成分ガイド

プロバイオティクスの効果は?薬剤師がメリットと選び方を説明

監修者 岡本 妃香里 薬剤師 公開日:2024-04-12 最終更新日:2024-12-11

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プロバイオティクスの効果は?薬剤師がメリットと選び方を説明

監修者岡本 妃香里 薬剤師 公開日:2024-04-12 最終更新日:2024-12-11

プロバイオティクスは、体内の環境を整えたり健康を維持したりする効果があることが広く知られています。しかし、具体的にどのような働きをするのかご存知の方はあまり多くありません。さまざまな種類があるプロバイオティクスのなかから、どのようにして自分に合うものを選択すればよいのか悩んでいる方もいるでしょう。そこで今回は、薬剤師がプロバイオティクスの効果や選び方のコツについて紹介します。

プロバイオティクスとは?

テレビCMなどで「腸内フローラ」という言葉を耳にしたことはありませんか?腸内フローラとは、私たち人間の腸内に生息する腸内細菌のことです。腸内細菌の集まりがまるでお花畑に見えることから、そう呼ばれるようになりました。腸内細菌には、有益な働きをする善玉菌、体にとって有害な悪玉菌、それとどちらにも属さない日和見菌の3種類があり、「2:1:7」のバランスが理想とされています。プロバイオティクスとは、腸に到達して有用な働きをする微生物(善玉菌)のことです。例えば、ヨーグルトなどの発酵食品に多く含まれる乳酸菌や糖化菌、酪酸菌などはその代表格として知られています。

  •  乳酸菌:発酵すると乳酸を作る微生物のことです。悪玉菌の繁殖を抑えて腸内環境を整える効果があります。
  •  糖化菌 (例:納豆菌):納豆菌は悪玉菌を抑えて善玉菌を増やす効果があります。
  •  酪酸菌:酪酸が大腸のエネルギー源として細胞に働きかけ、腸内環境を改善します。水分やミネラルを吸収する大腸の役割を促進する作用もあります。
 

プロバイオティクスの7つの効果

プロバイオティクス 効果①:マイクロバイオームの生態を変える

マイクロバイオームとは、腸内に存在する微生物の集団のことです。体内には、多くの微生物が共存しており、その中には新陳代謝や消化吸収に関与するプロバイオティクスも多く含まれます。しかし、腸内に存在するのは善玉菌と呼ばれる良い働きをする菌だけではありません。健康に影響を与える悪玉菌も存在します。しかし、悪玉菌を完全にゼロにすることは不可能です。腸内では善玉菌と悪玉菌、日和見菌の3種類が生息しており、悪玉菌が増えすぎないようにバランスを保つ必要があります。善玉菌は、共存する細菌叢をより安定させ、悪玉菌の働きを抑えることが可能です。
 

プロバイオティクス 効果②:消化器機能をサポートし、排便をスムーズにする

(1)プロバイオティクスは消化器機能を調整する働きがあります。また、便秘の改善にも効果があるとされています。プロバイオティクスには、腸管内のpHを低下させて蠕動運動を促進させる働きがあるためです。

 

プロバイオティクス 効果③:体質をと免疫機能を調整する

(2)(3)現在の医学では、消化器は身体の多くの部位と関連しており、さまざまな反応を調節しているといわれています。免疫機能に大きく関わっているのが、消化器の健康です。消化器の健康に影響を与える重要な要素の一つとして、共存する微生物の種類が関係しているといわれています。プロバイオティクスには、免疫機能の調節をサポートする働きがあることも特徴です。適切なタイミングで適量のプロバイオティクスを摂取することで、体質の調整や外部から菌やウイルスが侵入してくるのを防御するのに役立ちます。

プロバイオティクスが免疫機能と大きく関係しているのは、腸管に全身のリンパ球の60~70%が存在しているためです。69~97歳の高齢者10人を対象にシロタ株発酵乳製品を毎食後に1本飲んでもらうのを3週間続けてもらう試験が行われました。この試験では、シロタ株発酵乳製品を摂取したグループのほうがプラセボを摂取したグループよりもNK活性が高くなっていることが分かっています。NK活性とは、ウイルスや細菌を攻撃するNK細胞の強さのことです。この研究から、プロバイオティクスは免疫機能に関係があるといえるでしょう。

 

プロバイオティクス 効果④:生理機能を調節し、デリケートゾーンの健康を維持

(4)デリケートゾーンの健康も微生物との共生に関連しています。菌叢の種類のバランスを失うと不快感を引き起こす可能性があるのです。プロバイオティクスの働きにより、デリケートゾーンの健康を維持します。膣に多く存在しているといわれているのが、乳酸菌の一種であるラクトバチルス属です。乳酸菌の働きによって感染症の原因となる細菌の繁殖を防ぎ、膣の環境を正常に整えます。
 

プロバイオティクス 効果⑤:健康維持

(5)食事は健康を維持するための重要な基盤です。食べ物に含まれる栄養素が適切に吸収されるかどうかは、消化器の健康と密接に関連しています。プロバイオティクスの助けを借りることで、健康を促進できるでしょう。
 

プロバイオティクス 効果⑥:新陳代謝の促進

現代人は外食が多く、油分、塩分、添加物の摂りすぎで消化の負担が増えています。適量のプロバイオティクスを補充することで、悪玉菌と競合し、体内の新陳代謝を促進できます。
 

プロバイオティクス 効果⑦:産前、産後や病後の栄養補給

妊娠時、産後、病後など、身体に大きなストレスがかかる時は、健康状態に影響を及ぼす可能性があります。ストレスが腸内菌叢の構成を変化させることが明らかになっているのです。ストレスホルモンといわれるコルチゾールの分泌と腸内菌叢との相関は確認されていませんが、ストレスには悪玉菌を増やして善玉菌を減らす働きがあるのではと考えられています。適切なプロバイオティクスの補充は、身体を元の健康状態へと迅速に回復させるのに役立つでしょう。
 

プロバイオティクスの選び方

1.「菌種」ではなく「菌株」を確認する

プロバイオティクスの機能は、菌種に関連していると考えている方が多いかもしれません。しかし、大切なのはプロバイオティクスの菌種ではなく「菌株」です。例えば、ラクトバチルス・ラムノサスとラクトバチルス・カゼイではどちらも乳酸菌(菌株)ですが、それぞれ異なる機能を持っていることが分かっています。
 

2.複数の菌種を摂取する

各種のプロバイオティクスは、好んで生息する場所や、酸やアルカリに対する耐性などが異なります。そのため、プロバイオティクスを補充する際には、さまざまな種類の、かつ効果が研究で実証された菌株を選ぶことが重要です。これにより、より幅広い効果を提供できます。
 

3.最適な量のプロバイオティクスを毎日摂取する

国立健康・栄養研究所では、整腸目的で乳酸菌を摂取する場合は1日あたり数百億個程度の摂取が必要だとしています。また、整腸作用を期待する場合はプロバイオティクスを毎日摂取しなければなりません。プロバイオティクスを摂取するとある程度の期間は腸内にとどまりますが、住み着くことはできないのです。そのため、毎日続けて摂取することが大切です。

 

4.プロバイオティクスは涼しい場所で保管する

プロバイオティクスは、生きた微生物です。そのため、保管する際は温度管理が必要になります。菌の種類によっては、温度が高すぎると死んでしまうものもあるので注意しましょう。冷蔵保管と書かれている場合は、指示に従って保管するようにしてください。

 

プロバイオティクス おすすめトップ4|プロバイオティクスの菌株を選ぶことが重要

プロバイオティクスには、さまざまな健康が期待されています。しかし、特定のプロバイオティクスがすべての健康効果を網羅しているわけではありません。特に人気が高く、多くの研究が行われている乳酸菌でも、菌株によって異なる効果があります。そのため、個々のニーズに合わせて、適切な菌株を選択することが重要です。

分類

ヒトでの臨床研究

効果

菌種名

消化器の健康

あり

マイクロバイオームの生態を変え、消化器の健康をサポートし、スムーズにする

  • Lactobacillus.rhamnosus
  • subsp. lactis 
  • animalis subsp. lactis
  • Bifdobacterium longum subsp.infantis
  • Lac-tobacillus salivarius
  • Lactobacillus-rhamnosus
  • acbaciusrtri

デリケートゾーンの健康維持

あり

デリケートゾーンの健康の維持、細菌叢の生態を変える

  • Lactobacillus crispatus 
  • Lactobacillus plantarum 
  • Lactobacillus fermentum 
  • Lactobacillus salivarius 
 

滋養強壮

あり

免疫力を向上させ、マイクロバイオームの生態を変え、体質を調整し、消化器の健康を維持します。

  • Lactobacillus paracasei 
  • Lactobacillus fermentum 

スムーズな排便

あり

マイクロバイオームの生態を変え、消化器の機能を調整し、消化器の免疫力を高めるなど、優れたスムーズ機能を提供します。

A、B、C菌、LGGメンバーを含む等11隻プロバイオティクス 

  • A菌
    • Lactobacillus acidophilus
  • B菌
    • Bifidobacterium bifidum 、 Bifidobacterium longum 、 Bifidobacterium lactis
  • C菌
    • Lactobacillus casei 

 

参考資料:
  1. Ku S, Park MS, Ji GE, You HJ. Review on Bifidobacterium bifidum BGN4: Functionality and Nutraceutical Applications as a Probiotic Microorganism. Int J Mol Sci. 2016 Sep 14;17(9):1544. doi: 10.3390/ijms17091544. PMID: 27649150; PMCID: PMC5037818.
  2. Céline Pellaton, Sophie Nutten, Anne-Christine Thierry, Caroline Boudousquié, Nathalie Barbier, Carine Blanchard, Blaise Corthésy, Annick Mercenier, François Spertini, "Intragastric and Intranasal Administration of Lactobacillus paracaseiNCC2461 Modulates Allergic Airway Inflammation in Mice", International Journal of Inflammation, vol. 2012, Article ID 686739, 8 pages, 2012.https://doi.org/10.1155/2012/686739
  3. Furrie E. Probiotics and allergy. Proc Nutr Soc. 2005 Nov;64(4):465-9. doi: 10.1079/pns2005466. PMID: 16313688.
  4. Gregor Reid, Duane Charbonneau, Julie Erb, Barbara Kochanowski, Dee Beuerman, Russ Poehner, Andrew W. Bruce, Oral use of Lactobacillus rhamnosus GR-1 and L. fermentum RC-14 significantly alters vaginal flora: randomized, placebo-controlled trial in 64 healthy women, FEMS Immunology & Medical Microbiology, Volume 35, Issue 2, March 2003, Pages 131–134, https://doi.org/10.1016/S0928-8244(02)00465-0
  5. Anjum N, Maqsood S, Masud T, Ahmad A, Sohail A, Momin A. Lactobacillus acidophilus: characterization of the species and application in food production. Crit Rev Food Sci Nutr. 2014;54(9):1241-51. doi: 10.1080/10408398.2011.621169. PMID: 24499153.
  6. 腸内細菌と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
  7. 乳酸菌 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
  8. 国立健康・栄養研究所
  9. プロバイオティクスの効果を徹底解説