近年は、技術の進歩によりあらゆる物事がスムーズに進む反面、スピードを求められる多忙な日々の中でうまく休息することができず、辛い思いをする方が非常に多い時代です。
そのため、「リラックスや休息をサポートする効果がある」と広く知られているGABA(ギャバ)は、近年ますます注目を集めています。
GABA(ギャバ)とは
GABAはγ-アミノ酪酸 (ガンマ-アミノ酪酸、Gamma-AminoButyric Acid)の略称で、「ギャバ」と呼ばれています。
化学的には“4-aminobutyric acid”とも呼ばれるように、4つの炭素原子が中心となり、小麦胚芽やトマトなどに多く含まれるアミノ酸の一種です。
GABA は1950年に哺乳類の脳から発見され、その後の研究により、ヒトだけではなく動物、植物などほぼ全ての生物に含まれております。
GABAは哺乳類の脳や脊髄に含まれて、抑制性の神経伝達物質として中枢神経系に作用し、脳の興奮を抑え、ストレスを軽減してリラックスや睡眠を促進する働きがあります。
そのほか、血圧を下げる効果や抗糖尿病作用など、さまざまな働きが報告されています。(1)。
日本では、GABAは仕事や勉強等による、一時的「心理的なストレスの軽減」、「睡眠の質の向上」や「血圧の低下」といった機能性成分として、健康食品や特定保健用食品として販売されています。
GABA(ギャバ)の機能性
GABA(ギャバ)がヒトの脳にも含まれていることが報告されて以降、多くの研究により、GABAは情報伝達のなかで重要な役割を果たしていることが確認されました(2)。
GABA(γ-アミノ酪酸)は脳内の抑制性神経伝達物質であり、神経の興奮を抑えることで、睡眠の質の改善、入眠の促進、精神的な安定、ストレスの緩和と血圧の低下に関与します。また、自律神経の調整作用を通じて、気分障害や慢性ストレスに伴う不調の改善にも有用性が示唆されています。
GABAの効果1. 入眠のサポート

GABA(γ-アミノ酪酸)は、脳内の過剰な神経活動を抑制する抑制性神経伝達物質であり、リラックス状態の維持や入眠を促す働きを持ちます。
睡眠には自律神経の正常な切り替えが重要で、日中は交感神経、夜間は副交感神経が優位になることで脳と身体は休息に向かいます。
しかし、ストレスなどの影響で交感神経の緊張が続くと、副交感神経への切り替えが阻害され、脳の興奮状態が持続し、入眠困難や情緒の不安定が生じやすくなります。
GABAは脳内における主要な抑制性神経伝達物質であり、摂取により交感神経の過剰な興奮を鎮め、副交感神経の働きを高めることで、自律神経のバランスを整え、睡眠の質を向上させる可能性があります。
いくつかの研究では、自然または合成GABAの摂取が睡眠の改善に寄与することが示唆されています。
実際に、GABAは脳の神経活動を抑制し、リラックス効果を高めるため、入眠を助ける可能性があります。(7)
GABAの効果2. 心のリラックス

GABAは中枢神経系における主な抑制性神経伝達物質で、脳内の興奮を抑える役割を果たします。これにより、ストレスを軽減し、心をリラックスさせる効果があります。
研究によると、GABAが不足すると不安や発作が引き起こされることがありますが、逆にGABAを活性化させることで、精神的な落ち着きが得られるとされています。(6)
GABAの効果3. 気分障害の緩和

GABAは不安障害やうつ病の予防に役立つ可能性があります。
2007年の研究では、睡眠障害(不眠症)が不安障害やうつ病の発症と関連していることが示されました。
特に、睡眠障害が続くと、精神的な健康問題のリスクが高まり、不眠症が不安障害を引き起こすリスク要因である可能性を示唆しております。GABAがリラックス効果を促進し、精神的な健康をサポートする役割を果たすと考えられています(8)
GABAの効果4. ストレスの緩和

GABAは慢性的なストレスによって引き起こされる自律神経の不均衡や、心血管疾患のリスク増加への影響を軽減する効果が期待されています。GABAを含むお茶の摂取が心拍変動(HRV)およびストレスに与える影響を、30人の参加者を対象にした前後比較コホート研究を通じて測定しました。
結果として、GABAを含むウーロン茶を摂取したグループは、即時的なストレススコアの有意な低下とHRVの改善が見られました。特に、急性ストレスに対する自律神経の不均衡とHRVの改善が顕著であり、自律神経系と気分の複雑な相互作用が示されました。
この研究結果は、GABAを含むお茶がストレス軽減に寄与する可能性を示唆しております。(9)
GABAの効果5. 血圧低下
GABA(ガンマアミノ酪酸)は、血圧を改善する効果があると知られています。
研究では、GABAを含む食品が高血圧のラットに対して、食塩を多く摂取させても血圧の上昇を抑えることがわかりました。実験では、GABAを強化した野菜を与えたラットの血圧は、食塩を多く摂った場合でも上昇を抑えることが確認されました。
GABAは交感神経の過剰な活動を抑えることで、血圧が正常範囲に保たれる手助けをする可能性があります。(18)
これにより、GABAは心血管の健康維持をサポートする成分として注目されています。
GABAの効果6. インスリン分泌量の調節と肥満防止

GABA(ガンマアミノ酪酸)は、体内でインスリンの分泌を助ける重要な物質です。
正常なラットの実験では、GABAがインスリンの分泌を増やすことが確認されています。しかし、糖尿病ラットではその効果はあまり強くありませんでした。また、GABAは自律神経に働きかけ、エネルギー消費や脂肪の代謝を調整するため、肥満を防ぐ助けにもなる可能性があります。(14)
他のギャバの機能性
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体内時計(概日リズム)の維持(10)
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降圧作用による正常な生理機能の維持(11)
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肝機能や腎機能の補助による正常な新陳代謝の維持(5)
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ガン細胞の増殖阻害とアポトーシス促進による腫瘍増殖の抑制(12)
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創傷治癒促進作用(13)
このように、GABAは体内に微量しか存在しないにも関わらず、幅広い領域で重要な働きをする可能性が高い物質であることが示唆されています。
GABA(ギャバ)含有量の多い食品
GABAは植物由来の食品や発酵食品に多く含まれる
GABAは、最初に植物中で同定され、その後に酵母や細菌などの微生物でも見つかり、今では植物・微生物・動物と幅広い生物に含まれていることが知られています。
また、GABAの含有量は、動物由来の食品よりも、植物由来の食品の方がはるかに多いことも知られています。
穀物や果実、野菜などの植物には、1gあたりにミリグラム(mg)レベルのGABAが含まれています。
一方、動物ではその約1/1000となる、1gあたりマイクログラム(μg)レベルしかGABAが含まれていません(3)。
わずかな量で脳機能にとって重要な働きをするGABAですが、食品としてのGABA含有量を比較すると、植物由来の食品の方が、GABAを多く摂取できると考えられています。
この他にも、乳酸菌など一部の微生物は発酵する過程でGABAを生成することが報告されており、乳酸菌を用いて豊富なGABAを生産する研究が進められています(4)。
項目 | 植物由来の食品 | 動物由来の食品 |
---|---|---|
GABAの含有量 | 1gあたりmgレベル | 1gあたりμgレベル |
含有量の差 | 植物由来の食品は動物由来よりもはるかに多い | 動物由来は植物由来の約1/1000 |
例 | 穀物、果物、野菜など | 肉類、乳製品など |
GABAの含有量が多い食品リスト
GABAはさまざまな種類の食品に広く存在しており、ほとんどの食品にGABAは含まれています。
その中でも、特に以下の食品はGABAを豊富に含むことが報告されています。以下の表では、括弧中に食品1gあたりに含まれるGABAの量を記載しています。
ただし、野菜や果物などの食品中のGABAの含有量は、収穫時期や季節、および後処理方法(加熱、漬け込みなど)によって異なることがあります。
表 GABAの含有量が多い食品リスト(食品1gあたりに含まれるGABAの量)
穀物類(5) |
野菜類(5) |
||
小麦胚芽 |
1.6mg |
トマト |
0.57mg |
大麦ブラン |
0.95mg |
かぼちゃ |
0.56mg |
アワ |
0.43mg |
じゃがいも |
0.43mg |
全粒小麦のサワードゥ |
0.26mg |
大豆もやし |
0.40mg |
玄米ご飯 |
0.13mg |
大根 |
0.28mg |
果実類(3) |
乳製品・発酵食品類(3) |
||
桑の実 |
1.1mg |
なれ鮨* |
13mg |
オレンジ |
0.32mg |
黒豆豆乳 |
5.4mg |
レモン |
0.25mg |
発酵乳 |
0.97mg |
ブラックラズベリー |
0.19mg |
低脂肪発酵乳 |
0.81mg |
ぶどう |
0.17mg |
キムチ |
0.20mg |
(*魚を乳酸発酵させて作る伝統食品)
乳酸菌によるGABAの効率的な生産
GABAは、乳酸菌などの特定の微生物が豊富に生成できると報告されており、乳酸菌を用いたGABAの生産が盛んに研究されています(4)。
乳酸菌はGABAの生成能力が高いほか、植物よりも成長が早く、安全かつ確実にGABAを生産できるため、GABAの含有量を高める手法として注目を集めています。
最近では、GABAを豊富に含む大麦と乳酸菌を組み合わせた方法が注目されています。大麦はGABA生成に優れた材料であり、乳酸菌との組み合わせにより、効率よくGABAを生成できます。この方法では、大麦発酵液から90%以上の高濃度GABAを抽出できます。
GABAの1日摂取量
GABAの摂取量については、厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準」では規定されていないため、日本において明確な摂取量上限は設けられていません(15)。
ヒトに対するGABAの効果を報告してきたさまざまな研究は、GABAの補給により緊張やストレスなどを軽減するために、GABAを毎日継続して摂取するようにデザインされており、その中で効果が報告されています。
GABAの摂取量については、1日に28mg以上とされていますが、多くの研究で1日計100mg以上の摂取により効果が確認されていることから、同様に毎日100mgのGABAを継続的に摂取することが適正だと考えられています。
GABAの飲むタイミング
入眠サポートの効果を得たい方は、GABAは摂取後30分から1時間程度で効果を確認できた報告が多いことも考慮すると、就寝前30分から1時間前にGABAを補充することをおすすめします(7)。
GABAの副作用
GABAの安全性に関して調べた研究を見ると、GABAを連続して4日間にわたって18gずつ摂取する短期間の研究や、連続して12週間にわたって120mgずつ摂取する長期間の研究のいずれにおいても、重大な有害事象は報告されていません(16)。
そのため、一般的な使用においては、GABAの過剰摂取による副作用の危険性は高くはないと考えられています。
病気の治療などにより投薬を受けている方は、薬との相互作用による影響を確認するため、医師や薬剤師に相談の上でGABAを摂取するとより安全です。
GABAの補給をおすすめする方
GABAの多くの効果の中で、実感しやすいと考えられているのは、心のリラックス、ストレス調節、入眠サポートの三つです。
そのため、緊張しやすい方、感情の起伏が激しい方、高ストレスの方、多忙な方、そして睡眠の質を上げたい方にとってGABAは非常に適しています。
GABAの選び方
GABAの主な製造方法は二種類に分けられます。一つ目は化学合成、二つ目は生物が持つGABA合成酵素を活用した生物工学的合成です。
その中でも近年注目を集めており最もおすすめなものは、生物工学的合成のうち、ヒトにとって安全な微生物の発酵を活用したもので、特に乳酸菌はGABAを安全に大量生産できることが報告されています(4)。
特に、植物由来と乳酸菌による発酵液から抽出のGABAを選ぶと、品質が安定しており、安心して使用できます。
さらに、GABAを含む健康食品を購入する際には、実際に含まれているGABAの量や濃度を確認することが重要です。
商品によって含有量にばらつきがあるため、品質が保証された製品を選ぶことが大切です。
また、国産の高濃度GABAを選ぶことをお勧めします。これにより、より効果的にGABAの恩恵を受けることができるでしょう。