成分ガイド

GABA(ギャバ)とは?GABAの効果や含む食品、安全性を全て解説!

監修者 井林 雄太 医師 公開日:2024-10-04 最終更新日:2024-10-04

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GABA(ギャバ)とは?GABAの効果や含む食品、安全性を全て解説!

監修者井林 雄太 医師 公開日:2024-10-04 最終更新日:2024-10-04

近年は、技術の進歩によりあらゆる物事がスムーズに進む反面、スピードを求められる多忙な日々の中でうまく休むことができず、辛い思いをする方が非常に多い時代です。

そのため、「リラックスや睡眠をサポートする効果がある」と広く知られているGABAは、近年ますます注目を集めています。今ではチョコレートなどコンビニエンスストアでも見かけるほど広く認知されているGABAには、具体的にはどのような効能があるのでしょうか?この記事では、GABAの効能や、おすすめの摂取方法などを解説します!

GABAとは?

GABAの概要

GABA(ギャバ)はγ-アミノ酪酸(Gamma-aminobutyric acid)の略称で、化学的には“4-aminobutyric acid”とも呼ばれるように、4つの炭素原子が中心となるアミノ酸の一種です。GABAは中枢神経調節作用を発揮して、リラックスや睡眠を助けるほか、降圧作用や抗糖尿病作用など、さまざまな働きをすることが報告されています(1)

 

GABAの歴史

ヒトの脳機能にとって最も重要な物質の一つとして広く知られるGABAですが、ジャガイモなどから同定された発見当初は、あまり注目を浴びない物質でした(2)。ジャガイモなどから同定された後、1950年代に研究が進み始めると、すぐに哺乳類の脳でもGABAが発見され、ヒトの脳機能にとってGABAが重要な働きをしていると考えられました。

その後の研究により、GABAはヒトだけではなく動物、植物などほぼ全ての生物に含まれており、ヒトにとって非常に重要な働きをする物質であることが明らかにされました(3)

今では、GABAと直接結合するGABA受容体が脳の興奮を制御する上で重要な働きをしていることも知られており、GABAは重要な神経伝達物質として広く知られています。

 

GABA含有量の多い食品はどれ?

GABAは植物由来の食品や発酵食品に多く含まれる

GABAは、最初に植物中で同定され、その後に酵母や細菌などの微生物でも見つかり、今では植物・微生物・動物と幅広い生物に含まれていることが知られています。また、GABAの含有量は、動物由来の食品よりも、植物由来の食品の方がはるかに多いことも知られています。穀物や果実、野菜などの植物には、1gあたりにミリグラム(mg)レベルのGABAが含まれています。

一方、動物ではその約1/1000となる、1gあたりマイクログラム(μg)レベルしかGABAが含まれていません​(3)。わずかな量で脳機能にとって重要な働きをするGABAですが、食品としてのGABA含有量を比較すると、植物由来の食品の方が、GABAを多く摂取できると考えられています。この他にも、乳酸菌など一部の微生物は発酵する過程でGABAを生成することが報告されており、乳酸菌を用いて豊富なGABAを生産する研究が進められています(4)

 

GABAの含有量が多い食品リスト

GABAはさまざまな種類の食品に広く存在しており、ほとんどの食品にGABAは含まれています。その中でも、特に以下の食品はGABAを豊富に含むことが報告されています。以下の表では、括弧中に食品1gあたりに含まれるGABAの量を記載しています。ただし、野菜や果物などの食品中のGABAの含有量は、収穫時期や季節、および後処理方法(加熱、漬け込みなど)によって異なることがあります。

表  GABAの含有量が多い食品リスト(食品1gあたりに含まれるGABAの量)

穀物類(5)

野菜類(5)

小麦胚芽

1.6mg

トマト

0.57mg

大麦ブラン

0.95mg

かぼちゃ

0.56mg

アワ

0.43mg

じゃがいも

0.43mg

全粒小麦のサワードゥ

0.26mg

大豆もやし

0.40mg

玄米ご飯

0.13mg

大根

0.28mg

 

果実類(3)

乳製品・発酵食品類(3)

桑の実

1.1mg

なれ鮨*

13mg

オレンジ

0.32mg

黒豆豆乳

5.4mg

レモン

0.25mg

発酵乳

0.97mg

ブラックラズベリー

0.19mg

低脂肪発酵乳

0.81mg

ぶどう

0.17mg

キムチ

0.20mg

 

(*魚を乳酸発酵させて作る伝統食品)

 

乳酸菌によるGABAの効率的な生産

GABAは、乳酸菌などの特定の微生物が豊富に生成できると報告されており、乳酸菌を用いたGABAの生産が盛んに研究されています(4)。乳酸菌はGABAの生成能力が高いほか、植物よりも成長が早く、安全かつ確実にGABAを生産できるため、GABAの含有量を高める手法として注目を集めています。

 

GABAの効果

では、GABAの具体的な効果にはどのようなものが含まれているのでしょうか?GABAがヒトの脳にも含まれていることが報告されて以降、多くの研究により、GABAは情報伝達のなかで重要な役割を果たしていることが確認されました(2)。その後、次のようにGABAが持つ幅広い効果を示唆する結果も次々と報告されてきました。

GABAの報告された効果一覧

  • 心のリラックス(6)

  • 入眠のサポート(7)

  • 気分障害の緩和(8)

  • ストレスの緩和(9)

  • 体内時計(概日リズム)の維持(10)

  • 降圧作用による正常な生理機能の維持(11)

  • 肝機能や腎機能の補助による正常な新陳代謝の維持(5)

  • ガン細胞の増殖阻害とアポトーシス促進による腫瘍増殖の抑制(12)

  • 創傷治癒促進作用(13)

  • インスリン分泌量の調節と肥満防止(14)

このように、GABAは体内に微量しか存在しないにも関わらず、幅広い領域で重要な働きをする可能性が高い物質であることが示唆されています。

 

GABAの摂取量

​ヒトに対するGABAの効果を報告してきたさまざまな研究は、GABAの補給により緊張やストレスなどを軽減するために、GABAを毎日継続して摂取するようにデザインされており、その中で効果が報告されています。GABAの摂取量については、多くの研究で1日計100mg以上の摂取により効果が確認されていることから、同様に毎日100mgのGABAを継続的に摂取することが適正だと考えられています。

また、入眠サポートの効果を得たい方は、GABAは摂取後30分​から1時間​程度で効果を確認できた報告が多いことも考慮すると、就寝前30分から1時間前にGABAを補充することをおすすめします(7)

 

GABAの副作用

GABAの摂取量については、厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準」では規定されていないため、日本において明確な摂取量上限は設けられていません(15)。その上で、GABAの安全性に関して調べた研究を見ると、GABAを連続して4日間にわたって18gずつ摂取する短期間の研究や、連続して12週間にわたって120mgずつ摂取する長期間の研究のいずれにおいても、重大な有害事象は報告されていません(16)

そのため、一般的な使用においては、GABAの過剰摂取による副作用の危険性は高くはないと考えられています。病気の治療などにより投薬を受けている方は、薬との相互作用による影響を確認するため、医師や薬剤師に相談の上でGABAを摂取するとより安全です。

 

GABAの補給をおすすめする方

GABAの多くの効果の中で、実感しやすいと考えられているのは、心のリラックス、ストレス調節、入眠サポートの三つです。そのため、緊張しやすい方、感情の起伏が激しい方、高ストレスの方、多忙な方、そして睡眠の質を上げたい方にとってGABAは非常に適しています。

 

GABAの選び方

GABAの主な製造方法は二種類に分けられます。一つ目は化学合成、二つ目は生物が持つGABA合成酵素を活用した生物工学的合成です。その中でも近年注目を集めており最もおすすめなものは、生物工学的合成のうち、ヒトにとって安全な微生物の発酵を活用したもので、特に乳酸菌はGABAを安全に大量生産できることが報告されています(4)

近年、キムチから単離した乳酸菌の株によるGABAの生産が研究において注目を集めています(17)。多くの国で睡眠効果の特許を取得した製品もあり、そのようなGABAを豊富に含む健康食品の摂取もおすすめです。