栄養素 - たんぱく質

シトルリン:血流改善のメカニズム【徹底解説】

監修者 佐藤 浩樹 医師 公開日:2024-06-07 最終更新日:2025-05-21

栄養素 - たんぱく質

シトルリン:血流改善のメカニズム【徹底解説】

監修者佐藤 浩樹 医師 公開日:2024-06-07 最終更新日:2025-05-21

「最近、疲れやすくなった」「スポーツのパフォーマンスを上げたい」「血流が気になる」そんな悩みをお持ちの方に、今注目を集めているのが『シトルリン』です。

シトルリンは「スーパーアミノ酸」として知られ、運動パフォーマンス向上・EDの改善といった男性への嬉しい効果や血管の健康維持にも役立つ成分です。

シトルリンは男性だけでなく、女性にも冷え性、むくみの改善効果にも役立つと言われています。

ただし、シトルリンは食品から十分に摂取するのは難しいため、サプリメントでの摂取が手軽でおすすめです。

健康で自信に満ちた毎日を送るために、シトルリンを積極的に取り入れていきましょう。

シトルリンとは

シトルリンとは、血行促進のアミノ酸の一つです。天然の食品では、スイカをはじめとしたウリ科の食品に豊富であり、たんぱく質源となる肉・魚・卵といった動物性食品にはほとんど含まれていません。

1930年に、日本の研究者がシトルリンはスイカの果汁から単離され、その存在が明らかになったアミノ酸です。「シトルリン (Citrulline)」という名前は、スイカのラテン語名​​Citrullusが由来となっています。

シトルリンは筋肉増強をサポートするアミノ酸の一種ですが、通常のたんぱく質合成過程ではアミノ酸として直接たんぱく質に組み込まれない性質があります。

シトルリンはたんぱく質を構成するアミノ酸の一つではなく、体内で血液や細胞・尿など全身に遊離した状態で遊離アミノ酸として存在し、一酸化窒素(NO)の合成に関わる重要な役割を担っています。

 

遊離アミノ酸とは
遊離アミノ酸は、通常のたんぱく質合成過程で直接たんぱく質に組み込まれないアミノ酸で、血液や細胞、尿など全身に遊離した状態で存在しています。

遊離アミノ酸は別の生理的役割を果たすために自由に存在しています。

参考:アミノ酸とは?筋肉や成長に良いアミノ酸の4つ効果と摂取タイミングを伝授

 

シトルリンが注目されている理由

シトルリンが注目されている理由は、下記のような効果が期待されているためです。

  • 血流改善効果が高い

  • 疲労回復

  • 運動パフォーマンスを向上

  • 副作用が少なく安全性が高い

 

シトルリンが血流を改善するメカニズム

 

NO(一酸化窒素)サイクル

シトルリンが体内でアルギニンというアミノ酸に変換され、そのアルギニンは血管を広げる働きを持つ「一酸化窒素(NO)」の生成を促進します。

NOは血管全体を拡張させて血流を促したり、血小板の凝集を防いで血液をサラサラにしたり、神経系・免疫系にも作用して健康維持に役立ちます(16)。

そのため、「NO(一酸化窒素)サイクル」は、血管内皮細胞内にあり、アルギニンがシトルリンに代謝される過程でNOを産生する回路です。

元となるアルギニンは、シトルリンから作られる経路もあるので、シトルリンを摂取することで、体内のアルギニン量が増え、結果的に一酸化窒素(NO)の生成と、NOサイクルが活性化され、血管の健康維持に繋がると考えられています。

 

シトルリンはアルギニンに変換

研究により、アルギニンと類似した構造を持つシトルリンを1日2回0.75g投与したヒトのグループでは、1日2回1.6gの徐放性アルギニンを投与したグループと同程度に、血中のアルギニン濃度が上昇することが明らかになりました(3)

シトルリンは体内でアルギニンに変換されるため、シトルリンを補給することで持続的にアルギニンを供給することが可能です。

このように、シトルリンは体内のアルギニン量を増加させる効果が、アルギニンを直接摂取した場合と同等であることが確認され、近年注目を集めています。

一方、アルギニンは一酸化窒素(NO)の産生に重要な物質として知られているものの、経口摂取しても腸内細菌や各種酵素によって分解されてしまい、血中のアルギニン濃度を十分に高めることが難しいという課題も報告されています(2)

シトルリンの摂取により、アルギニンの利用効率が高まり、さらにアルギニンを分解する酵素の働きが抑制されるため、血管内でのNO産生が効率的に促進され、健全な心血管機能の維持に寄与することが示唆されています (1)

また、アルギニンの代謝によってNOが持続的に産生されることから、シトルリンはNOの生理的機能を安定的に発揮させる上でも有用であると考えられています(4)

 

シトルリンの働き

シトルリンの代謝はNOの循環を調節する能力を持っているため、血管を拡張させる働きと心血管の健康をサポートすると考えられています(4)

そして、シトルリンは、運動中のパフォーマンスアップや血行促進に役立つと言われています。

さらに、疲労回復効果やと男性に嬉しい生殖機能の改善の効果も期待できますから、シトルリンは幅広い効能を持つサプリメントとして広く用いられています。
 

シトルリンが適している5類人

  1. 運動パフォーマンスや持久力を向上させたい人

  2. 筋肉量を増やすための筋トレや運動習慣を生活に取り入れている人

  3. 高血圧・動脈硬化などの進行を抑え心血管の健康をサポートしたい人

  4. 冷え性・むくみなどの血行不良による症状に悩んでいる人

  5. 生殖器の健康をサポートして夫婦やパートナーの幸福感を高め関係性を深めたい人

 

シトルリンの摂取量の目安

日本の食品安全委員会による1日の摂取量の目安は800mgとされており、これはスイカ1玉の1/7程度に相当します

シトルリンは同じ量を摂取しても副作用を引き起こすことが少なく、経口摂取しても安全であることが報告されています(15)

そのため、食品やサプリメントなどによる一般的な摂取量であれば、過剰摂取による副作用の恐れは高くはありません。

 

シトルリンを含む食べ物

スイカ

シトルリンは、ほとんどがウリ科の植物のなかに存在しています。ウリ科の植物1kgあたりに含まれるシトルリンの含有量は下記のリストのようになります。

  • 赤い果肉のスイカ:2.37〜2.85 g/kg

  • カサバメロン: 0.86g/kg

  • ピックルきゅうり:0.64g/kg

  • ペポカボチャ : 0.71 g/kg

ウリ科の植物1kgあたりに含まれるシトルリンの含有量を比較した研究によると、赤い果肉のスイカのシトルリン濃度 2.37〜2.85 g/kg が最も高く、マスクメロンの一種であるカサバメロンが 0.86g/kg、ピクルスの材料であるピックルきゅうり(pickling cucumber)0.64g/kg、ペポカボチャ 0.71 g/kg と比較しても、スイカに特に豊富に含まれることが分かっています(13)

また、シトルリンの含有量は栽培環境によって変化し、強い光や乾燥などのストレス下で育った植物は、シトルリンの含有量を増やすことが報告されています(14)

 

シトルリンが多い食品ランキング

順位

食品名

シトルリン量㎎/100g

シトルリン800㎎相当の目安

1

スイカ

180

1/7個

2

メロン

50

1.3個

3

クコの実

34

2.3㎏

4

冬瓜

18

3.8個

5

にがうり

16

24.2本

6

きゅうり

9.6

56.5本

7

にんにく

3.9

290個

参照:(20

*日本の食品安全委員会による1日の摂取量の目安は800mgとされています。 

 

シトルリンの副作用は?

シトルリンは、一般的な食生活をしている限り、副作用の心配はありません。しかし、「過剰摂取」や「降圧剤との併用」により健康リスクを招くので注意しましょう。

 

過剰摂取

一般的な食事であればシトルリンの過剰摂取の心配はありませんが、サプリメントなどで過剰に摂取すると、体調不良を起こす危険性があります。

健康によいからといって摂り過ぎるのは逆効果になるので、摂取目安量を守りましょう。

また、シトルリン血症の方はシトルリンのサプリメントなどを使用すると、血液中のシトルリンが過剰になります。

嘔吐や多呼吸異常行動・昏睡を招く危険性があるので注意しましょう(21)。

 

降圧剤との併用

シトルリンは降圧剤の効果を過剰にする作用があるため、併用は避けましょう。

降圧剤が効き過ぎると、めまい・貧血・ふらつきの症状を招くため危険です(22)。

 

おすすめのシトルリンの摂取タイミング

シトルリンは薬ではないので、好きな時間に摂取できます。

しかし、シトルリンは、他のアミノ酸や成分が吸収に影響を与える可能性があることを考慮すると、食前に摂取することで吸収率がより高くなると考えられます。

多くの研究で報告されているように、運動の1時間前を目安に摂取すると、持久力の向上など運動パフォーマンスへの効果が期待できるため、運動の習慣がある方は運動前に摂取することが推奨されます(11)

 

男性におすすめのシトルリンのサポート成分4つ

シトルリンによる効果をサポートする成分についても押さえておきましょう。男性におすすめの4つの成分を紹介します。
 

サポート成分1. アルギニン

シトルリンとアルギニンを一緒に摂取すると、より効率よく血中アルギニン濃度が高くなります(25)。

アルギニンは、精子の量を増やして運動性を高める効果が期待されるため、パートナーの妊娠を希望する男性は一緒に摂るのがおすすめです(26)。

 

サポート成分2. 亜鉛

シトルリンは尿素回路を回すために必要ですが、同時に亜鉛も欠かせません(27)。

尿素回路が円滑に回ると、持久力・体力アップ、疲労回復につながります(28)。パートナーの妊娠を希望する男性は、自身のケアとしてシトルリンと亜鉛を一緒に摂るのがおすすめです。

 

サポート成分3. タウリン

タウリンは、シトルリンと同様に疲労軽減や持久力アップにより運動パフォーマンスを上げる効果があります。

男性機能の改善効果が期待されるシトルリンと一緒に摂取すると、精力の維持・増進をサポートするでしょう(29)。

 

サポート成分4. マカ

マカには、シトルリンと同様に精子の量と運動性を高める作用があります。

また、性欲を高ぶらせる効果もあるので、シトルリンと一緒に摂るとより効果的な精力維持・増進が期待できるでしょう(30)。

 



 

シトルリンの効果に関するよくある質問(FAQ)

「いつまでも男らしくいたい」と願う男性から寄せられる、シトルリンに関する素朴な質問3つにお応えします。

 

Q1.シトルリンの効果が現れるまでにどのくらい時間がかかりますか?

シトルリンの効果を体感するまでの時間は、個人差があります。

シトルリン摂取により産生されるNO(一酸化窒素)の影響で血流改善や運動パフォーマンス向上といったあらゆる効果が期待できますが、NOが半分に減るまでの時間は数秒と極めて短いため、毎日の継続的な摂取が重要です(23)。

 

Q2.若い男性と高齢男性では、シトルリンの効果に違いはありますか?

シトルリンは血流改善や男性機能への効果が報告されていますが、一般的には年齢を重ねるにつれて血管の老化や男性機能の低下がみられます。

そのため、高齢男性は若い男性に比べて、効果の体感が低い可能性があるでしょう。

 また、高齢になるほど健康状態の個人差が大きく、持病や服薬中の薬が多様になる傾向があるので、シトルリンに対する反応もそれぞれ異なります。

 

Q3.シトルリンは、運動しない人にも効果がありますか?

運動をしない人においても、シトルリンの血流改善による健康増進などの効果が期待できます。

しかし、運動には血流を改善し、筋肉の代謝を良くしてシトルリンの効果を補完する働きがあるため、シトルリンの効果をより高めるためには運動も併せて行うのがおすすめです。
 

Q4.シトルリンはアルギニンより効果があるのでしょうか?

血流の改善や運動パフォーマンスを向上させたい場合はシトルリン、筋肉アップや成長ホルモン分泌による体の修復、疲労回復のためにはアルギニンの摂取がおすすめです。

シトルリンとアルギニンはお互いの働きをサポートする関係にあり、片方より両方を同時に摂取するほうがよいと言われています。

たんぱく質の合成過程においては、シトルリンの合成量にともない、アルギニンの合成量も増えるという特性があるため、シトルリンを意識して摂るとよいでしょう。(20)

 

Q5.シトルリンはいつ飲むのがいい?

シトルリンは、運動前や就寝前の摂取がよいとされています。

運動前の摂取においては血流を促し、運動パフォーマンス維持に役立ちます。

就寝前の摂取では血管の拡張作用によって、栄養素や酸素が体の各部位に届きやすくなり、トレーニング後の疲れ回復にも効果が期待されます。

アルギニンと合わせて摂取し、体のめぐりや活力アップの新習慣に取り入れてみてください。

参考資料:
  1. 1. Khalaf, D. et al., "The effects of oral l-arginine and l-citrulline supplementation on blood pressure." Nutrients 11.7 (2019): 1679.
  2. ​​​​Morris SM Jr. ​“​Enzymes of arginine metabolism.” J Nutr  134(2004):  2743S–7S.
  3. Schwedhelm, E.  Rainer H. Böger, et al. “Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism” British Journal of Clinical Pharmacology 65.1 (2008):51
  4. Allerton, Timothy D. et al., "l-Citrulline supplementation: impact on cardiometabolic health." Nutrients 10.7 (2018): 921.
  5. Romero M.J. “Therapeutic Use of Citrulline in Cardiovascular Disease.” Drug Rev. 24 (2006): 275–290.
  6. Cormio, L. et al., "Oral L-citrulline supplementation improves erection hardness in men with mild erectile dysfunction." Urology 77.1 (2011): 119-122.
  7. Shirai M. “Oral L-citrulline and Transresveratrol Supplementation Improves Erectile Function in Men With Phosphodiesterase 5 Inhibitors: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Crossover Pilot Study.” Sex. Med. 6 (2018), 291–296.
  8. Jourdan​​ M. “Citrulline stimulates muscle protein synthesis in the post-absorptive state in healthy people fed a low-protein diet – A pilot study“Clin. Nutr.  34 (2015): 449–456.
  9. Bouillane O. “Impact of 3-week citrulline supplementation on postprandial protein metabolism in malnourished older patients: The Ciproage randomized controlled trial” Clinical Nutrition 38. 2(2019):  564-574.
  10. Breuillard, C., Cynober, L., and Moinard, C. "Citrulline and nitrogen homeostasis: an overview." Amino acids 47.4 (2015): 685-691.
  11. Gough, Lewis A., et al. "A critical review of citrulline malate supplementation and exercise performance." European journal of applied physiology 121.12 (2021): 3283-3295.
  12. Aguayo, Encarna, et al. "L-Citrulline: a non-essential amino acid with important roles in human health." Applied Sciences 11.7 (2021): 3293.
  13. Hartman J.L. “Citrulline and Arginine Content of Taxa of Cucurbitaceae.” Horticulturae  5 (2019): 22.
  14. Akashi K. “Citrulline, a novel compatible solute in drought-tolerant wild watermelon leaves, is an efficient hydroxyl radical scavenger. ”FEBS Lett. 508 (2001): 438–442.
  15. Bahri, Senda, et al. "Citrulline: from metabolism to therapeutic use." Nutrition 29.3 (2013): 479-484.
  16. 『現代人の代謝とシトルリン摂取の可能性』
  17. https://citrulline.jp/s/about/health/artery_1.html
  18. アルギニンって何だろう? - 協同組合 藤沢薬業協会
  19. Effects of citrulline supplementation on fatigue and exercise performance in mice - PubMed
  20. 動脈硬化症とアルギニン,シトルリン
  21. 腎臓のための成分ガイド【シトルリン編】
  22. 腎臓のための成分ガイド【オルニチン編】
  23. 高地適応時の杯循環における一酸化窒素の関与
  24. 肝硬変における 亜鉛補充療法の有用性※1
  25. アルギニンのはたらきと効果-04.ほかのアミノ酸との組み合わせ
  26. アルギニンって何だろう? - 協同組合 藤沢薬業協会
  27. 肝硬変における 亜鉛補充療法の有用性※1
  28. 腎臓のための成分ガイド【オルニチン編】
  29. 運動とタウリン研究の最前線 〜その多彩な生理作用に迫る
  30. マカ(Lepidium meyenii WALP)の成分分析法について