生活習慣の悩み

生活習慣病と向き合う:原因と予防の情報

監修者 井林 雄太 医師 公開日:2024-08-12 最終更新日:2024-08-12

生活習慣の悩み

生活習慣病と向き合う:原因と予防の情報

監修者井林 雄太 医師 公開日:2024-08-12 最終更新日:2024-08-12

生活習慣病とはどのような病気なのか、よく知らない方も多いのではないでしょうか。生活習慣病は食生活の偏りや運動不足など、生活習慣の乱れによって起こる病気です。生活習慣病の多くは徐々に進行するため、気づかないうちに病気を発症することも珍しくありません。

この記事では、生活習慣病の種類や原因、予防法についてご紹介します。生活習慣病の理解を深めることで、健康的な毎日を送るための第一歩を踏み出せるでしょう。

生活習慣病とは

生活習慣病とは、日々の生活習慣の乱れが病気の発症や悪化に関与する病気の総称です。生活習慣病は成人以降、加齢にともなって発症すると考えられていたため、もともと「成人病」と呼ばれていました。しかし、生活習慣との関連性が強いことがわかり、後に成人病から生活習慣病と名称が変化しました。(10)

現代社会において、私たちの生活が多様化したことにより、生活習慣病は増加傾向にあるとされています。健康に過ごすためには、生活習慣病について正しく理解し、予防に取り組むことが求められています。

 

主な生活習慣病の種類

生活習慣病に関係する病気には、さまざまな種類があります。代表的な生活習慣病について、以下の表にまとめました。

病気名

概要

高血圧

  • 血圧が慢性的に高い状態のこと。

  • 高血圧の原因の1つには、食塩の摂りすぎがあげられます(1)

脳卒中

  • 脳の血管が詰まったり破れたりする病気の総称です。

  • 脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の3種類に分類されます。

  • 脳卒中は後遺症が残ることも多いため、予防が重要です。

糖尿病

  • 血糖値(血液内の糖の濃度)が慢性的に高くなっている状態です。糖尿病には1型と2型があり、どちらも遺伝は関与していますが、生活習慣がより強く影響しているのは2型とされています。

  • 自覚症状がないまま、重篤な合併症を引き起こすこともあります。

脂質異常症

  • 血液中の脂質(中性脂肪や悪玉コレステロール)が増えている状態のことです。血管が硬くなる「動脈硬化」を促進させて、心臓病や脳卒中などの発症リスクを高める恐れがあります。

肥満

  • 体脂肪が過剰に蓄積している状態です。

  • BMI(体格指数)が25以上で肥満と判定されます。

  • 糖尿病や高血圧など、他の生活習慣病の発症リスクを高める原因となります。

生活習慣病の詳細:
糖尿病の初期症状は?糖尿病の原因とタイプを説明
高血圧の基準は?予防・改善方法を紹介!
 

生活習慣病の主な発症原因 

生活習慣病を引き起こす原因には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、主な発症原因についてご紹介します。

バランスが悪い食生活

バランスが悪い食生活は、生活習慣病の主要な原因の1つです。とくに「飽和脂肪酸」の過剰摂取には十分に気をつける必要があります。飽和脂肪酸は脂肪の一種で、肉や乳製品などに多く含まれています。飽和脂肪酸を摂りすぎると、血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを増やす原因となるのです。中性脂肪や悪玉コレステロールが増えると、肥満や動脈硬化などの生活習慣病の発症につながる恐れがあるでしょう(2)
 

運動不足

運動不足が続くと筋肉量が減少し、「基礎代謝」が下がりやすくなります。基礎代謝とは、人が生きるために最低限必要な消費エネルギーのことです。基礎代謝が下がるとエネルギーを消費しにくい体質になるので、同じ量の食事を摂っても体重が増加しやすくなるのです。結果的に肥満のリスクが高まり、糖尿病や高血圧などを発症しやすくなります。普段から運動する機会がなく、活動量が少ない方は、生活習慣病には十分に注意する必要があります。
 

ストレス

ストレスが長期間続くと、身体にさまざまな悪影響を及ぼし、生活習慣病のリスクを高める恐れがあります。まず、身体の体調を整えている自律神経のバランスが崩れやすくなります。具体的には、自律神経の1つである「交感神経(活動のための神経)」が優位になり、血圧の上昇、心拍数の増加につながるのです。この状態が慢性化すると、高血圧や心臓病の発症リスクとなります(3)。また、ストレスホルモンの1つである「コルチゾール」が過剰に分泌されると、血糖値が上昇しやすくなり、糖尿病の発症リスクも高まります。
 

喫煙

喫煙は生活習慣病をはじめとした、さまざまな病気の原因となります。たばこに含まれる有害物質は、身体のさまざまな部位に悪影響を及ぼすからです。喫煙によって引き起こされる代表的な生活習慣病には、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患があげられます。たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は血管を傷つけて、動脈硬化を引き起こすこともあるでしょう。さらに喫煙者は、糖尿病の発症リスクが約1.4倍に上がるという報告もあります(4)
 

過度の飲酒

飲酒は適度な量であれば、一部の循環器疾患のリスクを下げる効果があるとされています。しかし、許容量を超えるような飲酒は、生活習慣病の発症リスクを高める原因となるのです。過度な飲酒は血圧や血糖値を上昇させて、以下のような生活習慣病を引き起こしやすくなります。

  • 高血圧

  • 心臓病

  • 脳卒中

  • 糖尿病

普段からお酒をよく飲む方は、アルコールの過剰摂取には十分に注意する必要があります。
 

生活習慣病を早期に発見するための初期症状

生活習慣病の初期症状は、病気によって異なります。ここでは主な生活習慣病の初期症状について、以下の表にまとめました。

病気名

初期症状

高血圧

頭痛やめまい、肩こりなどがあるが、これらの症状は必ずしも高血圧によるものとは限らない。

血圧が高くても無症状のことが多い。

脳卒中

  • 突然の激しい頭痛

  • 呂律の悪さ

  • 手足のしびれ など

糖尿病

  • 口の渇き

  • 多尿

  • 疲労感

  • 体重の減少 など

脂質異常症

高血圧と同じように、目立った症状が少ない。

肥満

  • 体重増加

  • 関節痛

  • 運動時の息切れ など

 

いびきをかくようになったり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こしたりすることもある(5)

 

これらの症状がみられた場合は、定期的に健康診断を受けて早期の発見に努めることが大切です。
 

生活習慣病の予防方法 

生活習慣病を予防するには、生活習慣病を整えることが大切です。ここでは、生活習慣病の具体的な予防方法について解説します。
 

栄養バランスの取れた食事

生活習慣病を予防するためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。とくに、以下の栄養素については積極的な摂取をおすすめします。

栄養素

期待できる効果

主な食品

オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)

中性脂肪を下げる働きがあり、心臓病や脳卒中のリスク軽減につながる(6)

  • 肉類

  • 卵 など

ビタミンB群

心臓病の発症リスクを低下させる可能性がある(7)

  • 肉類

  • 魚類

  • 豆類

  • 乳製品 など

ビタミンD

骨を丈夫にして骨粗鬆症の予防につながる。

高血圧や糖尿病の予防も期待できる。

  • 牛乳

  • 乳製品 など

アルギニン

血管を拡張させて高血圧や脳卒中などの予防につながる

  • 大豆

  • うなぎ

  • にんにく など

亜鉛

インスリンの分泌や働きをサポートして、糖尿病の予防に関与する。

  • 貝類

  • 魚介類

  • 肉類 など

 

これらの食べ物を意識的に取り入れることで、生活習慣病の予防につながります。また特定の栄養素に偏らず、バランスの取れた食事を心がけることも重要です。
 

定期的な運動

定期的な運動は血圧・血糖値の改善やダイエット効果など、さまざまな面で健康に良い影響を与えます。とくに有酸素運動と筋トレの両方を取り入れるのがおすすめとされています。有酸素運動は、まずは誰でも気軽に行いやすいウォーキングからはじめるとよいでしょう(8)。筋力トレはスクワットや腕立て伏せなど、自重を使った運動がおすすめです。有酸素運動であれば1日10分、筋トレなら10回ずつからでもかまいませんので、無理のない範囲からはじめてみましょう。
 

ストレス管理

日々のストレスをうまくコントロールすることで、生活習慣病のリスク低下につながります。ストレス管理の方法はいくつかあり、まずは6時間以上の睡眠時間を確保することが大切です。その他にも趣味の時間を持つことや、信頼できる人と話をすることも良い方法です。夢中になれる趣味に打ち込んだり、友人や家族と会話をしたりすることで、ストレスの軽減が期待できます。

ただし、ストレス解消と称して過度の飲酒や食べ過ぎに走ることは避けましょう。これらは一時的に気分を良くするかもしれませんが、長期的には生活習慣病のリスクを高めてしまいます。
 

禁煙・適度な飲酒

生活習慣病を予防するには、禁煙と適度な飲酒も重要です。たばこはがんや心臓病、脳卒中など、多くの生活習慣病のリスクを高めるので、禁煙に努めましょう。一方で、過度の飲酒は生活習慣病の発症率を高めますが、適量であれば逆にリスクを下げる可能性があるとされています(9)。適量の目安は、ビール中ビン1本、日本酒1合、ワイングラス1杯程度です。女性の場合は、それらの半分のアルコール量にとどめておきましょう。
 

生活習慣病のセルフチェック

生活習慣病を早期に発見し予防するためには、日頃からセルフチェックを行うことが大切です。生活習慣病を予防したい方のために、セルフチェックシートを以下にまとめました。

☐BMI(体重(kg)÷身長(m)²)が25以上

☐腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上

☐最大血圧が140mmHg以上、最低血圧が90mmHg以上

☐魚や野菜などを食べる機会が少ない

☐睡眠時間が6時間未満

☐運動をあまりしていない

☐ストレスが溜まっている

☐喫煙をしている

☐お酒をよく飲む

これらに当てはまる数が多いほど、生活習慣病のリスクが高くなります。今の生活習慣をあらためて見直し、当てはまる数を1つでも少なくするように工夫しましょう。
 

生活習慣病の理解と対策の重要性

生活習慣病は心臓病や脳卒中など、さまざまな病気を引き起こす原因となります。これらの病気を予防するためには、バランスの良い食事や適度な運動、禁煙などの習慣を身につけることが大切です。また、生活習慣病の多くは初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な健康診断を受けることも重要です。充実した人生を送るためにも、自分のライフスタイルを見直して生活習慣病の予防に努めましょう。