栄養素 - たんぱく質

アミノ酸とは?筋肉や成長に良いアミノ酸の4つ効果と摂取タイミングを伝授

監修者 井林 雄太 医師 公開日:2024-08-09 最終更新日:2025-01-13

栄養素 - たんぱく質

アミノ酸とは?筋肉や成長に良いアミノ酸の4つ効果と摂取タイミングを伝授

監修者井林 雄太 医師 公開日:2024-08-09 最終更新日:2025-01-13

アミノ酸の効果は、必須アミノ酸であるBCAAによる筋肉増強や疲労の軽減、シトルリンとアルギニンによる運動パフォーマンス向上、GABAによる快眠やリラックスなど種類により多岐に渡ります。

人体は約20%がたんぱく質でつくられていますが、アミノ酸は体たんぱく質の原料として活躍したり、心身の健康に関与する神経伝達物質(ホルモン)の分泌に関わる重要な成分です。

より効率的にとり入れられる食品や摂取方法をマスターして、イキイキした毎日を目指しましょう。

アミノ酸の種類は?

自然界にはアミノ酸が約500種類あるとされています。そのうち人体のたんぱく質を構成するのは現時点判明しているのはわずか20種類であり、体内で合成できる11種類(非必須アミノ酸)と、合成できない9種類(必須アミノ酸)に分類されるのです(下表)(1)。

1種類でも欠けると体たんぱく質を合成できないのでバランスよく摂取する必要がありますが、一般的な食生活を送っていれば不足する心配はありません(2)。

 

アミノ酸の種類

非必須アミノ酸(11種類)

必須アミノ酸(9種類)

  • チロシン
  • システイン
  • アスパラギン酸
  • アスパラギン
  • セリン
  • グルタミン酸
  • グルタミン
  • プロリン
  • グリシン
  • アラニン
  • アルギニン(小児では必須アミノ酸に分類)
  • イソロイシン
  • ロイシン
  • リジン
  • メチオニン
  • フェニルアラニン
  • トレオニン(スレオニン)
  • トリプトファン
  • バリン
  • ヒスチジン

参照:(3

 

アミノ酸に期待できる4つの効果

アミノ酸の効果は多種多様ですが、ここではおもな4つを紹介します。サプリメントや健康食品でとり入れる際は、目的に適した種類を選びましょう。
 

アミノ酸の効果1:疲労の軽減・回復

アミノ酸の補給は、エネルギー不足や運動による疲労の軽減や回復に役立ちます。
 

エネルギー不足による疲労回復

疲労はストレスや疾患などにより生じますが、エネルギー不足も原因の1つです。アミノ酸は、エネルギーを作り出す代謝回路(クエン酸回路・ケトン体生成・糖新生など)を回すために欠かせない成分なので、不足するとエネルギー不足となり疲労を招きます(4)。

アルギニンとロイシンはエネルギーを効率的に生み出し、疲労回復を早めるとされているアミノ酸です(5)。

アルギニンとシトルリン
アルギニンやシトルリンなどのアミノ酸は、NO回路をサポートし、男性の健康や機能向上に役立つとされています。
参考:
アルギニンとは?アルギニンの10つ効果と副作用【5分でわかる】
シトルリンは男性に4つ効果は?男性の魅力の源と疲れ知らずで若々しく筋肉質な体へ導く

 

 

運動による疲労の軽減・回復

BCAA(※)は、筋肉の疲労を軽減する効果があり(6)、とくにバリンには運動による疲労感を和らげる効果があると報告されています(7)。そのほか、抗酸化と抗炎症・免疫調節作用があるグルタミンとシステインの同時摂取も運動による疲労感の軽減に効果的という報告があります(8)。

※BCAA:側鎖に分岐した炭素骨格を持つ疎水性のアミノ酸の総称で、バリン・ロイシン・イソロイシンを指します。

 

疲労回復効果が期待できるアミノ酸

  • BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)
  • グルタミン+システイン
  • アルギニン など
 

アミノ酸の効果2:筋肉増強

アミノ酸は筋肉の原料となったり、筋肉合成を促したりして筋肉増強をサポートします。しかし、ただ単にアミノ酸を摂取するだけでは筋肉は育たず、増強させるには運動が必要です。運動による負荷がかかると筋肉はダメージを受けますが、運動後は修復のために筋肉合成が活発になります。

そのため、運動後のタイミングで筋肉の原料となるアミノ酸を補給して体内に充足させておくと効果的です。

アミノ酸のなかでもBCAAは運動時に積極的に利用される性質があり、運動前後に摂取すると筋たんぱく質の分解抑制に役立ちます。また、過度な運動をした後24~48時間後に起こる遅延性の筋肉痛を軽減する効果も報告されているのです(6)。

さらに、シトルリンとアルギニンは、筋たんぱく質の合成を促して筋肉を増強させる効果が報告されており、同時に摂取すると運動パフォーマンスの向上が期待できます(9)。

 

筋肉増強効果が期待できるアミノ酸

  • BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)
  • シトルリン
  • アルギニン など
シトルリンとは
シトルリン(Citrulline)とはアミノ酸の1種で、尿素回路(NO回路)を構成する化合物のひとつです。
参考: シトルリンの健康効果:血流改善と運動・ED・冷え性への効果。副作用と食べ方も解説
 

アミノ酸の効果3:成長サポート

アルギニン・リジン・オルニチンは、成長ホルモンの分泌を促進する効果があります(9)。成長ホルモンが分泌されると体たんぱく質合成が促され、傷ついた細胞が修復されたり、筋肉がつくられて身体が成長します。

大人の疲労回復も促すため、下記のアミノ酸は健全な成長や健康維持に欠かせません(10)。
 

成長サポート効果が期待できるアミノ酸

  • アルギニン
  • リジン
  • オルニチン(非たんぱく質構成アミノ酸の一種) など
 

アミノ酸の効果4:リラックス・快眠

トリプトファンや非たんぱく質構成アミノ酸であるGABA(γ-アミノ酪酸)は、リラックスや快眠に効果的です。

人間がリラックスするには、脳内の神経伝達物質(ホルモン)がしっかり作用する必要があります。なぜなら、神経細胞間の情報伝達がスムーズに行われるため、脳内がスッキリして余裕があるからです。

トリプトファンは、神経伝達物質であるセロトニンの原料になります。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、鎮静作用があり寝つきをよくするのに効果的です(11)。

GABAはセロトニンの原料にはなりませんが、セロトニンの分泌を促して脳の興奮を抑える作用があるため、心身のリラックスに役立ちます(12)。

 

リラックス・快眠効果が期待できるアミノ酸

  • トリプトファン
  • GABA(非たんぱく質構成アミノ酸の一種)  など
 

積極的なアミノ酸補給がおすすめな人

アミノ酸は生命維持に欠かせない栄養素ですが、下記に該当する方はとくに積極的なアミノ酸補給がおすすめです。
 

アスリートとボディビルダー

アスリートやボディビルダーは、高レベルな運動により筋肉にダメージを与えるため、筋肉の修復と増強のためにBCAA・シトルリン・アルギニンが有効です。

シトルリンとアルギニンは、一緒に摂取すると運動パフォーマンスの向上効果が高まるため、意識的にとり入れるとよいでしょう(9)。
 

成長期の子ども・青少年

アルギニン・リジン・オルニチンは、身体の組織や成長ホルモンの原料になるため、子どもたちの健全な成長に欠かせません。成長ホルモンは睡眠時に盛んに分泌されるので、アミノ酸をしっかり補給したうえで十分に睡眠をとるのも大切です(13)

 

ストレスの多い社会人

ストレスの緩和にもアミノ酸が役立ちます。ストレスをうまく解消するにはセロトニンなどの"幸せホルモン"を味方につけるのがおすすめです。セロトニンの分泌を促すGABAや、原料として利用されるトリプトファンを積極的に補給するとよいでしょう(12)。

 

快眠を得たい人

夜にぐっすり眠るためにもアミノ酸は重要です。いくら身体が疲れていても、神経が高ぶっていては寝付けなかったり、眠りが浅くなったりしてしまいます。神経を落ち着かせるには、脳の興奮を抑える作用のあるGABAや、寝つきをよくするセロトニンの原料となるトリプトファンを積極的に補給するとよいでしょう(11)。

 

アミノ酸が豊富な食べ物

アミノ酸はバランスよく摂るのが理想的です。とくに体内で合成できない必須アミノ酸は、食品から必要量を摂取する必要があります。

体たんぱく質の合成のために望ましい量に対して必須アミノ酸がどれくらい含まれているかを示す指標をアミノ酸スコアといい、100点満点が理想的です。

アミノ酸スコアが高い食品は、体内で効率よく利用できるので「良質なたんぱく質(を含む食品)」と呼ばれます(14)。

ここでは、アミノ酸がバランスよく含まれた良質なたんぱく質のなかでも、比較的たんぱく質含有量が多い食品を紹介します。

 

良質なたんぱく質を含む食品

 

食品名

たんぱく質含有量(100g中)

動物性食品

かつお節

77.1g

パルメザンチーズ

44.0g

しらす干し(半乾燥)

40.5g

かつお 春獲り 

25.8g

若どり ささみ 

23.9g

植物性食品

油揚げ

23.4g

ひきわり納豆

16.6g

がんもどき

15.3g

オートミール

13.7g

厚揚げ

10.7g

参照:(19
アルギニンが多い食品
 

【高村恵美 管理栄養士からの食事アドバイス】

ご覧のとおり、かつお節は80%近くがたんぱく質であり、スーパーで売られている小袋のかつお節1パック(2g)には1.5gも含まれています。筋肉の疲労を軽減するBCAAも豊富です。

その他、アミノ酸が多い食品はパルメザンチーズやしらす干し・ひきわり納豆など、ごはんにかけるだけで食べられるものが多くあります。たんぱく質が不足しがちな朝食や運動後の補食の際にササッとかけて手軽にアミノ酸を補給できます

また、効率的にアミノ酸を吸収するには、動物性と植物性たんぱく質を同時に摂取するのがおすすめです。どちらか単一で摂取するよりも吸収率が高まります(20)。

動物性食品に加えて、お味噌汁や煮物の具に植物性タンパクが豊富な大豆製品を使ったり、オートミールを主食にしたりなど組み合わせて献立を考えるとよいでしょう。

 

手軽で効率的なアミノ酸補給はサプリがおすすめ

良質なたんぱく質を食品から摂取しても、すぐにはアミノ酸として体内に吸収されません。多くの消化酵素を消耗してたんぱく質をアミノ酸に分解してから小腸から吸収されるため、時間がかかるのです。

一方で、アミノ酸のサプリメントは、消化の工程が不要なのでそのまま小腸から吸収されて体内で利用されます。

手軽さと吸収効率を求める方は、サプリメントをうまく活用するとよいでしょう。ただし、サプリだけではビタミン含めた必要な栄養素が不足するのであくまでも補充するという目的で使用しましょう。

 

アミノ酸を効率的に摂取するタイミング

「筋肉増強」「運動パフォーマンス向上」「快眠」の3つの目的別に、適切な摂取タイミングを押さえておきましょう。

 

筋肉を増強したい場合は「運動の直後から2時間以内」

筋肉増強が目的の場合、運動直後にアミノ酸を補給するのが理想的です。筋肉に負荷をかけて行うレジスタンス運動(スクワット・ダンベル体操など)を行うと、筋たんぱく質の合成が促進され、運動直後が最も顕著にアミノ酸が有効利用されます。

時間の経過により少しずつ筋たんぱく質合成の速度は緩やかになりますが、運動後1~2時間後もアミノ酸の利用効率が高い状態が続くので、遅くとも運動後2時間以内にアミノ酸を補給するのがおすすめです(15)。

こちらもご参考に:OUTLINE

 

運動パフォーマンスを上げたい場合は「運動前」

運動パフォーマンス向上が目的の場合は、運動前にアルギニンやシトルリンを補給するのがおすすめです。運動前の摂取で、自転車の走行スピードが速くなったり、酸素利用効率がアップが確認され、体感として集中力向上や疲れにくさを実感する声が上がっています(16)。

より効率的に活力をつけたい場合は、薬用植物であるマカが効果的です(17)。シトルリンやアルギニンに加えてマカが配合されているサプリメントや健康食品がよいでしょう。

マカとは
マカは「スーパーフード」として知られ、栄養価が非常に高い食品です。アンデス山脈の厳しい環境で育ち、エネルギーや体力増強、ホルモンバランスのサポートに役立つ成分が豊富に含まれています。
参考:マカ完全ガイド!9つのマカ効果、特徴と効率の飲み方をまとめ紹介
 

快眠を得たい場合は「寝る前」か「日中」

夜ぐっすりと眠りたい場合は、寝る前にGABAを摂取するのがおすすめです。100㎎のGABAを就寝の30分前に摂取した実験において、深い眠りであるノンレム睡眠の時間増加が報告されています。

また、15時にGABA100㎎を摂取した場合も夜の睡眠の質を高める効果が確認されているので、日中の摂取でもよいでしょう。(18

 

まとめ

アミノ酸は身体を構成する原料であり、精神的な健康に関与する神経伝達物質(ホルモン)の分泌にも関わるため、健康維持に欠かせない成分です。

天然の食品からたんぱく質として摂取するのが理想的ですが、サプリメントや健康食品でダイレクトにアミノ酸を補給したほうが手軽でスピーディに吸収できます。食事の栄養価を強化する補助食品として活用してみてはいかがでしょうか。

参考資料:
  1. アミノ酸500・20・9アミノ酸ことはじめ」/東京農業大学
  2. アミノ酸」/e-ヘルスネット厚生労働省
  3. 必須アミノ酸と非必須アミノ酸」/一般財団法人オーソモキュラー栄養医学研究所
  4. 三大栄養素:脂質・糖・タンパク質間のエネルギーフローの調節機構KLF15の重要性  」/筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科ニュートリゲノミクスリサーチグループ
  5. 抗酸化作用を有するサプリメントの摂取が疲労回復に与える影響」/山村 俊樹(国士舘大学大学院)鴫原 孝亮 (国士舘大学大学院)山田 健二 (国士舘大学非常勤講師)須藤 明治 (国士舘大学)
  6. スポーツにおけるアミノ酸の使用法とその効果」/順天堂医学 . 2011, 57P. 95〜99
  7. 「アミノ酸の疲労軽減作用に関する研究」/日本大学大学院生物資源科学研究科
  8. シスチン/グルタミン混合物の補給は、脂肪酸の利用を促進することにより、健康な若い男性の持久力運動中の疲労を軽減しました」/National Library of Medicine
  9. 第71回日本・栄養食糧学会大会においてL-シトルリン及び L-アルギニンの併用摂取効果に関する研究を発表」/協和発酵バイオの健康成分研究所
  10. オルニチン|成分と機能」/協和発酵バイオの健康成分研究所
  11. トリプトファン|成分と機能」/協和発酵バイオの健康成分研究所
  12. アミノ酸の効果:リラックス・快眠」/協和発酵バイオの健康成分研究所
  13. 「睡眠心理学」「日本人の食事摂取基準」/堀忠雄編 北大路書房
  14. 良質なたんぱく質」/e-ヘルスネット厚生労働省
  15. 筋肉量の増加に向けた効果的なレジスタンス運動とたんぱく質摂取」/ NSCA JAPAN Volume 27, Number 10, pages 11-15
  16. 運動前のシトルリン摂取が走破時間の短縮に効果」/協和発酵バイオ株式会社
  17. マカが骨格筋細胞の生育・成長を促し、筋肥大をもたらすことを発見 」/立命館大学
  18. 睡眠の質改善とGABA成分」/Glico
  19. 食品成分データベース」/文部科学省