お体の悩み

ドライアイってなに?症状や治し方についても解説

監修者 和田 伊織 医師 公開日:2024-06-14 最終更新日:2024-09-11

お体の悩み

ドライアイってなに?症状や治し方についても解説

監修者和田 伊織 医師 公開日:2024-06-14 最終更新日:2024-09-11

ドライアイは目の表面が乾燥することで引き起こされる病気で、目の不快感や見えにくさなどを自覚します。スマートフォンやパソコンの日常的な使用などが原因となることも多く、ドライアイは現代社会でよく見られる目のトラブルのひとつです。日本におけるドライアイの患者数は約2,200万人にも及ぶといわれており、その数は増加傾向にあります。また、男性と比べて女性のほうがドライアイになりやすいことが明らかになっています。(1)(2)

ドライアイは進行すると日常生活に支障をきたすこともある病気ですが、適切な治療や改善策により改善・予防することが可能です。この記事では、ドライアイの症状や原因、治療法などについてくわしく解説します。

涙の重要な働き

涙の構造と重要性

ドライアイについて解説する前に、「涙」がどのような働きをしているかについて説明します。涙が目の表面に安定的に留まることで、目の最表面に位置する角膜が保護され、目の働きを保ちます。目の表面を覆う涙の膜(涙液膜)は表面から、油の層(油層)と、ムチンと呼ばれるたんぱく質を含む水分の層(液層)の2層で構成されています。

涙の分泌量減少や性質が変化すると、目を覆う涙の膜が崩れ、目の細胞に傷がつきやすくなり、目の働きが低下します。目の健康を守るうえで涙の量や質を保つことが重要だといえます。(1)(2)(5)

 

ドライアイとは

ドライアイの定義

ドライアイの診療ガイドラインによると、ドライアイは「さまざまな要因により眼表面の涙の安定性が低下する疾患で、目の不快感や機能に異常が生じ、目の表面の障害を伴うことがある」と定義されています。(3)(4)

 

ドライアイの症状

ドライアイにはさまざまな症状があります。以下のような自覚症状がみられる場合、ドライアイの可能性があります。

  • 目が乾く

  • 目がゴロゴロする

  • 目が開けにくい

  • 目が疲れる

  • 目が重たい

  • 目が痛い

  • 目やにが出る

  • 物がかすんで見える

  • 目が赤くなりやすい

  • 目に不快感がある

  • まぶしい

  • 涙が出ない

ドライアイは失明につながる病気ではありませんが、日常生活に支障をきたす可能性があるため、早期に適切な対策を行うことが重要です。(2)(4)

 

ドライアイの原因

ドライアイは、涙の分泌量が減少することや、涙が蒸発しやすくなることで引き起こされます。涙の分泌量減少や涙が蒸発しやすくなる原因には、以下のような原因が考えられます。(3)

 

環境要因

日常的な長時間のスマートフォンやパソコンの作業(VDT作業)は瞬きの回数が減少し、涙が蒸発しやすくなったり、涙の分泌も減少させ、ドライアイになりやすいと考えられています。また、エアコンの効きすぎや送風が目に当たりやすい乾燥した環境は、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを引き起こす原因となります。長時間のコンタクトレンズの使用も眼表面の涙を不安定化し、ドライアイになるリスクを高めるため注意が必要です。(1)(2)(3)

 

加齢

加齢により涙の分泌量低下や性質が変化することも、ドライアイになるリスクを高める要因のひとつと考えられています。(1)

 

目や全身の疾患

涙を構成する油層を分泌するマイボーム腺とよばれる器官の病気(マイボーム腺機能不全)やまぶたの異常は、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイの原因となります。また、自己免疫性疾患(シェーグレン症候群、関節リウマチ)などの全身疾患からドライアイが生じることもあります。(2)(3)

 

薬の副作用

抗不安薬や抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、利尿剤などの一部の薬は、涙の分泌を減少させる可能性があります。これにより、目が乾燥しやすくなり、ドライアイの症状があらわれることもあります。(2)

 

涙の不安定化

涙の安定性が悪くなる(涙が目の表面に留まりにくくなる)原因については不明な点が多く、まだはっきりとしたことは分かっていませんが、涙を構成する「ムチン」とよばれるたんぱく質との関連性が高いと指摘されています。ムチンの分泌が減少したり、性質が変化すしたりすると、涙の安定性が悪くなり、ドライアイの原因になると考えられています。(2)(3)

 

ドライアイの治療方法

ドライアイの症状が軽度な場合、涙の代わりになる人工涙液、ヒアルロン酸製剤などの点眼薬により症状が改善することが期待できます。人工涙液は涙に近い成分で涙の不足分を補い、目の乾きなどの自覚症状を改善しますが、根本的なドライアイの改善にはならない場合もあります。ヒアルロン酸は目の細胞(角膜上皮)の傷を治し、涙液を安定化させる作用があるとされており、ドライアイの治療薬として推奨されています。

人工涙液やヒアルロン酸では治療効果が得られないようなドライアイの場合、涙の蒸発を防ぐムチンの分泌を増やす点眼薬(ジクアホソルナトリウム点眼薬やレバミピド点眼薬など)が有効であると報告されています。

点眼薬以外では、涙の出口を防ぎ目の表面に涙を貯めやすくする涙点プラグなどの治療方法もあります。ドライアイの症状の程度や原因などに応じて、適切な治療を行うことが重要です。(2)(3)(4)

 

ドライアイの予防法・改善法

ドライアイは生活習慣の影響を大きく受けます。ドライアイを予防・改善するためには、生活習慣や環境を改善することが重要です。(3)

 

長時間のデジタルデバイスの作業(VDT作業)は避ける

長時間のスマートフォンやパソコン作業は目に大きな負担がかかるため、適度に休憩を取り、目をリフレッシュさせることが必要です。1時間以上続けて作業するのは避けるようにしてください。また、涙の分泌を促すため、意識的にまばたきの回数を増やすようにしましょう。(5)

 

環境の改善

エアコンなどで乾燥した室内や、直接送風が目に当たることは、ドライアイを引き起こす原因となります。適度な湿度を保ち、送風の向きを調整することで乾燥を防ぐようにしましょう。加湿器などを活用するのもおすすめです。

コンタクトの使用もドライアイを悪化させる可能性があるため、コンタクトレンズでドライアイの症状にお悩みの方は、人工涙液との併用やコンタクトレンズの素材の変更などを検討するようにしましょう。(3)

 

バランスの良い食生活

バランスの良い食生活も重要です。オメガ3脂肪酸(EPA、DHAなど)を含む食品がドライアイの症状を改善したという報告もあります。EPAやDHAは青魚やマグロなどに多く含まれるため、積極的に摂取するのもよいでしょう。(2)(3)

 

質の良い睡眠やストレス解消

睡眠の質が悪いとドライアイを発症しやすくなるというデータがあります。十分な睡眠を取り、睡眠の質を保つようにしましょう。

また、涙は副交感神経が優位になるリラックス状態のときに分泌が増えます。したがって、ストレスがあると交感神経が優位となり、涙の分泌が抑えられ、ドライアイのリスクが高まる可能性があります。ストレスのない生活を心がけるようにしましょう。(2)(3)

 

目を温める

目を温めると、まぶたの縁にあるマイボーム腺という器官から涙を構成する油分の分泌が良くなることが明らかになっています。ドライアイの症状が改善することが期待できますが、温めすぎや冷やしすぎは良くないため注意してください。(2)

 

まとめ

ドライアイは、現代社会において多くの人々の悩みである目のトラブルのひとつです。現代社会では、スマートフォンやパソコンの長時間作業など目を酷使する機会が多く、ドライアイのリスクは増加傾向にあります。しかし、ドライアイは適切な治療と生活習慣の改善によって改善・予防することが可能です。すぐに日常生活に取り入れられるドライアイ対策は数多くありますので、生活習慣の改善などできることからはじめ、目の健康を守るようにしましょう。ドライアイの症状が酷い場合や長引く場合は、早めに眼科を受診するようにしましょう。