栄養素 - たんぱく質

アルギニンの女性への効果は?健康維持と美容にサポート

監修者 鎌田 百合 医師 公開日:2024-12-24 最終更新日:2024-12-25

栄養素 - たんぱく質

アルギニンの女性への効果は?健康維持と美容にサポート

監修者鎌田 百合 医師 公開日:2024-12-24 最終更新日:2024-12-25

アルギニンといえば運動や筋トレ、男性機能に欠かせないアミノ酸です。筋肉増大、疲労回復などの栄養ドリンクやサプリメント、精力剤などとして数多くの製品に使用されています。

しかし、実は健康や美容にも大きなメリットがあり、女性にも大きなメリットがある栄養素として近年注目を集めています。

それでは、アルギニンは女性にはどのようなメリットがあるのでしょうか?この記事で詳しく解説します。

アルギニンとは?

アルギニンは、体内で生成されるアミノ酸の一種で、タンパク質の構成要素です。

健康な成人では十分な量のアルギニンが体内で生成されるため、必須アミノ酸とは定義されません。しかし、成長期やストレス時には必要量が増えて食事からの補給が必要になる場合があるため、準必須アミノ酸と呼ばれることもあります。

アルギニンは、体内で一酸化窒素(NO)を生成します。一酸化窒素は、血管にある血管平滑筋細胞を弛緩(しかん)させます。この効果によって血管が拡張し、血流が増加します(1)。また、免疫機能の強化(2)や成長ホルモンの分泌促進、アンモニアの増加を抑えて疲労回復をサポートする効果(3)があります。脂肪燃焼、筋肉増加に働きかけ、若々しい体を作ることができます。

しかし、年齢を重ねるとともに体内での合成量は減ってしまいます。そのため、意識してアルギニンが多く含まれている食品を摂取することが必要です。

アルギニンは鶏肉、豚肉、卵、大豆、ナッツ類などに多く含まれています。普段の食事で積極的に摂取しましょう。

アルギニンとは
アルギニンは条件付き必須アミノ酸の一種で、特に疲労が激しい場合などは不足することもあります。アルギニンを摂取することで、成長ホルモンの分泌を促進など、体内でさまざまなサポートをします。
参考:アルギニンとは?アルギニンの10つ効果と副作用【5分でわかる】
NO回路とは?
NO回路は、一酸化窒素(NO)の生成とその作用を指します。NOは血管を拡張し、血流を改善することで、運動能力や男性機能をサポートします。

 

アルギニンの女性への効果

アルギニンは、さまざまな健康効果があります。どのような効果があるのか詳しく解説します。

 

ダイエットにサポート

アルギニンは、筋肉を増強する成長ホルモンの分泌を促進させる効果があります。成長ホルモンは、代謝の維持や骨や筋力の維持に関わる重要なホルモンです。

成長ホルモンの分泌により脂肪の代謝が促進されます。また、筋肉が増えることで基礎代謝が上昇し、脂肪が燃焼しやすくなります。筋肉を減らすことなく効率良く体重を落とすことができるため、きれいなボディラインを作ることができます。

 

美容

アルギニンは美容と肌の健康に有益で、エイジングケアに大きな効果があります。

血流が促進すると、肌に酸素や栄養が十分にいきわたるようになり、肌のツヤが良くなります。さらに、アルギニンは肌のハリに必要なコラーゲンの合成を促す作用もあります。

アルギニン摂取で増える成長ホルモンはアンチエイジングホルモンともよばれ、新陳代謝を促し、肌のターンオーバーを正常にして修復機能を高めます。

さらに、アルギニンは肌の表面で天然保湿因子を作るため、保湿効果もあります。アルギニンだけで十分な保湿効果があるわけではありませんが、このようなさまざまな効果とあわせて美容やエイジングケアに効果が期待できます。

 

心血管系への効果

アルギニンは一酸化窒素を生成し、血管を拡張させる効果があります。血管が拡張することで高血圧の予防や治療に役立つとされています(4)。

また、血流が改善するため心臓への負担が軽減できます。これにより心臓病のリスクが低下し、心血管系疾患の予防効果がみられます。

アルギニンは動脈硬化を遅らせることも報告されています。このようなさまざまな病気の予防効果があり、健康維持に重要です。

 

免疫機能への効果

アルギニンは、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞を増殖させ、活性化を促します。特に、T細胞の活性化を促進することが示されています(5)。

T細胞とはリンパ球の一種で、免疫系の司令塔ともよばれる、免疫機能にとって重要な細胞です。アルギニン摂取によって細菌やウイルスから体を守り、感染症にかかりにくくなることが期待されます。

 

創傷治癒にサポート

アルギニンはコラーゲンの合成を促し、傷を修復させる作用があります。これによって、傷の回復を促します。けがなどで傷ついた部分を修復させるだけでなく、筋トレや運動で傷ついた筋肉の修復も促す効果があります。

創傷治癒の効果があるため、褥瘡(床ずれ)の治療にも有用とされています。

 

妊娠にサポート

アルギニンは子宮の血管を拡張させ血流を増加し、子宮内膜を厚くする効果があります(6)。また、ルギニンによって血流が改善すると、子宮や卵巣への血流も改善させる可能性が報告されています。胎盤の血流を改善させることで、妊娠をサポートすることが示唆されています(8)

そして妊婦の健康に有害である妊娠高血圧症候群も予防できることがわかっています(7)。したがって、妊娠中のアルギニン摂取は安全な妊娠、出産にメリットがある可能性があります。

ただし、妊娠中のアルギニンの過剰な摂取については、安全性などのデータは十分にないので注意が必要です。また、不妊治療に十分なエビデンスがあるわけではありません。また、実際には不妊にはさまざまな因子が関わってくるため、ただアルギニンを摂ればいいというわけではないことに注意が必要です。

 

おすすめのアルギニン1日摂取量

アルギニンは体内で合成できるアミノ酸です。そのため、アルギニン摂取量は、厚生労働省で正確に摂取量目安が定められているわけではありません。1日2〜4g程度の摂取が必要とされていますが、運動後などはさらに必要とされています。アルギニン2gとは、卵4つ、鶏むね肉90g、豚ロース110g、大豆(全粒)70g、ピーナッツ60g程度に相当します(9)。

トレーニングや運動を行う場合は、その前に摂取すると効果的に疲労回復や筋力アップにつながります。

また、サプリメントや栄養ドリンクは就寝前に摂取するのが効果的です。成長ホルモンが最も分泌されるのが就寝中のため、このタイミングにあわせてアルギニンを摂取すると、成長ホルモンの分泌を高めることが期待されます。

 

アルギニンの安全性と注意点

アルギニンは普段の食事から摂取するだけであれば過剰摂取のリスクは低いとされています。しかし、サプリメントや栄養ドリンクで補助的に摂取する場合は、過剰摂取に気をつけましょう。

アルギニンの過剰摂取で消化器系への負担がかかり、胃痛や下痢などの症状が起こることがあります。

また、アルギニンの血管拡張作用によって、血圧を過度に下げる可能性があります(10)。そのため、血管を拡張させる薬や血圧を下げる薬を服用している場合は、血圧が下がりすぎたり、意識が遠のいたりする可能性があります。

たとえば、急性心筋梗塞などで服用するニトログリセリンとの併用は、血圧を過度に低下させてしまうため併用は避けるべきとされています。高血圧の薬や利尿剤も同様の理由で併用は注意です。

そのため、病院に通院してなんらかの薬を服用中の場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

 

まとめ

アルギニンは女性の美容、アンチエイジング、ダイエットなどに大きなメリットがあることを解説しました。それだけでなく、心血管系リスクや免疫機能の向上など健康にも効果があります。サプリメントや栄養ドリンクの過剰摂取は過剰摂取につながる恐れがあり、用法用量を守りましょう。

アルギニンを上手に摂取して、美容、健康維持に役立ててください。

 

マカの女性への効果
マカは美肌効果や更年期障害の症状を緩和させる効果など、女性にとってもさまざまな効果が期待できると考えられています。
参考:女性がマカを飲むとどんな効果がある?更年期や美容、女性がマカを飲むメリットを徹底的に解説
参考資料:
  1. Maxwell AJ, Anderson B, Zapien MP, Cooke JP. Endothelial dysfunction in hypercholesterolemia is reversed by a nutritional product designed to enhance nitric oxide activity. Cardiovasc Drugs Ther 2000;14(3):309–16.
  2. Daly JM, Lieberman MD, Goldfine J, et al. Enteral nutrition with supplemental arginine, RNA, and omega-3 fatty acids in patients after operation: immunologic, metabolic, and clinical outcome. Surgery 1992;112(1):56–67.
  3. Schaefer A, Piquard F, Geny B, et al. L-arginine reduces exercise-induced increase in plasma lactate and ammonia. Int J Sports Med 2002;23(6):403–7.
  4. Hishikawa K, Nakaki T, Suzuki H, Kato R, Saruta T. Role of L-arginine-nitric oxide pathway in hypertension. J Hypertens 1993;11(6):639–45.
  5. Geiger R, Rieckmann JC, Wolf T, et al. L-arginine modulates T cell metabolism and enhances survival and anti-tumor activity. Cell 2016;167(3):829–42.e13.
  6. Takasaki A, Tamura H, Miwa I, Taketani T, Shimamura K, Sugino N. Endometrial growth and uterine blood flow: a pilot study for improving endometrial thickness in the patients with a thin endometrium. Fertil Steril 2010;93(6):1851–8.
  7. Vadillo-Ortega F, Perichart-Perera O, Espino S, et al. Effect of supplementation during pregnancy with L-arginine and antioxidant vitamins in medical food on pre-eclampsia in high risk population: randomised controlled trial. BMJ 2011;342(may19 1):d2901.
  8. Battaglia C, Salvatori M, Maxia N, Petraglia F, Facchinetti F, Volpe A. Adjuvant L-arginine treatment for in-vitro fertilization in poor responder patients. Hum Reprod 1999;14(7):1690–7.
  9. 食品成分データベース|文部科学省
  10. Casonatto J, Cavalari JV. A single dosage of l-arginine oral supplementation induced post-aerobic exercise hypotension in hypertensive patients. J Diet Suppl 2023;20(5):735–48.