皆さんは、「ビルベリー」という果実をご存知でしょうか?名前の通りブルーベリーとよく似た果物であるビルベリーは、その豊富な栄養から近年注目を集めており、目を保護する効能を期待した健康食品やサプリメントに用いられています。
この記事ではそんなビルベリーについて、研究で報告されているビルベリーの効能、目を保護する作用があることで知られるルテインとの関係など、詳しく解説します!
ビルベリーの基本情報を解説!
ビルベリーの概要
ビルベリー(英名:Bilberry)は、ブルーベリーよりも小さな青紫色の果実(約7㎜)を作る植物で、ツツジ科スノキ属の中でも主にVaccinium myrtillus L.という学名を持つ種を指して用いられる言葉です(1)。ビルベリーはブルーベリーの近縁種で、野生な植物です。
ビルベリーは別名ホワートルベリー、ウィンベリー、ブレーベリー、ヨーロッパブルーベリーとも呼ばれ、最初は北欧に生育している低木で発見され、後に北米やアジアの一部地域でも見られるようになりました(2)。
ビルベリーは食用可能で、その実は主にジャムやジュース、お酒などへ加工されて長年親しまれてきました。
ビルベリーとブルーベリーとの違いは?
ビルベリーはブルーベリーの近縁種です。ビルベリーとブルーベリーは非常に似ていますが、一般的に「ブルーベリー」は北米原産であるのに対し、「ビルベリー」は北欧原産の酸性土壌で育つ種類を指すため、違う植物であると考えられています(3)。
ブルーベリーはビルベリーよりも大きく、色は比較的明るい青紫色で、甘みが強いのが特徴です。
ビルベリーとブルーベリーの違いは主に以下の点です:
外見
ビルベリーはブルーベリーよりも小さく、果実の色も濃い紫色です。ブルーベリーは比較的大きく、色はやや明るめの青紫色です。
用途
ビルベリーは、主に目の健康をサポートするためのサプリメントや食品に使用されることが多いです。ブルーベリーは、フレッシュな果実やジャム、ジュース、スムージーなど、幅広い料理に使われます。
味
ビルベリーは、ブルーベリーに比べて酸味が強く、少し渋みを感じることが多いです。ブルーベリーは甘味が強く、フレッシュな食感が特徴です。
アントシアニン含有量の違い
ブルーベリーとビルベリー両方もアントシアニンを含めております。
しかし、乾燥のビルベリーのアントシアニン含有量はブルーベリーよりも3倍くらい多く含んでおり、特に目の疲れや視力の低下を予防する効果が期待されています。
ビルベリーの栄養素
ビルベリーにはさまざまな栄養素が含まれており、特にイチゴやブルーベリー、ラズベリーを含むベリー類の中でも最も豊富にアントシアニンが含まれることが良く知られているため、近年ビルベリーは健康食品やサプリメントとしても広く流通しています。
ビルベリーの栄養素リスト
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アントシアニン<乾燥100gあたり:1,514.8mg>(16)
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ビタミンC(免疫力強化、コラーゲン生成)
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ビタミンE
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食物繊維
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ポリフェノール
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ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)
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フラボノイド
ヨーロッパでは、医薬品や薬用植物を管理する欧州医薬品庁により、ビルベリーの果実やそのエキスが薬用植物として認められています(4)。
ビルベリーに豊富に含まれるアントシアニンとは?
ビルベリーには、5種類のアントシアニジンがそれぞれ3種類の糖と結びついて、合計15種類のアントシアニンが含まれているということです(16)。
アントシアニンは、自然界に広く存在する水溶性の天然色素で、非常に強力な抗酸化作用を持つ生理活性物質であることが知られています(7)。
アントシアニンはフラボノイドというグループに属する色素で、カロテノイドであるルテインが青色光を吸収するのと同様、アントシアニンは紫外線を吸収することでビルベリーの身を守っていると考えられています。
アントシアニンは古くから天然着色料として食品に利用されてきた歴史があり、pHや温度、酸素濃度などさまざまな条件によってその色が変化するため、長らく研究されてきました(8)。
また、アントシアニンは着色料としての利用と同時に、その強力な抗酸化作用についても多くの研究がされてきました。
このアントシアニンを豊富に含むビルベリーが持つと考えられている詳しい効能について、次の章で見ていきましょう。
ビルベリーの効果に関する研究報告をまとめて解説!
ビルベリーの効果が注目を集め始めたきっかけは、第二次世界大戦のある逸話にまで遡るとされています。
当時ビルベリージャムを摂取していたあるイギリス空軍パイロットが「夜間飛行の際に周りが見えやすかった」と話した、という逸話が広まり、その効能を確かめるためにビルベリーは研究対象として注目を集めたとされています(3)。
この逸話の真偽の程は不明ですが、これによりビルベリーが持つ豊富な効能が、後の研究で知られることとなります。
それでは、研究により示唆されているビルベリーの代表的な効能と、その研究報告をご紹介します。
目の機能をサポートする作用
ビルベリーの効能の中でも目の機能への影響については、最も研究で注目を集めてきたもののひとつです。
多くの細胞レベルの実験や動物実験により、その効能を示唆する報告がされてきましたが、近年、ディスプレイ端末の長時間の使用による視機能低下に対するビルベリーエキスの効能を調べるヒトを対象とした研究が実施され、よりその効能が強く示唆されました(9)。
この研究では、109人の健康な成人がビルベリーエキス群かプラセボ群に割り当てられ、1日1回240mgを12週間摂取しながらディスプレイ端末のタスクをこなし、目のピント調節機能に関わる毛様体筋という目の筋肉の緊張度を評価されました。
その結果、8週間経過時点でビルベリーエキス摂取群の毛様体筋の緊張度がプラセボ群に比べ大幅に低くなり、12週間経過後も統計的に有意に緊張が改善されていました。
また、同様にディスプレイ端末の長時間の使用に対する影響を、眼疲労の主観的・客観的評価で調べる別のヒトを対象とした研究でも、その効能を示唆する報告がされています(10)。
この研究では、88人がビルベリーエキス摂取群とプラセボ群に分けられ、それぞれ1日480mgを8週間摂取し、ディスプレイ端末使用後に視力検査の一種である中心フリッカー値測定検査(CFF)などの客観的指標と、アンケートによる主観的指標の両方で評価されました。
その結果、ディスプレイ端末使用の負荷によるCFFの減少も、眼精疲労感や目の重さなどの主観的指標も、共にビルベリーエキス摂取群がプラセボ群に比べ有意に抑制されたと報告されています。
長らく注目を集めていたビルベリーの目への効能は、近年のヒトを対象とした試験によってより強く示唆されています。また、これらのヒトを対象とした研究では有害事象は報告されておらず、ビルベリーの安全性も示唆されています。
心血管の保護作用
ビルベリーは目の機能をサポートする効能から注目を集めましたが、その後の研究により、心血管の健康をサポートする効能も示唆されており、欧州医薬品庁のレビューでも裏付けられています(11)。
2019年に報告された近年のヒトを対象とした研究では、心筋梗塞患者にビルベリー粉末を食事と併せて1日40g(ビルベリー480g相当)摂取してもらった結果、摂取群の6分間歩行テストの結果が有意に向上しました(12)。
また、この研究のデータを別の角度から解析した研究により、心血管疾患の要因である可能性が示唆される細胞外小胞の一種circlating microvesicle(MVs)の値が、ビルベリー摂取群で有意に低いことが明らかとされており、ビルベリー摂取が心血管疾患のリスク改善に寄与することが期待されています(13)。
ビルベリーとルテインの関係は?
ビルベリーは目を保護する効能が示唆されていることから、目を守る効能で知られる「ルテイン」とよく比較されます。
ルテインは植物が青色光から身を守るために作る、カロテノイドというグループに属する黄色の色素であり、私たちの目の水晶体にも含まれる物質です(5)。
ビルベリーにはアントシアニンが豊富に含まれることがよく知られていますが、実はルテインも含まれることが知られています(6)。
ルテインとアントシアニンは共に抗酸化力が高く、目を守る以外にも幅広い効能を持つことが示唆されています。
ビルベリーサプリメントのおすすめの選び方
ビルベリーはアントシアニンを豊富に含むことが知られていますが、実はビルベリーサプリメントは、製品によってそのアントシアニン含有量にバラツキがあることが知られています(1)。
そのため、アントシアニンの含有量に着目して製品を選ぶことは有効的と考えられます。
また、アントシアニンの中にも数百種類あることが知られていますが、シアニジン-3-グルコシド(Cyanidin 3-glucoside:C3G)というアントシアニンの一種は、特に高い抗酸化力を持ち、抗炎症作用やDNA損傷の保護作用、ガン細胞の増殖抑制作用など多くの効能を持つことが研究により示唆されています(14)(15)。
そのため、アントシアニンの含量に注目し、さらにC3Gを含むビルベリーサプリメントを選ぶと良いでしょう。