高血圧は日本人の生活習慣病のリスクを高める要因のひとつで、厚生労働省の調査によると、20歳以上の日本人の2人に1人は高血圧であることが明らかとなっています。しかし、高血圧は普段の症状では気づかないことも多く、心臓・腎臓・血管などに症状が出てはじめて高血圧に気づくこともあります。日頃から自分の血圧を正確に把握し、健康管理を行うことが重要です。そのためには、医療機関での定期的な血圧測定だけでなく家庭での血圧測定が欠かせません。この記事では、家庭で血圧測定する場合の血圧計の種類や、正しい血圧測定の方法、タイミングなどについてくわしく解説します。(1)(2)
血圧とは?血圧の定義と正常範囲
血圧とは?
血圧とは血管内の圧力で、心臓から流れた血液が血管を押す力のことです。心臓は収縮と拡張を繰り返して全身に血液を送り出しており、血圧は心臓の収縮と拡張に応じて常に変動しています。一般的に血圧は朝の目覚めとともに上昇し、晩になると下がり、睡眠中は最も低くなります。
血圧の単位はmmHgで、ミリメートル・エイチジーやミリメートル水銀柱と呼ばれます。医療機関での血圧の測定には水銀血圧計が使用されることが一般的でしたが、近年では水銀の環境への影響や水銀柱の精度管理などの問題から、電子血圧計の使用が普及しています。(3)(4)(5)
収縮期血圧
収縮期血圧とは、心臓が収縮して血液を押し出すときの最も高い血圧のことです。一般的に「上の血圧」と呼ばれることもあります。
拡張期血圧
拡張期血圧とは、心臓が拡張して血液の流れがゆるやかなときの最も低い血圧のことです。一般的に「下の血圧」と呼ばれることもあります。
血圧の正常範囲
正常の血圧の範囲は、医療機関で測定する場合と家庭で測定する場合で異なり、それぞれ以下の通りです。(1)
診察室血圧 |
家庭血圧 |
|||
収縮期血圧 |
拡張期血圧 |
収縮期血圧 |
拡張期血圧 |
|
正常血圧(mmHg) |
<120 かつ <80 |
<115 かつ <75 |
高血圧・低血圧とは?
高血圧
高血圧とは、繰り返し測定しても血圧が高い状態で、収縮期血圧と拡張期血圧のどちらかが基準値を超えている状態となります。高血圧が進行すると動脈硬化になりやすく、狭心症や心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脳出血などの心臓疾患や脳血管障害が引き起こされるリスクが高まります。また認知症になるリスクも高まることが明らかになっています。(1)(6)
血圧は一般的に年齢とともに高くなるため、自覚症状がなくても日常的に血圧を測定し、自分の血圧を把握しておくことが重要です。
高血圧の診断基準は以下の通りです。
診察室血圧 |
家庭血圧 |
|||
収縮期血圧 |
拡張期血圧 |
収縮期血圧 |
拡張期血圧 |
|
高血圧(mmHg) |
≧140 または ≧90 |
≧135 または ≧85 |
低血圧
低血圧とは血圧が低い状態ですが、低血圧に明確な定義はなく、高血圧ほど病的に重要視されていません。一般的には収縮期血圧が100mmHg未満の場合、低血圧とされることが多いです。検査や治療を必要とする低血圧はショックとよばれる病態で、顔面蒼白や意識障害、冷汗、脈拍低下、呼吸不全などの症状がある場合には、すぐに適切な検査や治療が必要になります。(7)(8)
家庭で血圧を測定する必要があるのはどんな人?
血圧が高め(正常高値血圧、高値血圧)と診断されている方
高血圧の診断基準は、診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上ですが、この基準に達していなくても健康診断などで血圧が高めと診断されている高血圧予備群の方は注意が必要です。日常的に血圧を測定し、注意深く健康状態を確認しましょう。
診察室血圧 |
家庭血圧 |
|||
収縮期血圧 |
拡張期血圧 |
収縮期血圧 |
拡張期血圧 |
|
正常高値血圧(mmHg) |
120-129 かつ <80 |
115-124 かつ <75 |
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高値血圧(mmHg) |
130-139 かつ/または 80-89 |
125-134 かつ/または 75-84 |
高血圧と診断されている方
すでに高血圧と診断されて治療をしている場合、血圧が適切にコントロールされているか、治療の効果を確認するためにも定期的な家庭での血圧測定が必要です。
高血圧のリスク要因がある方
高血圧のリスク要因には、肥満や喫煙、ストレス、飲酒、運動不足などがあります。これらのリスク要因をお持ちの方や、家族に高血圧の人がいる方は、高血圧を早期発見するために家庭での血圧測定をおすすめします。
血圧計の種類
家庭用の血圧計には、主に上腕式血圧計と手首式血圧計の2種類があります。(9)
上腕式血圧計
上腕式血圧計は、カフ(腕帯)を上腕部に巻いて測定する血圧計です。最も一般的で正確性が高く、家庭用の血圧計としておすすめです。自分でカフを巻きつけるタイプの血圧計と、筒形になっている血圧計に腕を入れるだけで自動で測定をするタイプがあります。
手首式血圧計
手首式血圧計は、カフを手首に巻いて測定するタイプです。小型で持ち運びに便利ですが、不正確になりやすいというデメリットがあります。
家庭での適切な血圧測定方法
血圧測定の適切な環境と測定姿勢
血圧は環境や条件によって大きく変動するため、正確に血圧を把握するためにも適切な環境や条件で測定することが重要です。
血圧を測定する環境は、静かで過ごしやすい温度の部屋が望ましいとされています。測定をする際の姿勢は、椅子に足を組まずに腰かけ、カフの高さと心臓の高さが同じになるようにしましょう。座って1〜2分間の安静後に測定してください。測定中は話をせず、力を入れたり動いたりしないように注意しましょう。(10)
血圧を測定するタイミングと条件
家庭で血圧測定をする場合、朝と晩の2回測定します。血圧を測る時間は特に決まっていませんが、毎日同じ時間帯に測るようにしましょう。朝は起床後1時間以内の朝食前に、排尿を済ませて測定します。降圧薬を服用している場合は、服用前に測定するようにしてください。晩は就寝前の測定が推奨されています。そのほかの測定時の条件について、医師から指示がある場合は、指示通りに測定しましょう。(5)
測定回数は朝晩それぞれ1回でも良いですが、2~3回測定することをおすすめします。複数回測定した場合はすべてを記録しておきましょう。
測定時の条件(5)
朝に測定するとき |
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晩に測定するとき |
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家庭で血圧測定を行うメリット
正確な血圧値が得られる
医療機関での血圧測定は家庭で測定するよりも高く値が出ることがあります。これは医師や看護師の前で緊張することが原因で、この状態を「白衣高血圧」とよびます。家庭での血圧測定はリラックスして行えるため緊張せず、正確な血圧値を得ることができます。また、複数回測定することにより、より正確な血圧値を得ることが可能です。(10)(11)
隠れた高血圧を発見できる可能性がある
前述の白衣高血圧と反対に、健康診断など医療機関での血圧は正常なのに家庭や職場では血圧が高い人もいます。この状態は「仮面高血圧」とよばれ、高血圧が隠れている可能性があります。仮面高血圧は家庭で血圧測定を行わない限り発見できないため、日常的に血圧を測定することが重要です。(10)(11)
治療の効果を確認できる
高血圧に対して治療をしている方は、服薬による治療の効果を確認することができます。また、血圧に影響を与えるような喫煙や飲酒、肥満、運動不足、食生活などの生活習慣を改善するきっかけにもなります。
時間や場所を選ばずに測定できる
家庭での血圧測定は時間や場所を選ばずに行えるため、医療機関に行かなくても血圧を測定することができます。忙しくてなかなか医療機関に行けないという方でも、簡単に健康管理ができます。
継続的な健康管理ができる
家庭での血圧測定を習慣化することで、自分の血圧の変動を把握することができます。血圧が異常になった場合にも早急に対処でき、健康管理に役立ちます。
まとめ
家庭での血圧測定は、健康管理において非常に重要視されています。家庭用の血圧計は家電量販店などで手軽に購入することができ、より簡単に血圧を測定できる自動血圧計や、スマートフォンと連動しアプリで血圧データを管理できる血圧計なども普及しています。血圧の数値が異常になった場合は必ず医師に相談し、適切な治療や指導を受けることが重要です。健康管理のために家庭での血圧測定を習慣化するようにしましょう。