便秘とは「排便回数が減り、排便しにくくなる状態」のことです。特にデスクワークの場合、さまざまな原因から便秘になりやすいといわれています。
腸内に便やガスが溜まるとお腹の張りを感じたり、肌荒れ・自律神経の乱れによるストレス、集中力の低下を引き起こしたりすることがあります。
本記事では、便秘解消をサポートする食べ物や生活習慣について紹介します。便秘の原因がわかり、毎日の食事や生活習慣を見直すヒントが得られるため、ぜひご覧ください。
なぜ便秘になるのか?

便秘になりやすい原因を5つ紹介します。
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食物繊維の不足
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水分不足
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運動不足
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ストレス
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不規則な生活習慣
食物繊維が不足すると、便のかさが減り、腸の動きが低下することで便秘を引き起こす可能性があります(1)。
水分の不足も便が硬くなる原因で、こまめに水分をとることは重要です(2)。
日常生活に体を動かす習慣を取り入れていくことも、便秘解消のヒントになるといえます。体を動かす機会が少ない場合、腸の蠕動運動を低下させてしまうからです(2)。
また、ストレスも便秘を引き起こす原因の一つ。腸の動きは自律神経の影響を受けやすく、ストレスによって腸の動きを抑制され、排便までに時間がかかりすぎることが原因です(2)。
さらには、寝不足や生活習慣の乱れが続くことで腸の働きが弱まります。規則正しい生活習慣は腸の調子を整えることにもつながるのです(2)。
便秘に効果が期待される成分と働き
便秘の症状があるときは、オリゴ糖や食物繊維、プロバイオティクスを含む食品を取り入れてみましょう。
a.オリゴ糖
オリゴ糖は人の消化酵素の働きを受けずに、大腸まで届く食物繊維の一種です。
便のかさを増やす材料となり、腸内環境を整える菌を増やすといわれています(3)。
<関連記事>b.食物繊維
食物繊維には水溶性と不溶性のものがあります。
水溶性食物繊維は胃の中で溶けて余分な脂肪や糖を包み込み、そのまま排泄させる作用があります。また、便をやわらかくしてくれます。
一方で、不溶性食物繊維は腸の壁を刺激して、便通を促す作用が期待されます。便を硬くする働きもあるため、とりすぎには注意が必要です(4)(5)。<関連記事>
c.プロバイオティクス
プロバイオティクスは、健康上の利益が得られるといわれている「生きた微生物」のことです。
乳酸菌やビフィズス菌などがあり、ヨーグルトやみそなどの発酵食品に含まれています。
プロバイオティクスは腸内環境を健康に保ち、何らかの理由で乱れたときは正常な状態に近づける可能性が示されています(6)。
便秘解消が期待される食べ物10選
便秘解消が期待される食べ物を10個紹介します。
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発酵食品(ヨーグルト、納豆、キムチ)
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バナナ
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キウイフルーツ
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オクラ
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海藻類(わかめ、めかぶ、ひじき)
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根菜類(ごぼう、大根、さつまいも)
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きのこ類
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豆類(大豆、ひよこ豆)
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全粒穀物(米や麦)
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オリーブオイル
1. 発酵食品(ヨーグルト、納豆、キムチ)

ヨーグルトや納豆、キムチなどの発酵食品には、乳酸菌や納豆菌などのプロバイオティクスが含まれています。
プロバイオティクスは便秘や下痢の改善に効果が期待される微生物です(7)。納豆に含まれる納豆菌は、腸内細菌の一つである善玉菌のえさとなり、その働きを助けます(8)。
特定の食品に偏らず、さまざまな食材を食べることで、多種類の菌に栄養を与えられます(7)。
2. バナナ

バナナは食物繊維やレジスタントスターチ、オリゴ糖を含む食品です。食物繊維は腸の活動を整えて、便通をサポートする働きが期待されます。
レジスタントスターチは「発酵性でん粉」として善玉菌に分解され、作られた短鎖脂肪酸によって腸内を酸性に保ち、悪玉菌が増えにくい環境を作ってくれます。
オリゴ糖は大腸で乳酸菌やビフィズス菌のえさになり、腸内環境改善や便通に役立つといわれています。
発酵食品のヨーグルトや市販のオリゴ糖とも相性がいいので、ぜひ一緒に召し上がってみてください(9)。
3. キウイフルーツ

キウイフルーツは食物繊維を多く含む食材です。グリーンキウイの場合、100g当たり2.6gの食物繊維がとれます(10)(11)。
抵抗がない方は、丸めたアルミホイルで皮をやさしくこすり、流水で洗うと毛がとれて、そのまま食べられます。食物繊維が約1g多く摂取できる利点もあるため、ぜひお試しください。
4. オクラ

オクラは、水溶性食物繊維のペクチンを含む食材です。ペクチンには整腸作用があり、腸の有害菌を抑制して、排便の状態が正常に近づく働きが期待されます(12)(13)。
オクラのねばりの正体でもあるペクチンは、水に溶けやすい性質を持つため汁物や切らずに加熱してお浸しにするなどの調理法がおすすめです。
5. 海藻類(わかめ、めかぶ、ひじき)

海藻類は水溶性食物繊維が多く含まれます。
さっとゆでて和え物にしたり、調理済みのめかぶは、そのままごはんにかけたりして手軽に食べられるのが魅力です(14)。
6. 根菜類(ごぼう、大根、さつまいも)

根菜類には不溶性食物繊維が多く含まれます。
便をやわらかくする働きがある水溶性食物繊維を含む食材(昆布やわかめ、里芋など)と組み合わせて食べるようにしましょう(15)。
7. きのこ類

きのこ類も不溶性食物繊維を多く含む食材です。
ほかにも多くの栄養素が含まれ、水洗いせずペーパーなどで汚れをふく、煮汁ごと食べられる料理にする、乾物や冷凍保存して栄養価を高める食べ方もできます(16)。
8. 豆類(大豆、ひよこ豆)

豆類は不溶性食物繊維が多く、大豆やひよこ豆(ゆで)には100g当たり約6〜12gの食物繊維が含まれています。
また、豆はゆでると食物繊維の量が増加する性質があり、市販のゆで豆や煮込み料理もおすすめです(17)。
9. 全粒穀物(米や麦)

全粒穀類は、果皮や種皮、胚、胚乳などがついた未精製の穀物を指します。玄米や分つき米、麦ごはんなどが代表的な食品です(18)。
穀類には不溶性食物繊維が多く含まれ、腸を刺激して便通を促す働きが期待されます。主食に雑穀を混ぜる、ライ麦パンや全粒粉パンを食べるなどでも、食物繊維の積極的な摂取につながります。
10. オリーブオイル

オリーブオイルは、オメガ9脂肪酸のオレイン酸を多く含む食品です。腸内の蠕動運動を助け、便秘解消をサポートする働きが期待されます。
オリーブオイルは熱に強い性質を持つため、炒め物やソテーはもちろん、サラダや汁物にも気軽にかけて食べましょう(19)。
便秘解消に効果が期待できる飲み物5選
便秘解消のためには、水や白湯、緑茶、ハーブティーなどの飲み物がおすすめです。
1.水や白湯
水や白湯を飲むと、便が硬くなることを防ぐ役割が期待されます(20)。
白湯は胃腸の働きを整え、老廃物の排出もスムーズになる可能性があります。1日3~4杯をゆっくりと飲み、体を温めてみてください。
食事中はもちろん、朝一番に飲むのがおすすめです。
2.緑茶

緑茶には、渋み成分のカテキンが含まれます。茶カテキンは便に含まれる菌に対して抗菌的な機能を持つとのこと。
ある研究では、カテキンの摂取によって腸内の善玉菌が増加し、悪玉菌が減少するといった結果が報告されています(22)。
3.ハーブティー
ハーブティーは胃腸の働きを整え、リラックス作用が期待される飲み物です。なかでもペパーミントは、胃腸の消化不良を和らげる可能性が示されています。
また、ペパーミントのさわやかな香りを嗅ぐことで、心身の不調緩和にも役立つとされています(23)。
4.牛乳
牛乳に含まれる乳糖は、浸透圧の関係で周囲から水を呼び込み、便をやわらかくして排便をスムーズにする場合があります。
冷たい牛乳を空腹時に飲むことで、腸を刺激する作用も期待できます(24)。
5.甘酒

「飲む点滴」と呼ばれる甘酒。オリゴ糖やレジスタントプロテインなど多くの栄養素が含まれています。
麹甘酒にはイソマルトオリゴ糖が含まれ、腸内のビフィズス菌を増やして有害菌を抑制。腐敗産物を減少させることで、腸内環境の改善をサポートしています(25)(26)。
また、レジスタントプロテインは難消化性のたんぱく質です。便通効果が期待されるため、1日100mlを目安に飲んでみましょう(27)(28)。
便秘解消のコツ:今すぐできる5つの方法
便秘解消のために、今すぐできる5つの方法を紹介します。
1.朝起きたらコップ1杯の水を飲む
便秘気味のときは、朝にコップ1杯の水(白湯)を飲むのがおすすめです。水を飲むことで腸が刺激を受け、排便が促されやすくなるといわれています(29)。
2.ツボ押し
便秘のときのツボ押しは、お腹周りにある2つのツボを押してみましょう。
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おへその下指4本分の点から、指3本分外側にある「水道(すいどう)」
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おへそから指3本分外側、下へ指3本分下の「大巨(だいご)」
デスクワークの場合は、手のツボ押しもよいでしょう。手首から指4本分離れたところ、2つの筋の間「支溝(しこう)」を親指でゆっくり押してみてください。
3.おなかのマッサージ
便がなかなか出ないときは、大腸の形に合わせて右回りに「の」の字マッサージをします。腸の流れを意識して、肛門へ移動させるイメージで取り組んでみましょう。
4.トイレでは前かがみの姿勢に
排便の時は、いい姿勢をとることも重要です。足の下に踏み台を置き、膝を少し高めにして、前傾姿勢をとってみましょう。
5.海藻類やきのこ類を多めに食べる
海藻類やきのこ類は多めに食べると、食物繊維の摂取につながります。どちらかに偏らず、バランスよく食べてみてください。
長時間座っている人向け!便秘解消をサポートする生活習慣
長時間のデスクワークの場合、体を動かす機会が少なくなりがちです。今回は簡単にできる、便秘解消に向けた生活習慣を紹介します。
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朝食をとる
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こまめな水分補給
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ストレッチ
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湯船につかる
朝食は腸の蠕動運動を促すきっかけになります。食事と合わせてこまめな水分補給も大切にしましょう。
また、入浴のときは、湯船につかる習慣もおすすめです。ぬるめのお湯に浸かると、リラックス作用もあります。
長時間座りっぱなしの場合は、休憩時間に軽いストレッチを行って、腸に刺激を与えてみるとよいでしょう。
【腸をひねる動作】
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椅子に浅く座り、正面を向いて背筋をのばす
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床に足裏をつける
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椅子の背もたれを持って、息を吐きながら上半身をゆっくり左右にひねる
お腹をひねったり、のばしたりする動きが腸の働きをサポートしてくれます。
便秘におすすめレシピ|献立例を紹介
a. デスクワーク中心のサラリーマンやOL

デスクワーク中心のサラリーマンやOLの方は、食生活の乱れや運動不足、ストレスによって便秘がちになることがあります。
極端なダイエットや食事制限などへは避けて、体にやさしい食事を心がけてみましょう。
社会人・OL向け |
献立例 |
朝食 |
ライ麦パンのサンドイッチ(チーズ、ごぼうサラダ)、バナナと小松菜のヨーグルトスムージ |
昼食 |
きのことベーコンのスパゲティ、オクラとツナの和え物、緑茶 |
夕食 |
もち麦ごはん、ポークビーンズ、じゃがいもと玉ねぎのミルクスープ、白湯 |
b. 子ども
子どもの便秘は、2〜5歳の幼児期に起こりやすいです。原因の一つとして、排便時に肛門が切れて、痛みとトイレを我慢する傾向があります。トイレを我慢すると大腸では水分が吸収されてしまい、次回はさらに痛みを伴い、便秘の悪循環が起こるのです。
食事面では根菜や豆、果物、発酵食品を献立に加えてみましょう。
子ども |
献立例 |
朝食 |
かぼちゃときなこのホットケーキ、バナナ、牛乳 |
昼食 |
こんにゃくそぼろ丼、えのきとオクラのスープ、ふかし芋 |
夕食 |
野菜と豆のカレー、コーンとわかめの和え物、チーズ |
d. 70歳以上高齢者

70歳以上では、男女ともに便秘になりやすいといわれています。その理由の一つに筋肉や神経の衰え、病気や薬の影響、運動不足などが考えられます。
調理不要でそのまま食べられる果物や納豆、ヨーグルトなどを活用してみましょう。
高齢者 |
献立例 |
朝食 |
もち麦ごはん、納豆、きんぴらごぼう、なめこと油揚げのみそ汁、キウイフルーツ |
昼食 |
なすとたけのこの肉みそうどん(しいたけ入り)、わかめと卵のスープ、ブロッコリー(オイルドレッシング) |
夕食 |
雑穀ごはん、サバのトマト煮込み、長芋とめかぶの和え物、ヨーグルト |
まとめ
便秘解消のためには、食事や水分補給、運動、ストレス管理のバランスが重要です。デスクワークが多い場合も、小さなことから始めてみましょう。
食事だけでなかなか変化がみられないという方は、乳酸菌と食物繊維をダブル配合したサプリメントもおすすめです。
便秘解消のヒントを見つけて、新しい習慣を取り入れてみてください。