プロバイオティクスは、体内の環境を整えたり健康を維持したりする効果があることが広く知られています。
しかし、具体的にどのような働きをするのかご存知の方はあまり多くありません。さまざまな種類があるプロバイオティクスのなかから、どのようにして自分に合うものを選択すればよいのか悩んでいる方もいるでしょう。そこで今回は、薬剤師がプロバイオティクスの効果や選び方のコツについて紹介します。
プロバイオティクスとは?
プロバイオティクスとは、腸に到達して有用な働きをする微生物(善玉菌)のことです。
テレビCMなどで「腸内フローラ」という言葉を耳にしたことはありませんか?腸内フローラとは、私たち人間の腸内に生息する腸内細菌のことです。腸内細菌の集まりがまるでお花畑に見えることから、そう呼ばれるようになりました。腸内細菌には、有益な働きをする善玉菌、体にとって有害な悪玉菌、それとどちらにも属さない日和見菌の3種類があり、「2:1:7」のバランスが理想とされています。
プロバイオティクスの7つの効果
効果1. マイクロバイオームの生態を変える
マイクロバイオームとは、腸内に存在する微生物の集団のことです。体内には、多くの微生物が共存しており、その中には新陳代謝や消化吸収に関与するプロバイオティクスも多く含まれます。しかし、腸内に存在するのは善玉菌と呼ばれる良い働きをする菌だけではありません。健康に影響を与える悪玉菌も存在します。
しかし、悪玉菌を完全にゼロにすることは不可能です。腸内では善玉菌と悪玉菌、日和見菌の3種類が生息しており、悪玉菌が増えすぎないようにバランスを保つ必要があります。善玉菌は、共存する細菌叢をより安定させ、悪玉菌の働きを抑えることが可能です。
効果2. 消化器機能をサポートし、排便をスムーズにする
(1)プロバイオティクスは消化器機能を調整する働きがあります。また、便秘の改善にも効果があるとされています。プロバイオティクスには、腸管内のpHを低下させて蠕動運動を促進させる働きがあるためです。
効果3. 体質をと免疫機能を調整する
(2)(3)現在の医学では、消化器は身体の多くの部位と関連しており、さまざまな反応を調節しているといわれています。免疫機能に大きく関わっているのが、消化器の健康です。消化器の健康に影響を与える重要な要素の一つとして、共存する微生物の種類が関係しているといわれています。
プロバイオティクスには、免疫機能の調節をサポートする働きがあることも特徴です。適切なタイミングで適量のプロバイオティクスを摂取することで、体質の調整や外部から菌やウイルスが侵入してくるのを防御するのに役立ちます。
プロバイオティクスが免疫機能と大きく関係しているのは、腸管に全身のリンパ球の60~70%が存在しているためです。69~97歳の高齢者10人を対象にシロタ株発酵乳製品を毎食後に1本飲んでもらうのを3週間続けてもらう試験が行われました。
この試験では、シロタ株発酵乳製品を摂取したグループのほうがプラセボを摂取したグループよりもNK活性が高くなっていることが分かっています。
NK活性とは、ウイルスや細菌を攻撃するNK細胞の強さのことです。この研究から、プロバイオティクスは免疫機能に関係があるといえるでしょう。
効果4. 生理機能を調節し、デリケートゾーンの健康を維持
(4)デリケートゾーンの健康も微生物との共生に関連しています。菌叢の種類のバランスを失うと不快感を引き起こす可能性があるのです。プロバイオティクスの働きにより、デリケートゾーンの健康を維持します。膣に多く存在しているといわれているのが、乳酸菌の一種であるラクトバチルス属です。乳酸菌の働きによって感染症の原因となる細菌の繁殖を防ぎ、膣の環境を正常に整えます。
効果5. 健康維持
(5)食事は健康を維持するための重要な基盤です。食べ物に含まれる栄養素が適切に吸収されるかどうかは、消化器の健康と密接に関連しています。プロバイオティクスの助けを借りることで、健康を促進できるでしょう。
効果6. 新陳代謝の促進
現代人は外食が多く、油分、塩分、添加物の摂りすぎで消化の負担が増えています。適量のプロバイオティクスを補充することで、悪玉菌と競合し、体内の新陳代謝を促進できます。
効果7. 産前、産後や病後の栄養補給
妊娠時、産後、病後など、身体に大きなストレスがかかる時は、健康状態に影響を及ぼす可能性があります。ストレスが腸内菌叢の構成を変化させることが明らかになっているのです。ストレスホルモンといわれるコルチゾールの分泌と腸内菌叢との相関は確認されていませんが、ストレスには悪玉菌を増やして善玉菌を減らす働きがあるのではと考えられています。
適切なプロバイオティクスの補充は、身体を元の健康状態へと迅速に回復させるのに役立つでしょう。