栄養素の働きでよく聞く「抗酸化作用」は、健康な体づくりに関わる重要な働きです。私たちの体は抗酸化作用が弱まることで、体が「酸化」し、病気や老化につながる恐れがあります。ヒトの酸化を防ぐ「抗酸化物質」は、老化や疾病の予防に役立ち、日常的に取り入れていくことが重要です。
今回は抗酸化物質を持つ食品(=抗酸化食品)を紹介し、おすすめの食べ方についても紹介します。抗酸化食品を摂取して、若々しく健康な体を保っていきましょう。
老化の原因の一つは酸化!
人は生まれてから「成長」し、成熟期を迎えると、加齢とともに生理機能の衰退が起こります。これを「老化」と呼び、この老化の原因の一つと考えられているのが、体の「酸化」です。私たちは空気中の酸素を吸って、生命活動を維持していますが、この酸素が外界のさまざまな刺激によって、活性酵素へと変化します。(1)
活性酵素とは、酸素の一部が通常よりも活性化された状態のもので、増えすぎると細胞を傷つけ、がんや心疾患、生活習慣病などを引き起こします。しかし、体の免疫機能や感染防御などの重要な働きも担っているため、やみくもに除去するのがよいとは言えません。
活性酸素が増えすぎると、体内の抗酸化防御の働きが追いつかず「酸化ストレス」が発生します。
酸化ストレスは紫外線や放射線、大気汚染、たばこ、薬剤、酸化された物質の摂取などによって助長され、強い運動や精神的ストレスも増加の原因となります。これらを防ぐためには、日ごろからバランスの摂れた食事や適度な運動、十分な睡眠をとることが重要です。(2)
抗酸化物質とは?抗酸化作用で老化を防止しよう
抗酸化物質とは、活性酵素の発生やその働きを抑えて、活性酵素を除去する物質です。つまり、体の酸化を抑えてくれる物質になります。ポリフェノールやカロテノイドなど、さまざまな種類があり(3)、健康や美容に関して、長期的によい働きをしてくれることがわかっています。
世界保健機関(WHO)の21か国で行われた調査研究では、抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA、C、Eを含む野菜を多く摂取しているグループで、心疾患の罹患率が有意に低いことが認められています。(4)
また、美容においてもビタミンC、Eを組み合わせることで、日焼けの反応が軽減され、紫外線における皮膚損傷の後遺症リスクの軽減につながることが示唆されています。 (5)
<抗酸化物質の紹介>
抗酸化とは?抗酸化物質の効果と重要性、日常生活での実践法を解説!
抗酸化作用を持つ代表な栄養素と食べ物
抗酸化作用を持つ栄養素とそれらを含む食材について紹介します。
カロテノイド(β-カロテン当量)
種類 |
含有量(μg/100g) |
にんじん 皮なし 油炒め |
12000 |
モロヘイヤ 生 |
10000 |
ほうれん草 油炒め |
7600 |
参考:食品成分データベース 文部科学省(以下同様)
βカロテンは、にんじんやほうれん草、西洋かぼちゃ、春菊、にら、小松菜などの緑黄色野菜に多く含まれます。
活性酸素の発生を抑えて、除去する働きを持っています。また、活性酸素によって作られる過酸化脂質由来の動脈硬化や老化、がんの発生、生活習慣病の予防にも効果が期待されています。(6)
油に溶けやすい性質があり、切って油で炒める、ゆでた野菜にオイルドレッシングをかけるのもよいでしょう。
ビタミンA(レチノール活性当量)
種類 |
含有量(μg/100g) |
鶏レバー(豚レバー)生 |
14000 (13000) |
うなぎ 蒲焼き |
1500 |
にんじん 皮なし 油炒め |
1000 |
ビタミンAは鶏や豚レバー、うなぎなどに多く含まれ、抹茶やいわのり、まぐろ、シソ、モロヘイヤなどにも含まれます。
活性酸素の発生を抑えて(7)、視覚の働きにおいても重要な役割を果たします。(8)油に溶けやすい性質があり、油を使った調理がおすすめです。
ビタミンC
種類 |
含有量(mg/100g) |
アセロラ 甘味種 生 |
800 |
赤ピーマン 油炒め |
170 |
キウイフルーツ 生 |
140 |
ビタミンCはアセロラやピーマンのほかに、ブロッコリーや芽キャベツ、レモン、いちご、オレンジなどの野菜・果物全般に含まれます。
熱に弱く、水に溶けやすい性質があるため、生食がおすすめです。活性酸素を除去する働きがあるほか、コラーゲンの合成に必須で、傷の治りにも関わるビタミンです。(9)
ゆでるよりも蒸す、電子レンジ加熱にするなど、栄養素を余すところなく摂取できる調理法にしてみましょう。
ビタミンE(α-トコフェロール)
種類 |
含有量(mg/100g) |
アーモンド 乾 |
30 |
ヘーゼルナッツ フライ 味付け |
18.0 |
らっかせい 大粒種 乾 |
11.0 |
ビタミンEは、ひまわり油やなたね油などの油脂類、アーモンドやピーナッツなどのナッツ類、まぐろやいわしの缶詰、ほうれん草などに含まれます。紫外線や大気汚染、摂取した食物がエネルギーに変わるときなどに作られるフリーラジカルの傷害から細胞を守ってくれます。
免疫機能の維持や血管拡張による血液凝固の防止などにも役立ちます。(10)油に溶けやすいビタミンEは、そのままはもちろん、炒め物に入れておいしく食べられます。
ポリフェノール
種類 |
含有量(mg/100g) |
モロヘイヤ |
460 |
春菊 |
210 |
オクラ |
141 |
ポリフェノールはモロヘイヤや春菊のほかに、赤ワインやコーヒー、緑茶などに含まれます。動脈硬化の原因の一つと言われる、LDLコレステロールの酸化を抑制することが分かっています。
ほかにもがん予防や免疫力を高め、血圧やコレステロールの調整、肥満防止などの生活習慣病の予防にも役立つと言われています。(11)(21)
野菜や果物の皮に多く含まれるため、皮ごと食べるのがおすすめです。(12)
参考:【徹底解説】ビルベリーとは?栄養・効果・ブルーベリーとの違いをまるごと紹介
<アントシアニンの成分情報:働きと効果、多く含まれる食品と効率的な摂取方法
アントシアニン
種類 |
含有量(mg/100g) |
ブルーベリー(栽培種) |
386.6 |
紫キャベツ |
322 |
なす |
87.5 |
参考:植物色素アントシアニンのサイエンスー化学、機能と活用ー
フラボノイド系の植物色素で、ぶどうやいちご、りんごなどに含まれます。なかでも、ベリー類での含有量が多く、ビルベリー、ブラックチョークベリーやエルダーベリーに豊富です。日本にある食材では赤じそや紫芋、紫キャベツ、なす、紫玉ねぎ、黒豆などの紫色の食材に多く含まれます。
抗酸化機能を有し、肥満や糖尿病予防に効果が期待されています。(13)同じ抗酸化作用を持つ、ビタミンCやEを含む食材との摂取がおすすめです。
大豆イソフラボン
種類 |
含有量(mg/100g) |
きなこ |
211.1~321.4 |
大豆 |
88.3~207.7 |
凍り豆腐 |
88.5 |
イソフラボンは大豆の胚芽に多く含まれる機能性成分です。油揚げや豆腐、蒸し大豆、豆乳など大豆加工食品に含まれています。(14)
納豆や味噌などの発酵食品では、発酵の過程で抗酸化物質が産生され、活性酵素由来のフリーラジカルを除去、大豆中の不飽和脂肪酸の酸化が抑制されると考えられています。(15)
また、女性ホルモンのエストロゲンに構造が似ており、骨粗しょう症の予防や更年期障害の軽減にも役立つと言われています。(14)煮物や味噌汁にすると、たっぷりと摂取できます。
リコピン
種類 |
含有量(mg/100g) |
金時人参 |
12.19 |
トマト レッドタイプ |
9.51 |
スイカ |
3.6~6.2(5) |
参考:食品中のカロテノイド類、野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
リコピンは、トマトや金時人参、すいか、柿、ピンクグレープフルーツなどに多く含まれます。
カロテノイドの一種で、強い抗酸化作用を持ち、活性酵素の除去や前立腺がんの予防などに効果が期待されています。
また、トマトの場合はペーストやピューレに加工したほうが、吸収効率がアップすると言われています。(16)(17)
セサミン
種類 |
含有量 |
ごま |
1~5%(品種や産地によって変化) |
参考:ゴマリグナン類の機能性
セサミンは、ごまに含まれる機能性成分の一つです。いりごまやすりごま、ごま油、ねりごまなどの加工食品に含まれます。
ビタミンEとの摂取により、疲労と酸化ストレスへのよい影響が見られたという報告や、脂肪酸の分解促進や合成抑制、コレステロール低下などの報告があります。(18)
粒を砕くと吸収がよくなるため、すりごまやねりごまがおすすめです。
オメガ3脂肪酸
種類 |
含有量(100g当たりg) |
えごま油(あまに油) |
58.31(56.63) |
大西洋サバ 水煮 |
6.13 |
さんま 皮つき 生 |
5.59 |
オメガ3脂肪酸は、えごま油やあまに油、サバやサンマ、いわしなどの青魚に多く含まれます。冠動脈心疾患に伴う2型糖尿病患者を対象とした研究では、あまに油や魚油を摂取した集団において、抗酸化機能の有意な増加が見られたとのこと。
ほかにも血栓症予防や血糖コントロール維持にも重要な役割を果たすという研究結果があります。(19)(20)
植物性油脂はスプーン1杯程度、青魚は刺身または缶詰を汁ごと料理に使うとよいでしょう。
老化防止に役立つ抗酸化レシピ
加齢による老化予防のための、簡単な抗酸化レシピをご紹介します。
豚ひき肉入りにんじんしりしり
【材料(2人前)】
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にんじん…150g
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ニラ…50g
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豚ひき肉…100g
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卵…1個
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(A)鶏ガラスープの素…小さじ1
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(A)しょうゆ…小さじ1
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サラダ油…小さじ1
【作り方】
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人参は千切りにし、ニラは4cm幅に切ります。
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ボウルに卵を割って溶いたら、中火に熱したフライパンに入れて半熟になるまで炒めて取り出します。
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同じフライパンに豚ひき肉を入れて、パラッとするまで炒めます。
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にんじんを入れてしんなりとしたら、ニラを入れて加熱し、火が通ったら(A)を入れて炒め、卵を戻して炒めたら、器に盛り付けて完成です。
β-カロテンを豊富に含む、にんじんとニラを使った一品です。油で炒めることで吸収効率が高まります。フライパン一つで作れるのでお手軽です。
キウイはちみつヨーグルト
【材料(作りやすい分量)】
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グリーンキウイ…1個
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サンゴールドキウイ…1個
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プレーンヨーグルト…100g
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はちみつ…大さじ2
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レモン汁(あれば)…少々
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グラノーラまたはシリアル…お好みで
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ミントの葉…適宜
【作り方】
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キウイフルーツの皮をむき、食べやすい大きさに切ります。
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器にグラノーラまたはシリアルを入れて、ヨーグルトとキウイをのせてはちみつをかけます。お好みでミントの葉を飾って完成です。
ビタミンCを豊富に含む、キウイとレモン汁を使った一品です。キウイは生の状態で切ってのせるだけなので、栄養の損失も少なく、忙しい朝にもおすすめです。
抗酸化物質を含む食習慣の心がけ
抗酸化物質を取り入れた食生活では、野菜や果物、ナッツ、青魚などをバランスよくとるとよいでしょう。緑黄色野菜は、抗酸化物質を含む食材が多く、おすすめです。また、時間に余裕がないときは、生食で食べられる果物が便利。
いちごやキウイをヨーグルトに混ぜて、ナッツやきなこ、はちみつを足すと、おしゃれな簡単スイーツのできあがりです。まずは1日1品、気軽に抗酸化食品を取り入れてみてください。