生活習慣の悩み

中性脂肪を下げるには?食事と運動でできる簡単な対策

監修者 鎌田 百合 医師 公開日:2024-12-05 最終更新日:2024-12-05

生活習慣の悩み

中性脂肪を下げるには?食事と運動でできる簡単な対策

監修者鎌田 百合 医師 公開日:2024-12-05 最終更新日:2024-12-05

中性脂肪とは、血液中の脂肪成分の一つで、体内の脂質の大部分を占める物質です。

体を動かすためのエネルギー源の一つですが、それだけでなくビタミンの吸収を助けたり、必須脂肪酸の摂取に必要だったりと、体に不可欠なものです。しかし、摂りすぎると余った中性脂肪は体に蓄えられ肥満をもたらし、動脈硬化を進行させ心筋梗塞や脳梗塞のリスクとなります。

この記事では、中性脂肪の働きや基準値、中性脂肪を下げる方法について詳しく説明します。

中性脂肪とは?

中性脂肪の役割

中性脂肪とは、体に蓄えられている脂肪です。英語ではトリグリセライドと呼ばれ、TGと略されます。

中性脂肪は体を動かす重要なエネルギー源です。食べたものは消化吸収され、中性脂肪という形で血液に乗って体中に送られ、糖質とともに体を動かすエネルギー源として使用されます。

エネルギーとして消費されなかった中性脂肪は、体に脂肪として貯蔵されます。蓄えられた脂肪は、ブドウ糖が体内で不足した場合などにエネルギー源として使用されます。また、皮下脂肪となって体温を維持する役割もあります。

 

中性脂肪の基準値

中性脂肪の基準値は、空腹時(10時間以上の絶食後)で30~149mg/dlで、空腹時以外の場合(随時といいます)、174mg/dl以下です。空腹時採血で150mg/dl以上、随時採血で175mg/dl以上の場合、脂質異常症(高トリグリセライド血症)と呼ばれます(1)。

高トリグリセライド血症は、心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳梗塞の発症率や死亡率を上げます(2)(3)。

 

中性脂肪が増える原因

中性脂肪が増えるのは、食べ過ぎや運動不足が原因です。中性脂肪の材料は脂質、糖質です。しかし脂肪より炭水化物などに含まれる糖質のほうが、中性脂肪の上昇に影響します。

糖質を摂りすぎるとエネルギーが過剰となり、余ったエネルギーが中性脂肪に変換され、脂肪として体に蓄えられます。運動不足でエネルギーが使用されないと、さらに脂肪が蓄積されやすい状態になります。

 

食事で中性脂肪を下げるには?

それでは、中性脂肪はどうしたら下げられるのでしょうか。まずは食事で中性脂肪を下げるためのポイントを紹介します。

糖分、炭水化物の量を控える

糖分や炭水化物は体のエネルギー源となりますが、過剰に摂取すると中性脂肪として体内に蓄えられてしまうため、必要以上の摂取は控える必要があります。

丼物、麺類は糖質の量が多く、過剰に摂取しやすくなるため注意が必要です。なるべく定食タイプの食事にし、白米の量は少なめにしましょう。ジュースを飲んでいる場合は、糖分摂取量が知らず知らずのうちに増えてしまうため、水やお茶などの糖分の入っていない飲み物に置き換えましょう。

ただし、極端な炭水化物制限を行わないように気をつけてください。長期的に極端な糖質制限を行うと、心疾患障害のリスクが高まります(4)。

 

良質な脂質の摂取

脂質には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪を増やす原因となります。しかしDHAやEPAといったオメガ-3系多価不飽和脂肪酸は、中性脂肪を下げる効果があります(5)。オメガ-3系多価不飽和脂肪酸は、サバ、イワシなどの青魚や、サケ、チアシード、クルミなどに多く含まれます。

大豆油、コーン油などの植物性油脂も、中性脂肪を下げる効果があります(6)。アボガド、ナッツなども効果的です。

どちらもあくまで脂質であるため、過剰な摂取は過剰なカロリー摂取につながります。適正な総エネルギー摂取量のもとで摂取量を増やしましょう。

 

食物繊維の摂取

食物繊維を摂取すると、食後中性脂肪の上昇を穏やかにし、糖質や脂質の吸収を抑えます(7)。そのため、野菜、全粒穀物、豆類など、食物繊維が豊富な食事を摂るようにしましょう。また、食物繊維をしっかり噛むことで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐ効果もあります。

 

アルコールを控える

アルコールを摂取すると、肝臓で中性脂肪の合成がすすみ、中性脂肪が過剰となります。肝臓に溜まった中性脂肪によって脂肪肝となります。

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、1日あたりのアルコール量を25g以下に留めることが推奨されています(1)。

 

運動で中性脂肪を下げるには?

中性脂肪を下げるには運動療法も効果的です。どのような運動をすればよいか解説します。

有酸素運動

中性脂肪を下げるには、有酸素運動がおすすめです。有酸素運動をすると、血糖と一緒に体の中性脂肪がエネルギー源として使用されます。

有酸素運動で中性脂肪が低下することがいくつもの研究で報告されています(8,9)。ガイドラインでは、中強度以上の有酸素運動を、毎日合計30分以上、週3回以上行うことが推奨されています(1)。中強度以上とは、通常速度のウォーキングに相当する運動です。

ウォーキングは手軽ですぐにはじめやすい運動です。長期間行うことで、中性脂肪を下げる効果だけでなく心肺機能の改善や血糖値の低下、高血圧の改善など、さまざまな健康効果が期待できます。

エアロバイクは、バイクの購入やジムに通うことが必要になりますが、効率良く有酸素運動を行えます。負荷を自分で調節できるので、自分の筋力や体力に合わせて運動することができます。

室内で手軽にできる有酸素運動として、踏み台の昇り降りがあります。負荷が少なく怪我のリスクが少ないため、運動に慣れていない方でもはじめやすい運動です。

運動習慣がない場合は、軽い運動や短時間の運動からはじめましょう。

 

筋力トレーニング

筋力トレーニング、つまり筋トレは骨格筋量が増え、基礎代謝が上がります。さらに、中性脂肪を分解するリポ蛋白リパーゼが増え、中性脂肪を減らす効果があります(10)。

体幹や太ももなどの大きな筋肉を鍛えることで、効果的に脂肪燃焼させることが期待できます。立った状態から膝を曲げ伸ばしする「スクワット」、うつ伏せから両肘をつき体をまっすぐにしてキープする「プランク」などが効果的です。

普段筋トレをしていない場合、負荷の少ない筋トレとして、椅子スクワットという方法があります(11)。背もたれのある椅子を用意し背後に立ち、椅子の背をつかみます。そのあとはスクワットの要領で、ゆっくりお尻を後ろに突き出しながら落としていきます。軽い負荷で行うことができるため安全で、筋力に自信がない場合におすすめです。

 

筋トレの習慣がない場合は、急に行うと体を痛める可能性があります。負荷の軽いものを短時間から行うようにしましょう。

 

運動習慣の定着方法

運動が中性脂肪を下げるのに効果的なことはわかっていても、運動を習慣的に行うことは容易ではありません。

そこで、まずは日々の生活で少しだけ運動することからはじめましょう。

座っている時間が長い場合は中性脂肪が高くなるリスクが高まります(12)。定期的に休息を取ってこまめに歩くようにすると効果的です。ストレッチで体を動かすのも良いでしょう。

普段の1日の歩数が少ない場合は、意識的に歩くように心がけましょう。買い物や通勤で歩くときに少し回り道をしたり、駅から歩いたりすると自然と運動量が増えるためおすすめです。

まずは小さなことから始めて、徐々に習慣づけていきましょう。

 

よくある疑問と対策

ここではよくある疑問にお答えします。

中性脂肪を下げるためのサプリメントは必要?

中性脂肪を下げるには、この記事で説明したような食事内容の見直しや運動が最も効果的です。しかし、食事でオメガ-3系多価不飽和脂肪酸を多く摂取できない場合は、サプリメントで代用するのも良いでしょう。

 

運動の効果が現れるまでの時間はどれくらい?

1回の運動では中性脂肪は下がりません。運動を定期的に行うことで徐々に中性脂肪は下がります。運動をはじめてから、数週間で徐々に中性脂肪は下がり始めます。数ヶ月続けると、血液検査で安定して下がるようになります。

 

まとめ

中性脂肪は高くても自覚症状はありません。しかし高いまま放置すると動脈硬化を進行させ、重篤な病気のリスクになります。

食事内容の見直しや、運動で中性脂肪を下げることができます。いずれも一時的でなく、継続することが大切です。食事の見直しは厳密に行うのでなく、無理のない範囲で行いましょう。運動は急に強度の高い運動を長時間行うと続きません。まずは小さなことから習慣づけることが大切です。

食事内容の見直しと運動で、中性脂肪を効果的に下げましょう。

参考資料:
  1. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
  2. A. Higashiyama, I. Wakabayashi, T. Okamura, Y. Kokubo, M. Watanabe, M. Takegami, K. Honda-Kohmo, A. Okayama, and Y. Miyamoto. The risk of fasting triglycerides and its related indices for ischemic cardiovascular diseases in Japanese community dwellers: The Suita study. . Journal of atherosclerosis and thrombosis. 28. (12). : 1275–1288. ;2021
  3. J. Labreuche, P.-J. Touboul, and P. Amarenco. Plasma triglyceride levels and risk of stroke and carotid atherosclerosis: A systematic review of the epidemiological studies. . Atherosclerosis. 203. (2). : 331–345. ;2009
  4. H. Noto, A. Goto, T. Tsujimoto, and M. Noda. Low-carbohydrate diets and all-cause mortality: A systematic review and meta-analysis of observational studies. . PloS one. 8. (1). : e55030. ;2013 PMID:23372809
  5. C. S. Bork, S. K. Venø, S. Lundbye-Christensen, M. U. Jakobsen, A. Tjønneland, E. B. Schmidt, and K. Overvad. Dietary intake of α-linolenic acid is not appreciably associated with risk of ischemic stroke among middle-aged danish men and women. . The journal of nutrition. 148. (6). : 952–958. ;2018
  6. G. M. Wardlaw and J. T. Snook. Effect of diets high in butter, corn oil, or high-oleic acid sunflower oil on serum lipids and apolipoproteins in men. . The American journal of clinical nutrition. 51. (5). : 815–821. ;1990 PMID:2333839
  7. L. Brown, B. Rosner, W. W. Willett, and F. M. Sacks. Cholesterol-lowering effects of dietary fiber: a meta-analysis. . The American journal of clinical nutrition. 69. (1). : 30–42. ;1999
  8. Y. Igarashi, N. Akazawa, and S. Maeda. Effects of aerobic exercise alone on lipids in healthy east Asians: A systematic review and meta-analysis. . Journal of atherosclerosis and thrombosis. 26. (5). : 488–503. ;2019 PMID:30381613
  9. G. A. Kelley and K. S. Kelley. Aerobic exercise and lipids and lipoproteins in men: a meta-analysis of randomized controlled trials. . The journal of men’s health & gender: the official journal of the International Society for Men's Health & Gender. 3. (1). : 61–70. ;2006 PMID:18645633
  10. R. Matsumoto, K. Tsunekawa, Y. Shoho, Y. Yanagawa, N. Kotajima, S. Matsumoto, O. Araki, T. Kimura, K. Nakajima, and M. Murakami. Association between skeletal muscle mass and serum concentrations of lipoprotein lipase, GPIHBP1, and hepatic triglyceride lipase in young Japanese men. . Lipids in health and disease. 18. (1). ;2019 doi:10.1186/s12944-019-1014-7 PMID:30947712
  11. 安全かつ効果的に「足腰」を鍛える方法. e-ヘルスネット
  12. B. M. F. M. Duvivier, N. C. Schaper, M. A. Bremers, G. van Crombrugge, P. P. C. A. Menheere, M. Kars, and H. H. C. M. Savelberg. Minimal intensity physical activity (standing and walking) of longer duration improves insulin action and plasma lipids more than shorter periods of moderate to vigorous exercise (cycling) in sedentary subjects when energy expenditure is comparable. . PloS one. 8. (2). : e55542. ;2013 PMID:23418444