エラスチンは肌、血管や肺など弾力性のある組織に含まれているたんぱく質の1種で、肌ツヤの維持やたるみの防止など、美肌に欠かせない重要な成分であることが知られています。
この記事では、エラスチンの基本的な知識や具体的な効果について詳しくご紹介します。エラスチンの理解を深めることで、効果的なスキンケアや健康管理に活かせるでしょう。
エラスチンとは
エラスチンは、肌や血管などの組織に含まれる繊維状のたんぱく質で、コラーゲンとともに肌の弾力性を支える重要な成分です。
エラスチンはゴムのような高い伸縮性を持ち、組織が伸びた後に元の形に戻るという特徴で、フィブリリンとともに「弾性繊維」として分類されます。(1)
人体におけるエラスチンの含有量は、組織によって異なります。とくに多くの割合が含まれている組織は、以下のとおりです。
-
肌(皮膚)
-
動脈
-
靭帯
-
肺
エラスチンによる肌のハリや弾力の維持効果
皮膚におけるエラスチンの働き
肌には三つの層から構成されています:表皮、真皮、そして皮下組織です。真皮は表皮の下にあり、肌の強さや弾力を支える層です。
真皮は大部分がコラーゲンでできており、他には保水力の高いヒアルロン酸や、弾力を与えるエラスチン、これらを作る線維芽細胞で構成されています(9)。
コラーゲンが真皮の70%近くを占めるのに対して、エラスチンは真皮のわずか2〜3%という割合でしか存在しないとされています(10)。
真皮では、コラーゲンがネットワークを作って鉄筋のような役割を果たしており、これによって肌の強度が保たれています。
コラーゲンは肌の構造を支えますが、性質的に伸びたり縮んだりしないです。エラスチンは弾力性があるため、コラーゲンを束ねることで肌に弾力を与え、若々しい外見を保ちやすくなるのです。(10)
このように、エラスチンとコラーゲンの相互作用により、肌のハリや弾力性が維持され、しなやかな肌を保つことができるのです。
肌の若々しさを保つためには、コラーゲンの補給だけではなく、体内のエラスチンを維持することが重要です。

エビデンス:エラスチンの美肌効果
カツオ由来のエラスチンペプチドを用いた研究では、35〜60歳の健康な成人計100人を対象に、1日100mgのカツオ由来エラスチンペプチドを12週間摂取してもらい、肌荒れやしわの状態変化を観察しました。
その結果、エラスチンペプチドを摂取したグループで、肌荒れやしわの深さ、量がプラセボと比較して有意に改善されたと報告されており、健康的な肌へのエラスチンペプチドの効能が示唆されています(11)。
ブタ由来のエラスチンペプチドを用いた別の研究では、皮膚の老化を自覚している健康な成人計34人を対象に、ブタ由来エラスチンペプチド0mg、100mg、200mgいずれかを含む100mlドリンクを1日1本8週間摂取してもらいました。
その結果、100mgと200mgいずれの用量でも、エラスチンペプチドを摂取したグループでは、摂取前と比べ有意に皮膚弾力性が向上したと報告されています。
エラスチンペプチド0mgのドリンクを摂取したグループでは有意な変化が見られなかったことから、エラスチンペプチド摂取の皮膚弾力性への効能が示唆されています(12)。
エラスチンとコラーゲンの違い
特徴 |
エラスチン (弾性線維) |
コラーゲン (膠原線維) |
主な役割 |
弾力性を提供し、肌や血管、肺の柔軟性を保つ |
強度を提供し、肌や骨、腱の構造を支える |
成分 |
主にアミノ酸(たんぱく質) |
主にアミノ酸(たんぱく質) |
弾力性 |
高い弾力性、伸縮性があり |
弾力性は低いが、高い強度を持つ |
分布 |
皮膚、血管、肺などの弾力が必要な部位 |
皮膚、骨、腱、軟骨などの強度が必要な部位 |
加齢による変化 |
加齢とともに減少し、皮膚や血管の弾力が失われる |
加齢に伴い減少し、皮膚のたるみや骨密度低下を引き起こす |
健康効果 |
皮膚や血管の弾力性を保ち、若々しさを維持 |
皮膚の強度を維持し、骨や関節の健康を支える |
エラスチンとコラーゲンは、どちらも肌の構造を支える重要なたんぱく質ですが、その役割や特性には大きな違いがあります。まず、エラスチンは肌の弾力性を担う「弾性線維」であり、肌や血管などの組織の柔軟性に関わっている成分です。
一方で、コラーゲンは肌の強度を支える「膠原(こうげん)線維」で、エラスチンのような柔軟性はあまりありません。
その代わり肌に外部からの力に耐えられる強さを与える役割があるのです(1)。
このように、エラスチンとコラーゲンには明確な違いがあります。
しかし、どちらも肌の健康に欠かせない成分のため、両方をバランスよく維持することが大切です。
エラスチンが不足の原因
エラスチンは加齢とともに減少し、再生しにくい
エラスチンは肌の老化を防ぐためにも欠かせない成分です。加齢によって徐々に減エラスチンの量は減少します。
その原因は、ほとんどのエラスチンが胎児から新生児への成長の間に体内で合成され、それ以降は生成量が減少していき、成人ではその生成量が非常に限られています(10)。
エラスチンはターンオーバーが非常にゆっくりと進む特殊なたんぱく質で、新たに生成されることが非常に少ないため、外的要因で損失してしまうと非常に再生しにくい重要なものだとされています(13)。
また、加齢に伴う「生理学的な老化」により線維芽細胞が減少することで、コラーゲンやエラスチンも減少し、肌が弾力のない薄いものへと変化します。
エラスチンが減少すると、肌のたるみやしわの原因となり、たるみやしわが目立ちやすくなります。肌への影響の他に、血管の硬化など、加齢にともなうさまざまな身体の変化の一因となっています。
そのため、日常にエラスチンが豊富に含まれる食品やサプリメントを積極的に摂取することが重要です。
光老化によるエラスチンの減少
長期間日光に曝されることで紫外線による悪影響が蓄積する「光老化」と呼ばれるものです(14)。
長期間紫外線を浴びることで線維芽細胞のDNAへダメージが蓄積し、コラーゲンは大きく減少する一方、エラスチンは構造が不規則に乱れてしまい、弾力性が損なわれて肌が硬くシワの深いものへ変化してしまうことが知られています(15)。
日によく当たる部分は、加齢に伴う生理学的な老化と光老化が同時に進行しており、光老化の影響力は大きいと考えられています(14)。
慢性的に日光を浴びると、エラスチンの量や配列が急激に変化し、真皮内のコラーゲンとエラスチンによるネットワークが破壊されます。
その結果、肌のたるみやシワが生じるため、光老化におけるエラスチンへの影響は非常に重要であると考えられています(16)。
エラスチンの肌以外の健康効果
1. 血管の健康維持のサポート

エラスチンは肌だけでなく、血管の健康の維持につながるとされています。動脈硬化とは、動脈の柔軟性が低下して硬くなった状態のことです。
エラスチンが動脈硬化の発症を予防する理由として、血管の弾力性を維持する働きがあげられます。
血管にはエラスチンが豊富に含まれており、血液の流れにあわせて伸縮します。この柔軟性によって、血管は血圧の変動に対応し、スムーズな血液循環を維持できるのです。
エラスチンによって血管の柔軟性が維持できれば、動脈硬化の発症リスクの低下が期待できます(2)。
2.生理痛の緩和

エラスチンは、子宮の収縮をサポートして、生理痛の緩和につながるとされています。子宮も血管や靱帯などと同じように、エラスチンが多くの構成割合を占めている組織です(3)。
子宮内膜を排出する際に生理中に子宮は収縮をしますが、この際の過度な収縮や硬直が生理痛の原因となります。エラスチンが不足すると子宮の柔軟性が低下し、生理が起こる際の収縮で痛みを感じやすくなるのです。
このように、生理痛をやわらげたい方にとっても、エラスチンの摂取は重要といえます。
3.靱帯の治癒促進

エラスチンは、靱帯の治癒促進につながるとされています。靱帯は関節を安定させる重要な組織ですが、一度損傷すると自然治癒が難しいとされています。
しかし、エラスチンの局所的な投与によって、靱帯の修復を促進できる可能性が示されているのです。
実際に動物を対象に、損傷させた靱帯にエラスチンを投与した実験があります。その結果、エラスチンを投与していないグループと比較して損傷部分の治癒促進がみられたとされています(4)。
このことから、スポーツによるケガや加齢による靱帯損傷の回復に役立つ可能性があるでしょう。
肌を構成するエラスチンを摂る方法
エラスチンを含む食べ物といえば、手羽先、軟骨と挙げられています。しかし、食品に含まれるエラスチンの分子量が大きいなので、体内での吸収が難しいです。そのため、食品から直接摂取するより、サプリメントからの摂取の方が効率的に方法です。
また、エラスチンは体内で生成できるため、体内でのエラスチン生成を補助してくれたり、分解されないようにしてくれる食べ物をしっかり摂取することがおすすめです。
ビタミンCにはエラスチンの生成を促進させ、分解を防ぐ働きがあるとされています(5)。ビタミンCが方法に含まれている食べ物は、以下のとおりです。
-
レモン
-
オレンジ
-
キウイ
-
パプリカ
-
ほうれん草
その他アミノ酸や銅などがエラスチンの保持をサポートしてくれます。
このように、エラスチン生成をサポートする効果のある食べ物を積極的に取り入れましょう。
必要に応じてエラスチンサプリメントの使用を
食事だけでエラスチンを十分に摂取することが難しい場合は、サプリメントの利用もお勧めです。
サプリメントであれば、エラスチンを手軽に補給できます。ただし、サプリメントを選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
-
製品のメーカー
-
原材料や成分表示
-
平均分子量(DA)
サプリメントの使用によって体調不良をはじめとした健康被害が発生するケースもあります。
そのため、信頼できるメーカーか、どのような原材料が含まれているのかをよく確認しておくことが重要です。エラスチンだけでなくコラーゲンも含まれている場合、平均分子量もチェックしておきましょう。
一般的に、分子量が小さいほど体内への吸収率が高いとされています。例として、コラーゲンを細かくした「コラーゲンペプチド」の平均分子量は、1,000以下とされています(6)。
エラスチンの働きをサポートする生活習慣
エラスチンの効果を最大限に引き出すには、適切な生活習慣が欠かせません。生活習慣を整えるには、以下のポイントを心がけてみましょう。
-
十分な睡眠時間の確保
-
適度な運動
-
ストレス管理
-
禁煙
-
紫外線対策
睡眠は、体調や肌の状態を整えるうえで欠かせないものです。適切な睡眠時間は、6〜8時間が理想的とされています(7)。適度な運動は血行を促進させ、皮膚や血管に酸素や栄養を届けやすくします。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を自分のペースで、1回20分程度行うとよいでしょう(8)。
また、過度のストレスは体内のホルモンバランスを崩し、エラスチンの生成を妨げる可能性があります。
趣味の時間を持つ、友人と会話するなど、自分にあったストレス解消法を見つけることが大切です。喫煙や過度な紫外線も、エラスチンが壊れてしまう原因となります。
禁煙を心がけつつ、外出時には日焼け止めを使用して、エラスチンを守る意識を持ちましょう。
効率よく補う、エラスチンとコラーゲン
真皮でコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作っているヒト線維芽細胞に、エラスチン加水分解物とエラスチンペプチドを加えた研究があります。
研究により、添加により線維芽細胞の増殖能力やエラスチンの生成量が向上したと報告されています(17)。
このことから、エラスチン加水分解やエラスチンペプチドの摂取が、肌のケアに効果的であることが示唆されています。
さらに、ヒト線維芽細胞の増殖へ与える効果を調べた研究では、エラスチンペプチドのみを加えるよりも、コラーゲンペプチドとエラスチンペプチドを合わせて加えた場合の方が、細胞増殖が大きく活性化されたことが報告されています(9)。
これにより、肌をケアするうえでは、エラスチンとコラーゲンを合わせて補うことも効果的だと示唆されています。
エラスチンを意識した生活を取り入れよう
エラスチンは、肌のハリや弾力を保つ重要なたんぱく質です。お肌の健康だけでなく、動脈硬化の予防や生理痛の軽減など、さまざまな作用があるとされています。
エラスチンを効果的に摂るには、魚や肉などを取り入れつつ、必要に応じてサプリメントの利用も検討してみてください。
さらに睡眠や運動などの健康的な生活習慣を心がけることも重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、健康的な肌を目指してみましょう。