ビタミンDは「太陽の栄養素」とも呼ばれ、人体に不可欠な脂溶性ビタミンです。
しかし、成人のビタミンD目安量8.5㎍/日に対して、日本人は6.9㎍/日程度しか摂取できておらず、ほとんどの人が不足しています。
ビタミンD不足は、骨の軟化や成長障害・筋力の低下・姿勢の悪化・うつのリスク上昇といった心身の不調を招くため、軽視できない問題です。
ビタミンDを多く含む食品や、特に積極的な補給が必要な人を管理栄養士の目線から解説します。サプリメントで手軽に補給したい方に向けて、3つのチェックポイントもお伝えするので、イキイキした毎日に活かしていきましょう。
ビタミンDとは?
ビタミンDは、人体の健康維持に不可欠な脂溶性ビタミンです。食品からの摂取のほか、体内でも作られ、日光(紫外線)を浴びると皮膚で合成されます。
ビタミンDは、D2からD7の6つのタイプがありますが、D4~D7は生理活性が低いのに加え、食品にはほとんど含まれていません。そのため、一般的にはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)の2つに大別されます。
ビタミンD2は植物性食品、ビタミンD3は動物性食品がおもな補給源です。
食品やサプリメントに含まれるビタミンDは「不活性型」であり、体内で「活性型」に変換されて働きます(1)。
備考:ビタミンDは腎臓や肝臓を経て活性型ビタミンDになります。
しかし、病気によりうまく活性化できない方は、あらかじめ活性化されたビタミンDの摂取が必要です。活性型ビタミンDは医薬品に分類されており、副作用のリスクがあるため医師の管理のもとで服用する必要があります。
ビタミンDの表示単位は、下記の2つです。
- 「μg(マイクログラム」):1g/1,000,000
- 「IU(アイユー)」:国際単位=international unit
ビタミンDを豊富に含む食品は?
ビタミンDは日光浴により皮膚で合成されますが、食べ物からの摂取も大切です。ビタミンD2は、日光(紫外線)を照射したキノコ類に多く含まれます。
一方で、ビタミンD3を多く含むおもな食品は、魚・卵・乳製品です。動物性のビタミンD3は、植物性のビタミンD2に比べて生体内での利用率が優れています。
【ビタミンDを多く含む食品15選】
ビタミンDの食品 |
ビタミンDの含有量(100gあたり) |
1食分のビタミンD含有量 |
|
1 |
あんこうの肝(生) |
110㎍ |
66㎍/60g |
2 |
きくらげ(乾) |
85㎍ |
1.7㎍/2枚(2g) |
3 |
しらす干し(半乾燥) |
61㎍ |
6.1㎍/大さじ2(10g) |
4 |
真イワシ(丸干し) |
50㎍ |
15㎍/1尾(30g) |
5 |
筋子 |
47㎍ |
18.8㎍/40g |
6 |
イクラ |
44㎍ |
13.2㎍/30g |
7 |
カワハギ(生) |
43㎍ |
43㎍/1尾(正味100g) |
8 |
紅サケ(生) |
33㎍ |
26㎍/1切れ(80g) |
8 |
サケ節 |
33㎍ |
1.6㎍/5g |
9 |
真イワシ(生) |
32㎍ |
26㎍/1尾(80g) |
10 |
かたくちイワシの田作り |
30㎍ |
6㎍/20g |
11 |
ニシン(生) |
22㎍ |
33㎍/1尾(正味150g) |
12 |
干しシイタケ(乾) |
17㎍ |
1㎍/2個(6g) |
13 |
サンマ(生) |
16㎍ |
16㎍/1尾(正味100g) |
14 |
卵黄(生) |
12㎍ |
1.9㎍/1個(16g) |
15 |
マーガリン(無塩・有塩) |
11㎍ |
1.1㎍/小さじ2(10g) |
参照:「食品成分データベース」/文部科学省
ビタミンDを不足なく効率的に摂る4つポイント
日本人はビタミンDが不足している方がほとんどですが、ポイントを押さえておけば食事からでも十分に補給できます。
食品選びのコツや調理法・献立の考え方を理解しておきましょう。
1. ビタミンDを豊富に含む食品を選ぶコツ
食品からビタミンDを積極的に摂取したいときは、新鮮な魚や魚卵・天日干しにしたキノコ類を選びましょう。
また、生のキノコを自宅で天日干しにするのもビタミンDアップに効果的です。調理開始の2時間ほど前に日光に当てておくと良いでしょう。
しかし、体内への吸収率はキノコ(植物性食品)よりも魚(動物性食品)のほうが優れています。
さらに、魚は1回の摂取量も多いため、1度にしっかりとビタミンDを補給できます。
2. 2日に1回の「魚」でビタミンD不足を予防
上記に示したとおり、魚は豊富なビタミンDが含まれています。
1日分の摂取目安量は後で詳しく説明しますが、魚を1食摂るだけで1日分以上のビタミンD補給できるのです。
例えば、紅サケなら1食で成人3日分のビタミンDをカバーできます。
最近は、日本人の魚離れが進んでいますが、2日に1回は魚をとり入れて、ビタミンD不足を防ぎましょう。
封を開けるだけで食べられる便利な魚の缶詰も活用すると無理なく魚をとり入れられます。
3. 「油」と組み合わせてビタミンDの吸収率アップ
ビタミンDを効率的に摂取するには、油を使って調理したり、脂がのった魚を選んだり、脂肪分が多い食材と組み合わせて献立を考えると良いでしょう。
ビタミンDは油に溶ける性質があるので、油分と一緒に摂ると吸収率が上がります。
熱に強いので、焼いたり揚げたりしても損失しにくいのがうれしいポイントです。
4. 「カルシウム」と組み合わせて骨の強化
ビタミンDは、カルシウムの吸収に必要なタンパク質を作り、小腸からのカルシウム吸収を促進します。骨の材料となるカルシウムとビタミンDを組み合わせて骨の強化を目指しましょう。
ビタミンDたっぷりの簡単おすすめレシピ
ビタミンD不足解消に役立つ魚に、カルシウムの豊富な乳製品と、ビタミンDの吸収を高める油を組み合わせた健康レシピを紹介します。
骨の強化に!サケとキノコのミルククリーム煮
ビタミンDが豊富なサケとキノコにカルシウムが豊富な牛乳を組み合わせた一品です。パスタを絡めてもおいしいですよ。
【材料】 (2人分)
- 生サケ切り身 2切れ
- シイタケ 1パック
- 薄力粉 大さじ2
- 牛乳 300m
<A>
- コンソメ顆粒 小さじ1
- 砂糖 小さじ1
- 塩 小さじ1/4
- 有塩バター 20g
- ドライパセリ 少々
【作り方】
-
しいたけは軸を切り落としてスライスにする。
-
鮭は4等分に切る。
-
中火で熱したフライパンに有塩バターを溶かし、(1)(2)を入れて炒める。
-
鮭の両面がこんがり焼けたら、薄力粉を加えて中火で炒める。
-
粉っぽさがなくなったら牛乳を少しずつ加え、混ぜながら中火で加熱する。
-
とろみがついたら<A>を入れ、中火で混ぜ合わせる。
-
器に盛り付けて、ドライパセリを振りかけたら完成。
忙しい朝に!しらすとチーズ入りとろ~り玉子丼
ビタミンDが豊富なしらすと卵のほか、カルシウムたっぷりのチーズを組み合わせた1品です。包丁要らずで洗い物も最小限で済みますよ。
【材料】(2人分)
- ごはん 2膳分(300g)
- 卵 2個
- ピザチーズ 適量
- しらす干し (半乾燥) 20g
- しょうゆ 適量
- きざみのり 適量
【作り方】
- グラタン皿に1人分ずつごはんを盛り、中央にくぼみを作って卵を落としてピザチーズをのせる。
- 250℃のトースターで焼き色がつくまで5分ほど焼く。(電子レンジの場合は、卵が破裂する可能性があるので、爪楊枝などで数カ所穴を開けてから、600Wで1分ほど加熱する)
- (2)にしらすをのせて、しょうゆをかけ、きざみのりを散らしたら完成。
ビタミンDの働きや効果は?
近年、ビタミンDをサプリメントで補給している人が増えています。ビタミンDのおもな働きは下記のとおりです
- 免疫力アップをサポートする
- カルシウム吸収を促し、丈夫な骨を維持する
- 血中カルシウム濃度のバランスを維持する
- 神経や筋肉の正常な働きをサポートする
- 糖尿病・乳がん・大腸がんのリスクを低減する
- 風邪を予防する
ビタミンDはどんな人におすすめ?
ビタミンDは健康維持に欠かせない栄養素であり、ほとんどの人が不足気味です。その中でも、とくに積極的な摂取を心がけてほしい方をご紹介します。
- 紫外線ケアをしている人(紫外線によるビタミンD合成が阻害されるため)
- 外出頻度が少ない人(紫外線を浴びないため)
- 魚を食べる機会が少ない人(ビタミンD含有量が多い魚を摂取しないため)
- 菜食主義の人(ビタミンD含有量が多い動物性食品を補給しないため)
- 母乳を飲んでいる乳児(母乳にはビタミンDが少ないため)
- 高齢者(加齢によりビタミンDを合成する力が低下するため)
備考:体内でビタミンDを活用するには、腎臓で活性型に変換する必要があります。
また、脂溶性ビタミンなので、体内に吸収するには脂質が必要です。腎機能が低下している方、脂質の処理機能に障害のある方(セリアック病・クローン病など)は、薬剤による治療が必要なので、医師の指示に従いましょう。
ビタミンDの摂取目安量は?
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人(18歳以上)男女のビタミンD摂取目安量を8.5㎍/日、耐容上限量を100㎍と設定しています。
【ビタミンDの食事摂取基準(㎍/日)】
性別 |
男性 |
女性 |
||
月齢や年齢 |
目安量 |
上限量 |
目安量 |
上限量 |
0~11(ヵ月) |
5.0 |
25 |
5.0 |
25 |
1~2(歳) |
3.0 |
20 |
3.5 |
20 |
3~5(歳) |
3.5 |
30 |
4.0 |
30 |
6~7(歳) |
4.5 |
30 |
5.0 |
30 |
8~9(歳) |
5.0 |
40 |
6.0 |
40 |
10~11(歳) |
6.5 |
60 |
8.0 |
60 |
12~14(歳) |
8.0 |
80 |
9.5 |
80 |
15~17(歳) |
9.0 |
90 |
8.5 |
90 |
18以上(歳) |
8.5 |
100 |
8.5 |
100 |
妊婦 |
- |
8.5 |
- |
|
授乳婦 |
8.5 |
- |
参照:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 /厚生労働省(2)
「令和元年国民健康・栄養調査」による日本人の平均的な食品からのビタミンD摂取量は6.9㎍/日であり、不足しがちです。
しかし、日光浴でもビタミンDは合成されるので、適度に日光のもとで生活をしている健常人の場合は、欠乏するケースは少ないとされています。
日光に当たる機会が少ない人や、ビタミンDを合成する力が低下している高齢者は、サプリメントなども活用しながら摂取量アップを目指しましょう。
<ビタミンDが不足:ビタミンD不足の症状と影響は?健康リスクの見逃しに注意!>
ビタミンD摂取の注意点は?
ビタミンDは脂溶性ビタミンで、油や脂質が多い食品と一緒に摂取すると吸収率が上がります。
ビタミンDを摂取する際に、食事や油製品や魚油の健康食品とともに食べるのはいかがでしょう。
また、脂溶性のビタミンDは体内に蓄積されるため、過剰摂取による健康障害が報告されています。ビタミンDの過剰摂取は高カルシウム血症を招き、心筋や肺・腎臓・血管壁にカルシウムが沈着するのです。カルシウムが沈着するとおもに下記の症状が現れます。
- 腎機能障害
- 食欲不振
- 嘔吐
- 神経の興奮 など
サプリメントやビタミンDが強化された食品を利用する際は、上限量を超えないようにしましょう。(3)
<ビタミンDの過剰摂取:ビタミンDを撮りすぎると危険!知っておくべき症状と予防法>
ビタミンDをサプリで補給したい人の二つのチェックポイント
忙しい日々の中、食事だけで毎日ビタミンDを十分に補給するのは、簡単ではありません。
ビタミンD不足を感じている方は、手軽で確実にビタミンDが補給できるサプリメントの利用が便利です。
しかし、数ある商品の中から自分に合う商品を見つけ出すのは難しいですよね。自分に合ったビタミンDサプリメントを選ぶためにチェックしたい3つのポイントを紹介します。
チェックポイント1:ビタミンDの配合量は十分か
サプリメントに含まれるビタミンDの配合量はさまざまです。配合量が少なすぎる場合は不足を補いきれない可能性があります。
前述したとおり、成人のビタミンDの目安量は、8.5㎍(上限量100㎍)/日です。
しかし、この目安量は皮膚で合成される分のビタミンD量が考慮されていません。普段、日光を浴びる習慣のない方や紫外線ケアをしている方・ビタミンDを活性化する機能が低下している高齢の方は、より積極的なビタミンD補給が必要です。
さらに、「骨粗鬆症治療ガイドライン」では、骨粗鬆症治療時のビタミンD推奨量を 10~20㎍/日としています(5)。
ビタミンDの必要量は、食生活や生活スタイルにより個人差がありますが、ビタミンD不足を感じている方は、高配合の20㎍前後のサプリメントを検討してみてはいかがでしょうか。
チェックポイント2:利用効率の良い「ビタミンD3」
ビタミンDのサプリメントには、「ビタミンD2」や「ビタミンD3」・「D2とD3を両方配合した商品」の3タイプがあります。
ビタミンD2よりもビタミンD3のほうが血中のビタミンD濃度を安定的に維持するとの報告があるため、菜食主義やアレルギーといった特別な理由がない限りは、ビタミンD3のサプリメントを選ぶとよいでしょう。