コラーゲンは肌や臓器などに分布しているたんぱく質です。加齢とともに体内のコラーゲンは徐々に減少するため、肌のハリや関節の健康を維持するために、コラーゲンを経口摂取して体内に補給するのは良い方法です。
そのため、コラーゲンペプチドは低分子で体内での吸収率が高いという特徴があり、コラーゲンペプチドを含むサプリメントが人気を集めています。
この記事では、コラーゲンペプチドの基本的な情報から、効果や適切な摂取方法までご紹介します。コラーゲンペプチドの正しい知識を得ることで、より効果的なケアにつながるでしょう。
コラーゲンペプチドとは

コラーゲンペプチドとは、コラーゲンの変性たんぱく質であるゼラチンを酵素で分解(加水分解)したたんぱく質のことです(1)。
その特徴は、成分の分子が小さいことです。そのため、体内での吸収が速くなります。
コラーゲンペプチドの分子量とは?
分子量とは、その成分の「分子の大きさ」や「重さ」を表すものです。
分子量の単位には「Da(ダルトン)」が使われており、1Daは水素原子1個の重さに相当します。分子量が大きいほど、その物質は体の中で分解・吸収されにくくなります。

食物中のコラーゲンは、その分子量が約30万で、非常に大きいため、そのまま摂取しても体内で効率よく吸収されません。
食べ物に含まれるコラーゲンを効率的に吸収するためには、まずコラーゲンを加熱処理や酵素で分解する必要があります。
この加工過程によって、コラーゲンは低分子化され、コラーゲンペプチドが生成されます。
コラーゲンペプチドはゼラチンをさらに分解したもので、分子量がさらに小さく、体内での吸収が容易になり、皮膚や関節などの健康維持をサポートする役割があるとされています。
注意すべきなのは、同じ低分子コラーゲンペプチドでも、分子量が3,000Daよりも1,000Daのほうが吸収されやすく、体外に排出されにくいという点です。
コラーゲンペプチドの有効成分:POとOGは?
コラーゲンペプチドには、PO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)というペプチドが含まれています。
コラーゲンペプチドを摂取すると、体内で吸収され、血液中のPO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)の濃度が増加し、全身に届くことが確認されています。
さらに、POやOGは摂取後、体内で合成され、肌を支える重要なコラーゲンとなります。そのため、コラーゲンペプチドはサプリメントやドリンクとして広く利用されています。
また、コラーゲンペプチドにはPOやOGの濃度と含量を特に重視することが重要です。
コラーゲンペプチドの働き
コラーゲンペプチドは、コラーゲンを加熱処理し、さらに加水分解して分子量を小さくしたたんぱく質のことです。
体内への吸収が早いことによって、身体にとってさまざまな効果が期待できます。さらにコラーゲンペプチドは、体内で分解されると以下のような成分に分かれます。
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Pro-Hyp(プロリル-ヒドロキシプロリン)
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Hyp-Gly(ヒドロキシプロリル-グリシン)
これらの成分によっても、得られる効果が異なるのです。ここでは、コラーゲンペプチドの働きや機能について詳しく解説します。
1. 皮膚の水分量の維持

コラーゲンペプチドには、皮膚の水分量の維持をサポートするとされています。実際に、コラーゲンペプチドの摂取によって肌の水分量や弾力などの状態が改善されたという報告があります。
これは、コラーゲンペプチドの主成分である「Pro-Hyp」が、皮膚の健康や肌の細胞の成長に貢献しているとされているからです(4)。
コラーゲンペプチドを摂取すると、体内で吸収され、血液中のPO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)の濃度が増加し、全身に届きます。
Pro-Hypは体内でコラーゲンに合成され、肌や関節を支える重要な役割を果たします。さらに、コラーゲンの合成にはビタミンCが必要であり、ビタミンCはその合成過程をサポートします。
ただし、皮膚に対するコラーゲンペプチドの効果は、個人差や外部環境によっても変化する可能性があります。
2. 関節や軟骨の健康維持

コラーゲンペプチドは、関節や軟骨の健康維持にも関わっています。
コラーゲンペプチドの摂取によって、関節の健康維持のサポートにつながります。研究結果によると、コラーゲンペプチドには、以下のような作用がみられたという報告があるのです(5)。
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軟骨組織の再生促進
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関節液の増加による潤滑性の向上
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炎症反応の抑制
とくに「Pro-Hyp」が、これらの役割を果たしているとされています。
また、軟骨の変性をおさえることも確認されており、長期的な健康維持につながる可能性もあります。
コラーゲンペプチドは美肌に本当に効果があるの?
コラーゲンペプチドの効果について解説しましたが、本当に美肌に効果があるのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
実際に、コラーゲンペプチドと肌の健康に関する研究は、数多くあります。
まず、コラーゲンペプチドを摂取すると、体内で消化・吸収されて血液中に取り込まれます。
この過程でコラーゲンペプチドは分解され、皮膚組織に到達すると肌に作用するのです。その結果、以下のような効果によって肌の健康維持に貢献する可能性があります(8)。
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肌の潤い
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弾力の改善
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シワの改善
コラーゲンペプチドは即効性のある成分ではないため、継続的な摂取とともに健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
コラーゲンペプチドの製造方法

動物の皮膚、骨、腱などに多く含まれるコラーゲンは分子量が大きいため、そのままでは体内に吸収されにくいという性質があります。
そのため、コラーゲンを加工して分子量の小さい「コラーゲンペプチド」を製造する必要があります。
まず、動物や食品に含まれるコラーゲンを加工して得られるのがゼラチンです。ゼラチンは、コラーゲンを熱と酸またはアルカリによって部分的に加水分解することで生成され、水に溶ける性質を持ちます。
さらに、ゼラチンを特定の酵素で分解することで、より分子量の小さいコラーゲンペプチドが得られます。
【コラーゲンペプチドの由来】
現在食品やサプリメントに用いられているコラーゲンは、主に牛や豚や魚が供給源となっています。以下は各由来のコラーゲンペプチドの特徴を紹介します。
1. 牛由来のコラーゲン
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供給が安定しており、比較的安価である。
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ヒトに対する研究が多く、生体適合性が高い。
2. 豚由来のコラーゲン
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牛由来と同様に供給が安定している。
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ヒトに対する研究が多く、生体適合性が高い。
3. 魚由来のコラーゲン
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近年、研究が進んでおり、注目を集めている。
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抗炎症作用があることを示唆する研究報告がある。
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血中濃度に反映されるペプチド量が豚由来より多いという研究結果がある。
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吸収率が高いため、吸収率を重視する人におすすめ。
【コラーゲンペプチドまでの製造工程】
日本におけるコラーゲンペプチドの製造工程の例は、以下のとおりです(3)。
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粉砕した骨を脱脂処理
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加圧・加熱処理
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水洗い
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ろ過(精製)
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高温殺菌後、乾燥
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さらに粉砕しゼラチンとして処理
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加水分解によってコラーゲンペプチドへ
このように、コラーゲンペプチドの製造には、安全性と品質を確保するための多くの工程がかかっています。またコラーゲンペプチドのほかに、以下のようなコラーゲンに関する材料の製造も行われています。
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コラーゲンケーシング(ソーセージの原料を詰めるための袋)
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オセイン(ゼラチンのもととなる原料
コラーゲンと他の栄養素と一緒に食べる方がいい
コラーゲンを摂取するときに、一緒に摂取した方が良い栄養素があります。
ビタミンC
消化吸収されたコラーゲンが再合成されるには、ビタミンCが必要になります。そのため、コラーゲンを摂取してもビタミンCが不足していると、コラーゲンが再合成されなくなってしまうのです。
ビタミンCは、レモンやいちごなどの果実類、じゃがいもやピーマン、ほうれん草などの野菜に豊富に含まれています。コラーゲンのサプリメントの中には、ビタミンCが含まれている製品もあるので、そのようなサプリメントで摂取してもよいでしょう。
鉄分やビタミンA、ビタミンB群、亜鉛
鉄分とビタミンB群もビタミンCと同様、コラーゲンの再合成に不可欠な栄養素です。
また、ビタミンAや亜鉛は、皮膚の健康維持には欠かせない栄養素のため、特に美容目的でコラーゲンを摂取する方は、一緒に摂取することをおすすめします。
コラーゲンペプチドをとりすぎても大丈夫?
身体にさまざまな働きがあるとされているコラーゲンペプチドですが、過剰摂取には注意が必要です。
コラーゲンペプチドは動物由来の成分も多いため、個人の体質や健康状態によってはアレルギー反応が起こるケースがあります(10)。
また、妊娠中や授乳中の方に対しての安全性も明確ではないため、使用する場合は医師に相談する必要があるでしょう。
このように、コラーゲンペプチドは「摂取すれば摂取するほどよい」というわけではありません。自身の体調をよくチェックしながら、上手に取り入れていきましょう。
コラーゲンペプチドの活用で健康へ
コラーゲンペプチドは、美容や健康に関心のある方にとって注目の成分といえます。
コラーゲンペプチドには、肌の潤い保持や関節・軟骨の健康維持などの、幅広い効果が期待できます。
ただし、人によっては副作用が現れるケースもあるので、使用には十分に注意しましょう。ぜひ今回の記事を参考にして、安全かつ適切にコラーゲンペプチドをとり入れてみてください。
よくある質問
Q.コラーゲンの種類は?
A:コラーゲンは、アミノ酸の鎖が3本絡まった三重らせん構造をしています。構造や存在部位によって30種類程度のタイプがあり、発見された順に番号がつけられています。以下の5種類が特に重要で、体内に広く存在しています(2)。
種類 |
特徴 |
Ⅰ型 |
体内に最も多く存在し、骨や皮膚、靭帯、腱などに含まれています。骨の形成などに重要なコラーゲンです。 |
Ⅱ型 |
主に軟骨に含まれているタイプのコラーゲンです。関節軟骨は、関節への衝撃を和らげ、スムーズに動かすために働いています。 |
Ⅲ型 |
皮膚や血管壁に存在しているタイプのコラーゲンです。組織の柔軟性や弾性を高めています。 |
Ⅳ型 |
繊維状ではなく網目状のシートを形成しており、皮膚や臓器などの基底膜に存在しています。基底膜は、組織の構造を維持するための足場や物質の透過を選択するフィルターなどの役割を果たしています。 |
Ⅴ型 |
胎盤や血管、筋肉などに含まれています。I型とⅢ型コラーゲンを束ねてコラーゲン繊維を形成する働きがあります。 |
各タイプのコラーゲンは、体のさまざまな部位で重要な役割を果たしています。
Q.コラーゲンが不足するとどうなりますか?
A:皮膚のシワやたるみ、関節痛、骨密度が低下し骨折のリスク増、抜け毛増加、爪が脆くなる、動脈硬化、眼精疲労などの症状があらわれる可能性があります。
Q.コラーゲンのサプリメントを飲むと体重が増えますか?
A:サプリメントを飲んだだけで体重が増えることはありません。
Q.コラーゲンのサプリメントを飲み始めてからどのぐらいで効果が現れますか?
A:個人差がありますが、サプリメントを飲み始めてから2〜3ヶ月は継続して飲み続ける必要があります。
Q.コラーゲンペプチドと低分子コラーゲン、非変性Ⅱ型コラーゲンの違い
サプリメントやスキンケア商品などでよく見かけるコラーゲンペプチドや低分子コラーゲンは、分子量が大きなコラーゲンを加熱処理後に酵素で分解することで低分子化したものです。
通常のコラーゲンよりも吸収されやすく、吸収効率も高まるといわれています。コラーゲンペプチドと低分子コラーゲンは同じものですが、より低分子で吸収効率が高いことを強調したい場合、低分子コラーゲンと呼ばれています。
非変性Ⅱ型コラーゲンは、構造が変化しておらずⅡ型コラーゲンの立体構造を保っているものです。自己免疫反応を抑制することで、関節の痛みを軽減する効果が期待されています。
Q. コラーゲン、ゼラチンの違いは?
コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドは、いずれもコラーゲンを原料にしていますが、加工方法が異なり、それによって吸収のしやすさや効果が異なります。
特徴 |
コラーゲン(食品に含まれる) |
ゼラチン |
コラーゲンペプチド |
定義 |
動物の皮膚や骨、軟骨などに含まれる 繊維状たんぱく質 |
コラーゲンを加熱処理して作られる物質 |
ゼラチンを酵素で分解し、分子を小さくしたもの |
分子量 |
大きい (高分子) 約300,000DA |
中くらい(コラーゲンより小さい) 約100,000DA |
小さい (低分子) 約1,000~8,000DA |
吸収率 |
低い |
低い |
高い |
溶けやすさ |
溶けにくい |
溶けにくい |
溶けやすい 冷水にも溶けやすい |
使用方法 |
(食品に含まれるので、直接食べる) |
主にゼリーやデザートなどに使用 |
サプリメント、ドリンク、食品などで使用 |
経口摂取により期待される効果 |
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ジェル化や食品の質感向上 |
皮膚や関節の健康維持サポート、筋肉の回復促進など |
コラーゲン
コラーゲンは全身に分布しており、皮膚や骨、軟骨などの結合組織の主成分であるたんぱく質です。食品に含まれるコラーゲンは分子量が大きいため、コラーゲンが多く含まれる食品を摂取しても体内での吸収が難しいという特徴があります。
そのため、コラーゲンを摂取するためには、まず加熱処理が必要になります。
ゼラチン
ゼラチンは、コラーゲンを加熱処理した物質のことです。ゼラチンはコラーゲンよりも分子量は小さいものの、溶けにくく摂取しにくいという特徴があります(2)。
しかし、ゼラチンの分子量はまだ大きいため、摂取後の吸収は遅く、完全に体内で活用するためには時間がかかります。
コラーゲンペプチドは、主に牛や豚の皮や骨から製造されています。製造工程は複雑で、安全性と品質を確保するためのさまざまな処理が行われています。