現代人はとても健康に配慮しており、特に日本では腸内環境への意識が非常に高く、多くの方が「プロバイオティクス」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。
プロバイオティクスは、腸内環境を整えてさまざまな効果を発揮することが期待される非常に人気のある健康食品であり、多くの人々が定期的に摂取しています。
ですが、皆さんはプロバイオティクスがどのようなもので、どう摂取すると良いかをご存知でしょうか?また、プロバイオティクスと乳酸菌は同じものなのかをご存知でしょうか?
この記事では、プロバイオティクスの基本情報や乳酸菌との関係、報告されている効能などを詳しく解説し、よりプロバイオティクスへの理解を深めるサポートをしたいと思います。
プロバイオティクスの基本情報を解説!
プロバイオティクスとは?
プロバイオティクスとは、「適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物」という意味で現在用いられ、1989年にR.Fuller博士が広めたとされる、いわゆる「善玉菌」をより新しい概念で捉えた言葉です(1)。
「プロバイオティクス(Probiotics)」の語源は、ギリシャ語で「生命のための」を意味する“pro bios”とされており、どれか特定の微生物を指すのではなく、腸内まで生きた状態で届いて私たちの身体に有益な効果を発揮すると考えられる微生物の総称として用いられています(2)。
プロバイオティクスの特徴は?どんな菌が含まれる?
日本の腸内細菌学会では、プロバイオティクスは善玉菌であれば全てが当てはまるというわけではなく、善玉菌の中でも以下の条件を満たすことが科学的根拠に基づいて示された菌のみ、プロバイオティクスとして認められるとされています(3)。
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安全性が保証されている
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もともと宿主の腸内フローラの一員である
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胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達できる
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下部消化管で増殖可能である
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宿主に対して明らかな有用効果を発揮できる
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食品などの形態で有効な菌数が維持できる
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安価かつ容易に取り扱える
この条件を満たしてプロバイオティクスと認められている代表的なものは、「乳酸菌」という言葉でよく知られるラクトバチルス属の菌(例:Lactobacillus acidophilus)や、「ビフィズス菌」として知られるビフィドバクテリウム属の菌(例:Bifidobacterium lactis)などです(1)。
これらのプロバイオティクスは、納豆、味噌、キムチ、ヨーグルトなどの食品からも摂取することができます。
プロバイオティクスはどんな働きをする?
プロバイオティクスは、腸内環境を改善することで消化器系の健康を維持して消化器の健全な運動を促進するほか、全身の健康や脳機能にまで影響を与えることが知られています(2)。この効果について、私たちの腸内環境を解説しながらご説明します。
私たちの腸内には、実に100兆個にも及ぶ腸内細菌が棲息しており、数え切れないほどの種類の腸内細菌がそれぞれ集団を形成しています。
その様子を花畑(フローラ)に例えて、腸内環境は「腸内フローラ」とも呼ばれます。
腸内フローラにいる多くの菌はそれぞれ異なった働きをしており、バランスが崩れていわゆる悪玉菌が増えると、腸の働きの悪化だけではなく、精神疾患や糖尿病、メタボリックシンドローム、免疫疾患など多くの病気のリスクになると考えられています(4)。
そのため、腸内フローラのバランスを整えるプロバイオティクスを摂取することは、お腹の健康だけではなく全身、さらに脳の健康にも重要であると示唆されています。
プロバイオティクスの効果
生きた状態で腸まで届くプロバイオティクスには、幅広い効能があることが研究により示唆されています。
プロバイオティクスの中でも代表的なものである乳酸菌やビフィズス菌の研究報告を例に挙げて、その効果をかんたんにご紹介します。
腸内フローラのバランスを改善して便通を改善する
プロバイオティクスの効能で最も重要でよく知られているものは、上でお話したような腸内環境自体を改善する働きです。
実際に健康なボランティア30人を対象に、ガセリ菌を含む2種類のプロバイオティクス(Lactobacillus gasseri CECT5714 および Lactobacillus coryniformis CECT5711)と一般的な乳発酵製品を摂取してもらい、腸の活動への影響を比較した二重盲検ランダム化プラセボ対照試験では、プロバイオティクス摂取群で糞便の水分量、排便の頻度が改善し、ボランティア自身の便通に対する感覚も改善したと報告されています(5)。
多くの研究により、プロバイオティクスによる腸の活動の改善効果は示唆されています。
体重・血糖値管理をサポートする
プロバイオティクスは栄養を吸収する腸の働きをサポートすることで、体重管理にも効果があることが示唆されています。
肥満と腸内環境、ラクトバチルス属含有プロバイオティクスの関係を調べた多くの研究に対して、統計を取り俯瞰して解析する「メタ分析」を行った研究では、ガセリ菌(Lactobacillus gasseri )が肥満な人の体重減少と関連があるという結果が報告されています(6)。
また、糖の代謝を調節するインスリンへの感受性の低下などが原因で血糖値のコントロールが難しくなる2型糖尿病の患者に対して、プロバイオティクスであるLactobacillus acidophilus がインスリンへの感受性の低下を抑えることが研究で報告されており、プロバイオティクスは血糖値管理にも有益であることが示唆されています(7)。
健康的な精神状態の維持をサポートする
プロバイオティクスは、肉体面だけでなく精神面でも有益であることが示唆されています。
100兆あまりの腸内細菌がさまざまなシグナルを出し続けている腸内フローラは、「脳腸相関」「第2の脳」と称されるように、脳への影響が非常に大きいことが広く認められています(8)。
実際に多くのヒトを対象とした研究が行われ、健康な成人に対して悲しい気分を緩和する効果など、さまざまな精神、認知機能の改善を示唆する報告がされてきました(9)。
プロバイオティクスは身体の健康と同時に、脳や心の健康にも重要であると考えられています。
適切なプロバイオティクスの選び方とは?
「プロバイオティクス」は、「適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物」であり、特定の菌株を指すわけではないため、プロバイオティクスの中でも選ぶ菌株や製品によって効果が変わることが研究でも示唆されています(6)。
そのため、プロバイオティクス製品を選ぶ際は、まずご自身のニーズを明確にすることが重要です。
ガセリ菌やビフィズス菌など、それぞれが異なった長所を持つため、期待する効能に近い特長があると考えられているプロバイオティクスを選択することは非常に効果的です。
また、プロバイオティクスは通常の食事からも摂取できるため、体が健康な場合、無理にプロバイオティクスを追加で摂取する必要はありません。
体質や健康状態に応じて適切なプロバイオティクスを選択する必要があり、2〜3ヶ月間摂取し、明確な効果がない場合はプロバイオティクスの種類を変更することをお勧めします。