エラスチンは、コラーゲンとともに私たちの肌を構成するたんぱく質のひとつで、肌の弾力性を保つ重要な働きをしています。
この記事では、エラスチンサプリメントに関する研究報告を解説し、エラスチンを摂取することで副作用は生じないのかなど、その安全性を解説していきます!
現在の研究では、エラスチンは適量を守って摂取すれば、副作用の報告はなく、安全性の高い成分とされています。
エラスチンは分子サイズが大きく、水に溶けにくいタンパク質であるため、そのままの状態では吸収が難しいと考えられています。そのため多くの場合、エラスチンを酵素で加水分解してできるエラスチン加水分解物やエラスチンペプチドなどを用いた研究が行われてきました。
ここでは、実際にヒトがエラスチンペプチドを摂取した研究データをもとに、その安全性について詳しく見ていきます。
エラスチンペプチドを用いた研究での安全性の報告
健康な成人にカツオ由来エラスチンペプチドを1日100mg、12週間摂取してもらい、肌荒れやしわの改善を確認した研究があります。
この研究では血液検査と尿検査の両方が正常範囲内で、プラセボと同程度の値だったほか、参加者に副作用はみられなかったと報告されています(10)。
また、健康な成人にブタ由来のエラスチンペプチドを最大1日200mg、8週間摂取してもらい、皮膚弾力性の向上を確認した研究においても、副作用や体調悪化は確認されなかったと報告されています(11)。
これらの実際にヒトがエラスチンペプチドを摂取した研究報告から、エラスチンペプチドは安全性の高いものであると考えられます。
エラスチンサプリメントを摂取するうえでのポイントを解説!
安全性が高いエラスチンペプチドでも過剰摂取は控える
現在の研究報告をもとにすると、エラスチンペプチドは安全性が高いものであると考えられており、これらを用いたサプリメントを利用するとスキンケアに効果的だと考えられます。
しかし、安全性の高いエラスチンサプリメントでも過剰摂取をしてしまうと、代謝する肝臓や腎臓に負荷をかけるほか、かえって肌の健康を損なう可能性があります。
そのため、用法用量を守り継続して摂取することが重要となります。
そもそもエラスチンって何?
エラスチンは、肌や血管などの組織に含まれる繊維状のたんぱく質で、コラーゲンとともに肌の弾力性を支える重要な成分です。
エラスチンはゴムのような高い伸縮性を持ち、組織が伸びた後に元の形に戻るという特徴で、フィブリリンとともに「弾性繊維」として分類されます。(1)
人体におけるエラスチンの含有量は、組織によって異なります。とくに多くの割合が含まれている組織は、以下のとおりです。
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肌(皮膚)
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動脈
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靭帯
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肺
エラスチンの美肌効果
皮膚におけるエラスチンの働き
肌には三つの層から構成されています:表皮、真皮、そして皮下組織です。真皮は表皮の下にあり、肌の強さや弾力を支える層です。
真皮は大部分がコラーゲンでできており、他には保水力の高いヒアルロン酸や、弾力を与えるエラスチン、これらを作る線維芽細胞で構成されています(9)。
コラーゲンが真皮の70%近くを占めるのに対して、エラスチンは真皮のわずか2〜3%という割合でしか存在しないとされています(10)。
真皮では、コラーゲンがネットワークを作って鉄筋のような役割を果たしており、これによって肌の強度が保たれています。
コラーゲンは肌の構造を支えますが、性質的に伸びたり縮んだりしないです。エラスチンは弾力性があるため、コラーゲンを束ねることで肌に弾力を与え、若々しい外見を保ちやすくなるのです。(10)
このように、エラスチンとコラーゲンの相互作用により、肌のハリや弾力性が維持され、しなやかな肌を保つことができるのです。
肌の若々しさを保つためには、コラーゲンの補給だけではなく、体内のエラスチンを維持することが重要です。
エラスチンによる肌のハリや弾力の維持効果
カツオ由来のエラスチンペプチドを用いた研究では、35〜60歳の健康な成人計100人を対象に、1日100mgのカツオ由来エラスチンペプチドを12週間摂取してもらい、肌荒れやしわの状態変化を観察しました。
その結果、エラスチンペプチドを摂取したグループで、肌荒れやしわの深さ、量がプラセボと比較して有意に改善されたと報告されており、健康的な肌へのエラスチンペプチドの効能が示唆されています(11)。
ブタ由来のエラスチンペプチドを用いた別の研究では、皮膚の老化を自覚している健康な成人計34人を対象に、ブタ由来エラスチンペプチド0mg、100mg、200mgいずれかを含む100mlドリンクを1日1本8週間摂取してもらいました。
その結果、100mgと200mgいずれの用量でも、エラスチンペプチドを摂取したグループでは、摂取前と比べ有意に皮膚弾力性が向上したと報告されています。エラスチンペプチド0mgのドリンクを摂取したグループでは有意な変化が見られなかったことから、エラスチンペプチド摂取の皮膚弾力性への効能が示唆されています(12)。
エラスチンが不足の原因
エラスチンは加齢とともに減少し、再生しにくい
エラスチンは肌の老化を防ぐためにも欠かせない成分です。加齢によって徐々に減エラスチンの量は減少します。
その原因は、ほとんどのエラスチンが胎児から新生児への成長の間に体内で合成され、それ以降は生成量が減少していき、成人ではその生成量が非常に限られています(10)。
エラスチンはターンオーバーが非常にゆっくりと進む特殊なたんぱく質で、新たに生成されることが非常に少ないため、外的要因で損失してしまうと非常に再生しにくい重要なものだとされています(13)。
また、加齢に伴う「生理学的な老化」により線維芽細胞が減少することで、コラーゲンやエラスチンも減少し、肌が弾力のない薄いものへと変化します。
エラスチンが減少すると、肌のたるみやしわの原因となり、たるみやしわが目立ちやすくなります。肌への影響の他に、血管の硬化など、加齢にともなうさまざまな身体の変化の一因となっています。
そのため、日常にエラスチンが豊富に含まれる食品やサプリメントを積極的に摂取することが重要です。
光老化によるエラスチンの減少
長期間日光に曝されることで紫外線による悪影響が蓄積する「光老化」と呼ばれるものです(14)。
長期間紫外線を浴びることで線維芽細胞のDNAへダメージが蓄積し、コラーゲンは大きく減少する一方、エラスチンは構造が不規則に乱れてしまい、弾力性が損なわれて肌が硬くシワの深いものへ変化してしまうことが知られています(15)。
日によく当たる部分は、加齢に伴う生理学的な老化と光老化が同時に進行しており、光老化の影響力は大きいと考えられています(14)。
慢性的に日光を浴びると、エラスチンの量や配列が急激に変化し、真皮内のコラーゲンとエラスチンによるネットワークが破壊されます。
その結果、肌のたるみやシワが生じるため、光老化におけるエラスチンへの影響は非常に重要であると考えられています(16)。
エラスチンの働きをサポートする生活習慣
エラスチンの効果を最大限に引き出すには、適切な生活習慣が欠かせません。生活習慣を整えるには、以下のポイントを心がけてみましょう。
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十分な睡眠時間の確保
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適度な運動
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ストレス管理
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禁煙
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紫外線対策
睡眠は、体調や肌の状態を整えるうえで欠かせないものです。適切な睡眠時間は、6〜8時間が理想的とされています(7)。適度な運動は血行を促進させ、皮膚や血管に酸素や栄養を届けやすくします。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を自分のペースで、1回20分程度行うとよいでしょう(8)。
また、過度のストレスは体内のホルモンバランスを崩し、エラスチンの生成を妨げる可能性があります。
趣味の時間を持つ、友人と会話するなど、自分にあったストレス解消法を見つけることが大切です。喫煙や過度な紫外線も、エラスチンが壊れてしまう原因となります。
禁煙を心がけつつ、外出時には日焼け止めを使用して、エラスチンを守る意識を持ちましょう。
効率よく補う、エラスチンとコラーゲン
真皮でコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作っているヒト線維芽細胞に、エラスチン加水分解物とエラスチンペプチドを加えた研究があります。
研究により、添加により線維芽細胞の増殖能力やエラスチンの生成量が向上したと報告されています(17)。
このことから、エラスチン加水分解やエラスチンペプチドの摂取が、肌のケアに効果的であることが示唆されています。
さらに、ヒト線維芽細胞の増殖へ与える効果を調べた研究では、エラスチンペプチドのみを加えるよりも、コラーゲンペプチドとエラスチンペプチドを合わせて加えた場合の方が、細胞増殖が大きく活性化されたことが報告されています(9)。
これにより、肌をケアするうえでは、エラスチンとコラーゲンを合わせて補うことも効果的だと示唆されています。
エラスチンを意識した生活を取り入れよう
エラスチンは、肌のハリや弾力を保つ重要なたんぱく質です。お肌の健康だけでなく、動脈硬化の予防や生理痛の軽減など、さまざまな作用があるとされています。
コラーゲンペプチドも合わせて摂取すると効果的
ヒト線維芽細胞を用いた研究では、エラスチンペプチドだけを加えるよりも、コラーゲンペプチドと合わせて加えた方が細胞増殖が活性化された結果が報告されています(9)。
真皮での働きからも、エラスチンとコラーゲンは相性が良いと考えられるため、コラーゲンも十分に摂取するとより効果的だと考えられます。
美肌には健康的な生活とUVケアも重要!
美肌を保つためには、睡眠や運動などの健康的な生活習慣を心がけることもやはり重要です。
また、日光による光老化を防ぐうえでは、日焼け止めなどを用いて、紫外線に肌を曝すことを防ぐ対策を取ることも有効的だと考えられています。
体内にわずかしか存在せず再生しにくいエラスチンを大切にケアしながら、健康的な生活を送ることが、健康的な肌の維持に大切だと言えます。
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