健康や美容に良いことで知られるペプチドは、数年前から人々の関心を集めるようになりました。近頃は、スキンケアを「成分」で選ぶ方が増えてきました。
このスキンケア成分として大きく注目されているのが、ペプチドです。SNSでもペプチドに関する投稿が注目され、関心を集めています。
そのようなペプチドですが、具体的にどのような効果があるのかをご存知でない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ペプチドの基本的な定義や役割、化粧品や健康分野でどのように応用されているのかを詳しく解説します。
ペプチドとは?基本的な定義と構造
ペプチドとは、アミノ酸がペプチド結合してできたものです。2個以上のアミノ酸がつながったものをペプチドと呼びます。結合するアミノ酸の種類によって、期待できる効果が異なることが特徴です。
ペプチドと聞くと馴染があまりないと感じるかもしれませんが、砂糖の代わりに使われている人工甘味料のアスパルテームもペプチドの一種として知られています。
ところで、ペプチドとたんぱく質にはどのような違いがあるのでしょうか。どちらもアミノ酸が複数結合したものです。
一般に、結合しているアミノ酸の数が2~20個のものをペプチド、50個以上のものをたんぱく質と呼びます。
つまり、たんぱく質の方が分子量が多いのです。
ペプチドは分子量が小さいため、たんぱく質と比べると吸収が早いことが分かっています。数種類のアミノ酸が結合したペプチドは、アミノ酸を一度に摂取するのに効果的です。
たんぱく質からアミノ酸を摂取しようとすると消化吸収に3~4時間かかりますが、ペプチドなら30~40分ほどしかかかりません。
ペプチドとたんぱく質は、機能も異なります。ペプチドは菌から体を守ったり酸化ストレスから体を保護したりする働きがあります。一方でたんぱく質は、髪の毛や皮膚を作ったりホルモンや酵素、抗体の材料になります。
ペプチド |
たんぱく質 |
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結合しているアミノ酸の数 |
2~20個 |
50個以上 |
消化吸収にかかる時間 |
30~40分 |
3~4時間 |
主な機能 |
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ペプチドの役割
ペプチドには、さまざまな役割があります。ここでは、代表的な役割を紹介しましょう。
抗菌作用
ペプチドは、抗菌作用をもっています。抗菌作用とは、微生物や細菌の増殖を抑える働きのことです。菌そのものを除去できるわけではありませんが、菌が生息しづらい環境を整えます。菌に効くものといえば、抗生物質を想像される方もいるかもしれません。
抗生物質は、細菌が増殖する仕組みを妨げるものです。感染症の治療に用いられるものですが、抗生物質が効かない菌である耐性菌の出現が問題となっています。
しかし、ペプチドの場合は抗生物質と比べて耐性を獲得しにくいことが特徴です(1)。最近の研究では、ペプチドが医療や農業、食品や動物飼料など幅広い分野で応用できる可能性があることが分かっています。
抗酸化作用
ペプチドは、抗酸化作用ももっています。抗酸化作用とは、活性酸素による酸化から守る働きのことです。抗酸化作用をもつペプチドは、抗酸化ペプチドと呼ばれることがあります。
抗酸化ペプチドは、フリーラジカルや活性酸素の反応や脂質の酸化を抑制する働きがあることが明らかです(2)。
抗炎症作用
ペプチドには抗炎症作用があります。抗炎症作用をもつのは、抗菌ペプチドです。抗菌ペプチドの中でも、β-ディフェンシンやソラヤシンなどが注目されています。
これらの抗菌ペプチドは炎症反応を調節する働きももつのです。短いペプチドであるTPS240は、アトピー性皮膚炎を抑える可能性があることが分かっています(3)。
保湿効果
ペプチドは保湿効果があることから、エイジングケア成分としても注目されています。保湿効果があるペプチドは機能性ペプチドとも呼ばれており、肌のハリやキメを整えるのに効果的です。
ペプチドの一種であるコラーゲンペプチドを経口で毎日摂取してもらう試験が行われました。投与から8週間後、皮膚の水分量が大幅に増加したことが分かっています。また、真皮のコラーゲン密度も大きく増加していました。
これらの効果は、投与開始から12週間後も継続しています。この研究の結果から、ペプチドには保湿効果があることが分かりました(4)。
免疫調節機能
抗菌ペプチドには、強い免疫調節活性があることも研究により分かっています。免疫機能に関与している好中球やマスト細胞などを活性化する働きにより、免疫を調節するのです(5)。
30歳代から50歳代の男女のうち、健康であるものの疲れやすい症状がある方を対象にデキストリン粉末またはコラーゲンペプチドを摂取してもらった研究では、コラーゲンペプチドを摂取したグループの方が免疫機能の働きが活発になっていました(6)。
ペプチドの応用
ペプチドは、実際にさまざまな分野で応用されています。どのような応用がされているのか、詳しく見ていきましょう。
美容分野
ペプチドには、以下のような働きがあることが分かっています。
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コラーゲンの生成を促進
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保湿効果の向上
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メラニン生成の抑制
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皮膚の再生を促進
培養されたヒト表皮ケラチノサイトを用いて新規ペプチド誘導体の効果を試験したところ、コラーゲンやラミニンが刺激されました(7)。
コラーゲンは肌のハリを支える土台となることから、エイジングケアに欠かせない成分です。
ペプチドは保湿効果の向上にも役立ちます。ペプチドを肌に塗布すると、水分の損失を抑えることができるのです(4)。また、メラニン生成を抑制する働きがあることも知られています。
色素沈着モデルのマウスにおいて、ペプチド(Nigrocin-OA27)が美白効果を発揮することが明らかにされました(8)。
これは、メラニン生成に関わっているチロシナーゼという酵素のレベルを低下させる働きがあることが関係していると考えられています。
皮膚の再生を促進する効果も期待できます。ペプチドの1つであるオリゴペプチド-1は、細胞のターンオーバーを促進して皮膚の再生を促す可能性があるのです。
これらの働きがあるため、ペプチドは美容クリームなどに配合されることが増えてきています。
健康分野
健康分野では、以下のような働きがあることで注目されています。
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抗老化作用
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食欲を抑制
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疲労回復効果
シワのある方22名を対象にZAGペプチドを含有する製品を4週間使用してもらったところ、皮膚の密度と弾力性が改善し、シワが減少しました(10)。
また、ペプチドには食欲を抑制する効果があることも分かっています。マウスを使った研究では、ペプチドを投与することで有意な体重減少が確認されています(11)。
これは、食欲を抑制するウログアニリンの発現が促進されたためです。そのため、ペプチドはダイエット分野でも広く利用されています。
この他、イミダゾールペプチドと呼ばれるものは疲労回復効果をもつことも明らかになっています。疲労の原因となる活性酸素の働きを緩和させる効果があるためです。
ペプチドはどのように摂取するのか?
ペプチドの摂取方法に決まりはありません。好きなタイミングで摂取していただいて大丈夫です。
ただし、コラーゲンペプチドの場合は、水で摂取するよりもヨーグルトに混ぜて摂取した方が血中のペプチド濃度が有意に増加することが分かっています(9)。
これは、乳由来成分がペプチドの輸送を小腸上皮で向上させるからではと考えられています。
摂取量について、目安量などは決められていません。ペプチドを無理なく毎日摂取したい場合は、サプリメントの活用が便利です。
ペプチドは牛乳やイワシ、まぐろや大豆などに多く含まれていますが、これらの食材を毎日摂取するのが難しいと感じる方もいるでしょう。
サプリメントならペプチドが一定量含まれているので、手軽に摂取できます。
ペプチドの副作用はあるのか?
ペプチドはアミノ酸が結合したものですので、基本的に大きな副作用が出る心配はあまりありません。しかし、まれに次のような副作用が見られる場合があります。
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アナフィラキシー
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足のむくみ、息切れ
アナフィラキシーでは、蕁麻疹や紅班、呼吸困難やめまい、腹痛、下痢などの症状が見られます。ペプチドは牛や豚、鶏や魚などを原料としていることがあり、これらのアレルギーがある方は摂取を控えましょう。
まとめ
ペプチドとは、2個以上のアミノ酸が結合したもののことです。アミノ酸が50個以上結合したものはたんぱく質と呼ばれます。
ペプチドはたんぱく質よりも分子量が小さく、またさまざまな働きをもつことが特徴です。抗菌作用や抗酸化作用、抗炎症作用や保湿効果、免疫調節機能などがあることが分かっています。
美容分野ではコラーゲンの生成を促進したりメラニン色素の生成を抑制したりする効果があることから、化粧品に配合されています。
健康分野では、老化の抑制やダイエットサポートとして有効活用されています。ペプチドは食品からも摂取できますが、毎日手軽に摂取したい方はサプリメントを活用すると便利です。