コラーゲンは、たんぱく質の一種で体内の約30%を占めており、骨や皮膚、靭帯などあらゆる組織に存在しています。組織どうしをつなぎ合わせて、皮膚のハリや関節をスムーズに動かすことなどを維持する役割を果たしています。
加齢とともに体内のコラーゲンは徐々に減少するため、肌のハリや関節の健康を維持するために、コラーゲンを経口摂取して体内に補給するのは良い方法です。
しかし、食べ物に含まれているコラーゲンは分子量の大きいです。そのままでは分子量が大きく吸収されにくいという課題があります。
そこで、コラーゲンを加熱・分解して分子量を小さくしたものがコラーゲンペプチドです。コラーゲンペプチドは体への吸収率が高く、効率的に美容や健康をサポートすると期待されています。
コラーゲンペプチド成分情報

コラーゲンペプチドは、コラーゲンを加熱し、変性たんぱく質であるゼラチンを生産してから、酵素で分解(加水分解)したたんぱく質のことです(1)。
その特徴は、平均分子量が小さいことです。そのため、体内での吸収が速くなります。
コラーゲンペプチドの分子量

分子量とは、その成分の「分子の大きさ」や「重さ」を表すものです。
分子量の単位には「Da(ダルトン)」が使われており、1Daは水素原子1個の重さに相当します。分子量が大きいほど、その物質は体の中で分解・吸収されにくくなります。
吸収率を重視する場合は、同じコラーゲンペプチドでも、分子量が3,000Daより1,000Daの方がより吸収されやすいという点に注目すると良いでしょう。
美容の鍵:コラーゲンペプチドのPOとOG

コラーゲンペプチドは、体内で分解されると以下のような成分に分かれます。
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PO(Pro-Hyp, プロリル-ヒドロキシプロリン)
-
OG(Hyp-Gly , ヒドロキシプロリル-グリシン)
コラーゲンペプチドを摂取後約2時間で、血液中のPOやOGペプチドの血中濃度がピークに達し、その後は徐々に減少していきます(2)。
さらに、これらのペプチドが体内で吸収され、体内で合成され、肌を支える重要なコラーゲンとなります。
そのため、美容系サプリメントや化粧品の原材料としての美容効果も期待期待されています。
コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドの違い
コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドは、いずれもコラーゲンを原料にしていますが、加工方法が異なり、それによって吸収のしやすさや効果が異なります。
コラーゲン
コラーゲンは、アミノ酸の鎖が3本絡まった三重らせん構造をしています。コラーゲンは全身のたんぱく質の30%であり、皮膚や骨、軟骨などの結合組織の主成分であるたんぱく質です。
ゼラチン
ゼラチンは、コラーゲンを加熱処理した物質のことです。ゼラチンはコラーゲンよりも分子量は小さいものの、溶けにくく摂取しにくいという特徴があります(3)。
しかし、ゼラチンの分子量はまだ大きいため、摂取後の吸収は遅く、完全に体内で活用するためには時間がかかります。
特徴 |
コラーゲン |
ゼラチン |
コラーゲンペプチド |
定義 |
|
コラーゲンを加熱処理して作られる物質 |
ゼラチンを酵素で分解し、分子を小さくしたもの |
分子量 |
大きい 約300,000DA |
中 |
小さい (低分子) 約1,000~8,000DA |
吸収率 |
低い |
低い |
高い |
溶けやすさ |
溶けにくい |
溶けにくい |
溶けやすい 冷水にも溶けやすい |
使用方法 |
食品に含まれるので、直接食べる |
主にゼリーやデザートなどに使用 |
サプリメント、ドリンク、食品などで使用 |
コラーゲンペプチドの原材料(由来)
現在食品やサプリメントに用いられているコラーゲンは、主に牛や豚や魚が供給源となっています。以下は各由来のコラーゲンペプチドの特徴を紹介します。
1. 牛由来のコラーゲン
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供給が安定しており、比較的安価である。
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ヒトに対する研究が多く、生体適合性が高い。
2. 豚由来のコラーゲン
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牛由来と同様に供給が安定している。
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ヒトに対する研究が多く、生体適合性が高い。
3. 魚由来のコラーゲン
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抗炎症作用があることを示唆する研究報告がある。
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血中濃度に反映されるペプチド量が豚由来より多いという研究結果がある。
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吸収率が高いため、吸収率を重視する人におすすめ。
コラーゲンペプチドの製造方法
食物中のコラーゲンは、分子量が約30万と非常に大きいため、そのままでは体内に吸収されにくい性質があります。
そこで、コラーゲンを効率よく吸収するために、加熱や酵素で分子量を小さく分解したものがコラーゲンペプチドです。
具体的には、コラーゲンを加熱・分解してゼラチンにした後、さらに酵素で分解することで、より低分子で吸収されやすいコラーゲンペプチドが生成されます。これにより、効率的なコラーゲン補給が可能になります。
【コラーゲンペプチドまでの製造工程】
日本におけるコラーゲンペプチドの製造工程の例は、以下のとおりです(4)。
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粉砕した骨を脱脂処理
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加圧・加熱処理
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水洗い
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ろ過(精製)
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高温殺菌後、乾燥
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さらに粉砕しゼラチンとして処理
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加水分解によってコラーゲンペプチドへ
このように、コラーゲンペプチドの製造には、安全性と品質を確保するための多くの工程がかかっています。またコラーゲンペプチドのほかに、以下のようなコラーゲンに関する材料の製造も行われています。
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コラーゲンケーシング(ソーセージの原料を詰めるための袋)
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オセイン(ゼラチンのもととなる原料
コラーゲンペプチドの働き
コラーゲンペプチドには、PO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)というペプチドが含まれています。
これらの成分によっても、得られる効果が異なるのです。ここでは、コラーゲンペプチドの働きについて詳しく解説します。
1. 皮膚の水分量の維持

コラーゲンペプチドの主成分である「PO(Pro-Hyp)」が、皮膚の健康や肌の細胞の成長に貢献しているとされているです。
コラーゲンペプチドの摂取により、肌の水分量や弾力を保つ効果が期待でき、実際に改善報告も寄せられています(5)。
ただし、皮膚に対するコラーゲンペプチドの効果は、個人差や外部環境によっても変化する可能性があります。
2.美容効果
コラーゲンペプチドを摂取すると、体内で吸収され、血液中のPO(Pro-Hyp)やOG(Hyp-Gly)の濃度が増加し、体内でコラーゲンに合成され、肌や関節を支える重要な役割を果たします。
その結果、以下のような効果によって肌の健康維持に貢献する可能性があります(6)。
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肌の潤い
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弾力の改善
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シワの改善
3. 関節や軟骨の健康維持
コラーゲンペプチドは、関節や軟骨の健康維持にも関わっています。
研究結果によると、コラーゲンペプチドには、以下のような作用がみられたという報告があるのです(7)。
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軟骨組織の再生促進
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関節液の増加による潤滑性の向上
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炎症反応の抑制
軟骨の損傷や劣化が関節痛の原因となります。
コラーゲンを摂取すると体内でコラーゲンの生成が促進され、損傷や劣化している軟骨の修復や再生がされることにより、関節痛が軽減される可能性があるといわれているのです。
とくに「Pro-Hyp」が、これらの役割を果たしているとされています。
また、軟骨の変性をおさえることも確認されており、長期的な健康維持につながる可能性もあります。
4.骨密度の維持・改善
骨は、コラーゲン繊維とカルシウムなどから構成されています。コラーゲンは骨の網目状構造を形成し、強度に重要な役割を果たしているのです。
コラーゲンペプチドの摂取により、体内のコラーゲンの生成を向上させます。さらに、コラーゲンにより骨を作る骨芽細胞を刺激し、骨の再生を促進させることが明らかになっています。
そのため、コラーゲンを摂取すると骨の強度が増し、骨密度の維持・改善が期待できると考えられています(8)(9)。
5.筋肉量の増加や運動後の回復促進
コラーゲンは、筋肉と骨をつなぐ腱の主成分です。腱は、筋肉の働きをサポートする働きをしています。
コラーゲンを摂取すると腱の強化が促され筋肉の強度が向上する可能性があるといわれています。
コラーゲンの合成は、筋肉が回復する過程で活発になることがわかっているため、運動後にコラーゲンペプチドを摂取することで筋肉の回復促進が期待されています(9)。
コラーゲンと他の栄養素と一緒に食べる方がいい
コラーゲンを摂取するときに、一緒に摂取した方が良い栄養素があります。
ビタミンC
消化吸収されたコラーゲンが再合成されるには、ビタミンCが必要になります。そのため、コラーゲンを摂取してもビタミンCが不足していると、コラーゲンが再合成されなくなってしまうのです。
ビタミンCは、レモンやいちごなどの果実類、じゃがいもやピーマン、ほうれん草などの野菜に豊富に含まれています。コラーゲンのサプリメントの中には、ビタミンCが含まれている製品もあるので、そのようなサプリメントで摂取してもよいでしょう。
鉄分やビタミンA、ビタミンB群、亜鉛
鉄分とビタミンB群もビタミンCと同様、コラーゲンの再合成に不可欠な栄養素です。
また、ビタミンAや亜鉛は、皮膚の健康維持には欠かせない栄養素のため、特に美容目的でコラーゲンを摂取する方は、一緒に摂取することをおすすめします。
コラーゲンペプチドをとりすぎても大丈夫?
身体にさまざまな働きがあるとされているコラーゲンペプチドですが、過剰摂取には注意が必要です。
コラーゲンペプチドは、1日に5~10g程度の摂取が推奨されています。コラーゲンペプチドは動物由来の成分も多いため、個人の体質や健康状態によってはアレルギー反応が起こるケースがあります(10)。
また、妊娠中や授乳中の方に対しての安全性も明確ではないため、使用する場合は医師に相談する必要があるでしょう。
このように、コラーゲンペプチドは「摂取すれば摂取するほどよい」というわけではありません。自身の体調をよくチェックしながら、上手に取り入れていきましょう。
コラーゲンはいつ摂ったらいいの
コラーゲンペプチドを摂取するタイミングは、特に決まっているわけではなく、目的によって摂取タイミングが異なります。
筋肉の回復を目的にコラーゲンを摂取する場合は、寝ている間に壊れた筋肉組織の修復が行われるため、夜に摂取するのが効果的だと考えられています。
吸収のしやすさを考えると、朝食を食べる前の空腹時がよいといわれています。
コラーゲン摂取後、血中のPO・GO含有量が増加し、摂取後約2時間で血中濃度がピークに達し、数時間後まで残留し24時間後にはなくなってしまうことが明らかとなっています。
そのため、摂取するタイミングよりも毎日継続して摂取することが大切です。摂取し忘れないように毎日夕食前など時間を決めてしまい、生活のルーティンに組み込んでしまうことをおすすめします。
コラーゲンペプチドの活用で健康へ
コラーゲンペプチドは、美容や健康に関心のある方にとって注目の成分といえます。
コラーゲンペプチドには、肌の潤い保持や関節・軟骨の健康維持などの、幅広い効果が期待できます。
ただし、人によっては副作用が現れるケースもあるので、使用には十分に注意しましょう。ぜひ今回の記事を参考にして、安全かつ適切にコラーゲンペプチドをとり入れてみてください。
よくある質問
Q.コラーゲンの種類は?
A:コラーゲンは、アミノ酸の鎖が3本絡まった三重らせん構造をしています。構造や存在部位によって30種類程度のタイプがあり、発見された順に番号がつけられています。以下の5種類が特に重要で、体内に広く存在しています(10)。
種類 |
特徴 |
Ⅰ型 |
体内に最も多く存在し、骨や皮膚、靭帯、腱などに含まれています。骨の形成などに重要なコラーゲンです。 |
Ⅱ型 |
主に軟骨に含まれているタイプのコラーゲンです。関節軟骨は、関節への衝撃を和らげ、スムーズに動かすために働いています。 |
Ⅲ型 |
皮膚や血管壁に存在しているタイプのコラーゲンです。組織の柔軟性や弾性を高めています。 |
Ⅳ型 |
繊維状ではなく網目状のシートを形成しており、皮膚や臓器などの基底膜に存在しています。基底膜は、組織の構造を維持するための足場や物質の透過を選択するフィルターなどの役割を果たしています。 |
Ⅴ型 |
胎盤や血管、筋肉などに含まれています。I型とⅢ型コラーゲンを束ねてコラーゲン繊維を形成する働きがあります。 |
各タイプのコラーゲンは、体のさまざまな部位で重要な役割を果たしています。
Q.コラーゲンが不足するとどうなりますか?
A:皮膚のシワやたるみ、関節痛、骨密度が低下し骨折のリスク増、抜け毛増加、爪が脆くなる、動脈硬化、眼精疲労などの症状があらわれる可能性があります。
Q.コラーゲンのサプリメントを飲むと体重が増えますか?
A:サプリメントを飲んだだけで体重が増えることはありません。
Q.コラーゲンのサプリメントを飲み始めてからどのぐらいで効果が現れますか?
A:個人差がありますが、サプリメントを飲み始めてから2〜3ヶ月は継続して飲み続ける必要があります。
Q.コラーゲンペプチドと低分子コラーゲンの違い
コラーゲンペプチドと低分子コラーゲンは、どちらもコラーゲンを吸収しやすいように細かく分解したものです。
より吸収効率が高いことをアピールするために、「低分子コラーゲン」という言葉が使われることがあります。
本当に注目すべきは、言葉の呼び方ではなく、平均分子量の数値です。分子量が小さいほど、体内での吸収効率が高いとされています。
コラーゲン製品を選ぶ際は、コラーゲンペプチドの分子量を確認することが大切です。
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