循環の悩み

40代は高血圧になりやすい?血圧の正常値と年齢別の平均値を医師が解説

監修者 鎌田 百合 医師 公開日:2024-09-06 最終更新日:2024-09-06

循環の悩み

40代は高血圧になりやすい?血圧の正常値と年齢別の平均値を医師が解説

監修者鎌田 百合 医師 公開日:2024-09-06 最終更新日:2024-09-06

高血圧は、生活習慣病のリスク要因とされています。20歳以上の成人のおよそ2人に1人が高血圧をもつ、たいへんコモンな疾患です(1)。血圧は年齢によって平均値が異なります。加齢に伴い高血圧を発症しやすくなり、特に40代から高血圧になるリスクは高まります。

この記事では、高血圧になりやすい原因と血圧を下げる方法を詳しく解説します。

血圧とは?

血圧とは、心臓から流れた血液が動脈を通る際に血管にかかる圧力の値をいいます。心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り出します。心臓から出た血液は動脈へ流れ、体の隅々を巡ったあと静脈から心臓へ戻ります。心臓が収縮して血液を動脈へ送り出すときに血管にかかる圧を収縮期血圧、心臓が拡張したときに血管にかかる圧を拡張期血圧といいます。

血圧がとても高くなると頭痛やめまいなどの症状を起こす場合がありますが、ほとんどの場合は症状がないため、指摘されても放置されていることがあります。高血圧を放置すると心臓や血管へ負担がかかります。心臓への負担が強くなると心不全を起こします(2)。 血管への負荷は動脈硬化を進行させ、放置すると血管がもろくなり、脳卒中や心臓病を引き起こし命に関わることがあります。そのため、高血圧を指摘された場合は適切な治療を行いましょう。

 

血圧の正常値

高血圧治療ガイドライン(3)で定義される高血圧診断基準は以下の表のとおりです。

病院で測定する診察室血圧は、自宅で測定する家庭血圧より5mmHg程度高く定義されます。診察室血圧が収縮期血圧で140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合、高血圧と診断します。正常血圧と高血圧の間は、正常高値血圧や高値血圧と呼ばれます。高血圧の定義は満たしませんが、将来的に高血圧に移行するとされています。

 

血圧値の分類(成人血圧、単位はmmHg)

分類

診察室血圧

家庭血圧

 

収縮期血圧

 

拡張期血圧

収縮期血圧

 

拡張期血圧

正常血圧

<120

かつ

<80

<115

かつ

<75

正常高値血圧

120-129

かつ

<80

115-124

かつ

<75

高値血圧

130-139

かつ/または

80-89

125-134

かつ/または

75-84

I度高血圧

140-159

かつ/または

90-99

135-144

かつ/または

85-89

II度高血圧

160-179

かつ/または

100-109

145-159

かつ/または

90-99

III度高血圧

≧180

かつ/または

≧110

≧160

かつ/または

≧100

(孤立性)

収縮期高血圧

≧140

かつ

<90

≧135

かつ

<85


 

年齢別の血圧平均値

血圧は年齢、性別によって平均値が若干異なり、加齢に伴い徐々に上昇します。令和元年国民健康・健康調査によると、年齢別の血圧の平均値は以下のようになります。

 

年齢別の血圧平均値(収縮期血圧/拡張期血圧)

年齢

男性 (mmHg)

女性 (mmHg)

20-29歳

115.3 / 67.7

105.7 / 63.8

30-39歳

117.3 / 73.7

107.9 / 66.3

40-49歳

125.8 / 81.3

114.3 / 71.2

50-59歳

131.7 / 82.0

123.7 / 75.4

60-69歳

135.8 / 78.5

131.0 / 76.7

70歳以上

135.8 / 73.1

136.1 / 73.0

(1)
 

この表をみると、年齢ごとに徐々に血圧が上昇しているのがわかります。40代男性の収縮期血圧は120mmHgを超えており、正常値を超え、正常高値血圧になっています。血圧が加齢とともに上昇する理由は、大きく2点あります。
 

血圧が加齢とともに上昇する理由

1. 加齢

年齢を重ねると生活習慣の影響が蓄積されます。塩分の多い食事、ストレス、コレステロールの蓄積などが徐々に血管にダメージを与え、血管の弾力性が落ち、動脈硬化が進行します。すると血管の弾力性がなくなり、血圧が上昇します。

若年者では血管の弾力性が十分に保たれているため、血圧は高くなりにくいと考えられています。
 

2. エストロゲン

先程の表をみると、閉経までの女性は同じ年齢の男性と比べて血圧が低いことがわかります。これは、女性ホルモンであるエストロゲンが関係するためです。

エストロゲンには血管拡張作用があります。血管が拡張することで血圧が下がるため、エストロゲンを分泌している期間は血圧が男性よりも低くなります。閉経期でエストロゲンが急激に減少すると、自律神経の乱れによって血圧の調整機能が落ちます。すると血圧が急激に上がり、平均値が男性とほぼ同じ値になります。

更年期の高血圧はホルモンバランスや更年期症状によっても左右されるため、血圧が不安定なことも特徴です。さらに、更年期でエストロゲンが減少すると脂質代謝にも影響します。悪玉であるLDLコレステロールが増加し、善玉であるHDLコレステロールが減少します。これによって動脈硬化が進行し、高血圧のリスクになります。
 

血圧を下げる方法

加齢で血圧は上がりやすくなりますが、生活習慣の見直しで血圧を下げることが可能です。日々の生活でできる、血圧を下げる方法を紹介します。

食生活の改善

  • 減塩

食塩摂取の目標値は6g/日未満と推奨されています(3)。日本人の食生活は味噌やしょうゆを使っている味付けのため塩分摂取量が多く、令和元年国民健康・栄養調査(1)では食塩摂取量の平均値は男性10.9g、女性9.3gと、多量の塩分を摂取していることがわかります。塩分の濃い味付けに慣れていると6g以下の減塩食は味気なくなります。代わりに香辛料や酢、出汁を効かせるなど味付けに工夫を行うと良いでしょう。

 
  • カリウムの摂取

カリウムは腎臓からナトリウムを排泄させる効果があるため、適切な摂取により血圧降下作用が期待できます(3)。カリウムはバナナやオレンジなどの果物、ほうれん草、じゃがいも、ナッツ類などに多く含まれています。水に溶けやすいので、カリウムが流れてしまわないよう調理の際に注意が必要です。

慢性腎臓病がある場合は腎臓からのカリウム排泄能力が低下するため、カリウム摂取制限が必要な場合があります。カリウム摂取量は医師の指示に従いましょう。

 
  • 多価不飽和脂肪酸の摂取

多価不飽和脂肪酸の一つであるオメガ3系脂肪酸を摂取すると、血圧を下げることが可能です。

オメガ3系脂肪酸は、青魚のサンマやサバなどのフィッシュオイルに含まれるEPA、DHAや、植物油、ナッツなどに含まれるα-リノレン酸などがあります。オメガ3系脂肪酸は、1日2~3g摂取することで収縮期血圧、拡張期血圧のいずれも平均して2mmHg低下することがわかっています(4)。普段の食事で積極的な摂取を心がけましょう。
 

適正体重の維持

BMI(Body Mass Index)は体重(kg)÷身長(m)2で計算され、適正体重はBMIが18.5~24.5を指します(5)。BMI値が高いと高血圧を発症するリスクが高まります(6)。特に40代以降で更年期になるとエストロゲンの急激な減少によって食欲が増加し、基礎代謝が減少するため、太りやすくなります。同じ食事をしても自然と体重が増加し高血圧の一因となるため、意識的に体重を維持するようにしましょう。
 

運動

有酸素運動は血圧低下にたいへん有用です。血圧低下だけでなく、体重減少、2型糖尿病発症抑制、認知症予防などあらゆる方面で有用とされているため、血圧が高い場合は積極的に運動を行いましょう。

ややきついと感じる程度の強度で、定期的に、できれば毎日30分以上行うことが推奨されています(7)。なお、運動療法はⅡ度高血圧以下の血圧値の方が対象です。III度高血圧の場合は降圧後に運動療法を行いましょう。
 

睡眠

睡眠不足は高血圧の原因となり、特に睡眠時間が5時間未満の場合はリスクが顕著になります(8)(9)。睡眠時間が短いと、交感神経が活性化して血管が収縮することで、血圧が上昇しやすくなるためとされています。特に更年期では、自律神経の乱れから不眠となることもあります。睡眠不足は高血圧の原因となるため、睡眠の質を高め、睡眠時間をしっかりと取りましょう。
 

まとめ

高血圧は自覚症状がなく、高血圧を指摘されても放置されている場合があります。しかし徐々に動脈硬化を進行させ、気がついたら重篤な病気を発症している場合があります。特に、40代以降は加齢やホルモンバランスの影響で高血圧になりやすいため、定期的な血圧測定を行ったり健診を受けたりすることが大切です。高血圧を指摘されたら、医療機関を受診し治療を受けましょう。

参考資料:
  1. 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
  2. N. Shiba, K. Nochioka, M. Miura, H. Kohno, H. Shimokawa, and CHART-2 Investigators. Trend of westernization of etiology and clinical characteristics of heart failure patients in Japan--first report from the CHART-2 study. . Circulation journal: official journal of the Japanese Circulation Society. 75. (4). : 823–833. ;2011 PMID:21436596
  3. 高血圧治療ガイドライン2019
  4. X. Zhang, J. A. Ritonja, N. Zhou, B. E. Chen, and X. Li. Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acids Intake and Blood Pressure: A Dose-Response Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. . Journal of the American Heart Association. 11. (11). : e025071. ;2022 PMID:35647665
  5. e-ヘルスネット(厚生労働省)  BMI
  6. Z. Huang, W. C. Willett, J. E. Manson, B. Rosner, M. J. Stampfer, F. E. Speizer, and G. A. Colditz. Body Weight, Weight Change, and Risk for Hypertension in Women. . Annals of internal medicine. 128. (2). : 81–88. ;1998
  7. R. D. Brook, L. J. Appel, M. Rubenfire, G. Ogedegbe, J. D. Bisognano, W. J. Elliott, F. D. Fuchs, J. W. Hughes, D. T. Lackland, B. A. Staffileno, R. R. Townsend, and S. Rajagopalan. Beyond Medications and Diet: Alternative Approaches to Lowering Blood Pressure. . Hypertension. 61. (6). : 1360–1383. ;2013
  8. L. Li, Y. Gan, X. Zhou, H. Jiang, Y. Zhao, Q. Tian, Y. He, Q. Liu, Q. Mei, C. Wu, and Z. Lu. Insomnia and the risk of hypertension: A meta-analysis of prospective cohort studies. . Sleep medicine reviews. 56. : 101403. ;2021 PMID:33360604
  9. Y. Wang, H. Mei, Y.-R. Jiang, W.-Q. Sun, Y.-J. Song, S.-J. Liu, and F. Jiang. Relationship between Duration of Sleep and Hypertension in Adults: A Meta-Analysis. . Journal of clinical sleep medicine: JCSM: official publication of the American Academy of Sleep Medicine. 11. (9). : 1047–1056. ;2015 PMID:25902823