肌や健康のために、ビタミンCを摂取しようと考えたことはありませんか?
ビタミンCは身近なビタミンの一つですが、詳しいビタミンCの効果をご存じの方は意外に少ないかもしれません。1日の推奨摂取量を満たすため、食品からだけでビタミンCを摂取することは可能なのでしょうか?薬剤師が詳しく説明します!
ビタミンCとは

ビタミンC(化学名:アスコルビン酸 , Vitamin C)は水に溶けやすい水溶性ビタミンの一つです。ビタミンCは「美肌の栄養素」として知られています。
ビタミンCは、強力な抗酸化作用をもっているため、体内で発生する有害な活性酸素の働きを抑制することにより、細胞の酸化ダメージを防ぎ、老化の進行を抑制する効果が期待されています。
ビタミンCの抗酸化作用は、シミやくすみの原因となる酸化ストレスを軽減し、肌を明るく健康的に保つ美肌効果が期待されています。加えて、酸化ストレスの影響で生じる様々な疾患の予防効果も期待されています。
ビタミンCは、コラーゲンの生成を助けるうえで欠かせない栄養素です。コラーゲンは、肌のハリや弾力を保つために重要な成分であり、ビタミンCを十分に摂取することで、肌のたるみや小ジワの予防にも効果が期待できます。
コラーゲンは皮膚だけでなく、血管、骨、軟骨、歯肉、腱、靱帯といった身体の広範な組織に存在しており、結合組織の構造的安定性、機能維持、柔軟性を支えています。
したがって、ビタミンCの摂取は美容目的にとどまらず、全身の健康維持、組織の修復、血管の強化といった広範な生理機能の支援にも貢献することが明らかとなっています。
しかし、人は体内でビタミンCを合成することができないため、日々の食事あるいはサプリメントなどによって外部から補う必要があります。
とくに現代人の生活環境においては、ストレスや紫外線、喫煙などによってビタミンCの消耗が促進されるため、意識的かつ継続的な摂取が推奨されます。
ビタミンC不足による影響
ビタミンCの不足によって引き起こされる健康障害もあります。
ビタミンCは、優れた抗酸化作用を持ち、コラーゲンの生成や維持に関わっています。
ビタミンCが不足することで倦怠感や疲労感、食欲不振、出血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難といった壊血症の症状を引き起こす可能性があり、全身に症状があらわれるようになります。
16世紀から18世紀にかけての大航海時代、長期間の航海によって乗組員が壊血病にかかることが多かったため、予防法として柑橘類が広く使用されました。その原因が柑橘類に多く含まれるビタミンCです。
現代の日本の食生活では、壊血病になるケースはほとんどないため、あまり心配する必要はないでしょう。しかし、壊血病の症状ほどの重症でありませんが、ビタミンC不足によって全身に様々な症状があらわれるようになります。
皮膚だけでなく骨や血管の細胞をつなぐ役割を果たしているコラーゲンがうまく生成されないために、肌の調子が整わなくなったり、骨折しやすくなったりします。
さらに出血しやすくなることで傷が治りにくくなることもあります。
ビタミンCの効果
ビタミンCに関する非常に多くの研究が行われてきました。現在分かっているビタミンCの主な効果には以下のものがあります。(1)
ビタミンCの効果1. 抗酸化作用によって、老化を予防する

ビタミンCは強力な抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を効果的に抑制します。
活性酸素が増えると細胞が損傷し、老化や病気の原因となりますが、ビタミンCがその影響を防ぎ、健康維持をサポートします。
ビタミンCの効果2. コラーゲンの生成を促進する

コラーゲンはたんぱく質の一種で体内の約30%を占めており、骨や歯、皮膚、靭帯、血管などあらゆる組織に繊維状で存在しています。
ビタミンCはコラーゲンの合成に欠かせない成分です。ビタミンCを摂取することで、肌や血管など組織を若々しく健康的な状態で保つことができます。
ビタミンCの効果3. 肌のハリ

ビタミンCは肌の健康にも大きな影響を与えます。
肌のターンオーバーを助け、シミやくすみを防ぐ効果があるため、毎日のスキンケアにも役立ちます。明るく、健康的な美肌をサポートするため、ビタミンCは積極的に取り入れたい成分です。
そのうえ、ビタミンCはコラーゲンの生成にも関与しており、肌のハリや弾力を保つためにも重要です。たるみや小ジワを防ぐ働きがあり、年齢とともに変化しやすい肌の状態を整えるサポートが期待できます。日々の生活におけるストレスや紫外線によるダメージから身体を守るためにも、ビタミンCの摂取は欠かせません。
ビタミンCの効果4. 肌の透明感と美白

メラニンは、紫外線などの刺激から肌を守るために必要な色素ですが、過剰に生成されるとシミやくすみの原因となり、肌の透明感を損なってしまいます。
ビタミンCは、メラニンの生成に関わる酵素「チロシナーゼ」の働きを抑えることで、色素沈着を防ぐ作用が期待されています。
また、紫外線が皮膚に吸収されることで発生する活性酸素は、細胞に炎症や損傷を引き起こす原因になりますが、ビタミンCはそのような活性酸素を取り除く働きもあります。
ある研究では、人工的に培養した皮膚モデルを用いて、紫外線照射前にビタミンCを肌に与えることで、細胞へのダメージを効果的に抑制できることが示されています(8)。
同時に、メラニン色素の生成も抑えられることが確認されており、肌の明るさや透明感を保つうえで、ビタミンCの重要性が再認識されています。
紫外線の影響を受けやすい現代の生活環境において、日々のスキンケアや栄養補給にビタミンCを取り入れることは、美しい肌を保つための有効な手段と言えます。
ビタミンCの効果5. 傷の修復を助ける
傷を治すためにビタミンCは非常に重要です。ビタミンCはコラーゲンの合成を促進し、細胞の修復を早めるため、傷が早く治癒します。
また、免疫機能もサポートし、回復力を高めるため、傷ができた際にはビタミンCを意識的に摂取することが大切です。
ビタミンCの効果6. 骨や歯の健康を維持する

ビタミンCはコラーゲンの生成を助けるため、骨密度や骨粗鬆症などの予防に役立ちます。また、歯茎や歯の健康を維持するためにも必要不可欠な栄養素です。
ビタミンCの効果7. 鉄分の吸収を促進する
ビタミンCは鉄分の吸収にも重要な役割を果たしています。
一般的に動物性食品に多く含まれるヘム鉄の方が、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄よりも吸収率が高いと言われています。
しかし非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取することで、体内に吸収されやすくなります。ビタミンCは、鉄分の吸収の増加に寄与しています。
ビタミンCの効果8. 免疫機能を強化する
ビタミンCは白血球にも多く含まれています。白血球は、細菌やウイルスなどを攻撃して排除しようとする免疫機能に関わっているため、感染症にかかるとビタミンCを大量に消費してしまいます。
つまり、ビタミンCが不足していると、白血球が十分に作用を発揮できなくなる可能性があり、ビタミンCは免疫機能にも関わっていることがわかります。(4)(5)(7)
ビタミンCはどれくらい摂取するべき?
厚生労働省によると、成人男女のビタミンCの推奨摂取量は1日100mgです。
性別 |
男性 |
女性 |
年齢等 |
1日推奨量 |
1日推奨量 |
0~5(月) |
40 (目安量) |
40 (目安量) |
6~11(月) |
40 |
40 |
1~2(歳) |
35 |
35 |
3~5(歳) |
40 |
40 |
6~7(歳) |
50 |
50 |
8~9(歳) |
60 |
60 |
10~11(歲) |
70 |
70 |
12〜14(歲) |
90 |
90 |
15歳以上 |
100 |
100 |
妊婦(付加量) |
--- |
+10 |
授乳婦(付加量) |
--- |
+45 |
-
成人:100㎎
-
妊婦(付加量):+10㎎
-
授乳婦(付加量):+45㎎
また、ビタミンCの過剰分は尿中に排泄されることから、広い摂取範囲で安全と考えられているため、耐容上限量は設定されていません。
ビタミンCが多い食べ物
野菜や果物には、ビタミンCが豊富に含まれています。しかし、調理法や保存方法によってビタミンCが失われる可能性があります。
一般的には柑橘類にビタミンCが多く含まれていると考えられがちですが、実際には柑橘類以外の果物にも、想像以上にビタミンCが多く含まれています。以下はビタミンCが豊富に含まれる果物の一例です(2)
ビタミンCが豊富に含まれる果物

果物 |
100gあたりのビタミンC含有量 |
アセロラ |
1,700mg |
グァバ/赤肉 |
220mg |
キウイフルーツ/黄肉 |
140mg |
レモン |
100mg |
オレンジ |
60mg |
ビタミンCが豊富に含まれる野菜

野菜 |
100gあたりのビタミンC含有量 |
赤ピーマン/生 |
170mg |
めキャベツ/生 |
160mg |
黄ピーマン/生 |
150mg |
ブロッコリー/生 |
140mg |
とうがらし/生 |
120mg |
ビタミンCの効率よく摂るポイント
ビタミンCには水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、野菜は調理中にビタミンCを流失しやすい傾向にあります。
また、果物からビタミンCを十分に摂取する場合には、糖分の過剰摂取についても考慮する必要があります。
加えて、毎日十分な量の野菜や果物を摂ることが難しい生活を送っている方も多く、生活上のストレスもビタミンCを消耗させる要因となります。
そのため、食生活や生活環境に応じて、サプリメントでビタミンCを摂取してみるのもいいでしょう。
ビタミンCの過剰摂取
ビタミンCは水に溶けるため、過剰な分は尿中に排泄され、過剰症はあまり心配いらないと考えられていました。
通常の食事からの摂取では過剰になることはありませんが、一部の方でサプリメントからの過剰摂取することがあります。
ビタミンCの過剰摂取による副作用
厚生労働省はビタミンCの摂取量上限を設定していませんが、ビタミンCを過剰に摂取すると、下痢や腹痛、吐き気などの胃腸障害があらわれる可能性があります。
また、腎機能低下のある方では、結石のリスクが高まることも報告されています。
ビタミンCの摂取時には、他のサプリメントや薬との相互作用を避けるため、摂取前に医師に相談するようにしましょう。(4)
ビタミンCはいつ摂るのが良い
ではどのタイミングでビタミンCを摂取するべきでしょうか?ビタミンCは、空腹時よりも食後に摂取することをおすすめします。
空腹時に摂取すると、吸収や排泄が速くなり体内にとどまる時間が短くなってしまうだけでなく、胃の不快感や下痢などを起こす可能性もあるからです。
またビタミンCは過剰分を尿中に排泄し体内にとどめておくことが難しいため、一度に大量に摂取するよりも、1日に3回程度に分けてこまめに摂取するようにしましょう。
ビタミンCサプリメントの選び方とは?天然と合成の違いを解説
ビタミンCは酸化しやすいため、精製された原料を用いることで安定性が実現されています。天然のビタミンCはコストが高く、他の成分も一緒に含まれている可能性があるためビタミンCの含有量が低くなるといったデメリットがあります。
一方、合成のビタミンCは、ビタミンCの含有量が多く、少ない量で多くのビタミンCを摂取できる可能性があります。
不純物質の少ない高品質なビタミンCはコストが高くなる傾向がありますが、品質にも十分留意した方が良いでしょう。
ビタミンCを選ぶ際には、必要な摂取量を確保できる高品質の製品を選ぶことが重要だと言えます。
持続型ビタミンCとは
一般的なビタミンCのサプリメントは、摂取後約2~3時間で体内濃度がピークに達し、その後速やかに過剰分は尿に溶け体外に排出されます。
一方、持続型ビタミンCは長時間にわたって徐々にビタミンCを放出し、約8時間にわたってビタミンC濃度を維持することが可能です。
ビタミンCの濃度が摂取時間に応じて急激に変動するのを避け、一度に摂取しすぎたり、必要な時に不足したりすることを防げるようになります。
臨床研究によると、体質によってはビタミンC含有量の多いサプリメントを摂取すると、下痢の症状を引き起こす場合があることが示唆されています(3)。
持続型のビタミンCの摂取によって、これらの症状が緩和されることも期待されます。
ビタミンC摂取がおすすめな方
ビタミンCは水溶性ビタミンであり、果物や野菜に多く含まれています。偏った食生活で、以下のような生活習慣や状況にある場合、ビタミンCの定期的な摂取をおすすめします。
外食が多い方
食事が偏りがちで、規則的な食事が難しく、天然の果物や野菜を摂る機会が少ない場合は、ビタミンCが不足しているかもしれません。
多忙なサラリーマン
ストレスや緊張する場面が多い、忙しいサラリーマンがストレスがかかるとビタミンCの消耗が増えます。抗ストレス効果を得るためにビタミンCを摂取しましょう。
美容に関心のある方
ビタミンCの摂取によって、健康な肌を維持し、日焼け等の症状に効果が期待できます。
大量の汗をかく環境下にいる時間の長い方
高温による大量の発汗により、ビタミンCが速く失われるため、正常な生理機能を維持するためにもビタミンCの補給が推奨されます。
病中、病後の方
ビタミンCを摂取して免疫機能を回復させましょう。栄養補給としてビタミンCを積極的に摂取することをおすすめします。
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