運動後にプロテインを飲む人は多いのではないでしょうか。特に高齢者は要介護予防の観点から、運動後のアミノ酸の摂取が大切です。高齢者に運動後にたんぱく質の食品を食べた期間と食べなかった期間で、筋肉量と握力を測定する実験を行った。たんぱく質の食品を食べた期間で測定すると筋肉量と握力が増加し、食べなかった期間に測定すると筋肉量と握力が低下したと報告されています。
ではアミノ酸とプロテインの違いは何かご存知でしょうか。プロテインはたんぱく質を英訳した言葉です。プロテインジュースやプロテインバーは、すべてのたんぱく質が含まれている食品です。
一方アミノ酸とは、たんぱく質を構成する最小単位であり、たんぱく質は体内でアミノ酸に分解され吸収されます。アミノ酸が一つでも欠けると、たんぱく質は合成できません。
本記事はアミノ酸とプロテインについて解説します。
たんぱく質とアミノ酸の関係性
たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成された栄養素です。たんぱく質は筋肉や組織など、私たちの身体を構成する材料です。
運動すると筋肉組織は刺激されることで一度破壊されますが、回復するときに筋肉は増大します。破壊と回復のタイミングでプロテイン(たんぱく質)を摂取すると、筋肉を増やせると言われています。
筋肉に関与するアミノ酸は、20種類のアミノ酸のうち、9種類の必須アミノ酸(EAA)から、さらに3種類に絞られた分岐鎖アミノ酸(BCAA)のことです。プロテインも分岐鎖アミノ酸も筋肉に欠かせない栄養素と言われています。
アミノ酸とは
たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成され、特に運動に関与するアミノ酸は分岐鎖アミノ酸(BCAA)です。分岐鎖アミノ酸は、バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類です。分岐鎖アミノ酸は体内では合成できない必須アミノ酸(EAA)であるため、食品から摂取する必要があります。(1)
分岐鎖アミノ酸(BCAA)は必須アミノ酸より筋肉合成にすばやく合成される特性があります。よくアスリートがトレーニング後に分岐鎖アミノ酸(BCAA)の食品を食べているイメージが浮かびます。アスリートだけでなく、運動されている一般の方や筋肉量が低下しやすい高齢者にも、運動後に分岐鎖アミノ酸が多い食品を摂取することをおすすめしますが、筋肉合成のため他のアミノ酸も必須ですので、他のアミノ酸が含まれる食品が撮るべきです。プロテインの特徴
プロテインはたんぱく質のことです。店頭には、ホエイプロテイン・カゼインプロテイン・ソイプロテインと種類が分かれて置かれています。それぞれの違いは以下のとおりです。(2)
項目 |
ホエイプロテイン |
カゼインプロテイン |
ソイプロテイン |
原料 |
牛乳(乳清) |
牛乳 |
大豆 |
吸収速度 |
速い(1〜2時間) |
遅い |
中程度 |
消化性 |
良好 |
やや遅い |
良好 |
主な用途 |
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成分 |
分岐鎖アミノ酸(BCAA)が豊富 |
カゼインミセルを形成 |
イソフラボンを含む |
デメリット |
乳糖不耐症の方は注意が必要 |
消化に時間がかかる |
大豆アレルギーの方は注意が必要 |
ホエイプロテインは、速やかな吸収が特徴で、トレーニング後や起床時など、すばやくたんぱく質を補給したい人におすすめです。分岐鎖アミノ酸(BCAA)、特にロイシンが筋肉合成を強く促すため、筋力増強や回復促進に効果的です。
カゼインプロテインは、吸収が遅いため、長時間にわたってアミノ酸を供給できます。就寝前の摂取や、長時間の栄養補給が必要な人におすすめです。
ソイプロテインは植物性たんぱく質のため、乳製品アレルギーやベジタリアンの人におすすめです。イソフラボンなどの植物性栄養素も含まれています。
筋力増強ならホエイプロテイン、持続的な栄養補給ならカゼインプロテイン、植物性たんぱく質を求めるならソイプロテインを選択します。乳製品アレルギーの人はソイプロテイン、大豆アレルギーの人はホエイプロテインやカゼインプロテインを選びましょう。
参考:必須アミノ酸とは?9種類必須アミノ酸の働きと含有量が多い食品を紹介
アミノ酸とプロテインの違い
アミノ酸とプロテインの違いは以下のとおりです。
アミノ酸 |
プロテイン |
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成分 |
たんぱく質の最小単位 |
たんぱく質 |
吸収速度 |
速い(30分) |
遅い(1〜2時間) |
適した使用場面 |
運動前や運動中の即効性が必要な時 |
運動後の回復や筋肉増強 |
対象者 |
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飲むタイミング |
運動前・運動中 |
運動後・就寝前 |
期待できる身体への効果 |
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特徴 |
必須アミノ酸を直接摂取可能 |
さまざまな栄養素を含む |
カロリー |
比較的低い |
アミノ酸より高い |
即効性が必要な場合はアミノ酸、持続的な効果を求める場合はプロテインが適しています。運動前や運動中はアミノ酸、運動後はプロテインを摂取するのが効果的です。消化に負担をかけたくない場合は、アミノ酸の方が適しています。
プロテインはさまざまな栄養素を含むため、総合的な栄養補給にはおすすめしますが、特定のアミノ酸を集中的に摂取したい場合はアミノ酸サプリメントがおすすめです。
アミノ酸とプロテインの摂取タイミングをずらすことで、それぞれのメリットを活かすことが可能です。
目的別アミノ酸とプロテイン選択ガイド
アミノ酸とプロテインをどのように選択するべきか、以下を目的別にまとめました。
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筋肉増強を目指す場合
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回復を重視する場合
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運動パフォーマンスを向上させたい方
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高齢者の筋力維持
それぞれ解説します。(3)
筋肉増強を目指す場合
ホエイプロテインと分岐鎖アミノ酸(BCAA)の摂取がおすすめです。ホエイプロテインは、筋肉の成長と修復に必要な20種類のアミノ酸をバランスよく含み、吸収が速いため、トレーニング後の摂取に適しています。分岐鎖アミノ酸は筋たんぱく質の合成を促進します。
摂取タイミングは、ホエイプロテインはトレーニング後30分以内に、分岐鎖アミノ酸はトレーニング前や中、直後いずれかが良いでしょう。
回復を重視する場合
カゼインプロテインとグルタミンがおすすめです。カゼインプロテインはゆっくり吸収されるため、長時間にわたってアミノ酸を供給し、筋肉の分解を防ぎます。グルタミンは体内で合成可能な非必須アミノ酸ですが、筋肉の回復を促進させ、免疫機能に関与するアミノ酸です。
摂取タイミングは、カゼインプロテインは就寝前に、グルタミンはトレーニング後か就寝前が良いでしょう。
運動パフォーマンスを向上させたい方
分岐鎖アミノ酸(BCAA)とアルギニンの摂取がおすすめです。分岐鎖アミノ酸は、運動中の筋肉分解を抑制し、疲労を軽減します。アルギニンは体内で合成可能であるため非必須アミノ酸ですが、血流を改善し、持久力を向上させる可能性があります。
摂取タイミングは分岐鎖アミノ酸はトレーニング前か最中に、アルギニンはトレーニングの30分〜1時間前が良いでしょう。
参考:アルギニンとは?アルギニンの10つ効果と副作用【5分でわかる】
高齢者の筋力維持
ホエイプロテインとロイシンの摂取がおすすめです。ホエイプロテインは消化吸収が良く、高齢者でも効率的にたんぱく質を摂取できます。ロイシンは体内で合成できない必須アミノ酸であり、筋たんぱく質合成を特に強く促進するアミノ酸です。
摂取タイミングは、ホエイプロテインは朝食時か運動後に、ロイシンは食事と一緒に摂取すると良いでしょう。
効果的な摂取方法
プロテインとアミノ酸は、普段の食事と補助的に活用しましょう。
プロテインは運動後30分以内に摂取することがおすすめです。ウエストアップが目的の場合は食後や捕食時に摂取し、栄養バランス改善目的の場合は食事前後や就寝前に摂取が良いでしょう。目安の推奨量は20〜30gです。
アミノ酸は運動前や運動中に摂取すると即効性があります。摂取量は商品の用量に従って、5〜10gほどです。
運動後のプロテイン摂取時に炭水化物を一緒に摂ることで、筋グリコーゲンの回復を促進します。またビタミンB群と一緒に摂取すると代謝が促進され、プロテインやアミノ酸の効果を高める可能性があります。プロテインを食事の代替として使用する場合は、1日の総カロリーと栄養バランスに注意しましょう。
プロテインやアミノ酸の摂取時は、水分も一緒に摂ることが重要です。短期集中ではなく、長期的に摂取することが効果を発揮できるでしょう。
摂取の注意点とリスク
プロテインとアミノ酸の摂取には、注意するべきことがあります。過剰摂取の危険性とアレルギーや副作用には注意するべきです。
過剰摂取の危険性
プロテインやアミノ酸を過剰に摂取すると、以下のリスクがあります。
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腎臓への負担
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消化器系への影響
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体脂肪の増加
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栄養バランスの乱れ
過剰なたんぱく質摂取は腎臓に負担をかける可能性があります。特に腎機能が低下している人は注意が必要です。また消化不良や下痢などの消化器系の問題を引き起こす可能性があります。
必要以上に摂取すると、体脂肪として蓄積される可能性があります。プロテインやアミノ酸に頼りすぎると、他の必要な栄養素が不足する可能性があり注意が必要です。
アレルギーや副作用
ホエイプロテインやカゼインプロテインは牛乳由来のため、乳製品アレルギーの人は注意が必要です。ソイプロテインは大豆由来のため、大豆アレルギーの人は避ける必要があります。
一部の人では、プロテインの摂取により胃もたれや膨満感を感じることがあります。過剰摂取や体質によっては、頭痛や吐き気などの症状が現れることがありますので、心配な人は医師に相談すると良いでしょう。
まとめ
プロテインやアミノ酸は、個人の目的や体質、生活スタイルに応じて慎重に選択することが重要です。筋力増強や回復促進、パフォーマンス向上など、目的に合わせて適切な種類と摂取タイミングを選ぶことで、より効果的な結果が得られます。
しかし、サプリメントはあくまでも補助的なものであり、バランスの取れた食事が基本です。過剰摂取のリスクや副作用にも注意が必要で、適切な量を守り、水分補給を十分に行いましょう。
最終的には、体調や目標に合わせて、食事とサプリメントのバランスを取りながら、長期的かつ持続可能な方法で栄養摂取を行うことが、健康的な身体づくりの鍵となります。