マグロには、たんぱく質やオメガ3をはじめとした有用な栄養素が豊富に含まれています。赤身・トロ・血合いといった部位や、種類によって栄養価はさまざまです。
「家計調査(令和4年度)」では、よく食べる魚の第2位との結果が出ており、日本人に親しまれています(1)。
より健康効果を得るための食べ方やレシピ・新鮮さを保つ保存方法を知って、美容と健康に活かしましょう。
マグロの栄養成分と健康効果
マグロは多くの有用成分を含んでおり、健康や美容に役立つ食品です。おもな栄養成分と健康効果を紹介します。
良質なたんぱく質
細胞やホルモン・爪・毛髪・皮膚といった身体の組織を作る原料として効率よく使われる性質があります(2)。
低脂質
マグロは、トロのように脂がのった部位もありますが、赤身は脂質が少なく低カロリーです。ダイエットや体重管理に役立ちます。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸であるDHAは、脳の発達促進、認知症・視力低下・動脈硬化の予防改善に、EPAは、血栓や高血圧の予防・抗炎症作用が期待できます(3)。
ビタミンB12
アミノ酸や脂肪酸の代謝・たんぱく質や核酸の生合成・骨髄での赤血球の合成に関与しています(4)。
ビタミンD
丈夫な歯や骨を作るのに必要な成分です。カルシウムの吸収をサポートし、筋肉の収縮や神経伝達をスムーズにします(5)。
ビタミンE
血管を若々しく保ったり、細胞の酸化を防いで老化予防に役立ちます(6)。
鉄
鉄は血液の原料であり、全身への酸素供給に必要不可欠です。不足すると、鉄欠乏性貧血を招いたり、集中力の低下・食欲低下・頭痛などが現れます。マグロ(動物性食品)に含まれる鉄分はヘム鉄と呼ばれ、植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも吸収率がよいのが特徴です(7)。
セレン
強力な抗酸化力があり、がん・糖尿病・心臓病・免疫疾患といった生活習慣病や、老化・ストレスの予防効果が示唆されています(8)。
また、マグロは中枢神経(脳)に障害を引き起こす毒性を持つ水銀を含んでいますが、毒性の軽減にも効果的です。しかし、完全に無毒化する効果はないので食べ過ぎには注意が必要です(9)。
マグネシウム
マグネシウムは体内で起こる300種類以上の酵素の働きをサポートしています。神経伝達や栄養素の合成・分解にも関わるミネラルです(10)。
タウリン
タウリンは動脈硬化・心疾患・貧血・胆石の予防、視力の回復、解毒作用と肝機能の強化に役立ちます(11)。
マグロの栄養価の違い(部位別)
マグロは、部位により味や見た目・脂のりが異なりますが、栄養価はどのような違いがあるのでしょうか?高級品として知られるクロマグロ(本マグロ)と、スーパーでよく目にするメバチマグロの赤身と脂身(トロ)の栄養価を比較してみましょう。
血合いに関しては、データがあるクロマグロの一部の栄養価のみ掲載しています。
【養殖クロマグロ(本マグロ)の部位別の栄養価/可食部100gあたり】
栄養素 |
赤身・生 |
脂身(トロ)・生 |
血合い |
エネルギー |
153kcal |
321kcal |
- |
たんぱく質 |
24.8g |
18.6g |
- |
脂質 |
7.6g |
28.9g |
- |
DHA |
1000㎎ |
4500㎎ |
- |
EPA |
420㎎ |
2100㎎ |
- |
ビタミンB12 |
2.5μg |
1.9㎍ |
- |
ビタミンD |
4.0㎍ |
20.8㎍ |
- |
ビタミンE |
1.5㎎ |
7.2㎎ |
- |
鉄分 |
0.8㎎ |
0.6㎎ |
他の部位よりも多い(※2) |
セレン |
79㎍ |
73㎍ |
赤身やトロの約100倍多い(※3) |
マグネシウム |
38㎎ |
26㎎ |
- |
タウリン(※1) |
約60㎎ |
約30㎎ |
約950㎎ |
【メバチマグロの部位別の栄養価/可食部100gあたり】
栄養 |
赤身・生 |
脂身(トロ)・生 |
エネルギー |
115kcal |
158kcal |
たんぱく質 |
25.4g |
23.9g |
脂質 |
2.3g |
7.5g |
DHA |
370.0㎎ |
1300.0㎎ |
EPA |
80.0㎎ |
320.0㎎ |
ビタミンB12 |
1.4㎍ |
1.0㎍ |
ビタミンD |
3.6㎍ |
8.1㎍ |
ビタミンE |
0.9㎎ |
2.0㎎ |
鉄分 |
0.9㎎ |
0.7㎎ |
セレン |
75㎍ |
74㎍ |
マグネシウム |
35㎎ |
31㎎ |
参照:(12)
OO栄養素を補充したい時は、マグロと部位を選びましょう
1. 高たんぱく・低脂質
「メバチマグロの赤身」高たんぱく・低脂質なので、ダイエットやボディメイクをしている方におすすめです。
2. オメガ3
「クロマグロの脂身(トロ)」:オメガ3の一種であるDHAやEPAが豊富です。オメガ3は体内で合成できないので、食事で積極的に摂るよう推奨されています。熱により酸化しやすいので生食がおすすめです(16)。
3. ビタミンB12・マグネシウム
「クロマグロの赤身」:代謝に関わるビタミンB12やマグネシウムが豊富なので、代謝を高めたい方におすすめです。
4. ビタミンD・E
「クロマグロの脂身(トロ)」:丈夫な骨や歯をサポートするビタミンDや、強い抗酸化力を持つビタミンEが豊富に含まれています。
高級魚ではありますが、成長期のお子さんから高齢者まで幅広い方におすすめです。
5. 鉄分・セレン・タウリン
「血合い」:マグロの血合いは、鉄分・セレン・タウリンが豊富です。
生理中の女性や生活習慣が乱れがちな方・お酒をよく飲む方におすすめです。新鮮な血合いは刺身として生食も可能ですが、1日おくと色が黒ずみ、臭みがでます。煮つけやカツなどレパートリーは豊富です。
6.番外編
コンドロイチン硫酸補給には「マグロの胃・腸」:マグロの胃や腸は、なかなか出回らないので馴染みのない方が多いでしょう。
しかし、関節痛の軽減や肌の弾力アップ効果が示唆されているコンドロイチン硫酸が豊富です(17)(18)。
胃袋(わた)は、下処理をするとホルモンのようなコリコリとした感覚で楽しめます。小料理屋さんや専門店で見つけた際は試してみてはいかがでしょうか。
マグロの栄養価の違い(種類別)
日本で食べられるおもなマグロは、クロマグロ・キハダマグロ・ビンナガマグロ・ミナミマグロ・メバチマグロの5種類です。それぞれの赤身での栄養価の違いをみてみましょう。
【5種類のマグロ(赤身)の栄養価比較】
栄養 |
クロマグロ |
キハダマグロ |
ビンナガマグロ |
ミナミマグロ |
メバチマグロ |
エネルギー |
153kcal |
102kcal |
111kcal |
88kcal |
115kcal |
タンパク質 |
24.8g |
24.3g |
26.0g |
21.6g |
25.4g |
脂質 |
7.6g |
1.0g |
0.7g |
0.4g |
2.3g |
DHA |
1000㎎ |
150.0㎎ |
140.0㎎ |
64.0㎎ |
370.0㎎ |
EPA |
420㎎ |
32.0㎎ |
43.0㎎ |
10.0㎎ |
80.0㎎ |
ビタミンB12 |
2.5μg |
5.8μg |
2.8μg |
2.2μg |
1.4㎍ |
ビタミンD |
4.0㎍ |
6.0㎍ |
7.0㎍ |
4.0㎍ |
3.6㎍ |
ビタミンE |
1.5㎎ |
0.4㎎ |
0.7㎎ |
1.0㎎ |
0.9㎎ |
鉄分 |
0.8㎎ |
2.0㎎ |
0.9㎎ |
1.8㎎ |
0.9㎎ |
セレン |
79㎍ |
74㎍ |
71㎍ |
73㎍ |
75㎍ |
マグネシウム |
38㎎ |
37㎎ |
41㎎ |
27㎎ |
35㎎ |
参照:(12)
-
「クロマグロ(本マグロ)」:クロマグロは、脂がのっていてオメガ3(DHAやEPA)が圧倒的に豊富です。
-
「キハダマグロ」:キハダマグロは、造血に関わるビタミンB12と鉄分が豊富です。
-
「ビンナガマグロ」:ビンナガマグロは、たんぱく質とビタミンD・マグネシウムが豊富です。
-
「ミナミマグロ」:ミナミマグロは、クロマグロに並んで高級刺身として有名ですが、栄養価は異なり、低脂質・低カロリーです。
マグロの健康レシピ「マグロのカルパッチョ」
酸化しやすいオメガ3を効率的に摂取するには、生食がベストです。抗酸化作用のあるビタミンCを含むレモン汁を組み合わせたおすすめレシピを紹介します。
【材料】(2人分)
- マグロの赤身 100g
- お好みのサラダ 適量
<ソース>
- 柚子胡椒 小さじ1
- オリーブオイル 40ml
- 大葉(千切り) 少々
- レモン汁 適量
- 塩 少々
【作り方】
マグロの選び方と保存方法
漁獲されたマグロは鮮度を保つために船の中で急速冷凍されるため、店頭に並んでいるのは、冷凍や解凍されたマグロが一般的です。
新鮮なマグロの選び方
解凍して販売しているマグロは、ドリップ(赤い液体)が出ていないものが新鮮です(19)。また、切り身よりも短冊のほうがドリップの流出を防げ、空気に触れる面が少ないので鮮度を保てます。
適切なマグロの保存方法
冷凍マグロの鮮度を保つには、-50℃以下の超低温での保存がポイントです。しかし、家庭用の冷凍庫は-20℃~-30℃ほどなので、冷凍保存しても時間の経過により茶褐色に変色してしまいます。
買ってきたら、なるべく早めに食べるのがおすすめです(20)。
解凍マグロは、鮮度が落ちるので再冷凍は避けましょう。キッチンペーパーなどを敷いて、乾燥を防ぐために上にラップを被せてからチルドに近い状態で保存します。
2日ほどで変色するのでなるべく早く食べ、3日を過ぎたら加熱をして食べるのが無難です。
まとめ
日本の食文化を代表する刺身やお寿司。定番のネタと言えば「マグロ」という方が多いのではないでしょうか。
マグロは日本人がよく食べている魚の第2位という人気ぶりで、味のよさはもちろん、高い栄養価で多くの健康効果が期待できます。
生食の調理法は、酸化しやすいオメガ3を効率的に摂るためにも理にかなった調理法です。部位や種類によって違った魅力があるので、期待する効果に合わせてお好みを選んだり、食べ比べをしたりしてみてはいかがでしょうか。