お体の悩み

あなたの疲れがとれない原因と効果的な回復方法―疲れをとるために効果的な栄養成分とは?

監修者 鏑木 直人 医師 公開日:2024-08-23 最終更新日:2024-08-23

お体の悩み

あなたの疲れがとれない原因と効果的な回復方法―疲れをとるために効果的な栄養成分とは?

監修者鏑木 直人 医師 公開日:2024-08-23 最終更新日:2024-08-23

日々の生活の中で「疲れが取れない」と感じることはありませんか?

疲労の実態調査によると、日本人の約60%は疲労を自覚しており、半年以上持続して疲労を感じている人も実に35%にものぼります(1)。疲労は心とからだの健康に大きく影響を与え、生活の質の低下につながります。

本記事では、一般的な疲れの原因をご紹介した後、疲労回復に役立つ栄養成分について論文をもとにご紹介します。

そもそも疲れとは?

疲れとは「仕事や家庭などの日常の活動によって心やからだが消耗し、休みたいと感じる状態」です。疲れには、大きく分けて身体的な疲れと精神的な疲れの2種類があります。

1.身体的な疲れ

激しい運動や長時間の立ち仕事などの肉体的な活動により、身体のエネルギーが消耗して感じるのは、身体的な疲れです。からだを動かした後に筋肉の痛み、こわばり、全身の倦怠感などを感じたことは誰しもあるでしょう。
 

2.精神的な疲れ

一方、精神的な疲れは、ストレスや長時間の集中で神経をすり減らすなど、心のエネルギーが消耗することで感じます。集中力の低下、イライラや不安感、よく眠れないなどの症状があらわれます。

身体的なものも精神的なものも、どちらも疲れとして体が休養を求めているサインです。疲労を早く回復できるよう、早期に適切な対処を行いましょう。

 

疲れが取れない原因は〇〇不足

疲れは一時的な状態で、通常は休むことで改善するものですが、「休んでも休んでもずっと疲れが取れない」という状態が続いてしまっている方も多いのではないでしょうか。疲れが取れない原因はさまざまですが、まず見直したいのが睡眠不足と栄養不足です。

 

疲れが取れない原因:睡眠不足

「夜はちゃんと6時間寝てるのに、いつも眠い」こんなふうに感じていらっしゃる方は意外と多いのではないかと思います。しかし、最適な睡眠時間は人によって異なります。6時間で十分な人もいれば、8時間寝なければ十分でない人もいます。個人差の問題もありますが、疲労の程度や睡眠の質が人それぞれ違うわけですから、一概に時間だけで区切ることはできないのです。

 

疲れが取れない原因:栄養不足

また、栄養不足も体の回復に影響します。1日3回食事をとっていて、毎回おなかいっぱい食べていても、必ずしも回復に必要な栄養素をとれているとは限りません。炭水化物ばっかりとっていっては、たとえカロリーが十分とれても有効な疲労回復ができないこともあるのです。

十分な休養をとれていない、もしくは休養をとっていても身体に必要な栄養素がとれていない、そんな状態でも日々の暮らしは続きます。そうすると日々、新たな疲労が蓄積するものの、身体の回復は疲労の蓄積に追いつかず、疲労がたまりにたまってしまいます。こうしているうちに、全く疲れが取れない状態になってしまうのです。

まさに、「疲れの悪循環」におちいっている状態です。

 

疲労回復の重要性

疲労が蓄積すると、以下のような無視できない問題が起こる可能性があります。

 

健康への悪影響

疲労が蓄積すると、身体と心の両方に悪影響を及ぼします。身体の疲れが続くと、風邪を引きやすくなるなど、病気への抵抗力が弱まります。心の疲れも無視できません。精神的な疲労が続くと、うつ症状や不安感が増し、精神的な健康が損なわれる可能性もあります。

 

仕事のパフォーマンス低下

疲れがたまっていると、集中力や注意力が低下し、仕事のパフォーマンスが大幅に低下します。これにより、ミスが増え、それをカバーするためにさらに仕事が増えるという悪循環におちいる可能性があります。このような状態では効率が悪くなり、さらなる疲れを引き起こしてしまいます。

 

生活の質低下

疲れた状態が続くと、家族や友人との関係にも悪影響を及ぼすかもしれません。趣味や余暇活動を楽しむ余裕がなくなり、ストレスがたまることで、生活の質が低下します。疲れの悪循環を予防するためにも、こまめな疲労回復が大切です。

 

効果的な回復方法

では、いったいどうすれば疲労から回復できるのでしょうか。効果的な回復方法をいくつかご紹介します。

1.質の良い睡眠をとる

睡眠による休養は、疲労回復の基本です。質の良い睡眠を十分とることで、翌日の活動に備えることができます。睡眠の質には、就寝前の行動や寝室の環境が大きく関係します(2)

意外と多いのが「寝るときにきちんと部屋を暗くしていない」ということです。寝室の環境で特に注目すべきは、光・温度・音の3点です。できるだけ光の量を減らし、室内は暗くします。また、快適と感じられる適度な室温を心がけ、静かな環境で眠りましょう。

言うまでもないことかもしれませんが、眠りが浅くなるため、夕方以降はカフェインを控えましょう。就寝1時間前からスマートフォンの使用は控えることも、睡眠の質向上に効果的です。

 

2.ストレスを発散する

ストレスは疲労の大きな原因のひとつです。ためこまずに発散し、心身の疲れを軽減しましょう。それには、自分自身のストレスとうまく付き合う方法を見つけることが大切です(3)。ストレッチや適度な運動をおこなうと、筋肉の緊張を緩め血行を促進しリラックスにつながります。親しい人たちと交流したり、仕事から離れた趣味をもったりすると、視野が広がり、解決策が見つかることもあるでしょう。

 

3.回復をサポートする栄養素をとる

毎日の食事内容を気にしていますか。忙しい日々の中で食事はおろそかになりがちです。心身の疲労回復には、バランスの取れた食事は欠かせません。

さらに、疲労回復に有効な栄養素を積極的に取り入れることで、疲れを効果的に解消することができます。食事での摂取が難しい栄養素は、サプリメントを利用することを考えても良いでしょう。

 

疲労回復に良い3つの栄養成分

バランスのとれた食事による回復効果に加えて、さらに効率的に疲れを解消するためには、栄養成分にこだわることが大切です。では、いったいどのような栄養成分を摂取すると疲労回復に効果的なのでしょうか。代表的な成分をご紹介します。

 

タウリン

タウリンは、疲労回復やストレス緩和に効果が認められるアミノ酸です。ほぼ全身の細胞に分布し、心臓、肝臓、腎臓、脳、筋肉、網膜などで身体の機能を高めるサポートをしています。摂取することで、筋肉の回復を助け、細胞内でのエネルギー生成を強化することから、疲労回復に役立つと考えられています(4)

 

亜鉛

亜鉛は全身の細胞内に存在し、健康を維持するために必要とされる必須微量元素のひとつです。DNAの修復、免疫機能の調節、筋肉の機能維持など、重要な役割を果たしています。60歳以上の高齢者150人を対象とした研究では、70日間亜鉛を毎日摂取したところ、疲労が有意に軽減されたと報告されました(5)。高齢者は日常的に疲労を感じやすい集団です。高齢者の日常的な疲労の回復に、亜鉛が効果を発揮したと考えられます。

 

アルギニン

アルギニンは、多機能な特性をもつアミノ酸です。集中治療を受ける患者さんへのアルギニン投与は回復を早めるとの報告もあり、医療の現場でも利用される成分なのです(6)。アルギニンのいくつかの機能は、疲労回復につながることが認められています。

まずあげられるのは、血流を改善する機能です。アルギニンから生成された一酸化窒素が血管を拡張し、血液が流れやすい状態をつくりだします。これにより、酸素や栄養素が筋肉や臓器に効率よく運ばれ、疲労回復が促進されます。

成長ホルモンの分泌促進もアルギニンの機能のひとつです(7)。成長ホルモンは筋肉の修復や成長を助け、身体の回復を早めるといわれています。筋肉の回復が早まれば、身体の疲労感も軽減されることでしょう。

アルギニンは、さまざまな機能によって複合的に疲労回復を後押しする頼れる成分であることがわかります。

 

マカは疲労回復によい?アルギニンも含有

マカは、ペルーのアンデス地方で栽培されている栄養豊富な根菜です。栄養の補給、ストレス・疲労の軽減、記憶力の向上、不妊症改善など、多彩な効果が期待されています。

アンデス地方の過酷な環境を耐え抜き、その根にたっぷりと栄養を蓄えたマカは、疲労回復にも大きな力を発揮します。マカの疲労回復効果に関連した研究を見てみましょう。

28匹のラットを対象に、以下の4つのグループに分け21日間かけて実験がおこなわれました(8)

  • マカの投与あり、水泳テストをおこなう群

  • マカの投与なし、水泳テストをおこなう群

  • マカの投与あり、水泳テストはおこなわない群

  • マカの投与なし、水泳テストはおこなわない群

 

マカ投与群は、1日1回40mg/kg(体重)のマカを投与します。水泳テストをおこなった群では、週6日、水の中を泳ぎ、疲労に達するまでの時間を計測しました。結果、水泳テストをおこなった2群について、平均水泳時間はマカの投与なし群は11.4分、マカの投与あり群は16.3分でした。マカの投与により、疲労までの時間が44%増加しています。つまり、マカによる持久力を高める効果が認められたのです。

また、疲労により蓄積される物質である乳酸レベルが、マカの投与あり群の方がなし群に比べて、41.8%低かったと報告されています。運動負荷による疲労物質の蓄積を防ぐ効果も認められました。

次に、44人のアスリートを対象としたマカ投与の研究を紹介します(9)。スリートらは、1日2回2500mgのマカエキス含有カプセルを8週間服用し、体力テストを実施しました。マカ投与前とマカ投与後のテスト結果を比較したところ、マカ投与後の体力の改善が報告されています。

さらにマカには、疲労回復に効果的な栄養成分であるアルギニンも含まれています。マカ自体の多彩な効果に加えてアルギニンの力も相まって、回復効果はより一層高まるのではないでしょうか。

 

まとめ

疲れが取れない原因とその対応策について解説しました。質の良い睡眠を確保し、ストレスを適切に発散。さらに、疲労回復をサポートする栄養素を積極的に摂取することで、疲れを効果的に解消することができます。


タウリンや亜鉛、アルギニン。そしてアルギニンを含み、その力も発揮できる一石二鳥のマカ。効果的な栄養成分を利用して、健康で活力ある毎日を送りましょう。
参考資料:
  1. 簑輪眞澄, 倉恒弘彦, 志水 彰, 木谷照夫. 地域における疲労の実態とリスクファクター. 愛知県豊川 保健所管内の2市4町実態調査.厚生科学研究費 補助金健康科学総合研究事業「疲労の実態調査と 健康づくりのための疲労回復に関する研究」平成11年度報告書 2000 年3月; p19-44.
  2. 厚生労働省 良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと 2023年3月版
  3. 厚生労働省 15分でわかるセルフケア 働く人のメンタルヘルスポータルサイト こころの耳
  4. Wen C, Li F, Zhang L, et al. Taurine is Involved in Energy Metabolism in Muscles, Adipose Tissue, and the Liver. Mol Nutr Food Res. 2019;63(2):e1800536. 
  5. Afzali A, Goli S, Moravveji A, Bagheri H, Mirhosseini S, Ebrahimi H. The effect of zinc supplementation on fatigue among elderly community dwellers: A parallel clinical trial. Health Sci Rep. 2021;4(2):e301. Published 2021 May 19. 
  6. Martin ND, Schott LL, Miranowski MK, et al. Exploring the impact of arginine-supplemented immunonutrition on length of stay in the intensive care unit: A retrospective cross-sectional analysis. PLoS One. 2024;19(4):e0302074. Published 2024 Apr 26. 
  7. Kanaley JA. Growth hormone, arginine and exercise. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2008;11(1):50-54. 
  8. Orhan C, Gencoglu H, Tuzcu M, et al. Maca could improve endurance capacity possibly by increasing mitochondrial biogenesis pathways and antioxidant response in exercised rats. J Food Biochem. 2022;46(7):e14159. 
  9. Lee E, Park M, Kim B, Kang S. Effect of Black Maca Supplementation on Inflammatory Markers and Physical Fitness in Male Elite Athletes. Nutrients. 2023;15(7):1618. Published 2023 Mar 27.