栄養素 - 脂質

オメガ3は脳の健康を支える効果:全年齢層に不可欠な脂肪酸

監修者 錦 惠那 医師 公開日:2024-10-01 最終更新日:2025-01-21

栄養素 - 脂質

オメガ3は脳の健康を支える効果:全年齢層に不可欠な脂肪酸

監修者錦 惠那 医師 公開日:2024-10-01 最終更新日:2025-01-21

オメガ3脂肪酸は脳の健康維持に欠かせない栄養素です。脳細胞は主に脂肪でできており、オメガ3脂肪酸は脳の構成成分の一つです。

オメガ3脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一つであり、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、α-リノレン酸などがあります。特にDHAは認知機能維持に役立ちますが、体内では合成できないため、食品から摂取しなければいけません(1) (2)。

本記事では、オメガ3脂肪酸について解説します。ぜひ最後まで読んでみてください。

脳におけるオメガ3脂肪酸の役割

脳の約60%は脂質でできています。オメガ3脂肪酸は、細胞膜リン脂質の構成要素であり、脳機能では重要な役割を果たします。

脳の中には、多数の小さな神経細胞でできています。神経細胞は、私たちが物を考えたり、思い出したりするときに使われます。神経細胞は連なってできており、情報は「シナプス」という神経細胞の先端の部分から、次のシナプスへ送られて伝えられていくのです。

神経細胞の外側の細胞膜がやわらかいほど、情報が速く伝わります。

特に胎児期や乳幼児期、児童期は活発に神経細胞の伝達物質が働き、加齢とともに細胞膜が硬くなり、神経伝達も鈍くなります。細胞膜が硬くならないようにするには、体内で合成できないオメガ3脂肪酸を摂取することです。

オメガ3脂肪酸を摂取することで、脳の認知機能維持に期待できます(3)。

関連記事:DHAの脳機能、記憶力、認知機能の向上効果をエビデンスに基づいて解説

 

ライフステージ別オメガ3脂肪酸の効果

オメガ3脂肪酸の効果は、ライフステージ別にさまざまな効果を発揮します。ここでは、それぞれのライフステージ別のオメガ3脂肪酸の効果について、解説します

 

胎児期・乳幼児期

胎児期や乳幼児期は脳の発達が著しいため、オメガ3脂肪酸の摂取が重要です。

オメガ3脂肪酸の摂取は、胎児や乳幼児に神経発達に影響を与えます。妊娠中にオメガ3脂肪酸を摂取することで、生後6か月の乳児のコミュニケーション能力の発達に影響します。

微細運動や粗大運動の発達にも影響を与える可能性があるのです。妊娠中の魚の摂取量が多いほど、1歳児の問題解決能力の発達が良好であることが示されています。

胎児や乳幼児の脳は急速に発達するため、この時期のオメガ3脂肪酸の摂取は特に重要です(4)

 

児童期・青年期

児童期・青年期におけるオメガ3脂肪酸の摂取は、学習能力と認知機能の向上に重要な役割を果たします。特に児童期は学習能力が発達する時期であり、オメガ3脂肪酸の摂取が重要です。

オメガ3脂肪酸は、脳細胞を保護し、神経細胞の活性化や情報伝達を改善する働きがあり、これが記憶力の向上に役立ちます。オメガ3脂肪酸の摂取は、学習能力の向上や集中力の改善、認知機能の向上に影響します。

オメガ3脂肪酸は脳の主要な構成成分であり、神経細胞間のコミュニケーションを円滑にすることで、情報処理能力が向上し、学習効率が高めていくのです。そして、オメガ3脂肪酸は脳の脂質組成の約25%を占めており、脳の構造を適切に維持する上で重要な役割を果たします。オメガ3脂肪酸の摂取は、効果的な学習の基盤となるのです

 

成人期

成人期におけるオメガ3脂肪酸の摂取による効果は、心臓血管系の健康や抗炎症作用、代謝促進とダイエット効果です。

オメガ3脂肪酸は中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす効果があり、血圧低下や動脈硬化予防など、循環器疾患予防効果が得られる可能性があります。また、オメガ3脂肪酸には抗炎症作用があり、慢性的な炎症を抑える効果があり、さまざまな慢性疾患を予防する可能性があります。

特にDHAに期待できる効果が、脂肪細胞の分化抑制、筋細胞と骨芽細胞の分化促進です。DHAは脂肪細胞の分化を抑制する働きがあります。

筋細胞と骨芽細胞の分化を促進することで、代謝の促進や脂肪燃焼を高める作用に期待できます

 

高齢期

高齢期におけるオメガ3脂肪酸の摂取は、脳機能の一つ:認知機能の維持や心臓血管系の健康維持、抗炎症作用と抗酸化作用に期待できます。

オメガ3脂肪酸、特にDHAは脳の主要な構成成分です。認知機能の維持に重要な役割に期待できます。ただし、現時点では認知症予防に関する決定的な証拠は不足しています。

高齢期においても、オメガ3脂肪酸の心血管系への効果は継続します。ただし、サプリメントよりも魚介類の摂取がおすすめです。週に1~4回魚介類を食べる人は、心疾患で死亡する可能性が低くなるとされているのです。

オメガ3脂肪酸の抗炎症作用は、高齢期における慢性炎症を抑制する可能性があります。抗酸化作用により、若々しさを維持することに期待できます

 

オメガ3脂肪酸摂取の重要性と方法

オメガ3脂肪酸は認知機能維持や心疾患の予防のためにも、摂取が重要です。ここでは、食事からの摂取源と調理のコツと、サプリメントの利用と注意点について解説します

 

食事からの摂取源と調理のコツ

オメガ3脂肪酸の主な摂取源は以下のとおりです。

  • 魚類(特に青魚):サバ、イワシ、サケなど

  • 植物性油:亜麻仁油、エゴマ油

  • ナッツ類:クルミ、アーモンド

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菜食主義者におすすめ:オメガ3が多い油はエゴマ油?油のオメガ3の含有量ランキングの選び方と保存方を紹介
 

効果的に摂取できる調理方法は、以下のとおりです。

  1. 一尾丸ごと調理:切り身よりも脂の流出が少なく、オメガ3の損失を抑えられます。

  2. 抗酸化作用のある食材と組み合わせる:緑黄色野菜と一緒に調理することで、オメガ3の酸化を防ぎます。

  3. スープ煮や牛乳煮:流れ出た油も一緒に摂取できます。

  4. 植物由来と魚由来のオメガ3を組み合わせる:相乗効果が得られます

 

サプリメントの利用と注意点

サプリメントは手軽にオメガ3脂肪酸を摂取できる方法ですが、摂取注意点もあります。

副作用は軽度ですが、血液凝固に影響を与える薬を服用している場合や魚・甲殻類アレルギーがある場合は、医師や専門家に相談してください

 

まとめ

オメガ3脂肪酸は、脳の健康維持において必要な栄養素です。脳細胞の約60%が脂質でできており、その中でもオメガ3脂肪酸は細胞膜の重要な構成要素になります。体内で合成できないため、食事からの摂取が必要です。

特にDHA(ドコサヘキサエン酸)は、認知機能の維持に重要な役割を果たします。胎児期や乳幼児期、そして成人期や高齢期に至るまで、適切な摂取がおすすめです。成人期では心臓血管系の健康や抗炎症作用にも効果があり、高齢期では認知機能の維持にも期待できます。

食事からは主に青魚や植物性油が豊富なオメガ3脂肪酸の源ですが、サプリメントの利用も考慮されます。ただし、個々の健康状態や食事習慣に合わせて医師の指導を受けることが重要です。

オメガ3脂肪酸は脳の健康を支え、認知機能や学習能力の維持に関与する重要な栄養素であり、日常的な食事でバランスよく摂取することが推奨されます。