たんぱく質は5大栄養素の一つで、筋肉をつけたい人やダイエット中の方に重要な栄養素です。不足すると筋力の低下や疲労感、貧血などを引き起こし、体のさまざまな機能に影響がでてきます。たんぱく質の多い食べ物を摂ることは、健康な体作りや筋肉増強にも役立ちます。今回はたんぱく質を多く含む食べ物を紹介し、調理のコツについても解説します。健康な生活習慣の参考にしてみてください。
たんぱく質は体にとって不可欠な栄養素
たんぱく質は人体の約20%を占め、筋肉や内臓、皮膚、血液などの構成成分となります。ホルモンや神経伝達物質の材料になるほか、免疫機能や代謝にも関わる不可欠な栄養素です。分解されるとアミノ酸になり、数種類が組み合わさることで、独自の働きを持つようになります。
人の体を構成するアミノ酸は、全部で20種類あり、このうち体内で合成できない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。これらは食品から摂取する必要があり、1種類でも欠けると必要なたんぱく質が合成できなくなります。そのため、普段の食事にはもちろん筋トレ習慣のある方や、運動パフォーマンスを高めたい方は、良質なたんぱく質を含む食べ物を摂取するのがよいとされています。
たんぱく質が多い食べ物の特徴と選ぶコツは?
たんぱく質は肉や魚、卵や乳製品などに多く含まれています。なかでも良質なたんぱく質を含むのが、天然の食材とアミノ酸スコアが高い食材です。アミノ酸スコアとは「良質なたんぱく質を評価する指標」であり、食材に含まれるたんぱく質量と必須アミノ酸の含有率を数字にしたものです。豚肉や鶏肉、鮭、卵、ヨーグルトなどの食材は全てアミノ酸スコアが100となっています。
また、ツナ缶やサバ缶、魚肉ソーセージなどは手軽にたんぱく質が摂れる食品であり、料理への使いやすさもあります。その一方で注意した方がよいのが加工食品です。ハムやベーコン、魚の干物、チーズなどは、たんぱく質が豊富な食品ですが、食塩や脂質を多く含む場合があります。一つの食材に偏らず、複数の食品と組み合わせて食べてみましょう。
たんぱく質が多い食べ物カテゴリー別ランキング
ここからはたんぱく質が多い食べ物を紹介します。それぞれのカテゴリー別にその食材を摂るメリットや調理のコツも紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
肉類Top 8
食材 |
100g当たりのたんぱく質(g) |
豚肉 ヒレ 赤身 |
39.3 |
にわとり むね 皮なし |
38.8 |
にわとり ささみ |
36.1 |
ぶた もも 皮下脂肪なし |
30.2 |
うし 和牛肉 もも 皮下脂肪なし |
27.7 |
にわとり ひき肉 |
27.5 |
にわとり もも 皮なし |
25.1 |
にわとり 手羽 皮付き |
23.0 |
たんぱく質を多く含む食材には、豚肉や鶏肉があります。ビタミンB1やB6、鉄などを多く含み、疲労回復をサポートしてくれるビタミンB1や、アミノ酸の代謝を助けるビタミンB6が摂れます。鶏肉は皮に脂質が多いため、気になる方は取って調理してもOK。脂肪の少ない部位を選べば焼いて食べるのはもちろん、蒸し料理や煮込み料理にもよく合います。
魚介類 Top8
食材 |
100g当たりのたんぱく質(g) |
くろまぐろ 焼き |
29.0 |
べにざけ 焼き |
28.5 |
めかじき 焼き |
27.5 |
あゆ 焼き |
26.6 |
ぶり 焼き |
26.2 |
まあじ 皮付き 焼き |
25.9 |
かつお 春獲り 生 |
25.8 |
まいわし 焼き |
25.3 |
魚介類はまぐろやめかじき、ぶり、あじなどの赤身魚と、べにざけ(しろさけ)、あゆ、たらなどは白身魚に分けられます。赤身魚はたんぱく質と一緒に、「健康的な油」であるDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を多く含みます。
血合いには鉄を含んでいるので、貧血傾向な方にもおすすめ。白身魚に関しては、高タンパクでコラーゲンを多く含みます。食事由来のコラーゲンペプチドは、運動後の筋肉痛や疲労を軽減し、筋肉によい影響を与えることが分かっています。(1)魚の皮と身の間に多く含まれるので、皮まで食べられるソテーやムニエル、ホイル焼きなどがおすすめです。
卵類Top 8
食材 |
100g当たりのたんぱく質(g) |
全卵 目玉焼き |
14.8 |
全卵 素揚げ |
14.3 |
全卵 いり |
13.3 |
ゆで卵 |
12.5 |
ポーチドエッグ |
12.3 |
たまご 生 |
12.2 |
だし巻きたまご |
11.0 |
たまご豆腐 |
6.5 |
サラダにゆで卵をトッピングしたり、おにぎりと一緒に卵焼きを食べたりと、おかずに少しプラスするだけで栄養のバランスが整います。
大豆製品 Top8
食材 |
100g当たりのたんぱく質(g) |
蒸し大豆 |
16.6 |
糸引き納豆 |
16.5 |
がんもどき |
15.3 |
大豆 黄大豆 ゆで |
14.8 |
水煮缶詰 黄大豆 |
12.9 |
生揚げ 生 |
10.7 |
木綿豆腐 |
7.0 |
おから |
6.1 |
「畑のお肉」と言われるほど、栄養価に優れた大豆製品は、植物性たんぱく質でアミノ酸スコアが100の食材です。肉に比べてエネルギーが抑えられており、油を控えめにした調理にすると、ダイエットの強い味方になってくれます。
蒸し大豆や水煮大豆はサラダやカレーに入れてもおいしく、納豆はそのまま食べられるのがうれしいポイントです。がんもどきや生揚げは炒め物や煮物に入れても、満足感のあるおかずになります。
乳製品 Top 8
食材 |
100g当たりのたんぱく質(g) |
ナチュラルチーズ パルメザン |
44.0 |
ナチュラルチーズ エダム |
28.9 |
ナチュラルチーズ エメンタール |
27.3 |
プロセスチーズ |
22.7 |
カマンベール |
19.1 |
モッツァレラチーズ |
18.4 |
ヨーグルト 全脂無糖 |
3.6 |
牛乳 |
3.3 |
乳製品はたんぱく質と糖質をバランスよく含み、運動の前後におすすめしたい食品です。ヨーグルトやチーズには、必須アミノ酸とたんぱく質合成に関わる分岐鎖アミノ酸も含まれ、消化吸収もスムーズなのが魅力です。加えて、ヨーグルトは発酵食品のため、腸内環境を整えるのにも役立つほか、チーズは塩分や脂質に気をつけて摂れば、良質なタンパク源となります。
たんぱく質が多い食べ物の調理とコツ
たんぱく質を含む食材は、糖質や脂質の量に注目すると筋トレやダイエットに役立ちます。摂取量を増やすと脂質の量も増えやすく、摂取エネルギーの増加につながる可能性があります。
過剰な油を抑えるために、脂身の少ない赤身を選ぶ、「蒸す」「茹でる」「煮る」などの調理法を活用するのもよいでしょう。また、ヨーグルトやスムージーに甘みを加えるときは、血糖値を上げにくく、ビタミンやミネラルなどの栄養素を含むはちみつやオリゴ糖の活用もおすすめです。
たんぱく質一日の摂取目安量【状況別で紹介】
一日のたんぱく質摂取目安量は、年齢や性別、活動量によって異なります。
表.1 たんぱく質の食事摂取基準(一部抜粋)
年齢(歳) |
男性 |
女性 |
推奨量(g) |
推奨量(g) |
|
15~17 |
65 |
55 |
18~29 |
65 |
50 |
30~49 |
65 |
50 |
50~64 |
65 |
50 |
65~74 |
60 |
50 |
75以上 |
60 |
50 |
一般的な成人のたんぱく質摂取目安量は、男性で60〜65g、女性で50〜55gとなっています。では、筋トレ中の場合や妊娠中、ダイエット中のときは、どのくらい摂取するのがよいのでしょうか?
筋トレ
スポーツや筋トレを行う習慣があるときは、運動量に伴い必要なたんぱく質の量が増加します。筋トレ時の摂取目安量は、最大で2g/体重kg/1日程度と言われ、運動習慣がない方の約2倍に当たります。
プロテインパウダーなどを使用すると、目安量を摂取することは容易ですが、過剰摂取になりやすいため、適正な量を知っておきましょう。また、トレーニング後は筋肉の疲労回復のために、分岐鎖アミノ酸を中心とした摂取がおすすめです。運動後2~3時間以内に、1日のたんぱく質必要量の10〜20%を摂取するのがよいとされています。(2)
<筋肉にいい食べ物>
筋肉を育てるための食事は?筋肉にいい食べ物ランキングを紹介!良いたんぱく質を撮ろう
妊婦
妊娠期の場合は胎児や胎盤の成長に伴い、必要なたんぱく質が増えます(付加量)。授乳中の場合は、母乳に含まれるたんぱく質も考慮して摂取します。
妊婦(付加量) |
推奨量(g) |
初期 |
+0 |
中期 |
+5 |
後期 |
+25 |
授乳婦(付加量) |
+20 |
ダイエット
ダイエット中の場合は脂質を控えつつ、適正量のたんぱく質摂取がおすすめです。ひき肉やバラ肉など脂質を多く含む食材は、調理油を減らす、蒸すや煮るなどの調理法も向いています。
たんぱく質は摂りすぎても余剰分が脂肪に変換されたり、糖質が少なすぎてもたんぱく質が糖に変換されたりと、それぞれの栄養素が密接に関わっていることがわかります。(3)たんぱく質を上手に摂るためにも、主食・主菜・副菜のある食事を心がけましょう。
腎疾患をお持ちの方は注意
腎疾患をお持ちの方は、たんぱく質の摂取量に注意する必要があります。ガイドラインによるとステージの上昇に伴い、たんぱく質の一日摂取量が0.6〜1.0(g/kg体重/日)に制限される場合もあります。腎機能維持のため、詳しくは医師や管理栄養士に確認しましょう。(5)(6)
たんぱく質を日常で測る方法:手のひらの大きさなど
たんぱく質は目には見えませんが、1食で取りたい量はおよそ片手にのるくらいだと言われています。トンカツなら1枚、魚の切り身なら約1.5切れ分となります。卵1個を食べるときは魚の切り身を1つ分、代わりに納豆1つを組み合わせてもよいでしょう。暑さは手の厚みを参考にしてみてください。(4)
たんぱく質摂取をサポートする栄養素のまとめ
ここからはたんぱく質摂取をサポートしてくれる栄養素をご紹介します。
アルギニン
アミノ酸の一種であるアルギニンは、たんぱく質の合成を助け、筋肉などの体組織の修復を行ってくれます。スポーツで体を動かす際はエネルギーの産生をサポートし、筋力増強にも効果が期待できると言われています。
糖質&脂質
糖質と脂質は、筋たんぱく質の合成と筋グリコーゲンの回復に関わると言われています。糖質の摂取により分泌されるインスリンは、筋肉へのアミノ酸の取り込みを促し、筋肉でのたんぱく質の分解抑制と合成に関わることが知られています。(7)
また、脂質は運動後の筋グリコーゲンの回復を促進し、長時間の運動による疲労を遅らせ、有用なエネルギー源として使われることが分かっています。(8)
ビタミンB1&B2 など
ビタミンB1やビタミンB2などのビタミンは、たんぱく質(アミノ酸)を含む3大栄養素の代謝に関わります。各栄養素の消化吸収をサポートする働きがあり、不足すると効率よくエネルギーに変換することができません。
アミノ酸の再合成を助けるビタミンB6や、筋肉の合成を促すビタミンDもたんぱく質と合わせて取り入れていきましょう。
たんぱく質の効果的な摂り方
たんぱく質を効率的に摂取するには、以下の方法に着目してみましょう。
-
摂取の量を満たす
-
バランスが良い食事
-
適度な運動
たんぱく質を効率よく摂るためには、一日の摂取目安量を知り、その量を満たすことが重要です。たんぱく質やアミノ酸は一度に多く摂っても体内で利用しきれなくなり、余剰分は排出されてしまいます。そのため、3食など数回に分けてとるのがおすすめです。
また、たんぱく質には動物性と植物性の2種類があり、動物性たんぱく質は良質なタンパク源であるほか、脂質が多いという傾向があります。その一方で、植物性たんぱく質は脂質が少なく、アミノ酸スコアが高い食材もあり、その2つをバランスよく取り入れるのが健康な体づくりによいとされています。
筋肉の維持には適度な運動も必要です。運動後のたんぱく質合成がたんぱく質摂取によって速やかに行われ、長期的には筋肉の肥大につながることが報告されています。(9)今回紹介したたんぱく質食材と組み合わせて、無理なく実生活に活かしてみてください。