食生活のサポート

桑の葉の効能は?食べ方、摂取量を教える

監修者 久野 伸夫 医師 公開日:2024-04-24 最終更新日:2024-08-30

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桑の葉の効能は?食べ方、摂取量を教える

監修者久野 伸夫 医師 公開日:2024-04-24 最終更新日:2024-08-30

みなさんは、桑の葉に非常に多くの栄養が含まれていることをご存知ですか?桑の実は「マルベリー」と呼ばれスーパーフードとしても有名ですが、その葉は「カイコの餌」ということ以外、あまりその特長を知られていないかもしれません。それでは、桑の葉にはどのような栄養成分が含まれているのでしょうか?また、桑の葉はどのように摂取すればよいのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。

桑はどんな木?

桑の種類

桑は中国、日本、韓国原産のさまざまな種類がある落葉高木で、現在では世界中の国々で栽培されている木です。主な桑の種類には、

  • 日本で自生しているヤマグワ(学名:Morus bombycis Koidz.)

  • 中国から伝来してきたホワイトマルベリー(学名:Morus alba L.)別名マグワ

  • 北米で自生しているブラックマルベリー(学名:Morus nigra L.)、レッドマルベリー(学名:​​​​Morus rubra L.)

などがあり、最もよく見られるのはマグワです。

 

桑の木の特徴

桑の葉は古くからカイコを育てるための飼料に使用されるとともに、薬草やハーブティーの材料としても親しまれてきました。

桑の実は、クワ科クワ属の果実の総称を指す「マルベリー」という言葉でもよく知られています。マルベリーは小さな粒が集まった、ラズベリーによく似た外見が特徴で、その味わいと抗酸化物質の豊富さから、ヨーロッパではマーマレードや果実酒の製造を目的に栽培がされてきました[1]

桑はその根も古来より東洋医学で活用されてきており、現在の日本薬局方にもマグワの根の皮を乾燥させて作る「桑白皮​​​​」が収載されています。このように、桑はその活用部位の多さから、経済面でも健康面でも人間社会を支えてきた植物とされています。

 

桑の葉の機能性成分

カイコの餌としてよく知られる桑の葉は、栄養価が非常に高く、多くの機能性成分を含んでいることが報告されています。現在の研究によると、桑の葉には抗酸化作用、血糖値やコレステロールの低下作用などにより、心血管疾患の発症リスクを下げる効果があると報告されています[2]。また、ダイエット効果や抗炎症作用などの活性もあると報告されています[3]

 

桑の葉に含まれる栄養成分

桑の葉には、抗酸化作用を持つポリフェノールや、降圧作用などを持つγ-アミノ酪酸(GABA)、ビタミンCやビタミンEなどの栄養素が含まれています。特にビタミンCの量は非常に高く、桑の葉の成分量を調べた研究では、100gの桑の葉には160〜280mgのビタミンCが含まれると報告されています[4]。同じ100gのレモンに含まれるビタミンCは約100mgとされているため、質量あたりの含有量は桑の葉の方が豊富であると分かります[5]

また、桑の葉には亜鉛やカルシウム、鉄、カリウム、リン、マグネシウムなどの豊富なミネラルも含まれています。その中でも最も豊富なミネラルはカルシウムで、100gの桑の葉にカルシウムが1.7〜3.9g含まれていたと報告されています[6]。同じ100gの牛乳(約100ml)に含まれるカルシウム量は0.1g前後とされているため、こちらも桑の葉の方が多く含まれることとなります[5]

一方で、ナトリウムの含有量は100gの桑の葉に0.1g未満しか含まれなかったことも報告されています[6]。そのため桑の葉は、塩分過多によるナトリウムの過剰摂取を抑える低ナトリウム食としても期待されています。

 

桑の葉が持つ特徴的な成分——DNJ

さらに、桑の葉には特徴的な成分である1-デオキシノジリマイシン(DNJ)も含まれています[7]。DNJはブドウ糖(α-グルコース)に類似した構造を持つ物質で、強力なα-グルコシダーゼ阻害作用を示します。この作用は食事に含まれる糖の吸収を抑える効果があり、糖尿病マウスを用いた研究では、DNJの投与によりマウスのインスリン抵抗性が改善された結果や、抗糖尿病、体重減少の効果が報告されています[8][9]。さらに、​​α-グルコシダーゼ阻害作用により、桑の葉は高い抗ウイルス特性を持つことも報告されています[7]

桑の葉のDNJ含有量は種や生息地によってばらつきが大きく、桑の葉の糖尿病予防効果についてヒトでの研究は2007年頃まで進んでいませんでした。しかし、日本の農研機構をはじめとするグループの研究により、​​夏の時期に枝の先端から採取された桑の葉を選ぶとDNJの含有量が最も高くなり、1.5%のDNJを含む粉末を生産できることが発見されました[10]。またこの研究で、健常人に1.5%のDNJを含むエキス0.8gおよび1.2gを単回経口投与したところ、食後血糖値の上昇とインスリン分泌が有意に抑制され、桑の葉が持つDNJのヒトにおける有効性が示唆されました。

 

桑の葉の効能

桑の葉に含まれる多くの機能性成分による効能をまとめると、以下の通りになります。

1. 血糖管理のサポート

桑の葉が豊富に含むα-グルコースの類似物質DNJは、糖の吸収を抑制して高血糖を防ぐことに役立ち、糖尿病の予防につながります。ヒトを対象とした臨床研究では、DNJに血糖値の上昇やインスリン分泌量を抑制する効果があることが示されています[10]
 

2. 肥満と血脂質の改善

桑の葉のDNJをマウスに投与した研究では、脂肪酸を代謝するβ酸化を促進することでトリグリセリド(中性脂肪)、内臓脂肪重量、および脂肪細胞のサイズを減らすことが報告されました[11]

DNJがどのように体重減少を促進するかを調べた研究では、脂肪を蓄える働きを持つ白色脂肪細胞をDNJが抑制し、脂肪を燃焼させてエネルギー源にする働きをもつベージュ脂肪細胞へ転換させることで体重減少に寄与することが示唆されています[12]
 

3. 心臓の健康と循環の改善

冠動脈疾患患者に桑の葉から抽出したDNJを1年間投与した臨床試験では、1年後の検査にて抗酸化作用や抗炎症作用が観測され、頸動脈内膜中膜肥厚が減少し、それにより動脈硬化病変が軽減する効果が報告されました[13]。また、DNJが持つ抗炎症作用の心筋症に対する影響を調査した研究で、心筋の酸化障害、アポトーシス、炎症を軽減することで、心筋症を軽減することが示されています[14]。DNJ以外にも、桑の葉に含まれるGABAが降圧作用を示す研究報告もあり、多くの栄養素が​心臓や血管の健康をサポートすると考えられています[15]

 

4. 免疫力向上

DNJは、菌の増殖を抑制する効果も報告されています。食中毒や院内感染の主な原因菌である黄色ブドウ球菌に対するDNJの効果を調べた研究では、バイオフィルムの形成を抑え、黄色ブドウ球菌の成長を抑制することが報告されています[16]。抗菌作用に加えて、DNJはデング熱を引き起こすデングウイルスに対しても、その毒性を抑える効果が報告されており、ウイルス感染にも役立つことが示唆されています[17]

 

桑の葉はこんな人におすすめ!

  1. 食前後の血糖変動が大きい人

  2. 揚げ物や高脂肪食品、外食を頻繁にする人

  3. 体重管理をサポートし、肥満を改善したい人

  4. 血中脂質の管理をしたい人

  5. 季節の変わり目に体調が優れないことの多い免疫力を向上させたい人

  6. 心臓の健康をサポートしたい人

 

桑の葉の摂取量の目安は?

桑の葉は食品として補充される場合、現在厚生労働省など国内外の規制当局による摂取量の規制は設けられていません[18]。健常人にDNJ1.5%を含む桑の葉のエキス1.2gを投与した臨床試験において、毎日12〜18mg摂取すると、健糖の吸収を抑制する効果があるとされており、副作用は報告されませんでした[10]。また、血糖値の高い患者に対して12週間、1日3回食前に桑の葉エキス12mgを含むカプセルを投与した臨床試験で​も、副作用は示されませんでした[19]

そのため、健康な方が日常生活で摂取するのであれば、上限を意識することなく摂取しても問題はないと考えられています。

 

桑の葉に副作用はある?

桑の葉の経口投与による毒性を調べた研究では、健常人に対する毒性は確認されなかったと報告されています[20]。しかし、桑の葉はカリウムなどのミネラルを豊富に含んでいるため、腎臓の機能に問題がある場合には摂取を控えた方が安全だと考えられます。血糖や血中脂肪を管理する薬を服用している場合や、腎臓の機能に異常がある場合は、まず医師や栄養士に相談してから摂取することをおすすめします。これにより、桑の葉が副作用を起こす可能性を最小限に抑えることができます。
 

桑の葉のおすすめの摂取方法

被験者に桑の葉エキスを摂取してもらったあとに糖分を投与した研究では、有意な糖分吸収抑制効果が得られました[10]。また、食事による脂肪の蓄積を、DNJを豊富に含む桑の葉カプセルの摂取により抑えられることがわかっています[19]。これらの結果から、食前に桑の葉を使ったハーブティーやサプリメントにより摂取することをおすすめします。胃腸の問題が起きやすい人は、引き続き食後にもハーブティーなどで摂取することをおすすめします。豊富なビタミンやポリフェノールを含む桑の葉茶により、胃腸の不快感が緩和されることが期待できます。
参考資料:
  1. Arfan, M., Khan, R., Rybarczyk, A., & Amarowicz, R. (2012). Antioxidant activity of mulberry fruit extracts. International Journal of Molecular Sciences, 13(2). 
  2. Thaipitakwong, T., Numhom, S., & Aramwit, P. (2018). Mulberry leaves and their potential effects against cardiometabolic risks: A review of chemical compositions, biological properties and clinical efficacy. In Pharmaceutical Biology (Vol. 56, Issue 1). 
  3. Ma, G., Chai, X., Hou, G., Zhao, F., & Meng, Q. (2022). Phytochemistry, bioactivities and future prospects of mulberry leaves: A review. In Food Chemistry (Vol. 372). 
  4. Srivastava, S., Kapoor, R., Thathola, A., & Srivastava, R. P. (2006). Nutritional quality of leaves of some genotypes of mulberry (Morus alba). International Journal of Food Sciences and Nutrition, 57(5–6). 
  5. 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補 2023年
  6. Sánchez-Salcedo, E. M., Amorós, A., Hernández, F., & Martínez, J. J. (2017). Physicochemical properties of white (Morus alba) and black (Morus nigra) mulberry leaves, a new food supplement. J. Food Nutr. Res, 5, 253-261.
  7. Wang, H., Shen, Y., Zhao, L., & Ye, Y. (2020). 1-Deoxynojirimycin and its Derivatives: A Mini Review of the Literature. Current Medicinal Chemistry, 28(3). 
  8.  Hu, T. G., Wen, P., Shen, W. Z., Liu, F., Li, Q., Li, E. N., Liao, S. T., Wu, H., & Zou, Y. X. (2019). Effect of 1-Deoxynojirimycin Isolated from Mulberry Leaves on Glucose Metabolism and Gut Microbiota in a Streptozotocin-Induced Diabetic Mouse Model. Journal of Natural Products, 82(8). 
  9. Kong, W. H., Oh, S. H., Ahn, Y. R., Kim, K. W., Kim, J. H., & Seo, S. W. (2008). Antiobesity effects and improvement of insulin sensitivity by 1-deoxynojirimycin in animal models. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 56(8). 
  10. Kimura, T., Nakagawa, K., Kubota, H., Kojima, Y., Goto, Y., Yamagishi, K., Oita, S., Oikawa, S., & Miyazawa, T. (2007). Food-grade mulberry powder enriched with 1-deoxynojirimycin suppresses the elevation of postprandial blood glucose in humans. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 55(14). 
  11. Tsuduki, T., Kikuchi, I., Kimura, T., Nakagawa, K., & Miyazawa, T. (2013). Intake of mulberry 1-deoxynojirimycin prevents diet-induced obesity through increases in adiponectin in mice. Food Chemistry, 139(1–4). 
  12. Li, A. N., Chen, J. J., Li, Q. Q., Zeng, G. Y., Chen, Q. Y., Chen, J. L., Liao, Z. M., Jin, P., Wang, K. S., & Yang, Z. C. (2019). Alpha-glucosidase inhibitor 1-Deoxynojirimycin promotes beige remodeling of 3T3-L1 preadipocytes via activating AMPK. Biochemical and Biophysical Research Communications, 509(4)
  13. Wang, Y., Yu, Z., Jiang, J., Li, Y., & Yu, S. (2021). Mulberry leaf attenuates atherosclerotic lesions in patients with coronary heart disease possibly via 1-Deoxynojirimycin: A placebo-controlled, double-blind clinical trial. Journal of Food Biochemistry, 45(1). 
  14. Jiang, L. Q., Zhang, L. Y., Yang, J. C., Shi, H., Zhu, H. Z., Zhai, M. E., Lu, L. H., Wang, X. W., Li, X. Y., Yu, S. Q., Liu, J. C., & Duan, W. X. (2022). 1-Deoxynojirimycin attenuates septic cardiomyopathy by regulating oxidative stress, apoptosis, and inflammation via the JAK2/STAT6 signaling pathway. Biomedicine and Pharmacotherapy, 155. 
  15. Yang, N. C., Jhou, K. Y., & Tseng, C. Y. (2012). Antihypertensive effect of mulberry leaf aqueous extract containing γ-aminobutyric acid in spontaneously hypertensive rats. Food Chemistry, 132(4). 
  16. de Gregorio, E., Esposito, A., Vollaro, A., de Fenza, M., D’alonzo, D., Migliaccio, A., Iula, V. D., Zarrilli, R., & Guaragna, A. (2020). N-nonyloxypentyl-l-deoxynojirimycin inhibits growth, biofilm formation and virulence factors expression of staphylococcus aureus. Antibiotics, 9(6). 
  17. Perera, N., Brun, J., Alonzi, D. S., Tyrrell, B. E., Miller, J. L., & Zitzmann, N. (2022). Antiviral effects of deoxynojirimycin (DNJ)-based iminosugars in dengue virus-infected primary dendritic cells. Antiviral Research, 199. 
  18. 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020 年版)
  19. Kojima, Y., Kimura, T., Nakagawa, K., Asai, A., Hasumi, K., Oikawa, S., & Miyazawa, T. (2010). Effects of mulberry leaf extract rich in 1-deoxynojirimycin on blood lipid profiles in humans. Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition, 47(2). 
  20. Li, Y., Zhang, X., Liang, C., Hu, J., & Yu, Z. (2018). Safety evaluation of mulberry leaf extract: Acute, subacute toxicity and genotoxicity studies. Regulatory Toxicology and Pharmacology, 95.