成分ガイド

抗酸化とは?抗酸化物質の効果と重要性、日常生活での実践法を解説!

監修者 鎌田 百合 医師 公開日:2024-09-27 最終更新日:2024-09-27

成分ガイド

抗酸化とは?抗酸化物質の効果と重要性、日常生活での実践法を解説!

監修者鎌田 百合 医師 公開日:2024-09-27 最終更新日:2024-09-27

近年、雑誌やインターネットで抗酸化という言葉を耳にすることが多くなりました。なんとなく良さそうなイメージはあるかもしれませんが、抗酸化とは具体的になんのことかわからない、体にどういった作用があるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、抗酸化の重要性について詳しく説明し、日常生活で実践できる酸化ストレスの予防法をお伝えします。

「抗酸化」とは?よく耳にする抗酸化作用の役割は?

体内では、呼吸で酸素を取り込み、その酸素を利用してエネルギーを生成しています。この際に取り込んだ酸素の約1~3%が、体内で活性酸素に変化します。

活性酸素は高い反応性をもち、体内に侵入したウイルスや細菌などの病原微生物を攻撃します。しかし一方で、活性酸素が過剰な状態になると、体内で脂質、タンパク質、核酸などの体を構成する成分を攻撃します(1)。

体内には活性酸素の傷害からの防御機構が備わっており、通常はバランスがとれています。しかし活性酸素が過剰に産生されるとこのバランスが崩れ、フリーラジカルと呼ばれる不安定な分子が作られます。このフリーラジカルが体の細胞に障害を与えることを酸化ストレスといい、酸化ストレスにより体の細胞が傷害されます。

酸化ストレスは、紫外線、大気汚染、飲酒、喫煙、ストレス、過剰な運動などが誘因となり、活性酸素が過剰に生成されることで引き起こされます。活性酸素と脂質が反応すると脂質酸化物が生成され、これが動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞などの原因になるとされています(2)。そのほかにも、活性酸素はタンパク質と反応し酵素の働きに影響を与えたり、核酸と反応することでDNA鎖の切断を引き起こし発がんに寄与したりすることがあります。

活性酸素から自己を防御するシステムには、スーパーオキシドジスムターゼ、カラターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの内因性抗酸化酵素や、ビタミンC、ビタミンEなどの外因性の抗酸化物質があります。体内では活性酸素の産生と抗酸化作用が生体内で複雑に作用しバランスをとっています。しかし内因性の抗酸化酵素は、加齢にともなって産生が減少していきます。
 

なぜ「抗酸化」が注目されているのか?

通常、体内では活性酸素の産生と抗酸化作用がバランスを保ちながら作用しています。しかし活性酸素が過剰となると、体内のタンパク質や核酸などを傷害し、心血管系疾患やがん、生活習慣病などのさまざまな疾患を引き起こす要因となります。

過剰な活性酸素は健康に悪影響を及ぼすリスクがあるため、活性酸素を減らし自己を守る抗酸化作用を高めることが重要です。抗酸化作用には、活性酸素の産生を抑制する働きやダメージを受けた細胞の修復や再生を促す働きがあり、近年注目を集めています。

活性酸素は酸化ストレスのような悪影響が注目されがちですが、体内では感染防御や、細胞間のシグナル伝達、細胞の分化、アポトーシスなどの生理活性物質として利用され重要な役割を果たしています。そのため単に活性酸素を除去するのではなく、活性酸素と抗酸化作用の適切なバランスをとることが重要です。

 

抗酸化作用による期待できる健康効果は?

抗酸化作用によって、次のような効果が期待できます。

心血管系疾患の予防

活性酸素が脂質を傷害すると、過酸化脂質が生じます。これにより動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞などの心血管系疾患が発生します。抗酸化作用はこの反応を抑制することで、心血管系疾患の予防が期待されます。
 

がん予防

活性酸素がDNAを攻撃することでDNAの変異が生じ、その結果がんが発生する可能性があります(3)。抗酸化作用によってDNAへの傷害を防ぐことが期待されます。しかし、現段階では抗酸化サプリメントががんリスクを低下させるかどうかについては明らかではありません。
 

アンチエイジング

過酸化脂質や過酸化たんぱく質が変性すると、リポフスチンという色素物質に変わります。これは別名「老化色素」と呼ばれ、シミの原因になります。さらに、細胞の酸化はシワやたるみの原因にもなります。

抗酸化作用により肌へのダメージを抑えることで、肌を美しく若々しく保つことができます。
 

認知症予防

抗酸化作用は認知症予防にも有効かもしれません。アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβの蓄積を抑える効果があるとされています(4)。
 

免疫機能の向上

体内で酸化ストレスが起こると細胞が傷害され、免疫機能が十分に発揮できなくなります。抗酸化作用によってこれを予防し、免疫機能を向上させることができます。

 

代表的な抗酸化物質は?

抗酸化物質とは、活性酸素の産生を抑制したり、活性酸素そのものを取り除く働きがある物質です。活性酸素は体内に取り込まれた酸素が活性化したものですが、電子的に不安定な状態です。抗酸化物質は酸化されやすい特性を持ち、抗酸化物質が体内の細胞より先に酸化されることで、細胞の酸化を防ぎます。

以下に代表的な抗酸化物質を説明します。

 

ビタミンA

緑黄色野菜に含まれるβカロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変わります。ビタミンAの前駆体であるβカロテンは、抗酸化作用が強いことが知られています。
 

ビタミンC

ビタミンCは抗酸化作用が強いだけではなく、他の抗酸化物質の産生をサポートします。抗酸化作用によって酸化したビタミンEを還元し、抗酸化作用を回復させる効果があります。
 

ビタミンE

細胞膜にあるリン脂質の産生を防ぎ、活性化脂質の産生を防ぎます(5)。悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを減少させる効果もあります。
 

ポリフェノール

ポリフェノールは、植物が紫外線から身を守るために作る物質で、強い抗酸化作用があります。天然のポリフェノールは7000種類以上もあり、以下で説明するアントシアニンやイソフラボンなどが代表的です。
 

アントシアニン

ブルーベリーなどのベリー類に多く含まれます。ポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用があります。
 

イソフラボン

ポリフェノールの一種で、大豆に多く含まれます。抗酸化作用だけでなく、エストロゲン作用や骨粗鬆症予防硬化もあります(6)。
 

カロテノイド

植物や動物にある黄色や赤色の色素です。緑黄色野菜や柑橘類、甲殻類などに多く含まれます。βカロテンやリコピンなどが代表的なカロテノイドで、βカロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変わり抗酸化作用を発揮します(7)。
 

オメガ3脂肪酸

α-リノレン酸、EPA、DHAなどを総称してオメガ3脂肪酸といいます。α-リノレン酸はごま油やあまに油に、EPA、DHAは魚に多く含まれます。抗酸化作用が強く、糖尿病や冠動脈疾患イベントを減らす可能性が示唆されています(8)。

 

抗酸化物質を多く含む食品リスト

抗酸化物質を多く含む食品は数多くありますが、代表的なものを以下に示します。

  • ほうれん草、人参、ピーマン、ブロッコリー(ビタミンA)

  • キウイ、グレープフルーツ、いちご、アセロラ(ビタミンC)

  • アーモンド、アボカド、かぼちゃ植物油(ビタミンE)

  • トマト、柿(リコピン)

  • 赤ワイン、ブルーベリー(アントシアニン)

  • 緑茶、紅茶、ウーロン茶(カテキン)

  • 大豆、納豆、豆乳(イソフラボン)

  • 魚、ごま油、亜麻仁油(オメガ3脂肪酸)

1つの栄養素や食品を大量に摂取するのではなく、これらをバランス良く食べることが大切です。

 

抗酸化作用を高める生活習慣

抗酸化作用を高めるのは食事だけではありません。以下のような生活習慣を取り入れ、抗酸化作用を高めましょう。

適度な運動

激しすぎる運動は呼吸量が増加することで取り込む酸素が増え、活性酸素が多く発生します。しかし適度な運動は抗酸化酵素を誘導し、酸化ストレスの増大に対応することが知られています(9)。また、軽い運動は活性酸素の誘引であるストレスの解消に効果があります。
 

ストレス管理

ストレスは活性酸素の産生を促します。日頃からストレスを溜め込まないよう、適度なストレス解消を心がけましょう。
 

睡眠の質と時間の確保

睡眠は体を休める効果があります。睡眠の質を高めることで酸化ストレスが減少し、抗酸化作用が向上します。睡眠を促すメラトニンというホルモンには抗酸化作用があるため(10)、夜ふかしせずに睡眠のリズムを作ることで抗酸化作用が高まります。
 

禁煙

たばこの煙にはフリーラジカル、一酸化窒素などのオキシダントが含まれていることから、喫煙により酸化ストレスが強くかかります。喫煙をしている場合は、禁煙することで酸化ストレスにさらされる機会を減らすと良いでしょう。
 

飲酒は適度に

アルコールを分解するときに活性酸素が発生します。お酒を飲む場合は適量を意識しましょう。
 

まとめ:抗酸化作用を意識した健康的な生活を送りましょう

抗酸化作用は体の状態を良好に保つために、大変重要であることをお伝えしました。抗酸化作用を高めるには、紫外線、飲酒、喫煙、ストレスなど、酸化ストレスになる要因をできるだけ取り除き、酸化ストレスを引き起こさないようにしましょう。

また、抗酸化作用のある食品を積極的に摂取し、ストレス管理や十分な睡眠を取り、抗酸化作用を高める生活を送りましょう。

参考資料:
  1. 活性酸素と酸化ストレス. e-ヘルスネット
  2. J. L. Witztum and D. Steinberg. Role of oxidized low density lipoprotein in atherogenesis. . The journal of clinical investigation. 88. (6). : 1785–1792. ;1991 PMID:1752940
  3. A. J. Didier, J. Stiene, L. Fang, D. Watkins, L. D. Dworkin, and J. F. Creeden. Antioxidant and anti-tumor effects of dietary vitamins A, C, and E. . Antioxidants (Basel, Switzerland). 12. (3). : 632. ;2023 PMID:36978880
  4. American academy of neurology. Higher Antioxidant Levels Linked to Lower Dementia Risk
  5. L. Robertsii, J. Oates, M. Linton, S. Fazio, B. Meador, M. Gross, Y. Shyr, and J. Morrow. The relationship between dose of vitamin E and suppression of oxidative stress in humans. . Free radical biology & medicine. 43. (10). : 1388–1393. ;2007 PMID:17936185
  6. H. Esaki and S. Kawakishi. Formation and antioxidant role of the o-dihydroxy isoflavones in fermented soybean foods. . JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN. 97. (1). : 39–45. ;2002
  7. カロテノイド. e-ヘルスネット
  8. H. Hajianfar, Z. Paknahad, and A. Bahonar. The effect of omega-3 supplements on antioxidant capacity in patients with type 2 diabetes. . International journal of preventive medicine. 4. (Suppl 2). : S234–8. ;2013 PMID:23776730
  9. IRYO 69(7), 317-324, 2015.
  10. B. Poeggeler, R. J. Reiter, D. X. Tan, L. D. Chen, and L. C. Manchester. Melatonin, hydroxyl radical-mediated oxidative damage, and aging: a hypothesis. . Journal of pineal research. 14. (4). : 151–168. ;1993 PMID:8102180