日頃から、ビタミンDを意識して摂り入れている方は少ないのではないでしょうか。ビタミンDは身体の健康にとって重要な栄養素ですが、日本人の多くは不足気味といわれています。ビタミンDが不足すると身体にさまざまな悪影響が出る恐れがあるため、意識して摂取することが大切です。
この記事では、ビタミンDの摂取状況や不足することによる影響、適切に摂り入れる方法についてご紹介します。栄養素をうまく摂り入れる方法を知ることで、健康的な生活を送るきっかけとなるでしょう。
日本人はビタミンDが不足している?
日本人の多くは、ビタミンDが不足しているとされています。具体的に、日本人の約98%がビタミンD不足になっているという報告があります。さらに国内の研究によると、日本人はとくに植物由来のビタミンDの摂取がほとんどなくなったということも示唆されているのです(1)。
ビタミンDは骨の健康だけでなく、感染症や心血管疾患などの発症にも関連があるとされています。詳細は後述しますが、ビタミンDが不足すると日常生活にも大きな支障をきたす恐れもあります。このような状況を考慮すると、日本人にとってビタミンD不足は大きな問題といえるでしょう。
これらの問題を解消するためには、ビタミンDについて関心を持ち、適切な摂取を心がけることが大切です。
ビタミンD不足の一般的な症状、セルフチェックしよう
ビタミンD不足による症状は、気づきにくいものも多いです。しかし、いくつか特徴的な症状もあるので、セルフチェックが可能です。ビタミンDの不足によって起こる症状について、セルフチェックしてみましょう。
疲労感や倦怠感がある筋力が衰えている
骨や筋肉の痛みがある
転倒しやすくなった
気分の落ち込みがある
これらの症状に多く当てはまっている場合、ビタミンDが不足している可能性があります。ビタミンDは体内のエネルギー代謝や筋肉・骨の維持などに関わっている栄養素なので、不足することで身体に関係する症状が現れます。さらに、精神上の問題にも関連があるとされており、不足することで気分の落ち込みがみられるケースも少なくありません(2)。
ただし、これらの症状は他の健康問題でも起こる可能性があるので、自己診断だけで判断しないように注意しましょう。不安な方は医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。
ビタミンD不足が骨の健康に与える影響
ビタミンDは骨の健康に関与しており、不足することで身体に問題が生じる場合があります。ここでは、ビタミンDの不足によって起こる骨の影響について解説します。
骨密度の低下
ビタミンD不足は、骨密度の低下を引き起こす可能性があります。骨密度とは骨の強さを示す指標で、低下によって発症する代表的な病気が骨粗鬆症です。ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、骨の形成をサポートする役割があるとされています(3)。
しかし、ビタミンDが不足するとカルシウムをうまく吸収できず、骨の形成に悪影響が出てくるのです。とくに高齢者は骨形成の働きが弱くなり、骨密度が低下しやすい傾向にあります。高齢者は加齢による影響に加えて、ビタミンDの不足によってさらに骨密度が悪化する恐れがあります。骨密度の低下は目に見えにくい変化ですが、長期的には骨折のリスクを高める可能性があるので、注意が必要です。
骨軟化症の発症リスク
ビタミンD不足が続くと、骨軟化症を発症するリスクが高まります。骨軟化症とは、骨の石灰化(骨を硬くすること)がうまくいかず、骨がやわらかくなる病気です(4)。ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促進し、骨の形成および石灰化に必要な成分を供給します。
しかし、ビタミンDが不足すると、これらの成分が十分に吸収されず、骨の石灰化が進まなくなります。その結果、骨密度の低下とともに骨がやわらかくなり、変形しやすくなるのです。骨軟化症の症状は以下のとおりです。
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骨の痛み(腰や股関節など)
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筋力の低下
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歩行障害
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骨折のリスク増加
骨軟化症が進行すると骨折が進み、日常生活にも大きな支障をきたす可能性が高まります。
くる病の発症リスク
ビタミンD不足は成人だけでなく、子どもにも悪影響をきたす恐れがあります。成人では骨軟化症でしたが、子どもの場合は「くる病」と呼びます。くる病は骨軟化症と同じように、骨がやわらかくなる病気です(5)。成長期の子どもは骨の形成が活発なので、ビタミンD不足の影響を受けやすく、くる病を発症する可能性が高くなります。くる病のおもな症状は以下のとおりです。
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骨の変形(O脚やX脚など)
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成長の遅延
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歯の生え遅れ
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虫歯のなりやすさ
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筋力の低下
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易疲労性
くる病を予防するためには、子どもの段階からビタミンDを適切に摂取することが大切です。
ビタミンD不足による免疫系への影響
ビタミンD不足は骨だけでなく、免疫系に悪影響を及ぼす可能性もあります。ビタミンDは細菌やウイルスなど、外部の刺激から身体を守る免疫機能をサポートする働きがあるとされています(3)。ビタミンDが不足すると免疫機能の働きが低下し、身体の抵抗が弱まってしまうのです。その結果、さまざまな感染症やアレルギーを引き起こしやすくなります。高齢者や慢性疾患を持つ方は、ビタミンD不足による免疫機能の低下がより顕著に現れることがあるため、注意が必要です。
ビタミンD不足の予防と対策
ビタミンDの不足を予防するためには、どのような対策をとればよいのでしょうか。ここでは、その対策について詳しく解説します。
ビタミンDを含む食べ物の摂取
まず重要なのが、ビタミンDを多く含む食べ物を積極的に摂取することです。ビタミンDが豊富な食べ物の代表例として、以下があげられます。
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魚類(サケ、サンマなど)
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きのこ類(シイタケ、マイタケなど)
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卵黄
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乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)
これらの食べ物を日々の食事に取り入れることで、ビタミンDを十分に補給できます。ただし、人によっては食事だけでビタミンDを十分に摂取できない場合もあります。そのような方は、後述する日光浴やサプリメントの活用も検討してみてください。
日光浴
ビタミンDを摂取するもう1つの方法として、日光浴があります。ビタミンDは食事からだけでなく、日光に含まれる紫外線を浴びることでも生成されるのです。効率よくビタミンDを生成するためには、日差しが強くなりやすい日中帯がよいとされています。日光浴の時間としては、1日15〜30分程度を目安にしておきましょう(6)。
ただし、日光に含まれる紫外線は肌にストレスがかかり、日焼けや皮膚がんのリスクを高める可能性があります。また天候や季節によっては、ビタミンDをうまく生成できないケースがある点に注意してください。
サプリメントの活用
食事や日光浴だけでビタミンDを十分に補給することが難しい場合、サプリメントの活用も有効な選択肢です。とくに室内で過ごす時間が長く、日光を浴びる機会が少ない方にとっては、サプリメントがおすすめといえます。ビタミンDは脂溶性なので、以下のような脂質が含まれている食べ物と一緒に摂取することで、効率よく吸収できます(7)。
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魚油
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ナッツ
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亜麻仁油
ただし、サプリメントを使用する際は過剰摂取に注意が必要です。ビタミンDを過剰摂取すると、高カルシウム血症をはじめとした病気を引き起こす恐れがあります。適切な用量と摂取方法を守り、身体に異常が現れた際は速やかに服用を中止しましょう。
ビタミンDを取り入れる習慣をつけよう
ビタミンD不足は、骨の健康や免疫機能に悪影響を及ぼす可能性があります。日本人はとくにビタミンD不足になりやすいため、意識的に摂取する必要があります。ビタミンDを確保するためには、適切な食べ物を取り入れたり、日光浴をしたりすることが大切です。また、それらの方法でうまくビタミンDを摂取できない場合は、サプリメントの活用も1つの手段です。日々の生活の中で、ビタミンDを意識的に摂取する習慣をつけることで、健康的な身体作りにつながります。ぜひ今回の記事を参考にして、自身の生活習慣を見直してみましょう。