エラスチンは肌、血管や肺など弾力性のある組織に含まれているたんぱく質の1種で、肌ツヤの維持やたるみの防止など、美肌に欠かせない重要な成分であることが知られています。
この記事では、エラスチンの基本的な知識や具体的な効果について詳しくご紹介します。エラスチンの理解を深めることで、効果的なスキンケアや健康管理に活かせるでしょう。
エラスチンとはどんなもの?
まず、「そもそもエラスチンってなに?」という疑問にお答えできるような基本情報をお届けします!
1. 真皮の弾力性を支える少数精鋭のたんぱく質
エラスチンは、私たちの皮膚でコラーゲンとともに働くたんぱく質で、わずかしか存在しないにも関わらず、肌の弾力性に不可欠で重要な働きをしていることが知られています。
私たちの皮膚は表面から、表皮、真皮、皮下組織の3層で構成されており、そのなかで肌に強さと弾力性を与える真皮は、スキンケアにおいて重要であることが知られています。
真皮は大部分がコラーゲンでできており、他には保水力の高いヒアルロン酸や、弾力を与えるエラスチン、これらを作る線維芽細胞で構成されています(1)。
コラーゲンが真皮の70%近くを占めるのに対して、エラスチンは真皮のわずか2〜3%という割合でしか存在しないとされています(2)。
エラスチンは、肌の弾力を保つうえで欠かせない重要な役割を果たしていることも知られています。
2. エラスチンとコラーゲンの違いは?エラスチンは弾性繊維!

エラスチンとコラーゲンはどちらも真皮を支えるたんぱく質ですが、それぞれ違う役割を果たしていることが知られています。
コラーゲンは、エラスチンと比べ硬く、引っ張りに対して強い「膠原(こうげん)繊維」と呼ばれるもので、水分保持を担うほか、皮膚の強度に貢献しています。
一方でエラスチンは、伸縮性と弾力性のある「弾性繊維」と呼ばれるもので、真皮のコラーゲンを束ねるように繋ぎ合わせています(3)。
真皮では、コラーゲンがネットワークを作って鉄筋のような役割を果たしており、これによって肌の強度が保たれています。
そしてエラスチンがこのコラーゲンを繋ぎ合わせることで、肌全体に弾力を与えていることが知られています(2)。
表:エラスチンとコラーゲンの違い
特徴 |
エラスチン (弾性線維) |
コラーゲン (膠原線維) |
主な役割 |
弾力性を提供し、肌や血管、肺の柔軟性を保つ |
強度を提供し、肌や骨、腱の構造を支える |
成分 |
主にアミノ酸(たんぱく質) |
主にアミノ酸(たんぱく質) |
弾力性 |
高い弾力性、伸縮性があり |
弾力性は低いが、高い強度を持つ |
分布 |
皮膚、血管、肺などの弾力が必要な部位 |
皮膚、骨、腱、軟骨などの強度が必要な部位 |
加齢による変化 |
加齢とともに減少し、皮膚や血管の弾力が失われる |
加齢に伴い減少し、皮膚のたるみや骨密度低下を引き起こす |
健康効果 |
皮膚や血管の弾力性を保ち、若々しさを維持 |
皮膚の強度を維持し、骨や関節の健康を支える |
3. エラスチンは再生しにくく維持が重要!
わずかな数で肌の弾力を支えているエラスチンは、非常に特殊なたんぱく質であることも知られています。
肌を作るエラスチンは、そのほとんどが胎児から新生児への成長の間に体内で合成され、それ以降は生成量が減少していき、成人ではその生成量が非常に限られています(2)。
エラスチンはターンオーバーが非常にゆっくりと進む特殊なたんぱく質で、新たに生成されることが非常に少ないため、外的要因で損失してしまうと非常に再生しにくい重要なものだとされています(4)。
エラスチンの肌への効果
この項目では、そんなエラスチンを補うと具体的に肌へどのような効果があるのか、研究報告を解説していきます!
美肌の鍵:線維芽細胞
エラスチンは分子サイズが大きく、水に溶けにくいたんぱく質であるため、そのままの状態では吸収が難しいと考えられています。
そのため多くの場合、エラスチンを酵素で加水分解してできるエラスチン加水分解物やエラスチンペプチドなどを用いた研究が行われてきました。
真皮でコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作っているヒト線維芽細胞に、エラスチン加水分解物とエラスチンペプチドを加えた研究では、添加により線維芽細胞の増殖能力やエラスチンの生成量が向上したと報告されています(8)。
このことから、エラスチン加水分解やエラスチンペプチドの摂取が、肌のケアに効果的であることが示唆されています。
さらに、ヒト線維芽細胞の増殖へ与える効果を調べた研究では、エラスチンペプチドのみを加えるよりも、コラーゲンペプチドとエラスチンペプチドを合わせて加えた場合の方が、細胞増殖が大きく活性化されたことが報告されています(9)。
これにより、肌をケアするうえでは、エラスチンとコラーゲンを合わせて補うことも効果的だと示唆されています。
肌の老化とエラスチン
私たちの肌の老化には、大きく分けて2種類の進み方があると考えられています。1つが通常の加齢に伴う「生理学的な老化」と呼ばれるもので、もう1つが長期間日光に曝されることで紫外線による悪影響が蓄積する「光老化」と呼ばれるものです(5)。
通常の加齢に伴う「生理学的な老化」では、線維芽細胞が減少することでコラーゲンやエラスチンも減少し、肌が弾力のない薄いものへと変化します。
一方で「光老化」では、長期間紫外線を浴びることで線維芽細胞のDNAへダメージが蓄積し、コラーゲンは大きく減少する一方、エラスチンは構造が不規則に乱れてしまい、弾力性が損なわれて肌が硬くシワの深いものへ変化してしまうことが知られています(6)。
「生理学的な老化」と「光老化」の違いは、日に当たることが少ない太ももの内側などの薄く白い肌と、日によく当たる部分の硬くシミなどが形成された肌の違いをイメージすると分かりやすいとされています。
日によく当たる部分は、加齢に伴う生理学的な老化と光老化が同時に進行しており、光老化の影響力は大きいと考えられています(5)。
慢性的に日光を浴びると、エラスチンの量や配列が急変し、真皮で構成されているコラーゲンとエラスチンによるネットワークが破壊されることで肌のたるみやシワに繋がるため、肌の光老化のなかでもエラスチンへの影響は重要なものと考えられています(7)。
エラスチンの肌以外の健康効果
1. 血管の健康維持のサポート
エラスチンは肌だけでなく、血管の健康の維持につながるとされています。動脈硬化とは、動脈の柔軟性が低下して硬くなった状態のことです。
エラスチンが動脈硬化の発症を予防する理由として、血管の弾力性を維持する働きがあげられます。
血管にはエラスチンが豊富に含まれており、血液の流れにあわせて伸縮します。この柔軟性によって、血管は血圧の変動に対応し、スムーズな血液循環を維持できるのです。
エラスチンによって血管の柔軟性が維持できれば、動脈硬化の発症リスクの低下が期待できます(2)。
2.生理痛の緩和
エラスチンは、子宮の収縮をサポートして、生理痛の緩和につながるとされています。子宮も血管や靱帯などと同じように、エラスチンが多くの構成割合を占めている組織です(3)。
子宮内膜を排出する際に生理中に子宮は収縮をしますが、この際の過度な収縮や硬直が生理痛の原因となります。エラスチンが不足すると子宮の柔軟性が低下し、生理が起こる際の収縮で痛みを感じやすくなるのです。
このように、生理痛をやわらげたい方にとっても、エラスチンの摂取は重要といえます。
3.靱帯の治癒促進
エラスチンは、靱帯の治癒促進につながるとされています。靱帯は関節を安定させる重要な組織ですが、一度損傷すると自然治癒が難しいとされています。
しかし、エラスチンの局所的な投与によって、靱帯の修復を促進できる可能性が示されているのです。
実際に動物を対象に、損傷させた靱帯にエラスチンを投与した実験があります。その結果、エラスチンを投与していないグループと比較して損傷部分の治癒促進がみられたとされています(4)。
このことから、スポーツによるケガや加齢による靱帯損傷の回復に役立つ可能性があるでしょう。
エラスチンを摂る方法
エラスチンを含む食べ物といえば、手羽先、軟骨と挙げられています。しかし、食品に含まれるエラスチンの分子量が大きいなので、体内での吸収が難しいです。
そのため、食品から直接摂取するより、サプリメントからの摂取の方が効率的に方法です。
また、エラスチンは体内で生成できるため、体内でのエラスチン生成を補助してくれたり、分解されないようにしてくれる食べ物をしっかり摂取することがおすすめです。
ビタミンCにはエラスチンの生成を促進させ、分解を防ぐ働きがあるとされています(5)。その他アミノ酸や銅などがエラスチンの保持をサポートしてくれます。
このように、エラスチン生成をサポートする効果のある食べ物を積極的に取り入れましょう。
必要に応じてエラスチンサプリメントの使用を
食事だけでエラスチンを十分に摂取することが難しい場合は、サプリメントの利用もお勧めです。
サプリメントであれば、エラスチンを手軽に補給できます。ただし、サプリメントを選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
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製品のメーカー
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原材料や成分表示
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平均分子量(DA)
サプリメントの使用によって体調不良をはじめとした健康被害が発生するケースもあります。
そのため、信頼できるメーカーか、どのような原材料が含まれているのかをよく確認しておくことが重要です。エラスチンだけでなくコラーゲンも含まれている場合、平均分子量もチェックしておきましょう。
一般的に、分子量が小さいほど体内への吸収率が高いとされています。例として、コラーゲンを細かくした「コラーゲンペプチド」の平均分子量は、1,000以下とされています(6)。