栄養素 - たんぱく質

必須アミノ酸とは?9種類必須アミノ酸の働きと含有量が多い食品を紹介

監修者 錦 惠那 医師 公開日:2024-10-17 最終更新日:2025-01-13

栄養素 - たんぱく質

必須アミノ酸とは?9種類必須アミノ酸の働きと含有量が多い食品を紹介

監修者錦 惠那 医師 公開日:2024-10-17 最終更新日:2025-01-13

必須アミノ酸とは、体内で合成できないアミノ酸のことです。アミノ酸は20種類あり、そのうち体内で合成できるアミノ酸は11種類あります。必須アミノ酸と呼ばれる残りの9種類のアミノ酸は、食事から摂取しなければいけません。

食事から摂取しないといけないとはいえ、偏った食事ばかり摂取しているとバランスが崩れ、身体の不調をきたす可能性があります。

本記事では必須アミノ酸について、以下の順番に解説します。

  • 必須アミノ酸とは?

  • 9種類の必須アミノ酸

  • 必須アミノ酸を多く含む食品とは?

  • 食事で必須アミノ酸を効果的に摂取するポイント

  • 必須アミノ酸が不足するとどうなる?

ぜひ最後まで読んでみてください。

必須アミノ酸とは?

アミノ酸はたんぱく質を構成する有機化合物です。たんぱく質は、20種類のアミノ酸から構成されています。

アミノ酸の量や組み合わせによって、筋肉や組織、免疫、酵素などさまざまな特徴をもつたんぱく質が合成されるのです。

20種類のアミノ酸のうち、11種類の非必須アミノ酸と9種類の必須アミノ酸に分かれます。特に必須アミノ酸は体内で合成されないアミノ酸ですが、体内では欠かせないアミノ酸なのです。必須アミノ酸は食事から摂取する必要があります。(1)

アミノ酸は約500種類がある
自然界にはアミノ酸が約500種類あるとされています。そのうち人体のたんぱく質を構成するのは現時点判明しているのはわずか20種類であり、体内で合成できる11種類(非必須アミノ酸)と、合成できない9種類(必須アミノ酸)に分類されるのです。

アミノ酸とは?筋肉や成長に良いアミノ酸の4つ効果と摂取タイミングを伝授
 

9種類の必須アミノ酸

必須アミノ酸とは、以下のとおりです。

  1. バリン

  2. ロイシン

  3. イソロイシン

  4. メチオニン

  5. スレオニン

  6. フェニルアラニン

  7. トリプトファン

  8. リジン

  9. ヒスチジン

それぞれ解説します。

1.バリン

バリンは筋肉を作る構成成分となるアミノ酸です。成長や肝機能の調整に作用します。

バリンは、牛レバーや豚レバー、チーズ、豆腐などに含まれています。

 

2.ロイシン

ロイシンは子どもの成長や大人の筋肉維持に欠かせないアミノ酸です。肝機能維持や血糖コントロール、たんぱく質合成の促進などに作用します。

ロイシンは、卵や鶏肉、牛肉、カツオ、チーズ、牛乳、とうもろこし、ほうれん草などに含まれています。

 

3.イソロイシン

イソロイシンは赤血球のヘモグロビンを作るのに必要なアミノ酸です。成長促進や疲労回復、筋肉強化、肝機能維持に作用します。

イソロイシンは鶏肉や豚肉、牛乳、チーズなどに含まれています。

 

4.メチオニン

メチオニンはたんぱく質を作るのに最初に必要なアミノ酸です。アレルギーのかゆみ軽減や、抗うつ効果、肝機能維持に関与します。

メチオニンは牛肉やレバー、牛乳、にんにく、とうもろこしなどに含まれています。

 

5.スレオニン

スレオニンは、最後に発見された必須アミノ酸です。脂肪肝の抑制や、成長促進に作用します。

スレオニンは卵や鶏肉、豚肉、チーズなどに含まれています。

 

6.フェニルアラニン

フェニルアラニンは、神経伝達物質のノルアドレナリンやドーパミン、合成甘味料アスパルテームの構成成分となる必須アミノ酸です。

精神の安定や食欲抑制に作用します。過剰に摂取すると血圧が上昇するので、注意が必要です。フェニルアラニンは、豚肉や卵、チーズなどに含まれています。

 

7.トリプトファン

トリプトファンは、エネルギーやビタミンに必要なナイアシンの原料であり、神経伝達物質セロトニンの合成に必要な必須アミノ酸です。

精神の安定を図り、安眠の効果に期待できます。トリプトファンは、豚肉レバーや牛肉レバー、牛乳、チーズ、緑黄色野菜などに含まれています。

 

8.リジン

リジンは穀類にはあまり含まれていない必須アミノ酸です。脂肪をエネルギーに変えるカルニチンの材料になったり、肝機能を維持したり、成長に関与したりします。

サバやサンマ、大豆製品などに多く含まれ、穀類中心の生活をすると不足しやすくなります。

 

9.ヒスチジン

ヒスチジンは比較的合成が遅い必須アミノ酸です。神経機能を維持したり、成長サポートを促したり、ヘモグロビン生成に関与したりします。カツオやマグロ、イワシ、チーズなどに含まれています。

 

必須アミノ酸を多く含む食品とは?

健康を維持するためには、必須アミノ酸をバランス良く摂取することが大切です。

必須アミノ酸を摂取することは、良質なたんぱく質を含む食品を摂取することになります

アミノ酸スコアとは、たんぱく質と必須アミノ酸がバランス良く含まれているかを数値化したものです。アミノ酸スコアが高いほど、必須アミノ酸がバランス良く含まれ、良質なたんぱく質が含まれる食品であると評価できます。(2)

必須アミノ酸が含まれる代表的な食品は、以下のとおりです。

動物性食品

肉・魚・卵・乳製品

植物性食品

大豆製品・米・小麦

分岐鎖アミノ酸を含む食品

鶏肉・牛肉・マグロ・アジ・カツオ・卵

その他

黒酢

 

1種類でも必須アミノ酸が不足していると、たんぱく質を効率的に使われにくくなり、筋力低下や免疫力低下につながります。アミノ酸スコアの数値を把握して、摂取することが重要です。

例えば、米や小麦はリジンという必須アミノ酸が不足しており、アミノ酸スコアが高くない食品です。リジンを補うために、大豆やオートミール、サバなどのリジンが多く含まれる食品と組み合わせて摂取する必要があります。

分岐鎖アミノ酸とは「BCAA」と呼ばれ、バリン・ロイシン・イソロイシンの3つの必須アミノ酸のことで、筋たんぱく質の構成成分となるアミノ酸です。

マグロやアジ、鶏肉、牛肉、卵に多く含まれています。

黒酢も必須アミノ酸が含まれる食品です。アミノ酸スコアが高く、クエン酸も豊富に含まれるため、抗酸化作用がある健康に良い食品として期待できます。

 

食事で必須アミノ酸を効果的に摂取するポイント

必須アミノ酸を効果的に摂取するには、アミノ酸スコアを意識することが大切です。ほかにいくつかのポイントがあります。

  • 動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を組み合わせる

  • 加熱しすぎによるたんぱく質の変性に注意する

  • ベジタリアンやビーガンの人は複数の植物性たんぱく質を組み合わせる

  • サプリメントを活用する

それぞれ詳しく解説します。

 

1. 動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を組み合わせる

肉や魚の動物性たんぱく質はアミノ酸スコアが高い食品ですが、植物性たんぱく質と組み合わせた食事を摂る必要があります。

肉や魚は脂質や飽和脂肪酸が多いため、肥満や生活習慣病に注意しなければいけません。そこで飽和脂肪酸が少ない植物性たんぱく質を摂取すると、高血圧や動脈硬化の予防に期待できます。

植物性たんぱく質が多く含まれる食品には、動物性食品より食物繊維や抗酸化物質などの身体の調子を整える栄養素が豊富に含まれていますが、一部の必須アミノ酸が不足しています。

植物性たんぱく質が多い食品は、動物性タンパク質が多い食品よりたんぱく質の量が少ないことがほとんどです。

また、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を同時に摂取すると、たんぱく質を効率的に吸収できることが明らかになっています。(3)
 

2. 加熱しすぎによるたんぱく質の変性に注意する

たんぱく質を長時間加熱すると、たんぱく質が変性し、栄養価を下げてしまう可能性があります。以下は、たんぱく質の変性が抑えられる調理方法です。

  • 低温調理:肉や魚を弱火でじっくり加熱する。低温調理器を使用する。

  • 蒸し調理:直接熱を加えないため、栄養素の損失を抑えられる。

  • 短時間調理:炒め物調理は高温短時間で調理する。グリル調理は直火ですばやく調理する。

短時間で加熱するか、低温でじっくり加熱することによって、たんぱく質の変性や栄養価の損失を抑えることが可能です。

 

3. ベジタリアンやビーガンの人は複数の植物性たんぱく質を組み合わせる

ベジタリアンやビーガンの人は動物性たんぱく質を食べられないため、必須アミノ酸が不足しやすくなります。

そこで、複数の植物性たんぱく質を組み合わせて食べることがおすすめです。以下の植物性たんぱく質を組み合わせて摂取します。

  • 大豆製品:豆腐・納豆など

  • 豆類:黒豆・ひよこ豆など

  • ナッツ類:アーモンド・クルミ・カシューナッツなど

  • 穀類:オートミール、キノア、玄米など

  • 種子類:チアシード・かぼちゃの種など

 

また、植物性たんぱく質の吸収を高める調理方法は、以下のとおりです。

  • 豆類や穀物を発芽させる:発芽させることで、アミノ酸吸収率が向上する

  • 低温調理をする:たんぱく質の変性を抑えられる

  • 醤油や味噌などの発酵食品を活用する:効率的にたんぱく質の消化吸収ができる

ベジタリアンやビーガンの人は、複数の植物性たんぱく質食品を活用し、調理方法に注意して、効率的にたんぱく質を吸収させることが大切です。

 

4. サプリメントを活用する

食材を組み合わせて良質なたんぱく質を摂取することが難しい方は、サプリメントを活用するのみ一つの方法です。

食事からタンパク質を摂取した場合、アミノ酸に分解されるまで時間がかかりますが、サプリメントでアミノ酸を摂取する場合は短い時間で吸収され、より早く各臓器に届けられます。

特定のアミノ酸を摂取する場合や運動時に摂取したい場合に、サプリメントでの摂取は効率的な方法です。しかし過剰摂取にも注意が必要ですので、適切な量を摂取しましょう。ただし病気の治療で薬を服用されている方や妊娠中の方は、医師に相談してから判断してください。

 

必須アミノ酸が不足するとどうなる?

必須アミノ酸が不足すると、さまざまな健康上の問題が出る可能性があります。必須アミノ酸の役割と不足すると生じる症状は、以下のとおりです。

主な役割

不足すると生じる症状

筋肉の修復と成長

  • 筋力低下

  • 筋肉量の減少

  • エネルギー消費量の減少

免疫系の機能維持

  • 感染症にかかりやすくなる

  • 病気の治癒が遅れる

神経伝達物質の生成

  • 集中力の低下

  • やる気の減退

  • 情緒不安定

たんぱく質の合成

  • 体内の機能に支障が出る

  • アミノ酸が効率的に利用できなくなる

 

必須アミノ酸の不足は身体のさまざまな機能に悪影響を及ぼす可能性があります。動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を組み合わせたバランスの取れた食事を心がけ、必要に応じてサプリメントを補助的に活用することが大切です。

 

まとめ

必須アミノ酸は私たちの健康に必須な栄養素です。日々の食事で意識的に摂取することで、身体のさまざまな機能を健康的に維持できます。

健康的な生活は、毎日の小さな選択の積み重ねから生まれます。必須アミノ酸の重要性を認識し、毎日の食事に取り入れることで、より健康的な生活を送ることが可能です。

必須アミノ酸を意識した食生活を心がけ、より良い未来への一歩を踏み出しましょう。