アントシアニンは、自然界に存在するフラボノイド系の天然色素です。
眼精疲労の改善など、目の健康に良いことが有名で、サプリメントとしても販売されています。
実は強い抗酸化作用を持ち、目だけでなく肌や脳の健康、生活習慣病の予防など、体にさまざまなメリットをもたらすため、近年注目されている成分です。
この記事では、アントシアニンとはどのような成分なのか、どのような健康への効果があるかについて詳しく解説します。
より効果的な摂取方法についても説明しますので、この記事を参考に積極的に摂取してみてください。
アントシアニンとは
アントシアニンとは、ポリフェノールの一種です。
自然界に広く存在する青紫系の水溶性の天然色素で、強力な抗酸化作用をもつ生理活性物質として知られています。
この色は、昔から食品の着色料としても使用されていました。
ぶどう、ブルーベリー、なす、赤ワイン、紫イモ、黒豆などに多く含まれています。
アントシアニンとアントシアニジンの関係
アントシアニンの色は、アントシアニジンによって決まります(1)。
アントシアニジンは、植物内では前駆物質である「プロアントシアニジン」として存在し、酸性環境下でアントシアニジンに変換されます。
アントシアニジンは不安定な構造物ですが、糖や有機酸が結合すると安定化し、水に溶けやすくなります。
アントシアニンの主な7つの健康効果
アントシアニンにはさまざまな働きがあります。
ここでは、アントシアニンを摂取することで期待できる効果を7つ解説します。
1. 目の健康維持効果
現代人は目を酷使することが多く、パソコンやスマートフォンの使用で眼精疲労が溜まりがちです。
アントシアニンは、目の網膜に存在しているロドプシンというたんぱく質の再合成を促進する効果があります(2)。
ロドプシンは光を吸収し、脳に視覚刺激を与える役割を持ちます。ロドプシンの再合成が遅れると、夜盲や眼精疲労の原因になります。
アントシアニンの摂取により、眼精疲労が起こった目の機能を改善する効果が期待されています。まさに、眼精疲労が溜まりやすい現代人にはうってつけの効果です。
また、アントシアニンの抗酸化作用は、目の水晶体が紫外線から受けるダメージを防ぐ効果があり、白内障の予防効果も期待されています。
2. 抗酸化作用
アントシアニンなどのポリフェノールには強い抗酸化作用があります(3)。これによって、活性酸素の発生を抑える効果が期待できます。
活性酸素は体内のたんぱく質や核酸などを傷害し、脳血管障害や肌の老化など、体にさまざまな悪影響を及ぼします。
アントシアニンの抗酸化作用によってこれを抑制し、自己を守ることができます。
3. 美肌効果
紫外線を浴びることで活性酸素が発生すると、シミやシワの原因になります。
アントシアニンは抗酸化作用により活性酸素の発生を抑え、シミ、シワ、たるみなどの肌トラブルを予防する働きが期待できます。
肌へのダメージを抑えることで、肌を美しく若々しく保つことができます。
4. 脳機能の改善
アントシアニンは脳血流改善効果があることが報告されています。
女性7名を対象とした臨床試験では、アントシアニン50mgを含むカシスポリフェノール8日間の連続摂取によって、緊張、不安などの自覚症状の低減、頭の覚醒度の上昇が認められました。この結果から、注意、集中力が高まる可能性が示唆されています(4)。
5. 血流改善効果
アントシアニンには、血管拡張作用や血管内皮機能の機能改善効果による、血流改善効果があります(5,6)。
血行が良くなることで血圧が安定し、さらには血栓症の予防の効果も期待できます。末梢の血流を改善することで、肩こりや冷え症の改善に役立つ可能性も示唆されています。
6. 疲労回復
活性酸素は、自律神経の細胞や筋肉を攻撃し、疲労の原因ともなります。
抗酸化作用のあるアントシアニンを摂取することで活性酸素を除去し、疲労の発生を抑制し、疲労回復を早める効果が期待されます。
7. 生活習慣病の予防
アントシアニンは生活習慣病の予防効果もあります。脂肪の利用を促進し体重減少をサポートするとされています(7)。
また、血糖値の上昇を抑え、インスリン感受性を改善することで2型糖尿病のリスクを低下させる働きもあります(8)。
さらに、アントシアニンの摂取で活性酸素の発生を抑えることで、細胞のダメージを防ぎ動脈硬化を予防し、脳血管障害や心疾患を予防する効果も期待されています。
アントシアニンを効率的に摂取する方法
それでは、どのようにすればアントシアニンを効率良く摂取することができるのでしょうか。
アントシアニンが多く含まれる食材

まずは、アントシアニンの含有量が多い食品Top5を紹介します(9)。
順位 |
食品 |
含有量(mg/100g) |
1 |
ブラックチョークベリー(アロニア) |
1,480 |
2 |
エルダーべリー |
1,375 |
3 |
ビルベリー |
1,000 |
4 |
ワイルドブルーベリー |
486.5 |
5 |
カシス |
476 |
ご覧のようにベリー系が上位を占めます。日本人にはあまり馴染みのない果実類が多いですね。
ビルベリーは、アントシアニンのサプリメントの原材料としても使用され、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ビルベリーはアントシアニンの含有量が多く、健康食品として近年注目されている果実です。
カシスはブラックカラントや黒スグリともよばれ、ジャムやリキュールに使用されます。
野菜の中で含有量が多いものとしては、紫キャベツ(322mg/100g)、ナス(86mg/100g)などがあります。
調理法、摂取方法
アントシアニンは長時間の加熱に弱く、水に溶けやすい特徴があります。
そのため、調理の場合は短時間で、茹でるよりも炒める、揚げるなどの調理法がおすすめです。
果物の場合はなるべく生のまま食べましょう。
アントシアニンは水溶性のため、体内に長期間留めておくことができません。
そのため、毎日継続的に摂取することが必要です。
毎日食べられない場合は、サプリメントから摂取すると手軽に効率良く摂取できます。
アントシアニンとルテインの違いは?
項目 | アントシアニン | ルテイン |
種類 | フラボノイド類(植物由来の色素) | カロテノイド類(黄色の天然色素) |
主な存在部位 | 目の網膜、特に黄斑部 | 目の網膜、特に黄斑部、また皮膚にも存在 |
働き | 強い抗酸化作用があり、目を保護 | 強い抗酸化作用があり、目や皮膚を保護 |
溶解性 | 水溶性 | 脂溶性 |
効果 | 目の疲れを軽減、眼精疲労を改善、ピント調整のサポート | 目の病気予防(加齢黄斑変性症、白内障など)、紫外線から目を保護 |
即効性 | 速効性があり、短期的な効果が期待できるが、持続性が短い | 持続的な効果を期待するため、長期的な摂取が必要 |
摂取方法 | 水溶性なので早く作用するが、持続性が短い | 油と一緒に摂取するや食後に摂取すると吸収効率が上がる 持続的な効果を期待する |
アントシアニンは目を保護する効果があることから、同様に目を守る効果があるルテインとよく比較されます。
ルテインはカロテノイドの一種で、黄色の天然色素です。アントシアニンと同様、強い抗酸化作用を持つことが知られています(10)。
野菜や果物に含まれており、目や皮膚を紫外線から保護する役割があります。
加齢黄斑変性症の予防や、白内障などの目の病気の予防に効果があるとされています(11,12)。
アントシアニンは水溶性ですが、ルテインは脂溶性です。そのため、アントシアニンは作用までの時間が早いですが、効果が持続しにくく毎日摂取する必要があります。
一方で、ルテインは油と一緒に調理すると吸収効率が上がります。
ルテインのサプリメントを摂取する場合は、食後に摂取すると胆汁酸がルテインの吸収効率を高めます。
アントシアニンとルテインはどちらも目を保護する効果があります。
アントシアニンは眼精疲労などに、ルテインは目の病気の予防に特に効果があります。そのため、両方を摂取することで相乗効果が期待できます。
異なる植物に含まれるアントシアニンの違い
アントシアニンは野菜、果物などさまざまな植物に含まれています。
ビルベリーやカシスはアントシアニンが多く含まれている代表的な植物ですが、これらには違いがあるのでしょうか。
実は、含まれているアントシアニンの種類が異なります。
ビルベリー

ビルベリーは5種類のアントシアニジンと3種類の糖がそれぞれ結合した15種類のアントシアニンが含まれています。
カシス

カシスには、ビルベリーには含まれていない異なる2種類が含まれます(13)。
それぞれがさまざまな生理活性を発揮して、目の健康や血流改善に効果を発揮します。
アントシアニンとカシスの両方を摂取することで、よりアントシアニンの効果を高めることができるかもしれません。
アントシアニンを摂取する際の注意点
継続的に服用
アントシアニンは水溶性のため、不要な分は尿中に排出されます。
そのため、食事から摂れる量を適切に摂取するならば安全性が高いとされています。
逆に、効果が長く続かないため、毎日継続的に摂取することが大切です。
過剰摂取を避ける
ただし、アントシアニンをたくさん摂取しようとしてカシスなどの果実を過剰に食べると、下痢を起こすことがあります。
サプリメントで摂取しようとすると過剰摂取になる恐れがあるため、用法用量を守って使用しましょう。
血圧低下の副作用
アントシアニンだけでなく、さまざまな栄養素をバランス良く食べることが大切です。
なお、アントシアニンには血圧低下作用があるため、もともと血圧が低い方は血圧が過度に下がることでめまいなどを起こす危険性があります(14)。
アントシアニンを正しく摂取して、健康的な生活を送りましょう。