健康管理や体質調整、腸内環境の維持をするためにプロバイオティクスを補給する人が、近年特に増えています。プロバイオティクスには、私たちの体に有益な効果をもたらすことを示唆する非常に多くの研究報告がありますが、プロバイオティクスは生きた微生物であるため、どのように摂取するか、いつ摂取するかを理解していないと、本当の価値を引き出すことは難しくなってしまいます。
また、プロバイオティクスを摂取するだけではなく、プロバイオティクスの成長を助ける「プレバイオティクス」を十分に摂取することも重要となります。
この記事では、プロバイオティクスの基本情報や正しい摂取方法、見落としがちなプロバイオティクス摂取の注意点についてご紹介します。
プロバイオティクスはどんなもの?基本情報や効果のまとめ!
プロバイオティクスとは、現在「適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物」を総称する言葉として用いられる、乳酸菌やビフィズス菌などのよく知られる菌株が含まれる微生物のグループです(1)。プロバイオティクスは、腸内環境を改善することで消化器の健全な働きを促進するほか、全身の健康や脳機能にまで影響を与えることが知られています(2)。
私たちの腸内には、「腸内フローラ(花畑)」と呼ばれる、100兆個にも及ぶ腸内細菌が棲息しており、数え切れないほどの種類の腸内細菌がそれぞれ集団を形成してさまざまなシグナル物質を産生しています。腸内フローラのバランスが崩れていわゆる悪玉菌が増えると、腸の働きの悪化だけではなく、精神疾患や糖尿病、メタボリックシンドローム、免疫疾患など多くの病気のリスクになると考えられています(3)。
そのため、腸内フローラのバランスを整えるプロバイオティクスを摂取することは、お腹の健康だけではなく全身、さらに脳の健康にも重要であると示唆されています。
プロバイオティクス摂取の8つの注意事項を解説!
プロバイオティクスはその有益な効能から、非常に注目を集める健康食品となっています。しかし、プロバイオティクスは基本的に生きた微生物であり、期待する効能を得るためには、生きた状態でプロバイオティクスを腸まで届けるための、適切な摂取方法を理解しておくことが非常に重要となります。
そこでここでは、プロバイオティクスの摂取で見落としがちな、8つの注意事項と適切な摂取方法を解説していきます。
注意事項1:プロバイオティクスを摂取するタイミングを意識する
プロバイオティクスは、ガセリ菌やビフィズス菌など多様な種類があり、それぞれが異なった働きを持つと同時に、それぞれ生存力にも違いがあることが知られています(2)。そのため、プロバイオティクス製品を摂取するタイミングは、その製品が用いるプロバイオティクスの菌株や、製品が消化管の酸やアルカリに耐性を持つ特殊な詰め込み技術を持っているかどうかによって異なります。
酸に弱いプロバイオティクスを生きた状態で腸へ届けられるよう、特殊なカプセルやコーティングに詰め込む技術はよく研究されており、その効果も報告されています(4)。詰め込み技術が用いられたプロバイオティクスサプリメントの場合は、消化液への耐性を確保していることが多く、食前、食後、空腹時などいつでも摂取できるものが多いです。
逆にそれ以外の場合は、胃酸の影響が緩和されやすい食後や食事中に摂取することをお勧めします。ヨーグルトなど食品自体がプロバイオティクスを含むものも多いため、そういった食品を利用することも有効的です。これにより、プロバイオティクスの生存率の向上が期待できます。
注意事項2:プロバイオティクスをコーヒーや紅茶などと混ぜない
プロバイオティクスは生きた微生物を腸まで届けると有効的であるため、冷たい水や常温水と一緒に服用することが適しています。コーヒーや紅茶などのカフェインを含む飲み物は、プロバイオティクスの増殖を阻害することが研究で報告されているため、一緒に摂取しないことが望ましいです(5)。もしカフェインの入ったものを飲む場合は、プロバイオティクス製品を1〜2時間ほど間隔をあけて摂取することをお勧めします。
注意事項3:熱い食べ物や飲み物と一緒にプロバイオティクスを摂取しない
プロバイオティクスに数えられる菌の多くは熱に弱く、高温のお湯やスープは活性菌を死滅させ、プロバイオティクスの本来の効果を損なう可能性があります。プロバイオティクスを摂取する際には、冷たい水や常温水と一緒に摂取することを推奨します。
注意事項4:プロバイオティクスを抗生物質と一緒に服用しない
抗生物質は「抗菌薬」に含まれる薬剤の一種で、菌の増殖を防ぐためのものであるため、身体に良い作用を持つプロバイオティクスに対しても菌の善悪を区別できずに排除してしまう可能性があります。「プロバイオティクス(probiotics)」という言葉は「生きるための菌」というラテン語が由来とされており、「抗生物質(antibiotics)」とは、相性が良いものではないと言えます(6)。そのため、自身が抗生物質を服用しているか、抗生物質治療を受けている場合は、治療が終了してからプロバイオティクスを摂取することをお勧めします。
注意事項5:プロバイオティクスを摂取すべき体調かを考える
良い菌であっても、すべての人にとってプロバイオティクスを摂取することが適切であるとは限りません。重症患者である場合、化学療法を受けている場合、または免疫機能に異常があるなどの疾患がある場合は、まず医師に相談してから摂取するかどうかを決定することをお勧めします。プロバイオティクスの摂取が治療の効果に影響を及ぼす可能性があるため、病気の症状がある場合はまず医学・薬学的治療を優先する必要があります。
注意事項6:プロバイオティクスだけではなく健康的な食生活を意識する
プロバイオティクスを摂取することは消化器系の健康に役立ちますが、プロバイオティクスを摂取するからといって食生活をおろそかにしてしまうと、せっかくの効能が無駄になってしまう可能性があります。たとえば、揚げ物を多く食べた場合に腸内環境がどう変化するのかを調べた研究では、揚げ物を多く食べた群の腸内フローラの菌株数が減少し、腸内毒素が増えたことが報告されています(7)。また、過度に辛い食品も多くの腸内細菌を死滅させてしまうことが知られており、このような食品の過度な摂取は控えることが重要です。
注意事項7:複数種類のプロバイオティクスを摂取する
ヨーグルト、酸乳、味噌、納豆、キムチ、ぶどう、グレープフルーツなどにはプロバイオティクスが含まれています。プロバイオティクスの最良の摂取方法は、これらの異なる食品をバランスよく摂取することです。食品以外からプロバイオティクスを補給したい場合は、まず適切な菌株を選択する必要があります。プロバイオティクスはガセリ菌やビフィズス菌など菌株によって働きが異なるほか、人それぞれ異なる体質、健康状態、生活習慣があるため、期待に適したプロバイオティクスも異なります。最適な方法は、プロバイオティクスの種類を定期的に調整することです。1つのプロバイオティクスを約2〜3ヶ月摂取しても明らかな効果が得られない場合は、他のプロバイオティクスに切り替えることをお勧めします。
注意事項8:プロバイオティクスの働きを活性化するプレバイオティクスも摂取する
「プロバイオティクス」と非常によく似た言葉として「プレバイオティクス」というものがあります。プレバイオティクスは、「pre(前の、先立つ)+biotics」という由来を持つ言葉で、プロバイオティクスである菌が十分に働く上で重要となる栄養素を指し、オリゴ糖や食物繊維の一部(イヌリンなど)が含まれ、大麦や大豆などから摂取できることが知られています(8)。プロバイオティクスとプレバイオティクスを両方合わせて摂取することは、プロバイオティクスの効能を期待する上で非常に重要であると考えられています。
プロバイオティクス摂取のポイントのまとめ
ここまで解説したプロバイオティクスの摂取のポイントをまとめると、次のようになります。
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プロバイオティクスが生きた状態で腸に届くように熱くない温度で摂取する
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大麦や大豆などから摂ることができるプレバイオティクスも合わせて摂取する
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偏った選び方をせずにバランスよくプロバイオティクスと食事を摂取する
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ニーズによってプロバイオティクスの種類を選ぶとともに必要時は医療を頼る
これらのポイントを押さえた上でプロバイオティクスを適切に摂取することが、期待する効能を得るだけでなく、健康を維持する上でも重要であると考えられます。