皆さんは、カボチャの種の効能をご存知でしょうか?
緑黄色野菜の代表的な存在であるカボチャは、日本でも秋の風物詩として広く親しまれてきた野菜ですが、近年そのカボチャの種に含まれる豊富な栄養素が注目を集めています。
本記事では、そんなカボチャの種に含まれる栄養素、各栄養素の含有量、お勧めの摂取方法など、カボチャの種の情報をまとめて解説します!
カボチャの種の栄養素
カボチャは古くから世界中で親しまれてきたウリ科の野菜で、その豊富なビタミン類やでんぷんから伝統医学でも活用されてきた緑黄色野菜ですが、カボチャの種は従来廃棄されてしまっていました。
しかし近年、カボチャの種の栄養価の高さが注目を集めています。
カボチャの種には、不飽和脂肪酸やミネラル、ビタミン類などの豊富な栄養素が含まれていることが分かり、近年その効能に関する研究が進んでいます(1)。
文部科学省が策定する「日本食品標準成分表(八訂)2023年増補」のなかで分析された、カボチャの種に含まれる栄養成分と微量元素をまとめたものが次の表1です。各栄養素の効果については、厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」での記載を参照しています。
表1. カボチャの種の栄養成分一覧表
(種実類/かぼちゃ/いり/味付け参照)
栄養素 |
可食部100g |
効果(3) |
マグネシウム |
530 mg |
骨の健康と正常な酵素反応の維持 心臓、筋肉、神経の正常な機能のサポート |
亜鉛 |
7.7 mg |
タンパク質の正常な代謝と構造の維持 正常な生殖機能のサポート |
リン |
1100 mg |
エネルギー、核酸、細胞膜リン脂質の合成 カルシウムとともに骨格の形成 |
葉酸 |
79 μg |
細胞増殖に必要な核タンパク質形成のサポート |
一価不飽和脂肪酸 |
16.62 g |
生活習慣病に深く関わる飽和脂肪酸過剰の抑制 心血管の健康のサポート |
多価不飽和脂肪酸 |
20.98 g |
|
ビタミンA |
67 μg |
網膜細胞の保護 暗所での視力の維持 皮膚と粘膜の健康の維持 |
(β-カロテン) |
29 μg |
|
食物繊維 |
7.3 g |
腸の運動の促進 生活習慣病発症リスクの低下 |
カボチャの種のなかでも特に注目を集めているもののひとつが、カボチャの種から抽出する油「パンプキンシードオイル」です。
パンプキンシードオイルは、血中のLDL(悪玉)コレステロールを下げる作用が知られる不飽和脂肪酸を中心に、ポリフェノールやカロテノイドなど、抗酸化作用や抗菌作用を有する成分も含んでおり、心血管の健康やホルモン調整における効能が研究で示唆されています(4)。
カボチャの種の効能
カボチャの種は、その小さな粒の中に豊富な栄養素を含んでいることが判明してきましたが、具体的にカボチャの種にはどのような効能が示唆されているのでしょうか?
この項目では、カボチャの種を対象とした研究で報告された、カボチャの種の効能をご紹介します!
男性特有の排尿の健康を支援
中高年の男性の多くは、頻尿や尿漏れなどの排尿に関するトラブルを抱えています。
特に、男性特有の分泌腺である前立腺が肥大して尿道を圧迫する良性前立腺肥大症は、夜間頻尿など生活の質を下げる可能性の高い症状を引き起こす、重要な疾患とされています(5)。
実はカボチャの種は、排尿障害に対する効能が最もよく研究されてきており、実際にその効能が多くの研究により示唆されています。
良性前立腺肥大を抱える50歳〜80歳のボランティア計1,431人を対象として行われた研究では、カボチャの種を摂取したグループで、プラセボに比べて大幅に前立腺肥大の症状が緩和されたと報告されています(6)。
この研究でボランティアは、カボチャの種を1年間毎日計10g摂取、またはプラセボを1年間摂取し、国際前立腺症状スコアを元に、症状の変化を評価されました。
その結果、カボチャの種を摂取したグループがプラセボグループに比べ、大幅に前立腺症状が緩和されていたと報告されており、カボチャの種の排尿障害への有効性が示唆されています。
また、前立腺肥大の治療薬であるタムスロシンとカボチャの種の効能を比較した研究では、両グループで前立腺症状スコアが改善されたとともに、タムスロシン投与グループでめまいや頭痛などの副作用がわずかに見られた一方、カボチャの種摂取グループでは副作用が確認されず、カボチャの種の安全性が示唆されています(7)。
排尿障害の緩和による生活の質と緊急対応能力の向上
夜間頻尿を含む排尿障害は、加齢とともに有病率が高まり、生活の質の低下や、高齢者の夜間頻尿による骨折や死亡リスクの増加など、さまざまなリスクの元となる重要な疾患であることが知られています。
このようなリスクに、カボチャの種から抽出したパンプキンシードオイルが有効的であることが、研究により示唆されています。
パンプキンシードオイルを1日10g、12週間摂取したボランティアの過活動膀胱の症状を評価した研究では、パンプキンシードオイル摂取前に比べて過活動膀胱の症状が有意に改善したことが報告されています(8)。
パンプキンシードオイルの頻尿を抑える効能により、頻尿により集中を妨げられる状況の減少など、生活の質が向上することが示唆されています。
亜鉛により男性の元気と活力を維持
カボチャの種は、植物性の亜鉛源のなかでも特に亜鉛を豊富に含むことが知られており、亜鉛不足の食生活を補う食材として摂取が推奨されています(9)。
亜鉛は、エネルギー、炭水化物、タンパク質、核酸の正常な代謝を維持するほか、生殖機能の維持にも役立つことが知られています。
亜鉛の男性不妊症に対する効能を調べた研究では、亜鉛の抗酸化作用が精子の質の維持に貢献すると仮定され、不妊症の男性とそうでない男性の間で、精液中の亜鉛濃度が比較されました(10)。
その結果、不妊症でない男性は、不妊症の男性よりも有意に精液中の亜鉛濃度が高いことが分かったとともに、精液中の亜鉛濃度は、精子の数や、精子の奇形率の低さの両方と相関があったと報告されています。
このような観点からも、亜鉛を豊富に含むカボチャの種の摂取は男性に有益であることが示唆されています。
マグネシウムにより代謝を正常に維持
カボチャの種は、マグネシウムに関しても良質な補給源です。マグネシウムは生理機能の調節に必要なミネラルであり、骨の健康や正常なシグナル伝達、エネルギー代謝、細胞増殖をサポートする幅広い役割を果たしている重要な栄養素です(11)。
またマグネシウムは、カルシウムやカリウムなどの他のミネラルの体内での動きを調節する働きもするため、マグネシウムを豊富に含むカボチャの種が心血管の健康の維持においても有効的であると示唆されています(12)。
食物繊維が消化をサポート
カボチャの種には食物繊維も豊富に含まれており、食物繊維摂取量を増やしたい人にとっても、とても良い選択肢のひとつです。
食物繊維は、腸の活動を促して消化を促進するとともに、生活習慣病の発症リスクの低下とも関連が示唆されているため、重要な栄養素です(3)。
カボチャの種の摂取をお勧めする方
カボチャの種やカボチャの種のエキス、パンプキンシードオイルは、非常に高い栄養価があり、多くの方にお勧めできる食材です。
そのなかでも、特に以下に当てはまる健康管理が必要な中高年男性には、強くお勧めします。
カボチャの種の副作用
カボチャおよびカボチャの種は、どちらも食品です。カボチャにアレルギーがある方を除いて、カボチャの種やその抽出物を摂取する安全性は非常に高いです。
ただし動物実験では、パンプキンシードオイルと高血圧治療薬をラットへ同時に投与した結果、相互作用により降圧作用が強まったことが報告されています(13)。
このような薬を服用している場合は、摂取する前に医療従事者に相談することで、医学的治療への影響を抑えてリスクを回避することができると考えられます。
カボチャの種はいつ食べると良い?
カボチャの種には、脂溶性ビタミンであるビタミンAの素となるβ-カロテンや、不飽和脂肪酸などの油に溶けやすい成分が豊富に含まれています。
そのため、油分のある食後に摂取することで、より良い吸収が期待できると考えられます。
カボチャの種の選び方
上記の通り、カボチャの種を摂取することで豊富な栄養素を補充することができますが、カボチャの種はその豊富な脂肪酸から、可食部100gあたり590kcalとカロリーが高めであることも知られています(2)。
カロリーを抑えて栄養素を摂取したい場合は、カボチャの種の抽出物を用いたサプリメントを摂取すると、有益な成分を摂取しつつ、過剰なカロリー摂取を抑えることができると考えられます。
カボチャの種の抽出物を用いたサプリメントを選ぶ場合は、特許を取得した製造方法で作られた製品を選択すると、安全性や品質の維持において標準化された製造方法であると考えられるため、お勧めします。
また、カボチャの種の抽出物と、異なる栄養素を複合した製品もあるため、期待する効能に近い栄養素と組み合わせると、より効果的と考えられます。