ビタミンAは「目の働きを助けるビタミン」としてご存じの方も多いのではないでしょうか。しかしながら、普段からあまり意識して摂取していないかもしません。ビタミンAは摂取不足だけでなく、過剰にも注意が必要なビタミンです。
ここでは、ビタミンAの効果や働き、摂取おける注意点について解説しています。
ビタミンAとは?
ビタミンには、水に溶けやすい水溶性ビタミンと、油脂に溶けやすい脂溶性ビタミンがあります。ビタミンAは脂溶性ビタミンの一つで、体内で生成できないため食物から摂取する必要があります。。
ビタミンAはレチノイドと呼ばれ、構造の違いからレチノール、レチナール、レチノイン酸に分類されます。また、体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAもビタミンAの重要な供給源で、カロテノイドがその代表です。カロテノイドには、β-カロテン、α-カロテン、クリプトキサンチンなどがあります。
ビタミンAの主要成分とされるレチノールと、プロビタミンAの代表であるカロテノイドは、以下のような食物の中に多く含まれています。(1)
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レチノール:動物由来のビタミンAで、動物性の肝臓、魚油、乳製品などに多く含まれています。
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カロテノイド:植物由来のビタミンAで、プロビタミンAと呼ばれています。。にんじん、かぼちゃ、パプリカ、ブロッコリー、濃緑色の葉野菜などに豊富に含まれています。
ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、過剰に摂取すると体内に蓄積されやすい性質があります。摂取量の不足だけでなく、過剰にも注意しなければなりません。
厚生労働省のビタミン A の食事摂取基準に従って適量のビタミンAを摂取することが推奨されています。(5)
ビタミンAの効果
ビタミンAを含む食品
ビタミンAの含有量や推奨摂取量は、レチノール活性当量として「μgRAE」という単位であらわされます。以下に100gあたりのレチノール活性当量が多い食品を示しています。(6)
食品 |
100gあたりのレチノール活性当量(μgRAE) |
鶏レバー(生) |
14,000 |
豚レバー(生) |
13,000 |
うなぎの肝(生) |
4,400 |
あまのり(ほしのり) |
3,600 |
有塩バター(発酵) |
780 |
卵黄(生) |
690 |
皮付きにんじん(生) |
720 |
ゆでほうれん草(冷凍) |
590 |
ドライマンゴー |
500 |
赤肉メロン |
300 |
ビタミンAは通常、動物の内臓(豚レバー、鶏レバー)、魚、卵、乳製品に多く含まれています。
緑黄色野菜、にんじん、メロンなどの果物にはβ-カロテンが豊富に含まれています。人は体内で、β-カロテンを油脂と一緒に料理したり加熱処理したりすることで、食品中のβ-カロテンの吸収率が向上します。
一般的にレチノールの体内への吸収率は約70~90%です。一方、β-カロテンの体内への吸収率は約10~20%(1/6)で、β-カロテンのレチノールへの変換効率は約50%(1/2)です。つまり、食品由来のβ─カロテンのビタミンA としての生体利用率は、1/12(=1/6×1/2)となり、食品由来β─カロテン 12μg はレチノール 1μg に相当する量(レチノール活性当量:RAE)であるという換算になります。(5)
ビタミンAはいつ摂取すれば良い?
ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、油脂類と一緒に摂取することで吸収率が高まります。例えば、ビタミンAが豊富な食品であるにんじんやほうれん草を調理する際に、オリーブオイルやバターなどの油脂を使うと、ビタミンAの吸収が促進されます。油ビタミンAの吸収を高めるためには、食事中や食後に、油脂(フィッシュオイルなど)と一緒に摂取することをこころがけましょう。
ビタミンAの推奨摂取量
厚生労働省発表の日本人の食事摂取基準(2020年版)は、年齢層や性別によって、推奨される摂取量(μgRAE/日)を定めています。
推奨摂取量(μgRAE/日) |
男性 |
女性 |
0-5か月 |
300 |
300 |
6-11か月 |
400 |
400 |
1-2歳 |
400 |
350 |
3-5歳 |
450 |
500 |
6-7歳 |
400 |
400 |
8-9歳 |
500 |
500 |
10-11歳 |
600 |
600 |
12-14歳 |
800 |
700 |
15-17歳 |
900 |
650 |
18歳以上 |
850 |
650 |
妊娠初期・中期 |
/ |
+0 |
妊娠後期 |
/ |
+80 |
授乳婦 |
/ |
+450 |
高齢者(65-74歳) |
850 |
700 |
高齢者(75歳以上) |
800 |
650 |
ビタミンAの過剰摂取による副作用は?
ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、過剰なビタミンAは、肝臓や脂肪組織に貯蔵されます
ビタミンAの過剰摂取によっておこる急性の健康障害は、通常1回または数回にわたって非常に高用量のビタミンAを摂取した後、数日から数週間以内に発症します。脳脊髄液圧の上昇が顕著であり、頭痛や吐き気、めまいなどの症状を伴います(5)。
慢性の健康障害としては、頭蓋内圧亢進、頭痛、皮膚の落屑や乾燥、脱毛、筋肉痛や関節痛、疲労感、肝機能検査値の異常などがあげられます。またビタミン A 過剰摂取による先天奇形の増加の報告もあるため、妊娠を計画中の方や妊娠 3 か月以内の方は、ビタミン A 含有量の多い食物やビタミン A を含むサプリメント等を継続的に大量摂取しないことが重要です。β‐カロテンに関しては、ビタミン A が不足した場合に体内でビタミン A に変換されるため、β‐カロテンの摂取過剰による健康障害を気にする必要はないでしょう。
ビタミンA不足の症状とは?
ビタミンAが不足すると、さまざまな健康問題が発生する可能性があります。もっとも知られている症状の一つは夜盲症で、暗い場所での視力が低下する病気です。乳幼児では角膜乾燥症から失明にいたる可能性もあります(5)。また、皮膚が乾燥しやすくなり、角質が厚く硬くなることでシワができやすくなる場合もあります。さらに、バリア機能をもつ皮膚や粘膜に障害が起こることにより、免疫機能が低下し感染症にかかりやすくなることもあります。子供の場合、成長が遅れたりや骨の発達に問題が生じたりする可能性があります。ビタミンAの不足は、眼や皮膚、免疫系の健康に深刻な影響を及ぼすため、適切な量を摂取することが重要です。
ビタミンAの摂取に注意が必要な方とは?
ビタミンAの過剰摂取により先天奇形の報告があるため、妊娠を計画中の方や妊娠 3 か月以内の方は、ビタミン A 含有量の多い食物やビタミン A を含むサプリメント等を継続的に大量摂取しないように注意しましょう。妊婦は日常生活の中で、バランスの良い食習慣をこころがけましょう。
また、ビタミンAと相互作用がある医薬品もあります。パクリタキセル(一般名)という抗がん剤との併用で抗がん剤の副作用が増強したり、テトラサイクリン系の抗生剤との併用で頭蓋内圧上昇や頭痛を起こしたりする可能性があります。これら以外にもビタミンAと相互作用のある医薬品があるため、薬を服用している場合には、医師や薬剤師に相談することをお勧めします(1) (7)(8)。