コラーゲンは肌や臓器などに分布しているたんぱく質です。加齢とともに体内のコラーゲンは徐々に減少するため、肌のハリや関節の健康を維持するために、コラーゲンを経口摂取して体内に補給するのは良い方法です。
そのため、コラーゲンペプチドは低分子で体内での吸収率が高いという特徴があり、コラーゲンペプチドを含むサプリメントが人気を集めています。
この記事では、コラーゲンペプチドの基本的な情報から、効果や適切な摂取方法までご紹介します。コラーゲンペプチドの正しい知識を得ることで、より効果的なケアにつながるでしょう。
コラーゲンペプチドとは

コラーゲンペプチドとは、コラーゲンを酵素で分解して分子を小さくした成分です。
食物中のコラーゲンは、その分子量が約30万で、非常に大きいため、そのまま摂取しても体内で効率よく吸収されません。
食べ物に含まれるコラーゲンを効率的に吸収するためには、まずコラーゲンを加熱処理や酵素で分解する必要があります。
この加工過程によって、コラーゲンは低分子化され、コラーゲンペプチドが生成されます。そのため、体内での吸収が速くなります。
コラーゲンペプチドを生成する過程においては、コラーゲン、ゼラチン、そしてコラーゲンペプチドそれぞれの性質や違いを理解することが重要です。
コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドの違い

コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドは、いずれもコラーゲンを原料にしていますが、加工方法が異なり、それによって吸収のしやすさや効果が異なります。
コラーゲンはそのままでは吸収されにくいため、ゼラチンに加熱処理し、さらに酵素で分解することで、コラーゲンペプチドとなり、効率的に体内で活用されるようになります。
特徴 |
コラーゲン(食品に含まれる) |
ゼラチン |
コラーゲンペプチド |
定義 |
動物の皮膚や骨、軟骨などに含まれる 繊維状たんぱく質 |
コラーゲンを加熱処理して作られる物質 |
ゼラチンを酵素で分解し、分子を小さくしたもの |
分子量 |
大きい (高分子) 約300,000DA |
中くらい(コラーゲンより小さい) 約100,000DA |
小さい (低分子) 約1,000~8,000DA |
吸収率 |
低い |
低い |
高い |
溶けやすさ |
溶けにくい |
溶けにくい |
溶けやすい 冷水にも溶けやすい |
使用方法 |
(食品に含まれるので、直接食べる) |
主にゼリーやデザートなどに使用 |
サプリメント、ドリンク、食品などで使用 |
経口摂取により期待される効果 |
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ジェル化や食品の質感向上 |
皮膚や関節の健康維持サポート、筋肉の回復促進など |
コラーゲン
コラーゲンは全身に分布しており、皮膚や骨、軟骨などの結合組織の主成分であるたんぱく質です。食品に含まれるコラーゲンは分子量が大きいため、コラーゲンが多く含まれる食品を摂取しても体内での吸収が難しいという特徴があります。
そのため、コラーゲンを摂取するためには、まず加熱処理が必要になります。
ゼラチン
ゼラチンは、コラーゲンを加熱処理した物質のことです。ゼラチンはコラーゲンよりも分子量は小さいものの、溶けにくく摂取しにくいという特徴があります(2)。
しかし、ゼラチンの分子量はまだ大きいため、摂取後の吸収は遅く、完全に体内で活用するためには時間がかかります。
コラーゲンペプチドの性質
コラーゲンペプチドとは、コラーゲンの変性たんぱく質であるゼラチンを酵素で分解(加水分解)したたんぱく質のことです(1)。
コラーゲンペプチドはゼラチンをさらに分解したもので、分子量がさらに小さく(1,000DA〜8,000DA)、体内での吸収が容易になり、皮膚や関節などの健康維持をサポートする役割があるとされています。
コラーゲンペプチドには、PO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)というペプチドが含まれています。コラーゲンペプチドを摂取すると、体内で吸収され、血液中のPO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)の濃度が増加し、全身に届くことが確認されています。
さらに、POやOGは摂取後、体内で合成され、肌を支える重要なコラーゲンとなります。そのため、コラーゲンペプチドはサプリメントやドリンクとして広く利用されています。
また、コラーゲンペプチドにはPOやOGの濃度と含量を特に重視することが重要です。
<成分の徹底解説>
コラーゲン成分情報:美容、関節、皮膚に重要な栄養素
コラーゲンペプチドの働きと機能
コラーゲンペプチドは、コラーゲンを加熱処理し、さらに加水分解して分子量を小さくしたたんぱく質のことです。
体内への吸収が早いことによって、身体にとってさまざまな効果が期待できます。さらにコラーゲンペプチドは、体内で分解されると以下のような成分に分かれます。
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Pro-Hyp(プロリル-ヒドロキシプロリン)
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Hyp-Gly(ヒドロキシプロリル-グリシン)
これらの成分によっても、得られる効果が異なるのです。ここでは、コラーゲンペプチドの働きや機能について詳しく解説します。
皮膚の水分量の維持

コラーゲンペプチドには、皮膚の水分量の維持をサポートするとされています。実際に、コラーゲンペプチドの摂取によって肌の水分量や弾力などの状態が改善されたという報告があります。
これは、コラーゲンペプチドの主成分である「Pro-Hyp」が、皮膚の健康や肌の細胞の成長に貢献しているとされているからです(4)。
コラーゲンペプチドを摂取すると、体内で吸収され、血液中のPO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)の濃度が増加し、全身に届きます。
Pro-Hypは体内でコラーゲンに合成され、肌や関節を支える重要な役割を果たします。さらに、コラーゲンの合成にはビタミンCが必要であり、ビタミンCはその合成過程をサポートします。
ただし、皮膚に対するコラーゲンペプチドの効果は、個人差や外部環境によっても変化する可能性があります。
関節や軟骨の健康維持

コラーゲンペプチドは、関節や軟骨の健康維持にも関わっています。
コラーゲンペプチドの摂取によって、関節の健康維持のサポートにつながります。研究結果によると、コラーゲンペプチドには、以下のような作用がみられたという報告があるのです(5)。
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軟骨組織の再生促進
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関節液の増加による潤滑性の向上
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炎症反応の抑制
とくに「Pro-Hyp」が、これらの役割を果たしているとされています。
また、軟骨の変性をおさえることも確認されており、長期的な健康維持につながる可能性もあります。
髪の健康維持

コラーゲンペプチドは、髪の健康維持にも役立つ可能性があります。
髪は「ケラチン」と呼ばれるたんぱく質を主成分としており、いくつかの層に分かれています。たんぱく質であるコラーゲンペプチドの摂取によって、髪の毛に栄養を運搬し、健康をサポートしているとされているのです。
実際に、コラーゲンペプチドの摂取によって以下のような効果がみられたという報告があります(6)。
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髪の毛の直径増加
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滑らかさの改善
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ハリ・コシの改善
美しい髪の毛を維持したい方にとっても、コラーゲンペプチドの摂取はおすすめといえます。
運動効果の向上

コラーゲンペプチドは、運動に関してもよい効果があるとされています。
コラーゲンペプチドは筋トレ後のたんぱく質の合成を促進させ、その後の回復を促し、筋力の増加につながるとされているのです。実際に、高齢者の方に筋トレ後にコラーゲンペプチドを摂取したところ、そうでない方と比較して筋力増加がみられたという報告があります(7)。
また関節の健康維持にもつながるので、筋トレによる負担を軽減しつつ、安全に運動できるきっかけにもなるでしょう。
コラーゲンペプチドの明確な効果はみられないという報告もあるため、個人差があると考えられます。
コラーゲンペプチドの製造方法
コラーゲンペプチドは、主に牛や豚の皮や骨から製造されています。製造工程は複雑で、安全性と品質を確保するためのさまざまな処理が行われています。
日本におけるコラーゲンペプチドの製造工程の例は、以下のとおりです(3)。
【コラーゲンペプチドまでの製造工程】
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粉砕した骨を脱脂処理
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加圧・加熱処理
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水洗い
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ろ過(精製)
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高温殺菌後、乾燥
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さらに粉砕しゼラチンとして処理
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加水分解によってコラーゲンペプチドへ
このように、コラーゲンペプチドの製造には、安全性と品質を確保するための多くの工程がかかっています。またコラーゲンペプチドのほかに、以下のようなコラーゲンに関する材料の製造も行われています。
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コラーゲンケーシング(ソーセージの原料を詰めるための袋)
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オセイン(ゼラチンのもととなる原料
コラーゲンペプチドの原材料
現在食品やサプリメントに用いられているコラーゲンは、主に牛や豚や魚が供給源となっています。以下は各由来のコラーゲンペプチドの特徴を紹介します。
1. 牛由来のコラーゲン
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供給が安定しており、比較的安価である。
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ヒトに対する研究が多く、生体適合性が高い。
2. 豚由来のコラーゲン
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牛由来と同様に供給が安定している。
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ヒトに対する研究が多く、生体適合性が高い。
3. 魚由来のコラーゲン
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近年、研究が進んでおり、注目を集めている。
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抗炎症作用があることを示唆する研究報告がある。
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血中濃度に反映されるペプチド量が豚由来より多いという研究結果がある。
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吸収率が高いため、吸収率を重視する人におすすめ。
コラーゲンペプチドは美肌に本当に効果があるの?
コラーゲンペプチドの効果について解説しましたが、本当に美肌に効果があるのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
実際に、コラーゲンペプチドと肌の健康に関する研究は、数多くあります。
まず、コラーゲンペプチドを摂取すると、体内で消化・吸収されて血液中に取り込まれます。
この過程でコラーゲンペプチドは分解され、皮膚組織に到達すると肌に作用するのです。その結果、以下のような効果によって肌の健康維持に貢献する可能性があります(8)。
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肌の潤い
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弾力の改善
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シワの改善
コラーゲンペプチドは即効性のある成分ではないため、継続的な摂取とともに健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
効果を引き出す!コラーゲンの摂取方法は?
コラーゲンは、食べ物や外用製品からの摂取が可能です。コラーゲンを多く含む食べ物は、以下のとおりです(9)。
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肉類(牛肉・豚肉・鶏肉など)
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魚介類(アジ・イワシ・うなぎなど)
コラーゲンが多い食べ物のランキングとレシピを管理栄養士が紹介!
これらの食べ物を積極的に摂取することで、自然にコラーゲンをとり入れられます。食事でうまくコラーゲンを摂取できない場合は、サプリメントの使用もおすすめです。前述したように、コラーゲンペプチドは通常のコラーゲンよりも分子量が小さいので、体内で吸収しやすくなります。
また、外用製品もコラーゲンの効果を引き出す方法の1つです。
クリームやローションなどの形で肌に直接塗ることで、肌の表面からの補給が期待できます。ただし、外用製品の効果は肌の表面に限られるため、内側からのケアと組み合わせるのがおすすめです。
摂取のタイミングに明確な指標があるわけではないものの、身体の修復が活発となる就寝前や、運動前後がよいとされています。
コラーゲンペプチドをとりすぎても大丈夫?
身体にさまざまな働きがあるとされているコラーゲンペプチドですが、過剰摂取には注意が必要です。
コラーゲンペプチドは動物由来の成分も多いため、個人の体質や健康状態によってはアレルギー反応が起こるケースがあります(10)。
また、妊娠中や授乳中の方に対しての安全性も明確ではないため、使用する場合は医師に相談する必要があるでしょう。
このように、コラーゲンペプチドは「摂取すれば摂取するほどよい」というわけではありません。自身の体調をよくチェックしながら、上手に取り入れていきましょう。
コラーゲンペプチドの活用で健康へ
コラーゲンペプチドは、美容や健康に関心のある方にとって注目の成分といえます。
コラーゲンペプチドには、肌の潤い保持や関節・軟骨の健康維持などの、幅広い効果が期待できます。
ただし、人によっては副作用が現れるケースもあるので、使用には十分に注意しましょう。ぜひ今回の記事を参考にして、安全かつ適切にコラーゲンペプチドをとり入れてみてください。