は70〜109mg/dl(6)です。そのうち100〜109mg/dlについては、糖尿病へ移行する割合が高いこと、また糖尿病の診断方法の一つであるブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test: OGTT)にて異常値を示す割合が高い(7)ことより、「正常高値」として区別しています。血糖が最も上昇するのは食後2時間程度とされており、「食後血糖」と呼んで区別する場合もありますが、明確な基準値はありません。随時血糖値は、200 mg/dl以上の場合、以下で解説する糖尿病型と判定されます。

HbA1cは、過去1〜2ヶ月間の血糖値を反映する値です。単位は%であり、HbA1cが高いほど、過去1〜2ヶ月間の平均の血糖値が高かったことを示します。正常値は4.6~6.2%です(8)

糖尿病の診断で重要な点としては、1回の血液検査の結果だけでは糖尿病であるとは診断できないという点です。日本糖尿病学会が作成した糖尿病診療ガイドライン(7)によると、糖尿病と診断する方法は以下の3通りです。

①「糖尿病型」と呼ばれる以下の血液検査所見を2回確認した場合。そのうち1回以上は血糖値で確認する。

  • 空腹時血糖:126mg/dl以上

  • ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値:200mg/dl以上

  • 随時血糖:200mg/dl以上

  • HbA1c:6.5%以上

2回の検査は原則として別の日に行いますが、1回目の検査で血糖値とHbA1cが同時に「糖尿病型」を満たす場合は、糖尿病と診断されます。

②血糖値が「糖尿病型」を満たした上で、以下のいずれかを認めた場合

  • 糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在

  • 確実な糖尿病網膜症の存在

③   過去に「糖尿病」と診断された証拠がある場合

なお、血糖値もしくはHbA1cが1回のみ糖尿病型を満たしたものの糖尿病と診断しきれなかった場合は、3〜6ヶ月後に再検査が必要です。なぜなら、糖尿病が急激に悪くなった場合や肝硬変、血液透析など別の病気がある場合などでは、血糖値とHbA1cの値が合わない(解離する)可能性があるからです。

 

糖尿病の種類と原因

糖尿病は、現在のところその原因によって、主に1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の機序・疾患によるもの、妊娠糖尿病の4つのタイプに分けることができます*6。

  • 1型糖尿病:膵臓にあるβ細胞が壊れてしまったタイプです。インスリンが分泌されず、絶対的インスリン欠乏に陥ります。注射によるインスリンの補充が必須です。

  • 2型糖尿病:いくつかの遺伝的要素に加え、過食や運動不足などの生活習慣や肥満が合わさって発症する糖尿病です。ほとんどの患者さんがこのタイプです。以前は中年期以降に発症することが大半でしたが、最近では子どもや若い人にも見られるようになってきました。基本的にはインスリンが出にくく効きにくい状態がメインですが、一部の方はインスリンの分泌量が大きく減り、注射による補充が必要となります。

  • その他の要因によるもの:大きく分けて、特定の遺伝子の異常が判明しているものと、他の病気や薬の影響、感染症によるものの2タイプがあります。

  • 妊娠糖尿病:「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である」と定義されています(9)。明らかな糖尿病の方やもともと糖尿病だった人が妊娠した糖尿病合併妊娠は含みません。妊娠中は、糖尿病とは診断できないくらい軽度の血糖値上昇でも妊婦さんや胎児に与える影響が非常に大きいため、厳密な血糖コントロールが必要とされます。

2024年8月現在、上記のいずれにも分類できないものは分類不能として扱われています。

 

糖尿病の初期症状

糖尿病の初期には、自覚症状がありません。血糖が高いまま放置していると、口渇(喉が渇く)、多飲(水をたくさん飲む)、多尿(尿の回数が増える)、体重が減るなどの症状が現れます。このほか、疲れやすくなるなどの症状が出ることがあります。血糖値があまりに高すぎると、意識障害をきたすことがあるので要注意です。

 

まとめ

以上、そもそも糖尿病とはどんな病気かについて説明するとともに、糖尿病と深い関係のある血糖とインスリンの関係、糖尿病の種類と原因、そして気になる糖尿病の初期症状についてわかりやすくまとめました。

糖尿病にならないためには、バランスの取れた食事や定期的な運動習慣など、生活習慣の見直しが大切です。また、気になる症状がみられた場合は医療機関を受診しましょう。