ビルベリーはブルーベリーよりも小さな青紫色の果実(約7㎜)で、アントシアニン色素の含有量が多いので、近年注目を集めており、目を保護する効能を期待した健康食品やサプリメントに用いられています。
この記事ではそんなビルベリーについて、研究で報告されているビルベリーの目を保護する効果と、ブルーベリーの違いを説明します。
ビルベリーの基本情報

ビルベリーの概要
ビルベリー(英名:Bilberry、学名:Vaccinium Myrtillus L.)は、北ヨーロッパ、アジア、北アメリカ、そしてカナダ原産の植物です。最初は北欧に生育している低木で発見され、後に北米やアジアの一部地域でも見られるようになりました(2)。
ブルーベリーよりも小さな青紫色の果実(約7㎜)を作る植物で、ツツジ科スノキ属の中でも主にVaccinium myrtillus L.という学名を持つ種を指して用いられる言葉です(1)。ビルベリーはブルーベリーの近縁種で、野生な植物です。
別名
ホワートルベリー(whortleberry)、ヨーロッパブルーベリー(European blueberry)、ウィンベリー、ブレーベリー
使用
ビルベリーは食用可能で、その実は主にジャムやジュース、お酒などへ加工されて長年親しまれてきました。歴史的に、ビルベリーは薬用植物として使用されており、下痢、口の炎症、夜間の視力を維持するために使用されてきました。(17)
ビルベリーの栄養素
ビルベリーにはさまざまな栄養素が含まれており、特にベリー類の中でも最も豊富にアントシアニンが含まれることが良く知られているため、近年ビルベリーは健康食品やサプリメントとしても広く流通しています。
ビルベリーの栄養素リスト
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アントシアニン(抗酸化作用、目の健康維持)
乾燥のビルベリー100gあたり:1,514.8mg(16) -
ビタミンC(免疫力強化、コラーゲン生成)
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ビタミンE
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食物繊維
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ポリフェノール
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ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)
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フラボノイド
ヨーロッパでは、医薬品や薬用植物を管理する欧州医薬品庁により、ビルベリーの果実やそのエキスが薬用植物として認められています(4)。
ビルベリーに豊富に含まれるアントシアニンとは?
ビルベリーには、5種類のアントシアニジンがそれぞれ3種類の糖と結びついて、合計15種類のアントシアニンが含まれているということです(16)。
アントシアニンは、自然界に広く存在する水溶性の天然色素で、古くから天然着色料として食品に利用されてきた歴史があり、pHや温度、酸素濃度などさまざまな条件によってその色が変化するため、長らく研究されてきました(8)。
また、アントシアニンは着色料としての利用と同時に、非常に強力な抗酸化作用を持つ生理活性物質であることが知られて(7)、多くの研究がされてきました。
アントシアニンはフラボノイドというグループに属する色素で、カロテノイドであるルテインが青色光を吸収するのと同様、アントシアニンは紫外線を吸収することでビルベリーの身を守っていると考えられています。
ビルベリーの効果
ビルベリーには豊富な栄養素が含まれており、特に優れた量のアントシアニンを含んでいるため、VDT作業やデジタルデバイスをよく使用し、ブルーライトにさらされていることによる目の疲れや潤い不足など、目の機能を改善するが報告されています。
また、アントシアニンの強力な抗酸化作用により、心血管の保護作用も期待されています。
ビルベリーの目への効果
ビルベリーに期待されている効果は、「目の潤い」や「ピント調整」をサポートし、さらに「目の疲れの軽減」です。ビルベリーの目の機能への効果が注目を集め始めたきっかけは、第二次世界大戦のある逸話にまで遡るとされています。
当時ビルベリージャムを摂取していたあるイギリス空軍パイロットが「夜間飛行の際に周りが見えやすかった」と話した、という逸話が広まり、その効能を確かめるためにビルベリーは研究対象として注目を集めたとされています(3)。
この逸話の真偽は定かではありませんが、その後の研究によって、ビルベリーが持つ豊富な効能が次第に明らかになり、注目を集めることとなりました。
ビルベリーが特に注目されている理由のひとつは、その豊富なアントシアニンにあります。アントシアニンが目の健康に与える影響が多くの研究で確認されており、特に目の機能改善やピント調整、さらには眼精疲労の軽減に対する効果があることが示されています。
それでは、これらの研究結果を基に、ビルベリーの代表的な効能とその研究報告についてご紹介します。
1. 目の機能をサポートする作用

ビルベリーの効能の中でも目の機能への影響については、最も研究で注目を集めてきたもののひとつです。
多くの細胞レベルの実験や動物実験により、その効能を示唆する報告がされてきましたが、近年、ディスプレイ端末の長時間の使用による視機能低下に対するビルベリーエキスの効能を調べるヒトを対象とした研究が実施され、よりその効能が強く示唆されました(9)。
2. ピント調整をスムーズにする

この研究では、109人の健康な成人がビルベリーエキス群かプラセボ群に割り当てられ、1日1回240mgを12週間摂取しながらディスプレイ端末のタスクをこなし、目のピント調節機能に関わる毛様体筋という目の筋肉の緊張度を評価されました。
その結果、8週間経過時点でビルベリーエキス摂取群の毛様体筋の緊張度がプラセボ群に比べ大幅に低くなり、12週間経過後も統計的に有意に緊張が改善されていました。
3. 眼精疲労の軽減

また、同様にディスプレイ端末の長時間の使用に対する影響を、眼疲労の主観的・客観的評価で調べる別のヒトを対象とした研究でも、その効能を示唆する報告がされています(10)。
この研究では、88人がビルベリーエキス摂取群とプラセボ群に分けられ、それぞれ1日480mgを8週間摂取し、ディスプレイ端末使用後に視力検査の一種である中心フリッカー値測定検査(CFF)などの客観的指標と、アンケートによる主観的指標の両方で評価されました。
その結果、ディスプレイ端末使用の負荷によるCFFの減少も、眼精疲労感や目の重さなどの主観的指標も、共にビルベリーエキス摂取群がプラセボ群に比べ有意に抑制されたと報告されています。
長らく注目を集めていたビルベリーの目への効能は、近年のヒトを対象とした試験によってより強く示唆されています。また、これらのヒトを対象とした研究では有害事象は報告されておらず、ビルベリーの安全性も示唆されています。
ビルベリーの心血管への効果

ビルベリーは目の機能をサポートする効能から注目を集めましたが、その後の研究により、心血管の健康をサポートする効能も示唆されており、欧州医薬品庁のレビューでも裏付けられています(11)。
2019年に報告された近年のヒトを対象とした研究では、心筋梗塞患者にビルベリー粉末を食事と併せて1日40g(ビルベリー480g相当)摂取してもらった結果、摂取群の6分間歩行テストの結果が有意に向上しました(12)。
また、この研究のデータを別の角度から解析した研究により、心血管疾患の要因である可能性が示唆される細胞外小胞の一種circlating microvesicle(MVs)の値が、ビルベリー摂取群で有意に低いことが明らかとされており、ビルベリー摂取が心血管疾患のリスク改善に寄与することが期待されています(13)。
ビルベリーとブルーベリーとの違い

ビルベリーはブルーベリーの近縁種です。ビルベリーとブルーベリーは非常に似ていますが、一般的に「ブルーベリー」は北米原産であるのに対し、「ビルベリー」は北欧原産の酸性土壌で育つ種類を指すため、違う植物であると考えられています(3)。
ブルーベリーはビルベリーよりも大きく、色は比較的明るい青紫色で、甘みが強いのが特徴です。
ビルベリーとブルーベリーの違いは主に以下の点です:
外見
ビルベリーはブルーベリーよりも小さく、果実の色も濃い紫色です。ブルーベリーは比較的大きく、色はやや明るめの青紫色です。
用途
ビルベリーは、主に目の健康をサポートするためのサプリメントや食品に使用されることが多いです。ブルーベリーは、フレッシュな果実やジャム、ジュース、スムージーなど、幅広い料理に使われます。
味
ビルベリーは、ブルーベリーに比べて酸味が強く、少し渋みを感じることが多いです。ブルーベリーは甘味が強く、フレッシュな食感が特徴です。
アントシアニン含有量の違い
ブルーベリーとビルベリー両方もアントシアニンを含めております。
しかし、乾燥のビルベリーのアントシアニン含有量はブルーベリーよりも3倍くらい多く含んでおり、特に目の疲れや視力の低下を予防する効果が期待されています。
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乾燥100gビルベリーのアントシアニン含有量:1,515mg
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乾燥100gブルーベリーのアントシアニン含有量:468mg
ビルベリーとブルーベリーとの違いまとめ
項目 | ビルベリー | ブルーベリー |
大きさ | 小さい | 比較的大きい |
色 | 濃い紫色 | 明るい青紫色 |
用途 | 主に目の健康サポート用サプリメントや食品 | フレッシュ果実、ジャム、ジュース、スムージーなど様々な料理に使用 |
味 | 酸味が強く、少し渋みがある | 甘みが強く、フレッシュな食感 |
原産地 | 北欧 | 北米 |
アントシアニン含有量 | 乾燥100gあたり1,515mg(ブルーベリーの約3倍) | 乾燥100gあたり468mg |
ビルベリーサプリメントのおすすめの選び方
ビルベリーはアントシアニンを豊富に含むことが知られていますが、実はビルベリーサプリメントは、製品によってそのアントシアニン含有量にバラツキがあることが知られています(1)。
そのため、アントシアニンの含有量に着目して製品を選ぶことは有効的と考えられます。
また、アントシアニンの中にも数百種類あることが知られていますが、シアニジン-3-グルコシド(Cyanidin 3-glucoside:C3G)というアントシアニンの一種は、特に高い抗酸化力を持ち、抗炎症作用やDNA損傷の保護作用、ガン細胞の増殖抑制作用など多くの効能を持つことが研究により示唆されています(14)(15)。
そのため、アントシアニンの含量に注目し、さらにC3Gを含むビルベリーサプリメントを選ぶと良いでしょう。