三大栄養素の一つ脂質は、身体を構成する細胞膜の主要成分であり、エネルギー源に欠かせない栄養素です。しかし、脂質が多い食生活は飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取につながり、身体にとってよいことばかりではありません。令和元年度の国民健康・栄養調査では、20歳以上の男性約35%、女性の約44.4%が脂質を過剰に摂取しているというデータも出ています。(1)そこで今回は脂質1日の摂取目安量と、意外と脂質が多いメニュー料理について解説します。脂質との上手な付き合い方も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
脂質とは?人に大事な4つの役割
脂質には、以下の4つの働きがあります。
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細胞膜を構成する
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エネルギー産生に重要な栄養素
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脂溶性ビタミン(A,D,E,K)やカロテノイドの吸収をサポート
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生理活性物質の原料となる
人は食品から脂質を含む栄養素を摂取して、エネルギーを得ています。脂質は細胞膜の構成成分として働くほか、脂溶性ビタミン(A,D,E,K)やカロテノイドなどの油に溶けやすい成分の吸収を手助けしてくれます。(2)また、生理活性物質の原料となり、体の中でさまざまな役割を果たしています(3)。
脂質の一日の摂取目安量
脂質の一日の摂取目安量は、総エネルギー摂取量の20〜30%が望ましいとされています。一日の総エネルギー摂取量を2700kcal(30~49歳男性の基礎代謝量×身体活動レベル(普通))とすると、脂質の一日の目安量は60g以内となります。
脂質60gを食品に換算すると、目玉焼き1個、ソーセージ2〜3本、イワシのフライ1枚程度(120g)となり、意外と簡単に目安量を超えてしまうことがわかります。また、目玉焼きやソーセージを焼くときに、調理油を使うこともあり、1日の油の目安量はだいたい大さじ1(植物油で12g)程度に抑えるのがよいとされています(4)。
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脂質をとりすぎると体に影響は?
脂質はとりすぎると、肥満や心筋梗塞などの循環器疾患、生活習慣病を発症するリスクが高くなります。特に動物性脂肪やパーム油に含まれる飽和脂肪酸によってLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増加し、循環器疾患のリスクを高める恐れがあると言われています。
また、トランス脂肪酸の摂取によって、LDLコレステロールの増加とHDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少、冠動脈性心疾患のリスクも上昇すると言われています(1)。
脂質=あぶら?脂質が多い食べ物と料理は?
脂質が多い食べ物には、肉の脂身やサラダ油などの目に見える「あぶら」のほかにも、できあがった料理に多く含まれています。例えば、定番の弁当主菜であるチキン南蛮や、油を使っていないそうなカレーや中華の麻婆料理には、実は脂質は多く含まれています。
料理 |
脂質含有量(g) |
エネルギー(kcal) |
チキン南蛮弁当 |
約34 |
約914 |
麻婆茄子丼 |
約20 |
約652 |
カレーライス |
約24 |
約709 |
チキン南蛮は鶏肉に衣をつけて揚げ、甘辛いタレとタルタルソースをかけた一品です。タルタルソースは脂質の多いマヨネーズが使われており、揚げた鶏にのせることでエネルギーも高くなります。脂質含有量は1食分で30gを超えることもあります。
麻婆茄子に使われる茄子は油の吸収率が高く、炒めたり油通ししたりすると油を多く使います。ちなみに、麻婆茄子に使うひき肉も脂質を多く含む食材です。
カレーライスはルーを作るときに油を多く使います。具材を炒めるときも油を使い、バラ肉やロースなどの脂身の多い肉を使うと、脂質摂取量が上がります。食べすぎには注意したいメニューです(5)。
脂質の含有量が多いの食べ物25選
脂質の含有量が多い食べ物をカテゴリー別Top5で、合わせて25選食品の脂質の含有量を紹介します。
魚介類Top5ランキング
食品名 |
100g当たりの含有量(g) |
いわし 缶詰 油漬け |
30.7 |
まいわし フライ |
30.3 |
たいせいようさば 焼き |
29.3 |
みなみまぐろ 脂身(トロ) |
28.3 |
しめさば |
26.9 |
参考:食品成分データベース(以下同様)
魚介類で脂質が多いのは、缶詰の油漬けやフライ、さば、マグロのトロです。同じ脂質でも食品によって脂肪酸の組成が異なるのが特徴です。いわしの油漬けには不飽和脂肪酸のオレイン酸を含むこめ油、オリーブオイルなどが使われます。市販の魚のフライにはコーン油や飽和脂肪酸の多いラードが使われることがあります。また、魚に含まれるオメガ3脂肪酸(DHAやEPA)には、お体に対して不可欠な必須脂肪酸なので、食べ物から摂取するのは必要です(6)。
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肉類Top5ランキング
食品名 |
100g当たりの含有量(g) |
交雑牛 リブロース 脂身つき 焼き |
約60 |
和牛 リブロース 脂身つき ゆで |
58.2 |
和牛 リブロース 脂身つき 焼き |
56.8 |
和牛 ばら 脂身つき 生 |
50 |
交雑牛 リブロース 皮下脂肪なし 生 |
45.2 |
肉類では、牛肉や豚肉の脂身に脂質が多く含まれます。ソーセージやベーコンなどの加工肉やひき肉にも多く含まれます。脂質を抑えたいときは、脂の少ないヒレやモモ、鶏肉を使うとよいでしょう。鶏肉は皮をとると、さらに脂質量が抑えられます。
種実Top5ランキング
食品名 |
100g当たりの含有量(g) |
マカダミアナッツ いり 味付け |
76.7 |
ヘーゼルナッツ フライ 味付け |
69.3 |
くるみ いり |
68.8 |
ピスタチオ いり 味付け |
56.1 |
アーモンド フライ 味付け |
55.7 |
種実類も脂質を多く含む食材の一つです。マカダミアナッツやヘーゼルナッツは一価不飽和脂肪酸のオレイン酸を多く含みます。アーモンドやピスタチオは、オレイン酸のほか多価不飽和脂肪酸のリノール酸もバランスよく含む食材で、クルミは多価不飽和脂肪酸のリノール酸とα-リノレン酸を含んでいます(7)。間食として食べる場合は、1日200kcal程度、25g程度が目安となります。
果物Top5ランキング
食品名 |
100g当たりの含有量(g) |
アボカド |
17.5 |
ココナッツミルク |
16.0 |
オリーブ 塩漬 |
12.3~15.0 |
アサイー 冷凍 |
5.3 |
ドリアン |
3.3 |
果物は脂質が少ないものが多いですが、アボカドやココナッツミルクなど、一部のものには脂質が多く含まれます。アボカドは一価不飽和脂肪酸のパルチミン酸やリノール酸を多く含み、ココナッツミルクは飽和脂肪酸が多めです。オリーブは一価不飽和脂肪酸のオレイン酸をはじめ、飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸などバランスよく含む食材です。(5)果物の1日の摂取目標量は200g(8)と言われますが、これらの果物に偏らないようにしましょう。
油脂Top5ランキング
食品名 |
100g当たりの含有量(g) |
ラード(動物油脂類) |
100 |
ひまわり油 |
100 |
大豆油 |
100 |
亜麻仁油 |
100 |
パーム油 |
100 |
油脂類は脂質の割合が100%の食材で、脂肪酸の組成がそれぞれ異なります。ラードやパーム油は飽和脂肪酸のパルチミン酸やステアリン酸が多く、ひまわり油は一価不飽和脂肪酸、大豆油やあまに油は多価不飽和脂肪酸を中心に、ほかの脂質をバランスよく含む油脂です(5)。
野菜
野菜は脂質をほとんど含みません。油炒めにすると、脂質量が高くなります。
意外と知らない脂質が多い料理(メニュー)は?
肉や油以外にも、実は脂質が多いメニューが数多く存在します。今回は意外と知らない脂質の多いメニューを紹介します。
チャーハン
チャーハンは油を多く使う料理で、鍋に具材がくっつくのを防ぐほか、ごはんをパラパラに仕上げるのに油でコーティングして、水分が抜けるのを防ぐ役割もあります。お店によってはラードが使われることもあります。
焼きそば
市販の焼きそば麺は、炒めるときにほぐれやすいように植物油がまぶしてあります。具材を炒めるときの調理油やお肉の部位によっては、脂質が多くなります。
油ふ
油ふは小麦粉に含まれるグルテンを練って棒状にし、油で揚げた食品です。肉の代用品としても使われ、1本50g当たりの脂質は約17.7g、エネルギーは約274kcalとなっています(9)。
ポップコーン
ポップコーンは油を入れることで、きれいに作ることができる食品です。コーンが半分浸る程度の油をしいて火にかけ、全体に熱が回るようにして作ります。1袋50g当たりの脂質は11.4g、エネルギーは242kcal (10)となり、味付けにバターやキャラメルを使うと、脂質や糖質が多くなります。
オムライスなどのふわふわした食感の卵料理
中華料理やオムライスにのせる卵料理は油を加えることで、ふんわりとした食感に仕上げてくれます。油には水分の蒸発を防ぐ役割があります(11)。
クッキー
クッキーに含まれる油脂は、食べたときにサクサクとした軽い食感を生み出してくれます。2~3枚(20g程度)食べるとすると、脂質約6g、エネルギーは約100kcaとなり(12)、食べすぎには注意が必要です。
脂質と仲良く付き合う食生活のポイント
脂質は体にとって重要な栄養素であり、1日の目安量に沿って動物性や植物性、魚由来の脂肪をバランスよくとるのがおすすめです。そして、脂質はエネルギーの源であり、さらに魚に含まれるオメガ3脂肪酸(DHAやEPA)は必須脂肪酸であり、細胞膜の重要成分です(13)。脂質を食べないと、お体に大きな悪影響に与える可能性があります。
また、外食や惣菜を購入する際は、栄養成分表を見て選ぶようにすると、脂質の摂取量をコントロールできます。油の「質」に気をつけると、より脂質と仲良くつきあうことができます。自炊の際は、使う油の量に気をつけ、加工食品に含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取は極力控えるようにしましょう(14)。
一日に摂取する脂質の量は適量を心がけましょう
一日の脂質の摂取目安量は、意外と少なく感じるかもしれません。しかし、1日の摂取目安量を知っておくことは重要です。外食や総菜を購入するときには、脂質の多い食生活をさけるために、野菜を含む副菜を一品追加したり、不飽和脂肪酸を含む魚料理を選ぶなど、健康を意識しながら、適量を心がけていきましょう。