成分ガイド

ニガウリペプチドとは?ニガウリペプチドの5つの効能とおすすめの摂取法

監修者 井林 雄太 医師 公開日:2024-04-07 最終更新日:2024-09-04

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ニガウリペプチドとは?ニガウリペプチドの5つの効能とおすすめの摂取法

監修者井林 雄太 医師 公開日:2024-04-07 最終更新日:2024-09-04

ニガウリペプチドは近年非常に人気で、新陳代謝をサポートする健康食品となっています。瓜科の王様という呼び名を持つ苦瓜、ゴーヤとも呼ばれます。熱帯アジア地域の一般的な食材で、体温を下げる効果がある食材として知られています。以下では食用としての長い歴史と珍しい効能を持ち合わせた苦瓜に含まれる「ニガウリペプチド」について、栄養士がご紹介いたします!

苦瓜の基本情報を解説!苦瓜とゴーヤは同じもの?

苦瓜はウリ科の植物で、古くから料理に使われてきた野菜です。苦瓜は強い苦味を持っており、冷やして和えたり、蒸したり、煮込んだりすることで異なる食感を味わえることや、塩揉みすることで苦味が弱まるから、さまざまな調理法で味わえる食材として親しまれてきました(1)。沖縄料理の定番材料として有名な「ゴーヤ(ゴーヤー)」は、苦瓜を指す沖縄地方の言葉が全国的に認知されたもので、和名は「ニガウリ」または「ツルレイシ」とされており、学名はMomordica charantiaです(2)(3)。つまり、苦瓜はゴーヤと同じものです。

苦瓜は、実は熱帯・亜熱帯地域に広く分布している植物で、インドでは数千年前から栽培され、伝統医学アーユルヴェーダのなかでハーブ食養に使用され、体温を下げ、食欲を促進し、消化機能を維持するために利用されてきたとされています(4)。高血糖、胃腸のガス溜まり、疝痛の治療法として多くの国で活用されてきたとされる苦瓜は日本でも注目を集めています。

 

苦瓜の栄養成分は?

苦瓜はその栄養価の高さから、「夏野菜の王様」と呼ばれることもある野菜です(5)。苦瓜の果実には、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3など豊富なビタミン類が含まれるほか、多糖類、ポリフェノールなどの栄養素が含まれることが報告されています(6)

特にビタミンCは豊富に含まれることがよく知られており、ニガウリの可食部100 gあたりのビタミンC含有量72.5 mgは、レモン果汁100 gあたりのビタミンC含有量50.0 mgと比較すると、その豊富さが明確になります(7)。近年の研究では、苦瓜には抗酸化作用、高血糖抑制作用、抗炎症作用など、健康維持に役立つ働きをする効能があることが報告されています(6)。そのなかでも、高血糖抑制作用は最も注目された効能の一つで、その役割を担うニガウリペプチドも注目されています。

 

ニガウリペプチドとは?

ニガウリペプチドは、苦瓜から抽出される栄養素であり、Polypeptide-pとも呼ばれる栄養成分です(8)。ニガウリペプチドには、血糖値を下げるインスリンと似た作用があることが報告されており、「植物インスリン」とも称されてきました(9)。ニガウリペプチドは、糖尿病のなかで最も多く、インスリンの正常な働きをコントロールできなくなることで高血糖となる「2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)」の改善に役立つと考えられ、研究されてきました。

このニガウリペプチドの効能は、その構造に関連があることが示唆されています。通常のタンパク質は平均300残基、つまり平均300個のアミノ酸が繋がって作られるものですが、ニガウリペプチドは166残基と短いことに加え、非常にコンパクトに畳まれた構造をしていることが分かっています(8)。さらに、166残基あるニガウリペプチドの配列を調べた研究により、その中でも特に重要な部位と作用機序も報告されました(10)。この研究の中で、ニガウリペプチドはインスリン受容体と結合してその働きを促進することで、血中のインスリンを正常に代謝することに寄与すると示唆されています。

また、ニガウリペプチドは小さい為、吸収しやすいという特徴もあります。通常、食物に含まれるタンパク質は胃腸の消化酵素で分解され、より小さなペプチドの状態で体内を循環します。そのため、コンパクトなニガウリペプチドやその重要な配列は、その小ささから体内で利用されやすいと考えられています(10)。近年の研究により、ニガウリペプチドは新陳代謝促進、生理機能の調整、体質の調整などに効果的であることがヒトを対象とした臨床研究により示唆されています(11)

 

ニガウリペプチドの効能は?

苦瓜は長い歴史を有し、そのハーブの特性である食養効果があります。特にその中でも、高血糖を抑制する作用が示唆されているニガウリペプチドは多くの効能に関わると考えられています。142人の糖尿病患者を対象とした臨床研究において、無作為に選ばれニガウリペプチドを抽出したサプリメントを摂取したグループは、サプリメントを摂取しなかったグループに比べて、空腹時血糖値とHbA1cが有意に低いことが報告されました(11)

HbA1cとは、ヘモグロビン全体に対する糖化ヘモグロビンの割合を表すものです。ヘモグロビンは血液の赤色の色素であり、ヒトが呼吸で取り入れた酸素と血中で結びつき、酸素を全身へ運搬する役割を果たします。一方、糖化ヘモグロビンは、ヘモグロビンが血中のブドウ糖と結合してしまった状態を指すものです。糖化ヘモグロビンの量は空腹時血糖値と異なり、食後すぐに増えるものではないため、長期的な血糖の指標として用いられます。つまり、ニガウリペプチドを用いたサプリメントにより、高血糖が抑制される可能性が示唆されたということとなります。

さらにニガウリペプチドのヒトに対する効能を詳細に調べた臨床研究から、ニガウリペプチドには以下のような効能があることが示唆されています(12)

  1. 代謝促進、健康維持
  2. 生理機能の調整、メンタルの安定
  3. 栄養補給、体力作り
  4. 体温の調整、免疫力向上
  5. 体脂肪減少、筋肉量増加
 

苦瓜を食べればニガウリペプチドを摂取できる?

ニガウリペプチドは苦瓜の果肉に含まれるものですが、ヒトを対象とした臨床研究ではニガウリペプチドを抽出したサプリメントが使われており、同量のニガウリペプチドを苦瓜だけで摂取することは難しいと考えられます(11)。そのため、苦瓜を定期的に摂取すると同時に、ニガウリペプチドを抽出したサプリメントを併用すると効果的であると考えられています。

 

どんな人がニガウリペプチドを摂るべき?

ニガウリペプチドの効能に関する研究報告から、以下のような方はより摂取が有効的であることが示唆されています(12)

  1. 多くの加工食品を食べ、甘いものを好み、砂糖入りのドリンクをよく飲む人

  2. 大量のデンプンを摂取する習慣がある人(パン、麺など)

  3. 運動不足の人

  4. 生理的欲求を整えて、安定を保ちたい人

 

ニガウリペプチドや苦瓜の摂取による副作用は?

苦瓜やニガウリペプチドの忍容性は高く、製造元の推奨量に従って摂取すれば危険性は高くはないと考えられています(9)。また、最も一般的な副作用は軽度の下痢と腹痛で、このような症状は摂取をやめれば回復することが確認されています(10)。ただし、以下のグループの方々は、安全性を確保するために医師や医療専門家と相談した上で摂取することをおすすめします。

  1. 薬物治療を受けている方
    • 特に、すでに糖尿病に対する薬物治療を受けている方は、ニガウリペプチドの効能と特定の糖尿病治療薬の作用が重複して低血糖を引き起こす可能性があるため、医師に確認してから摂取するなど注意することが推奨されています(13)
  2. 小さな子供
  3. 妊娠中または授乳中の女性
  4. G6PD欠損症患者
    • G6PD欠損症とは、グルコース-6-リン酸脱水素酵素という赤血球酵素が欠損していることで溶血を引き起こしやすくなる疾患で、日本人男性では0.1%程度の発症率とされています(14)。G6PD欠損症は自覚症状がないことが多いですが、天然の苦瓜には植物由来の物質が多く含まれており、その中のビシンという配糖体が影響を与える可能性が示唆されています(1)。臨床的な証拠がないため、苦瓜がG6PD欠損症の症状を引き起こす可能があるかどうかはまだ実証されていませんが、心配がある場合は摂取を避けるべきです。