アルギニンによる血流改善
アルギニンの幅広い働きのなかでも、特によく知られているものが、一酸化窒素を増やす効能です。一酸化窒素には血管を拡張する効果があり、体内での一酸化窒素の生成が血流改善へ役立つことは、さまざまな研究により知られています(6)。
血流の改善に役立つ一酸化窒素を作ることができるため、アルギニンは運動パフォーマンスや筋肉増強を促進すると考えられ、トレーニングへの影響を調べるさまざまな研究の対象となり、その効能が示唆されてきました。
アルギニンの筋トレへの効果を解説!

アルギニンは血流改善の効果がある一酸化窒素を増やすことから、持久力向上や疲労回復、運動パフォーマンス向上へ効果があると考えられ、さまざまな研究の対象となってきました。そしてこれまでの研究により、アルギニンには以下のような、幅広い筋トレサポートの効能があることが示唆されています。
アルギニンによる持久力の向上
私たちが運動をするためにはエネルギーが必要であり、エネルギーを産むために酸素が必要となります。
激しい運動をする際は、多くのエネルギーを作るうえで多くの酸素を必要とするため、私たちは肺からの酸素摂取を増やすことで代謝のバランスを保っています。そして、アルギニンを摂取すると、運動に必要となる酸素コストを抑えられることが研究で示唆されてきました(7)。
実際に健康なボランティアを対象に、運動の1時間前にアルギニン6gまたはプラセボを含むドリンクを摂取してもらい、持久力への影響を確認する研究が行われました(8)。
その結果、アルギニンを摂取したグループで、運動にかかる酸素コストがプラセボと比べ有意に抑制され、疲労困憊までの時間がより長かったという結果が示されています。
また、アルギニンの投与により、乳酸やアンモニアなどの疲労物質の増加が有意に抑えられたという報告も過去にされています(9)。
これらの研究から、アルギニンは酸素を効率よく運動に用いることができるよう働きかけるほか、疲労物質の産生を抑制することなどにより、持久力向上へ貢献することが示唆されています。
アルギニンによる無酸素運動・有酸素運動のパフォーマンス向上

アルギニンの効能は、持久力だけでなく運動パフォーマンスに対しても、多くの研究で確認されてきました。
そして、アルギニンの無酸素運動、有酸素運動両方への効果を確認するために、これまでの研究で集まった膨大なデータを網羅的に解析するメタ分析研究も実施されています。
2020年に報告されたメタ分析研究では、一定量以上のアルギニンの摂取により、無酸素運動と有酸素運動の両方でパフォーマンスが向上したという分析結果が確認されています(10)。
この研究では、持久力だけではなく、最大トルクやスプリント力なども向上することが解析結果から示唆されており、アルギニンの効能の幅広さがうかがえます。
アルギニンによる筋肉タンパク生成の促進
アルギニンは運動パフォーマンスの向上だけではなく、筋トレによる筋肉量の増加にも貢献することが、研究で示唆されています。
私たちの筋肉はいくつもの筋線維でできており、筋線維は、筋肉の元となる筋芽細胞の増殖と融合により作られています。マウスを用いた実験では、アルギニンの投与により、筋芽細胞の増殖と融合が促進されたことが確認されています(11)。
また、ヒトを対象とした研究では、アルギニン摂取とレジスタンス運動の組み合わせにより、筋肉量増加に重要となる成長ホルモンやインスリン様成長因子(IGF-1)の分泌が、プラセボと比べ有意に促進されたという結果が報告されています(12)。
これらの結果から、アルギニンは筋肉量の増加においても幅広い働きをすると考えられています。
アルギニン摂取のポイントを解説!どのくらい摂取すると効果的?
アルギニンは運動能力だけではなく、筋肉量増加に重要な成長ホルモン分泌にも貢献し、筋トレに幅広く効果を発揮することが示唆されています。
それでは、アルギニンはどのくらいの量を摂取すると、運動に役立つとされているのでしょうか?アルギニンの効果を確かめた研究をもとに、研究報告で示された推奨量について解説していきます!
アルギニンの定期摂取
アルギニンの運動パフォーマンスへの効果を確かめたメタ分析研究では、ボランティアが行った運動テストを有酸素運動と無酸素運動に分けたうえで、それぞれに対して効果を発揮したアルギニンの摂取量を分析しました(10)。
その結果、有酸素運動の場合は、1日計1,500mg〜2,000mgのアルギニンを継続して4〜7週間にわたり摂取することで、運動パフォーマンスが向上することが示唆されています。
無酸素運動の場合は、1日計10,000mgを8週間にわたり摂取することで、運動パフォーマンスが向上すると示唆されています。
まとめ:アルギニンの推奨摂取量と期間(運動タイプ別)
有酸素運動(例:ジョギング、水泳、サイクリング)
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摂取量:1日あたり 1,500mg~2,000mg
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継続期間:4~7週間
無酸素運動(例:筋トレ、高強度インターバルトレーニング)
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摂取量:1日あたり 10,000mg
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継続期間:8週間
アルギニンが多い食べ物15選|推奨摂取量と摂取するポイントも紹介
運動前にアルギニンの摂取
このメタ分析研究では、継続的な摂取だけではなく、運動前に一気にアルギニンを摂取する研究も解析対象になっております。運動の30分〜60分前にアルギニンを体重1kgにつき150mgを摂取することでも、運動パフォーマンスが向上することが示唆されています。
アルギニンの副作用と安全性
アルギニンの安全性については、過去に実施されたさまざまな研究をまとめた報告で、経口投与で1日計30,000mg相当を摂取しても、副作用がみられなかったという報告に触れながら、忍容性の高い物質であるとまとめられています(13)。
しかし、急激に大量のアルギニンを摂取する場合は、アレルギー反応や下痢などの副作用を引き起こす可能性も考慮した方がより安全です。
アルギニンは安全性の高い物質として知られていますが、専門家がいない環境では、急激な摂取は避けた方がより安全だと考えられます。
アルギニンの摂取のタイミングを1日のなかで複数回に分けながら、こまめに継続して摂取すると、日常生活にアルギニンを取り入れるうえでより安全かつ効果的だと考えられます。
スイカ由来のアミノ酸シトルリンも好相性!
アルギニンが私たちの体内で一酸化窒素を生成する過程では、アルギニンがシトルリンに代謝されることが知られています。
シトルリンはスイカから見つかったアミノ酸の一種で、シトルリンがアルギニンに戻る代謝も体内で行われるため、シトルリンはアルギニンとともに一酸化窒素を体内で生成するサイクルを作る重要な役割を果たしていることが知られています(14)。
このことから、アルギニンを筋トレへ活用するうえでは、シトルリンを摂取することも効果的です。
参考:
アルギニンとは?アルギニンの10つ効果と副作用【5分でわかる】
シトルリンの効果:ED改善と運動パフォーマンス向上の仕組みを解説
参考:アミノ酸とは?筋肉や成長に良いアミノ酸の4つ効果と摂取タイミングを伝授