人体の中でエネルギー源や細胞膜の構成成分として働く脂肪酸。なかでも、不飽和脂肪酸はオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸などの種類があり、どちらも食事からの摂取が欠かせない必須脂肪酸です。
今回は近年、人気を集める不飽和脂肪酸含有量の多い料理油に関連して、不飽和脂肪酸の食品含有量ランキングと賢く摂る方法について解説します。
日々の食生活の参考にしてみてください。
不飽和脂肪酸は健康な脂質?

脂肪酸は大きく分けると、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に大別されます。不飽和脂肪酸は、さらに一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、代表的な多価不飽和脂肪酸にはDHAやEPAがあります。
不飽和脂肪酸は、体内の多くの重要な部位で欠かせない成分として機能しています。特に、多価不飽和脂肪酸であるDHAやEPAは、体内で合成できないため、食品から摂取する必要があります。DHAは脳や神経系、目の網膜に豊富に含まれており、これらの部位の構造と機能を支える重要な成分となっています。
例えば、脳内では神経細胞の膜の重要な構成要素として存在し、神経の健康を保つ役割を果たします。また、目の網膜にも多く含まれ、視覚機能を支えています。
EPAは心血管系にとっても重要な役割を果たし、血管の健康を守るために必要不可欠な成分です。
さらに、免疫系にも深く関与しており、免疫細胞の膜を構成する成分として免疫機能を支えています。このように、不飽和脂肪酸は体のさまざまな部位で基本的な構造を形成し、それぞれの健康維持に必要な役割を担っています。
一価不飽和脂肪酸も、体内で重要な役割を果たす脂肪酸です。代表的なものはオレイン酸で、主にオリーブオイルに含まれています。
この脂肪酸は、体内の細胞膜の構成成分として欠かせない存在で、細胞の柔軟性を保つために重要です。
不飽和脂肪酸が多い食品
不飽和脂肪酸は、植物油や魚、大豆製品などに多く含まれています。今回は2つのランキングに分けてご紹介します。
一価不飽和脂肪酸の含有量ランキングTop15

一価不飽和脂肪酸はオリーブ油やなたね油、ナッツ類、牛肉、ごまなどに多く含まれています。
表1.一価不飽和脂肪酸の含有量ランキングTop15
順位 | 食品名 | 含有量(g/100g) |
1 | オリーブ油 | 74.04 |
2 | なたね油 | 60.09 |
3 | マカダミアナッツ いり 味付け | 59.23 |
4 | ヘーゼルナッツ フライ 味付け | 54.74 |
5 | 米ぬか油 | 39.8 |
6 | ごま油 | 37.59 |
7 | アーモンド いり 無塩 | 35.09 |
8 | ピスタチオ いり 味付け | 30.92 |
9 | カシューナッツ フライ 味付け | 27.74 |
10 | らっかせい 大粒種 いり | 24.54 |
11 | 大豆油 | 22.12 |
12 | うし 和牛肉 リブロース 赤身 生 | 21.04 |
13 | うし 和牛肉 かたロース 皮下脂肪なし | 19.63 |
14 | うし 横隔膜 焼き(ハラミ・サガリ) | 19.13 |
15 | ごま いり | 19.12 |
1位:オリーブ油
オリーブ油は一価不飽和脂肪酸のオレイン酸を多く含み、血中HDLコレステロールの維持と、LDLコレステロールの低下作用が報告されています。(16)
2位:なたね油
また、なたね油もオレイン酸が豊富な油で、香りやクセが少なく、幅広い料理に使われています。
3-4位:ナッツ類(マカダミアナッツ / ヘーゼルナッツ)
ナッツ類はそれぞれ含まれる脂肪酸が異なり、マカダミアナッツはパルミトレイン酸、ヘーゼルナッツ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツはオレイン酸やリノール酸が豊富です。
5位:米ぬか油
米ぬか油はオレイン酸やリノール酸が多く、抗酸化物質のトコフェロールやオリザノールも含みます。(8)
6位:ごま油
ごま油およびごまはオレイン酸やリノール酸のほかに、「ゴマリグナン」と呼ばれる特有物質を含み、抗酸化作用を有します。(9)
大豆油に関しては、リノール酸やα-リノレン酸を含み、コレステロールの低下作用が知られています。(10)
多価不飽和脂肪酸の含有量ランキングTop15

多価飽和脂肪酸は、アマニ油やえごま油、くるみ、植物油、ごまなどに多く含まれています。
表2.多価不飽和脂肪酸の含有量ランキングTop15
順位 |
食品名 |
含有量(g/100g) |
1 |
アマニ油 |
71.13 |
2 |
えごま油 |
70.60 |
3 |
ぶどう油 |
63.55 |
4 |
大豆油 |
55.78 |
5 |
綿実油 |
53.85 |
6 |
くるみ いり |
50.28 |
7 |
ごま油 |
41.19 |
8 |
米ぬか油 |
33.26 |
9 |
落花生油 |
29.00 |
10 |
なたね油 |
26.10 |
11 |
チアシード 乾 |
25.52 |
12 |
ごま いり |
22.64 |
13 |
だいず 凍り豆腐 乾 |
18.32 |
14 |
らっかせい 小粒種 いり |
16.82 |
15 |
ピスタチオ いり 味付け |
16.42 |
1-2位:アマニ油やえごま油
アマニ油やえごま油は、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸が多く、体のめぐりに効果が期待されています。(11)
3位:ぶどう油
ぶどう油はグレープシードオイルとも言われ、ぶどうの種から抽出される油です。リノール酸、オレイン酸、ビタミンEを含み、化粧品などにも使われています。
5位:綿実油
綿実油は綿の種子からとれる油です。オレイン酸やリノール酸、パルチミン酸などを含み、せっけんの製造にも使われます。
6位:くるみ
くるみはオメガ3脂肪酸を多く含むナッツ類です。海外の研究ではくるみの定期的な摂取によって、平均寿命の延伸と心血管疾患による死亡リスクの低減に関わる報告がされています。(12)
7位:落花生油
落花生油はオレイン酸とリノール酸、ビタミンEを含んでおり、LDLコレステロールの低減が期待されます。薄皮にはポリフェノールも豊富で、抗酸化の働きも見逃せません。(13)
チアシードはスーパーフードの一つで、オメガ3脂肪酸を多く含みます。水を含ませると約10倍に膨らみ、ヨーグルトやスムージーに混ぜてもおいしいです。
凍り豆腐はリノール酸やリノレン酸を多く含みます。
大豆由来のたんぱく質や鉄、カルシウムも豊富で、煮物や卵とじ、味噌汁に入れてもおいしく食べられます。
不飽和脂肪酸が多いおすすめの食品10選
不飽和脂肪酸を多く含む食品の中でも、手軽で使いやすい食品をピックアップしたので、参考にしてみてください。
1-2. アマニ油・えごま油
アマニ油やえごま油は、オメガ3脂肪酸を豊富に含みます。(8)
価格は150gで1000円程度のものがあります。熱に弱い性質があるため、できあがりの料理にスプーン1杯程度の油をかけて召し上がってください。
3. 大豆油
大豆を原料にして作られた油で、900gで600円程度と手に取りやすい価格が特徴です。
4. くるみ
サラダやヨーグルト、ケーキ、クッキーに入れると香ばしさが広がります。100gあたり500円程度で購入でき、大容量で買うとコストパフォーマンスがよくなります。
5. なたね油
アブラナの種からとった油で、オレイン酸が多く含まれます。価格は1kgで400円程度と良心的な商品もあります。
炒め物やドレッシング、揚げ物に使えるほか、人間ドックの数値が気になる方にもおすすめです。
6. ごま
オレイン酸とリノール酸を豊富に含む油です。コレステロール低下や動脈硬化、糖尿病予防などに効果が期待されています。(9)
ごまの特有成分であるセサミンも含まれ、すりつぶして食べるのが効率よい摂取のコツです。100g当たり100円程度と手頃な価格で、和え物やスープ、炒め物などにもよく合います。
7. きな粉
大豆の栄養を摂取できる優れた食材です。
リノール酸やα-リノレン酸、サポニンなどを含み、酸化防止や肥満予防、血流の改善に役立つと言われています。(14)
牛乳や豆乳を混ぜる、アイスクリームやヨーグルト、トーストにかけてもおいしいです。100g当たり100円程度で購入できます。
8. 油揚げ
豆腐を薄く切って水分を抜き、揚げたものです。揚げる際は菜種油や大豆油などが使われ、不飽和脂肪酸の含有量が多くなります。
煮物や和え物、味噌汁に使えるほか、香ばしく焼いて生姜やかつお節、ねぎなどをのせてしょうゆをたらせば、絶品おつまみに変身します。
9. 青魚
多価不飽和脂肪酸のオメガ3脂肪酸が豊富です。脳の健康維持や血液サラサラ生活とクリアの毎日にも役立つと言われています。(7)(8)(9)
熱に弱いため、揚げ物よりも焼魚や煮魚、刺身などがおすすめです。
10. アーモンド
アーモンドはオレイン酸が豊富です。ある研究では6週間アーモンドを丸ごと食べることで、血管の内皮機能を改善し、血中LDLコレステロールの濃度が低下したという結果も出ています。(15)
サラダやグラノーラにのせると、香ばしい風味が楽しめます。素焼きが苦手な方はアーモンドミルクも試してみてください。
外食向け!おすすめの不飽和脂肪酸が多い料理5選
ここからは、ランキングに出てきた食材のおすすめ料理を紹介します。
1. ミックスナッツサラダ
アーモンドやくるみなどのナッツが入ったサラダは、ビタミンEも豊富で、ビタミンCを含むブロッコリー、菜の花などの野菜と組み合わせるのがGOOD。
おうちで食べるときはオリーブオイルやあまに油などをかけてアレンジも楽しめます。
2. サバ焼き定食
サバなどの焼魚定食は、オメガ3脂肪酸が豊富です。血流を改善すると言われるEPAは、中性脂肪とコレステロールのバランスもサポートしてくれます。(16)
ブリやアジ、サンマ、カツオ、サワラなどの旬の魚に置き換えてもいいです。
3. オリーブオイルを使った料理
不飽和脂肪酸の補給には、オリーブオイルを使った料理もおすすめです。例えば、オメガ3脂肪酸を含むしらすを使ったペペロンチーノは、オリーブオイルの豊かな香りが食欲をそそります。
オリーブオイルに含まれるオレイン酸は熱に強く、抗酸化力を持つポリフェノールやトコフェロール(ビタミンE)も摂取できます。
4. 凍り豆腐の煮物
和定食やお弁当にも入ることの多い凍り豆腐の煮物は、リノール酸やオレイン酸が含まれます。
噛むごとにジューシーな味わいが広がり、大豆レシチンというリン脂質によって、肝臓における脂質合成を抑える働きが報告されています。(10)
5. 黒ごまプリン
すりごまをたっぷりと使った黒ごまプリンは、きなこや黒蜜をかけていただくのがおすすめです。
ごまに含まれるリノール酸やオレイン酸、きなこのα-リノレン酸も摂れます。牛乳の代わりに豆乳で作ってもよいでしょう。
不飽和脂肪酸のデメリットは?
不飽和脂肪酸は酸化しやすく、熱によって栄養素が失われてしまうこともあります。
グリルやフライパン焼きでは多価不飽和脂肪酸の残存率が8〜9割、揚げ物にすると5割に減ってしまいます。(18)
また、不飽和脂肪酸は近年、食の欧米化による過剰摂取の傾向があり、必ずしも量を増やす必要はありません。
それよりも肥満防止のために調理油の量を控え、ナッツは1日25g程度にするなど、適量を心がけてみましょう。
賢い脂質の摂り方!不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸のバランスにも注意
不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸は、バランスよく摂ることが重要です。1日を通して飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の割合を3:4:3にするのが理想的と言われています。
しかし、最近では身近な食品に飽和脂肪酸やオメガ6脂肪酸が多く含まれているため、日々の食事で不足しがちなオメガ3脂肪酸の摂取を心がけてみましょう。
おおよそ1日1切れの魚が目安量です。
表3.一日の献立例
食品例 |
|
朝食 |
ごはん サバの塩焼き えのきと野菜の味噌汁(あまに油入り) |
昼食 |
しらすのペペロンチーノ ミックスナッツサラダ バナナきなこヨーグルト |
夕食 |
ごはん 豚肉の生姜焼き ほうれん草の胡麻和え わかめスープ |
脂肪酸のバランスを整えるには、魚や肉と一緒に、大豆製品(きなこや油揚げ)や乳製品を含むおかずが入るとなお安心です。
最初はオリーブオイルやなたね油などの料理油に変えてみるのもOKなので、ぜひ取り入れやすいものから試してみてください。
不飽和脂肪酸によくある質問
Q1.不飽和脂肪酸が多い肉は?
肉の中で不飽和脂肪酸が多いのは、牛肉や豚肉です。
一価不飽和脂肪酸のオレイン酸を多く含み、鶏肉の場合は、多価不飽和脂肪酸のリノール酸が多く含まれます。(19)
Q2.オリーブオイルは不飽和脂肪酸ですか?
オリーブオイルは一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が約70〜80%を占めています。
ほかにはオメガ6脂肪酸のリノール酸が5〜10%、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸がわずかに含まれています。
Q3.飽和脂肪酸を減らす食事は?
食事の中で飽和脂肪酸を減らすには、肉類でも脂身の少ないヒレやもも、赤身の多い部位を選ぶようにします。鶏肉の場合は、皮を外すと脂質が抑えられます。
牛乳は低脂肪乳に変えるのもよい方法です。(20)
また、インスタント食品などの加工食品をの頻度を抑えて、野菜やきのこ、魚、大豆製品などを積極的に使ったメニューを取り入れることも飽和脂肪酸の低減につながります。
Q4.飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は何が違う?
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の大きな違いは、構造と常温での状態、含まれる食品です。
飽和脂肪酸は炭素との間に二重結合がなく、肉の脂や乳製品などに多く含まれます。常温では固形が多く、体にとって重要なエネルギー源となりますが、過剰摂取によって循環血管疾患のリスクが高くなります。
代表的な食品にはバターがあり、デザートや洋食に広く使われますが、止まらないおいしさにとって、生活習慣病を引き起こす可能性もあります。
一方で、不飽和脂肪酸は植物油や魚などに含まれ、二重結合を持ちます。
常温では液体が多く、飽和脂肪酸の一部を置き換えることで、心疾患のリスクを下げることが言われています。(17)
参考:
オメガ3の11つの効果・働きと手軽に摂取する方法|認知機能・心血管系の健康を支える
必須脂肪酸とは?種類と多く含まれる食品
