霊芝とは?
「霊芝」は、日本で現在マンネンタケ科(学名Ganodermataceae)に分類されている真菌を指す言葉で、別名で「万年茸(まんねんたけ)」や「霊芝草(れいしそう)」とも呼ばれる、伝統医学で用いられるキノコの中で最も名高いもののひとつです(1)。霊芝は、漆を塗ったような光沢がある見た目が特徴的な硬いキノコで、アジア諸国では2000年以上前の紀元前から使用されてきた歴史があり、栄養補給や身体の強化、体質調整、若々しさを保つなどの利点があるとされ、病気を予防するための植物として重宝されてきました(2)。
霊芝は白色腐朽菌の一種で、特定の種類の木にしか見つからないことや、生育条件が限られることから、天然のものは貴重とされています(3)。現在は栽培技術の進歩により、人工的な栽培によって大量生産もできるようになってきており、その効能についてより深く研究されています。
霊芝の種類
一般に「霊芝」と呼ばれるマンネンタケ科の中には、多くの種があることが知られています(4)。アジアでは6種類(赤・黒・紫・黄・青・ 白)が一般的であり、その中でも赤芝(学名Ganoderma lucidum)と、紫芝(学名Ganoderma sinense)と呼ばれているものが、最もよく研究されています。
現在霊芝の生産が盛んである台湾では、霊芝の栽培技術が比較的成熟しており、栽培環境への配慮もされています。農薬や防腐剤の散布を行わずに栽培し、中国産よりも厳格に鉛や水銀などを検出する重金属試験を行っているほか、霊芝の栄養価が最も豊富な時期に収穫されることが保証されています。
霊芝の効能と栄養素
霊芝には600種類を超える豊富な栄養素が含まれていることが報告されており、その中でも最も代表的なものが「多糖体」と「トリテルペン類」です(2)。さらに、霊芝には核酸類、低分子量タンパク質、スーパーオキシドジスムターゼなどの栄養成分が含まれることも研究で報告されています。本記事では、霊芝の栄養成分の中でも最もよく研究されてきた、霊芝の多糖体とトリテルペン類についてご紹介します。
霊芝の効能
霊芝は、体調を整え、免疫力を強化する自然の力を持つ成分です。特に、霊芝の多糖体には、免疫力を高めたり、抗酸化作用を発揮したり、血糖値の調整をサポートする効果があります。また、霊芝のトリテルペン類は、独特の苦味の元で、抗腫瘍作用や肝臓の健康をサポートする働きがあります。
霊芝の活性多糖体
霊芝の細胞壁には、グルコースなどの単糖が連なってできる多糖体が含まれており、これらは霊芝の生育において重要な働きをするだけでなく、私たちヒトが摂取した場合でも、有効的に働くことが示唆されています。
霊芝の活性多糖体は、「(1→3)-β-D-グルカン」および「(1→6)-β-D-グルカン」という多糖体が代表的で、これらは霊芝製品の活性成分を評価するための指標としてよく使用されます(3)。これらの多糖体は、霊芝の子実体や菌糸体から抽出することができます。
霊芝の多糖体は、免疫調節作用や抗腫瘍効果、抗酸化作用や血糖調節作用など、幅広い効能を持つことが、研究により示唆されています(5)。ヒトを対象とした研究報告の例を挙げると、2型糖尿病患者に霊芝(Ganoderma lucidum)由来の多糖体を12週間摂取してもらった結果、空腹時血糖などの血糖値がプラセボと比べ有意に低下したことが報告されています(6)。
また、霊芝の多糖体は、がん細胞の増殖を抑える免疫機能を活性化させることが多くの研究で示唆されており、がん免疫療法における霊芝の活用にも期待が寄せられています(7)。霊芝の活性多糖体は、私たちの健康を守る上で有効的な働きをすることが示唆されています。
霊芝のトリテルペン類
トリテルペンとは、炭素原子5つで構成されるイソプレンという基本骨格が組み合わさってできる、動物と植物の両方にとって非常に重要な働きをする物質です(8)。トリテルペンは、そのままの状態でも細胞膜の構成など重要な働きをしますが、酵素により修飾されたトリテルペノイドという形や、さらに糖分子と結合した配糖体(サポニン)という形になることで、より幅広い効果を示す物質であり、医薬研究において最も重要視されている天然由来成分のひとつです(9)。
霊芝のトリテルペン類は、140種以上が単離されており、霊芝天然の苦みの元と考えられ、効能に関するさまざまな研究が行われてきました(10)。霊芝のトリテルペン類が持つ効能も、霊芝の多糖体と同様に幅広く、抗腫瘍作用や抗酸化作用、肝臓保護作用などが報告され、その効能が示唆されています(11)。
実際にヒトを対象とした研究で、霊芝の摂取により肺がんや消化器系がん患者のQOLが向上したことや、腎機能障害や関節リウマチ患者の症状を緩和したことなど、霊芝のトリテルペン類が持つ幅広い効能が報告されています(12)。霊芝のトリテルペン類は、体質や生理機能を整え、自己防御能力を高める助けとなることが示唆されています。
霊芝の食べ方は?副作用はある?
霊芝はほとんどの成人にとっては安全な健康製品と考えられています。実際に、ヒトを対象として、霊芝の安全性をプラセボと比較した研究の結果からも、その安全性は支持されています(13)。しかし、未成年の方や、妊娠中・授乳中の女性については、対象とした安全性の研究が十分ではないため、摂取する前に医師に相談した方が良いと考えられています(12)。また、他の薬を服用している場合や他の医療治療を受けている場合にも、治療薬との相互作用を避けるため、事前に医師に相談したほうが良いでしょう。
霊芝は誰におすすめ?
霊芝には幅広い効能があることが研究により示唆されており、その安全性についても上記のように数多く報告されています。霊芝は医薬品ではないため、治療を目的とした利用は推奨されていませんが、予防や活力維持への効能を考慮すると、以下の方に特におすすめできます。
霊芝を選ぶ際の注意点
市販の霊芝製品はさまざまありますが、どのような基準で霊芝製品を選べばよいのでしょうか?以下では選ぶポイントを紹介します!
1. 含有される霊芝の種類、原産地を確認する
パッケージに霊芝の日本語名、ラテン語名、原料の原産地が明確に表示されていることを確認してください。霊芝の中でも最もよく研究されてきたものは、赤芝(学名Ganoderma lucidum)と紫芝(学名Ganoderma sinense)であり、これらを使用しているものがより効果的と考えられます(4)。
日本国内では、信越地方や北関東地方を中心にさまざまな場所で栽培されている他、台湾も近年盛んに生産をしており、原産地が明記されているとより信頼できる製品と考えられます。現在市場に出る霊芝の多くは人工栽培されたものですが、近年は栽培技術や栽培環境への配慮が進んでおり、人工栽培の霊芝でもその安全性に問題は生じないと考えられています(14)。
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霊芝子実体の抽出:子実体とは、霊芝全体のうち、傘と柄の部分を含んだものです。固体培養による抽出はコストが高くなりますが、最も栄養価を保持できると考えられています。
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霊芝菌糸体の発酵:菌糸体とは、霊芝が成長する過程で木材の栄養を分解吸収する部分であり、植物の根のようなものです。液体培養による発酵はコストが抑えられますが、栄養価がやや低くなると考えられています。
2. 重金属試験を通過した製品か確認する
霊芝原料について、農薬残留検査や重金属試験の報告があると、より信頼できる製品であると考えられます。
3. 霊芝の多糖体の配合率を確認する
霊芝多糖体含有量が30%に達する製品を選ぶことで、より良い製品を選択できると考えることができます。
4. 一度に大量の霊芝を摂取するのではなく長期的に推奨量を摂取する
霊芝の安全性は上記のようなヒトを対象とした研究により示唆されていますが、摂取量が多ければより良いというわけではありません。上記のポイントを押さえて選んだ製品が推奨する量を、長期間摂取することで、より安心して摂取でき、健康を維持することが期待できます。
5. 霊芝と相性が良いと考えられる成分と組み合わせた製品を選ぶ
霊芝が持つ多糖体やトリテルペン類と近い効能を持つ成分を併せて含有した製品を選択すると、期待する効能に近づく上で有効的だと考えられます。