目を酷使するスマートフォンやパソコンが普及する現代社会において、「眼精疲労」は多くの人が経験する一般的な問題になっています。スマートフォンやパソコン、テレビなどのデジタルデバイス画面の長時間視聴、全身症状に伴うもの、合わないメガネの使用、ストレスなど、眼精疲労を引き起こす原因はさまざまです。この記事では、眼精疲労の症状や原因、改善方法などについてくわしく紹介します。(1)(2)
眼精疲労の症状
眼精疲労には、以下のような代表的な症状があります。
目のかすみ・ぼやけ
目がかすんだり、ピントが合わせにくくなり物が二重に見えるなど、一時的に見え方がぼやけたりする症状がみられます。(3)(4)
人の目は、毛様体筋とよばれる目の筋肉が弛緩・収縮することにより、ピントを合わせて物を見ています。毛様体筋は遠くを見るときはゆるみ、近くをみるときは収縮し、ピントの調整を自然に行っているのです。スマートフォンやパソコンなどの長時間の使用で近くにピントを合わせる状態が続くと、毛様体筋が収縮している時間が長くなり、毛様体筋に疲れがたまります。その結果、ピントの調整がうまく働かず、目のかすみやぼやけが生じます。(3)(5)
ドライアイ
ドライアイ(目の乾き)も眼精疲労と密接に関係しています。スマートフォンやパソコンなどの小さな画面を長時間集中して見続けるとまばたきの回数が減り、目の表面が乾きやすくなります。人はまばたきをすることで目の表面に涙の層を作っています。ドライアイになると、涙の層による保護効果がなくなり、目の表面に痛みを感じることもあります。(3)(4)
目の充血
眼精疲労が進行すると、目が赤く充血することがあります。これは、目に酸素や栄養を運んで疲れ目を回復させるため、目の血管が拡張し血流量が増えることによります。(3)(4)
眼精疲労にかかわる体の症状
眼精疲労は、目だけでなく体全体にも影響を及ぼすことがあります。目の疲れが蓄積することで、次のような体の症状があらわれます。
頭痛
目の疲れが原因で、頭痛が引き起こされることがあります。長時間にわたるパソコン作業や読書などで目を酷使するような状態が続くと、頭や首の筋肉が緊張し血流が悪くなるため、緊張性の頭痛が生じやすくなります。(3)(6)
肩こり
肩こりも頭痛と同様の理由で生じることがあります。また、眼精疲労によりピントが合わせづらい状態になると、物をよく見ようと前かがみの姿勢になり、肩こりが悪化することがあります。頭痛や肩こりが悪化すると、吐き気を生じることもあります。(3)(5)
ストレスや不眠、気分の落ち込み
眼精疲労による目や体の不調がストレスとなり、イライラしやすかったり、不眠や気分の落ち込みなどがあらわれることがあります。(4)
眼精疲労の原因
眼精疲労の原因は多岐にわたります。いくつかの原因は分かっていますが、原因が分からないこともしばしばあります。(3)
生活環境
現代では、スマートフォンやパソコンなどを日常的かつ長時間使用する機会が増えているため、眼精疲労が引き起こされるリスクが高くなっているといえます。明るすぎる・暗すぎる作業環境やパソコンの輝度(画面の明るさ)、ドライアイにつながる室内の乾燥なども眼精疲労や眼精疲労を悪化させる原因や増悪因子となります。(5)
目や体の病気
緑内障や白内障、ドライアイ、老眼や乱視など目の病気や何らかの問題がある場合は、眼精疲労があらわれることがあります。循環器疾患や消化器障害などの体の病気に合併する症状として眼精疲労が生じることもあります。(1)(3)(6)
メガネやコンタクトレンズの不適合
自分に合わないメガネやコンタクトレンズを使用することも、眼精疲労を引き起こす原因となります。度数の合わないメガネやコンタクトレンズを使用すると、ピントを頑張って調整するために目の負担が大きくなり、眼精疲労が生じやすくなります。(2)
ストレス・睡眠不足
精神的なストレスも眼精疲労の原因となることがあります。ストレスにより交感神経が優位になると涙の分泌量が減少し、眼精疲労の要因でもあるドライアイを引き起こしやすくなります。また、睡眠不足になると目が十分に疲労回復できず、目の疲れがたまりやすくなり、眼精疲労に繋がります。(2)(7)(8)
眼精疲労の改善方法
薬物治療/眼科治療
眼精疲労の原因が明らかである場合は、その原因を取り除くことが必要です。目の充血や目の乾きなどがある場合、それぞれの症状に応じた対症療法が行われます。眼精疲労の特効薬はありませんが、ビタミン剤の配合された点眼薬や内服薬が有効だと考えられています。眼精疲労の症状がひどい場合、何らかの目や体の病気が隠れている場合がありますので、医療機関に相談するようにしましょう。(1)
作業環境の改善
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適切な休息を取る
スマートフォンやパソコンを使用して長時間作業するのは避け、1時間以上連続して作業しないようにしましょう。遠くを見る、目を閉じるなど適度な休息を挟み、目の筋肉をリラックスさせることが重要です。 -
正しい姿勢を保つ
作業中の姿勢にも注意が必要です。椅子には深く腰かけ、膝の角度は90度以上になるようにしましょう。ディスプレイは目から40cm以上の距離で、画面の上端は目より数センチ高くなるように設置し、無理のない姿勢で作業できるようにしてください。机や椅子の高さを合わせることも重要です。 -
室内・パソコンの明るさやコントラストを調整する
室内の照明、パソコンの画面は明るすぎても暗すぎても、目が疲れやすくなります。室内の照明は100〜500ルクスが推奨されています。また、画面に光が映り込まないように窓がある場合はブラインドやカーテンをかけるようにしましょう。 -
目の乾燥をやわらげる
眼精疲労の要因のひとつであるドライアイを防ぐため、エアコンの風が直接顔に当たらないようにする、加湿器で部屋が乾燥しないようにするなどの対策をして、目の乾燥をやわらげましょう。意識してまばたきを多くしたり、人工涙液の目薬により目を潤すことも有効です。
生活習慣の改善
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ストレッチを行う
首や肩まわり、顔まわりの筋肉をほぐすストレッチは、筋肉の緊張をほぐし血行を促進するため、眼精疲労にも効果が期待できます。目の周囲のツボをマッサージしたり、蒸しタオルなどで目を温めたりするのもおすすめです。マッサージを行う際は、眼球を圧迫しないように注意してください。 -
十分な睡眠・栄養をとる
十分な睡眠は目の疲れをはじめ、全身の疲れを回復させるのに重要です。アミノ酸やビタミンは筋肉の修復や代謝に効果が期待できるので、意識して食事に取り入れるとよいでしょう。(5)
まとめ
眼精疲労は、スマートフォンやパソコンが普及した現代社会において多くの人が抱える問題です。眼精疲労はさまざまな要因が重なり合って引き起こされることが多いですが、適切な環境を整え、生活習慣などを見直すことにより予防・改善することが可能です。気になる症状や慢性的な眼精疲労がある場合は、必ず医療機関を受診するようにしましょう。