寝不足での頭痛は、誰しもが経験したことがあるでしょう。
寝不足で眠い上に頭痛があり、とてもつらい状態です。
仕事が忙しい、不安があって眠れない、睡眠のタイミングが悪いなど、いろいろな状況で寝不足になります。
頭痛は仕事や日常生活に大きく影響し、通常の日常生活を送ることも困難になる場合があります。
さらに、寝不足は頭痛だけでなく、高血圧、糖尿病などのリスクが高まったり、集中力の低下、意欲低下、イライラしやすくなるなど、さまざまな健康上の問題を起こします。
この記事では、寝不足で頭痛が起こる原因や治し方を解説します。日常生活で悩んでいる方は、ぜひチェックしてみてください。
寝不足と頭痛の関係
寝不足になると、どのような頭痛になるのでしょうか。特徴を解説します。
寝不足について
寝不足とは、日中正常に活動するために必要な睡眠をとることができず、昼間に眠気が起こる状態をいいます。
令和元年国民栄養・健康調査(1)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男性37.5%、女性40.6%です。
さらには睡眠の質については、日中眠気を感じたことがある人は男女ともに30%以上にのぼり、寝不足を感じる人はとても多いことがわかります。
慢性的な睡眠不足は、医学的には「睡眠不足症候群」と呼ばれます。
睡眠不足症候群には、以下のような特徴があります(2)。
睡眠不足症候群の特徴
-
眠気が強く日中に寝込んでしまうことがある
-
睡眠時間は同年代の基準値よりも短い
-
普段は目覚まし時計などで睡眠時間を短くしているが、休日は長く眠る
-
少なくとも3ヶ月間、ほとんど毎日症状がある
-
睡眠時間を長くすると、眠気が解消される
-
ほかの身体疾患、神経疾患、精神疾患が否定される
日本人の平均睡眠時間は6~8時間と言われています。
しかし、適切な睡眠時間については人によって大きく変わり、8時間以上必要な場合もあれば、それ未満で眠気を感じない場合もあります(3)。
睡眠不足であっても、自身の眠気の原因が睡眠不足と考えられていないこともあります。
十分な時間だけでなく、睡眠の質も大切です。
自分が日中に眠気を感じない時間が、自身に合った睡眠時間です。日中の活動が問題ないような睡眠時間を目指しましょう。
頭痛について
寝不足が引き起こす頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛があります。それぞれの特徴と寝不足との関係を説明します。
片頭痛
片頭痛は、脈打つようなズキズキとした拍動性の頭痛が特徴です。名前のとおり頭の片側に起こることが多いですが、4割程度の患者さんが両側性の頭痛を経験します。
片頭痛の患者さんのおよそ半数が、睡眠不足がきっかけで片頭痛を起こしたとことがあるという報告もあります(4)。
片頭痛は、寝不足で起こるほかに、ストレス、天候の変化、月経周期、におい、音、光などさまざまな要因で発症します。
頭痛の前にキラキラした光が視界に現れる前兆(閃輝暗点)が起こる場合があります。また、片頭痛が起こる数時間前に首がこる、眠気やあくびが出るといった予兆が起こることもあります。
片頭痛は吐き気や嘔吐を伴い、頭痛の症状が強く寝込んでしまう場合もあります。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、頭全体が締め付けられているような圧迫感が起こる頭痛です。
身体的、精神的ストレスがきっかけで発症します。たとえば、パソコンや事務作業で長時間同じ姿勢をとることで首や肩がこったり、日常での精神的ストレスが原因となります。
寝不足によるストレスで筋肉が緊張した状態になると、緊張型頭痛を起こします。
頭痛の程度は軽症~中等度で、寝込んでしまうほどではないものの頭痛のために日常生活に支障が出ることがあります。
どちらの頭痛も睡眠不足がきっかけで発症する頭痛です。
寝不足が頭痛を引き起こす原因
片頭痛
寝不足により脳の血管が拡張し、拡張した血管が、顔面の感覚を担っている三叉神経を圧迫します。
すると、サブスタンスPやカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの神経ペプチドを産生し、炎症が起こり頭痛が発症します(5, 6)。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は末梢性疼痛メカニズムと中枢性疼痛メカニズムがあります(7)。
神経や筋肉が過度に緊張することで痛みの感覚が過敏となり頭痛が発症するのが末梢性疼痛メカニズムです。
緊張によって刺激が持続することで、脳が少しの刺激にも反応しやすくなり、痛みの感覚が増強される機序を中枢性疼痛メカニズムといいます。
寝不足になると、筋肉が常に緊張した状態になります。
すると筋肉がこわばり、肩や首のこりを引き起こし、さらには緊張が続くことで少しの刺激にも反応しやすくなり、緊張型頭痛を起こします。
寝不足による頭痛の治し方と対策
それでは、寝不足による頭痛はどのように治したら良いのでしょうか?
眠る環境を整える
寝不足によって頭痛が起こるのであれば、まずは十分な睡眠を取れるようにすることが重要です。
片頭痛がある患者さんのおよそ半数が寝付きが悪い、途中で目が覚めるなどの睡眠障害を抱えています。
片頭痛の患者さんのうち、睡眠時間が6~8時間の場合が最も片頭痛の症状が軽いという報告もあり、寝不足はもちろん寝すぎも頭痛を起こしてしまうことがわかります(8)。
遮光カーテンを使用したり、耳栓を使用したりすることで光や音が少ない環境を作ると、眠りにつきやすく深い眠りにつくことができます。
眠る前にスマートフォンやパソコンの光を見ると脳が興奮してしまうため(9)、眠る1,2時間前はスマートフォンの使用は控えましょう。
体内時計を24時間にリセットするため、朝起きたら日光浴をして24時間のリズムを作ることが大切です。
リズムを作ると自然と夜に眠くなることができます。
首や肩への負担が少ない枕を選ぶとより眠りにつきやすく、肩こりの予防にもつながります。
仮眠
眠気がつらい場合は、日中に仮眠をとると症状が緩和されます。
15~20分程度の時間仮眠すると、眠気が緩和されます(10)。
しかし、これ以上仮眠をとると、身体が熟眠モードに切り替わり寝覚めが悪くなるため仮眠のしすぎには注意しましょう。
適度な運動
激しい運動は頭痛が悪化する要因になりますが、散歩などの軽めの運動は疲労感が出て、寝付きがよくなります。
さらには、緊張型頭痛の原因である肩こりを解消する効果もあります。
肩や首を積極的に動かすことで肩こりを解消しましょう。
肩や首のマッサージも、筋肉の緊張をほぐすため頭痛の改善に効果的です。
入浴
緊張型頭痛は筋肉の緊張が原因です。
緊張をほぐすために湯船につかって体を温めると副交感神経が優位な状態になり、筋肉の緊張が緩和され血流が良くなり、頭痛改善が期待できます。肩や首に蒸しタオルを当てるのも良いでしょう。
片頭痛は血管が拡張して起こっているため、入浴でさらに悪化する可能性があるため気をつけましょう。
カフェインの摂取
片頭痛は、血管が拡張して頭痛が起こります。
カフェインは血管を収縮させる効果があり、頭痛を緩和させる効果があります。しかしカフェインには依存性があり、カフェインの過剰摂取で頭痛を起こす危険性があるため、過剰摂取には気をつけましょう(11)。
なお、緊張型頭痛は血流が悪くなることで起こる頭痛です。カフェイン摂取で悪化する可能性があるため注意が必要です。
鎮静薬を使用する
日中にどうしても痛みが強い場合は、痛み止めを使用しましょう。
急性期治療-鎮静薬
急性期治療は痛みが起こっているときに痛みを抑える治療で、NSAIDsなどの鎮痛薬を使用します。
予防療法
予防療法は、頭痛の発作を起こりにくくし、起こった場合の痛みを軽くするための治療です。頭痛の頻度や程度などで治療を選択します。
緊張型頭痛も同様に急性期治療と予防療法を行います。痛みが強い場合には、NSAIDsなどの鎮痛薬を使用します(12)。
痛みが強い、頻度が多いといった場合は、抗うつ薬などを使用し頭痛の予防を行います。肩こりが原因で頭痛を起こす場合は、筋弛緩薬を使用することもあります。
鎮静薬はドラッグストアで販売されているため入手しやすく、困ったときにすぐ使えるメリットがあります。
しかし、使いすぎると薬が原因で頭痛が起こる「薬物乱用頭痛」を起こすことがあるため、使いすぎには注意しましょう(13)。
市販の痛み止めで治りにくい、症状が強いなどといった場合は、医療機関を受診して医師に相談しましょう。
まとめ
寝不足で頭痛が起こる原因と対策を解説しました。寝不足による頭痛は眠ることで緩和されるため、眠る環境を整えることが大切です。
しかし多忙な現代社会では、眠ることが容易でない場合もあります。その場合は、ここで紹介したような方法を使ってつらい頭痛の症状を緩和させましょう。