スペアミントの基本情報
スペアミントはシソ科ハッカ属に分類される植物で、Mentha spicata L.という学名を持つ、多年生のハーブの一種です(1)。
その葉が槍(spear)のように鋭い形をしていることから、スペアミント(spearmint)と呼ばれるようになったとされています(2)。
スペアミントの生葉や乾燥葉は、茶葉や芳香剤としてだけではなく、胃腸や呼吸器、風邪の症状に対する伝統医学のハーブとしても活用されてきました。
スペアミントは、その清涼感のある香りが長年親しまれており、スペアミントのオイルはチューインガムや化粧品、歯磨き粉の香料としても頻繁に利用されています。
「ミント」の代表的な存在として、スペアミントと並んでよく知られるものにペパーミント(学名:Mentha piperita L.)がありますが、実は成分が異なり、香りにも差があることが知られています(3)。
一般的に、ペパーミントは清涼感が強く、スペアミントはマイルドな清涼感とほのかな甘さが特徴的だと考えられています。
スペアミントの成分
スペアミントは、フェノール類を豊富に含んでおり、これらの成分の働きからハーブとして利用されてきました。
スペアミントの乾燥葉から抽出したエキスの成分を分析した研究によると、ロスマリン酸というポリフェノールの一種が、スペアミントの葉に含まれるフェノール類のなかで最も多かったとされています(4)。
ロスマリン酸は、その名の通りローズマリーから発見されたポリフェノールで、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持ち、近年東京大学を中心とする研究チームによりアルツハイマー病を抑制する効能が示唆された、注目を集める物質です(5)。
また、スペアミントの成分を分析した研究によると、スペアミントの揮発性成分は、主にカルボンやリモネンという物質で構成されていることが報告されています(4)。
メントールという物質による清涼感の強い香りが特徴的なペパーミントとは異なり、この研究を含めた多くの分析で、スペアミントにはメントールは多く含まれないことが報告されています。
ペパーミントとスペアミントの香りの違いは、このような揮発性成分の違いに起因すると考えられています(3)。
異なる産地のスペアミントには、含まれる成分の割合にわずかな違いがある可能性がありますが、スペアミントは他にも、ビタミンEの一種であるα-トコフェロールなども含んでおり、ハーブとしての効能において重要な働きをしていると考えられています。
スペアミントの効能
スペアミントは、古くから胃腸や呼吸器の不調、風邪の治療や、気分を鎮めるハーブとして活用されてきました(1)。
さらに、その爽やかな香りから、スペアミントはよく食後に摂取され、食べ過ぎを防止するうえでも利用されてきました。
近年スペアミントの効能で最も注目を集めているものが、認知機能に対する効能です。認知機能とは、私たちの記憶や思考、理解や判断などのさまざまな知的機能全般を含むもので、加齢とともに低下し、生活の質の悪化に繋がることが懸念される重要な機能です。
多くの研究で認知機能の維持に有効的な物質が探索され、そのひとつにロスマリン酸を豊富に含むスペアミントが挙げられています。報告をまとめると、スペアミントには以下のような効能があることが示唆されています。
注意力を高め柔軟な思考を促進する
平均年齢58.7歳の男女にスペアミント抽出物を1日900mg、30日間摂取してもらった研究では、スペアミント抽出物の摂取後に注意力と集中力を測る認知機能テストの結果が改善し、スペアミントの摂取が注意力の向上に繋がることが示唆されています(6)。
また、18歳から50歳の若く活動的な男女を対象とした研究でも、1日900mgのスペアミント抽出物またはプラセボを90日間摂取してもらった結果、スペアミント摂取グループでプラセボグループに比べて有意に、注意力の持続や複雑性注意のスコアが高かったと報告されています(7)。
これらの報告から、スペアミントが注意力の改善に貢献することが示唆されています。
仕事の柔軟性を高め判断力と決定力を強化する
スペアミントの認知機能に対する効能は、刺激に素早く反応したり、反応に合わせて素早く方向転換を行う上で重要な、反応敏捷性にも効果的であることが示唆されています。
18歳から50歳の健康な男女142人を対象に、ランダムに割り当てた1日900mgのスペアミント抽出物またはプラセボを90日間摂取してもらった研究では、スペアミント摂取グループでの反応敏捷性の測定結果が、プラセボに比べ高かったことが報告されています(8)。
この研究では、反応敏捷性を測るテストとして、光や音に従って身体を指示通り動かすフィットネスゲームが使用され、静止や多方向への反応をフットプレートで測定し、ヒット数や平均反応時間を比較しました。
その結果、スペアミント摂取グループの静止テスト、多方向テストのスコアがプラセボグループより高く、反応敏捷性への効能が示唆されています。
タスクの漏れを減らす
スペアミントが持つ認知機能に対する効能は、ワーキングメモリの改善にも働きかけることが示唆されています。
ワーキングメモリは、私たちが情報を一時的に脳に留めておく能力を指す認知機能の一種で、複数の情報を頭に留めながら作業をする上で重要な機能として知られています(9)。
加齢による正常な脳の変化によって物忘れが進行している平均年齢59.4歳のボランティア90名を対象とした研究では、スペアミント抽出物1日900mg計90日間の摂取により、ワーキングメモリや空間作業記憶が改善したことが報告されています(10)。
スペアミントは注意力の改善だけではなく、記憶に関わる認知機能にも効果を発揮することが示唆されています。
睡眠を助ける
ワーキングメモリ改善の効能を調べた、物忘れが進行したボランティアを対象に行った研究では、1日900mgのスペアミント抽出物の摂取により、入眠までの時間もプラセボに比べ改善したことが報告されています(10)。
スペアミントは認知機能だけではなく、睡眠にも効能を発揮することが示唆されています。
良好な気分を維持する
上記のワーキングメモリや睡眠への効能を調べた研究では、同時に気分の安定に対する効能も評価されました(10)。
スペアミント摂取グループの気分プロフィール検査の結果が、プラセボに比べ有意に良好であったと報告されており、スペアミントの幅広い効能が示唆されています。
スペアミントが適している方
スペアミントには、ロスマリン酸などの認知機能に有効的であると考えられている成分が含まれており、上記のような研究からも認知機能への効能が示唆されています。
そのため、以下に当てはまる方には、特にスペアミントの摂取をお勧めします。
スペアミントの摂取量と副作用
スペアミントの効能を調べたヒトを対象とする研究では、1日900mgのスペアミント抽出物を90日間摂取しても血液検査の結果に問題がなかったことが報告されており、他の研究の結果を考慮しても、スペアミントは安全性の高い物質であると考えられています(8)。
また、最適な摂取時間は、食前でも食後でも問題ありません。毎日の朝食時に一緒に摂取するのも良いでしょう。これにより、良い摂取習慣が身に付きます。
スペアミントとの適切な組み合わせ
認知機能への効果が示唆されているスペアミントとの適切な組み合わせには、以下のような成分があります。
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銀杏
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プロバイオティクス
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ホスファチジルセリン(PS)
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葉酸
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ビタミンB12
これらの成分は、それぞれ思考の敏捷性や神経保護などに役立つことが研究で示唆されており、認知機能への効能を期待してスペアミントを摂取する方のニーズに適していると考えられます。
一緒に補充すると、より爽快な気分を得ることができると考えられます。