免疫細胞の働きと役割
免疫力とは、ウイルス・細菌・異物などから体を守る働きのこと。免疫力には、さまざまな種類の細胞や、腸内細菌が関ります。免疫力に関与する細胞のことを一般的に免疫細胞と呼びます。諸説ありますが、「免疫細胞の約70%が大腸粘膜に集まる」「免疫力の約70%を腸内細菌がつくる」と、いわれています。(1,2)
【自然免疫と獲得免疫の特徴】
体内に病原体が侵入したときに働く免疫は、自然免疫と獲得免疫に分けられます。(3)
- 自然免疫:もともと生体に備わっている免疫。病原体の種類に関係なく排除する。
- 獲得免疫:病原体の種類に応じて抗体をつくり、同じ病原体の再侵入に備える。(3)
自然免疫と獲得免疫の働きは異なりますが、相互で関連していることがわかってきています。今後も免疫力に関する最新の研究からは目が離せません。(3)
おすすめ: 免疫力を高める方法は?免疫の働きから食べ物まで解説免疫力を維持するメリット
病気にかかりにくい体をつくり、体調を整えるには、食生活の見直しが大切です。免疫力を維持すると、病気にかかりにくいというメリットがあります。その反面、免疫力が低くなれば、病気にかかりやすい状態になってしまいますよ。(1)
ところで、免疫力の約70%を腸内細菌が担いますが、あとの30%はどこが支えていると思いますか?実は、「残りの約30%はこころがつくる」といわれ、腸内細菌はこころに強く影響を与えます。例えば、セロトニンの分泌により精神は安定しますが、腸内細菌のバランスがよくないと、セロトニンがうまく合成できません。(2,4)
また、ストレスにより、免疫力低下のおそれがあります。内閣府の「平成20年版国民生活白書」によれば、日本人の20~50代は、日頃ストレスを感じる方が6割を超えます。このように免疫力と腸内・こころの健康は、互いに深く影響し合います。免疫力を高めることで、こころにも、体にもいい影響が期待できるかもしれません。(2,5,6)
腸内環境と免疫力の関係
ここまでお伝えした通り、腸内環境と免疫力には深いつながりがあり、免疫力を維持するためには、腸内の健康維持が大切です。腸内環境で特に重要なのが、腸内フローラ(腸内細菌・腸内細菌叢)。体内には、約1000種類の腸内細菌が存在しています。腸内細菌は、次の3つに分類できます。(※2,5)
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【腸内細菌の種類】
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善玉菌:腸内環境にいい働きをする。腸内細菌のうち、約20%を占める。
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悪玉菌:偏食やストレスで増加し、腸内環境に悪影響を与える。腸内細菌の約10%。
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日和見菌:腸内細菌の約70%と、大多数。善玉菌・悪玉菌どちらにも属さない。
(5,7)
腸内で善玉菌が優位であると健康によく、悪玉菌が増えると健康を害するおそれがあります。また、善玉菌の構成物質に、体の免疫機能を高める作用が期待できます。一方で、食品添加物には、腸内環境を弱らせるとの指摘もあるので、多量の摂取に気をつけましょう。(2,5)
免疫力を高める食品は?
ここからは、免疫力を高めるために、どんな食品を選べばよいのか?おすすめの食べ合わせも紹介します。
発酵食品
ヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品は、善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)を多く含みます。健康によく、生きた善玉菌のことをプロバイオティクスといい、腸内環境を整えてくれます。プロバイオティクスは、毎日続けて摂りましょう。摂取したプロバイオティクスは、腸内に長く住み着くことが難しいと考えられているためです。(5)
ライ麦/きのこ類
ライ麦やきのこ類は、食物繊維が多いです。食物繊維には、腸内の善玉菌を増加させる作用があります。食物繊維は消化・吸収されずに、大腸で善玉菌のエサになるためです。善玉菌を増やすものをプレバイオティクスといい、プロバイオティクスと合わせて摂る方法がおすすめです。(5)
緑黄色野菜・根菜類
緑黄色野菜や根菜類は、食物繊維が豊富。たまねぎやごぼうなど根菜類は、食物繊維と同じくプレバイオティクスの、オリゴ糖も含みます。オリゴ糖は、根菜類のほかにも、バナナのような果物、大豆のような豆類にも多いです。ぜひ、発酵食品と一緒に摂ってみてください。(5)
青魚:オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸とは、植物や魚由来の油脂に多く含まれる、不飽和脂肪酸のひとつ。今回紹介する食品のなかで例外にあたります。オメガ3脂肪酸は免疫力を高めるのではなく、免疫の炎症を抑える作用が期待されているからです。(8,9)
例えば食物アレルギーでは、免疫力が不都合に働いて、さまざまな症状を引き起こします。卵や牛乳などの成分に対して体内に抗体がつくられてしまうことが、食物アレルギーの原因です。食物アレルギーでは、粘膜や皮膚の症状(小児ではアトピー性皮膚炎など)も現れます。(8,10)
アレルギーは先進国で大きな問題になっています。そして、皮膚アレルギー反応の抑制に、オメガ3脂肪酸の作用が期待されています。植物や魚由来の成分ですから、安全性も高いと考えられており今後も、オメガ3脂肪酸の研究報告に期待したいですね。(※9,10)
免疫力アップ食材!おすすめの食べ合わせ
免疫力にいい食品がわかったところで、子どもから大人まで、幅広くおすすめできる食べ合わせを紹介します。
ヨーグルト×果物
果物をカットして、ヨーグルトと和えるだけで作れる、フルーツヨーグルト。子どもから大人まで食べやすく、作り方も簡単。朝食や、デザートにぴったりです。
味噌×野菜
味噌も発酵食品のひとつです。野菜たっぷりの味噌汁を作ったり、野菜スティックを味噌風味のディップソースでいただいたりする方法もおすすめ。
野菜×ツナ×チーズ
蒸した野菜にツナをのせ、ピザ用のチーズをトッピング。トースターやオーブンで焼くと、こんがりおいしい、野菜のツナチーズ焼きができます。
このように、発酵食品(プロバイオティクス)と食物繊維やオリゴ糖(プレバイオティクス)を組み合わせるほか、ツナを取り入れると手軽にオメガ3脂肪酸が摂れます。(5,8)
加工食品のツナを避けたい場合、手作りはいかがでしょう。スキレットにオリーブオイルをたっぷり入れ、新鮮なマグロの刺身を投入したら、あとは弱火にかけるだけ。簡単に手作りのツナ(オリーブオイル漬け)を作れます。塩やにんにくを加えてもおいしいので、ぜひお試しください。
免疫力を高めるための生活習慣は?
免疫力を高めるには、食事以外の生活習慣の見直しも大切です。良質な睡眠をとり、適度な運動をおこないましょう。しっかり眠ると、こころの健康にもつながります。徹夜で仕事や勉強をするのはおすすめできません。また、朝は目覚めを促すために、朝食を食べましょう。(11)
【睡眠と運動の目安】
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良質な睡眠:一般的には8時間以上。子どもの場合は小学生9~12時間、中高生8~10時間。
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適度な運動:健康のためには息がはずみ、汗をかく程度の運動を、合計60分/週。無理なく続けることが大切です。(18~24歳の場合)
※睡眠や運動には個人差がありますので、あくまでも目安です。(12,13)
よく眠れずに悩む方がいらっしゃるかもしれません。睡眠障害には、こころの病気が関連する場合がありますので、いびき、歯ぎしりなど気になる方は、医師に相談してくださいね。(11)
生活習慣と食事合わせて免疫力を高める
免疫力には、大腸粘膜や腸内細菌が大きく関係しています。また、食事以外に睡眠・運動の習慣も見直しも必要です。腸内環境を整えるには、善玉菌の多い発酵食品、食物繊維・オリゴ糖の多い野菜・果物などを合わせて摂る方法がおすすめ。フルーツヨーグルト、野菜入りの味噌汁などは特に手軽なので、ぜひ作ってみてくださいね。